キーナとルルンは同郷のハーフリング同士です。
冒険仲間のエルフ、パリューンとともに郷里の「マッサラー村」にいます。
彼らは村の長、ティーラの要請によりここへやってきたのです。
マッサラー村とその周辺の地域ではいま、深刻な不作に悩まされています。
周辺の土地は穏やかな気候と肥沃な大地、そして古のエルフによる魔法の加護によって、何世代も栄えてきました。
しかしこの数年、麦の生育状況が悪く、十分な収穫を得ることができていません。
ティーラは、古のエルフ族によってもたらされた魔法の加護に、何か問題が起きているのだと考えています。
古のエルフ族と魔法については、「銅(あかがね)の書」という彼ら自身が遺した書物にその詳細が記されています。
「銅の書」は現在、「スロンテン要塞」というクレリックたちが守る要塞内の大図書館に所蔵されているということです。
キーナ、ルルン、パリューンの3人は、この土地が危機を脱する方法を調べるため、「銅の書」を求めてスロンテン要塞へと向かいました。
スロンテン要塞では、クレリックのウォラスが同僚のカバルから相談を受けていました。
カバルは大図書館の管理係だったのですが、ここの数日行われている書庫の整理で、貴重な書が1冊失われていることに気づきました。
消えた書の名前は「銅の書」。はるか昔にこの土地を去ったエルフの一族が書き遺したものです。
自分のミスで無くしてしまったと考えたカバルは、悩んだ末、ウォラスへ相談しました。
ウォラスとカバルは思いつく限りの場所を探しましたが、消えた書はどこにもありません。
図書館の資料は厳重に管理されている上、「銅の書」は大きく分厚いものですので、突然無くなるというのは不自然です。
ウォラスは件の書が盗難にあったと考えるようになりました。
丁度そこへ、キーナ、ルルン、パリューンの3人がスロンテン要塞を訪ねて来ました。
目的は「銅の書」です。要塞の長からカバルへ、「銅の書」を持ってくるようにとの連絡がきます。
もはや隠してはおけないと判断したウォラスは、カバルと共に事の顛末を説明しました。
キーナ、ルルン、パリューンにウォラスを加えた4人は「銅の書」の捜索を開始します。
外部の人間が盗みだしたのではないかと考え、要塞の守衛からここ最近出入りした者の記録を手に入れます。
殆どは定期的に出入りする商人たちなのですが、数日前に1人だけ「イェンル」という名の旅のエルフが立ち寄った記録がありました。
イェンルは旅の途中で、噂に名高いスロンテン要塞をひと目見たいと立ち寄ったという者でした。
イェンルを要塞内へ案内したのは他でもないカバルです。
図書館へも案内し、いろいろな書を調べていたということですが、その日にはまだ「銅の書」は書庫に存在していました。
次の日、旅人が立ち去ったあと程なくして「銅の書」が無くなっていることに気づいたということです。
状況から考えて、そのエルフが何か事情を知っていると考えた4人は要塞を離れ、となり町のガトラまで出発します。
スロンテン要塞から一番近い街、ガトラに到着した4人は、すぐに「イェンル」というエルフの捜索を開始します。
イェンルの特徴は、真っ白な左目(おそらくは義眼)と、鮮やかな緑色の指輪をはめていたことです。
4人は魔法の品物を扱う「ブラクの店」で「緑色の指輪」が「天界の息子」と呼ばれるグループの一員であることを聞き出します。
「天界の息子」は魔法の品物(所謂マジックアイテム)が、世界に満ちる魔法の力を乱し、バランスを崩すものであると信じる集団です。
彼らは各地で魔法の品物を買い集め、あるいは略奪し、手当たり次第に破壊しているということでした。
イェンルはこの「天界の息子」の一員であり、「銅の書」は彼らの破壊活動に関する何らかの目的のために盗み出されたもののようです。
その後、イェンルによく似た容貌の男と、同じく緑色の指輪をはめた3人の男女が「オークの首亭」という宿屋に滞在しているという情報を得ます。
「オークの首亭」に行くと、彼らは出かけていて不在だということでした。
穏やかな話し合いというわけにはいかないだろうと考えた4人は、宿屋の外で彼らが戻ってくるのを待ち伏せることにしました。
「オークの首亭」に、緑色の指輪をはめた男女3人が戻ってきます。イェンルらしき者の姿もそこにありました。
すぐに3人組を呼び止め、盗まれた「銅の書」について問いただします。
最初は平静を装っていた彼らですが、逃げられないと悟ると武器を構え、呪文を唱え始めます。
イェンルはダークネスの呪文で視界を遮り、戦いを有利に進めようとします。
暗闇の影響で苦戦しましたが、ハーフリング2人組が首尾よくイェンル以外の2人をノックアウトします。
仲間がやられたことを知ったイェンルは、あっけなく降伏してしまいました。
街の衛兵たちが駆けつけ、その場にいた全員が連行されましたが、その後スロンテン要塞からの働きかけでウォラスたち4人は開放されました。
イェンルに対し「銅の書」の行方を問いただしたところ、同じく「天界の息子」の一員である「マンル」という男へ受け渡されていました。
マンルは、ガトラから少し離れた「デッドエンド村」に向かったということでした。
デッドエンド村の近くにある大洞窟には、「銅の書」に関係する古代の遺物が眠っており、彼らの狙いはその破壊だったというわけです。
4人はすぐに、デッドエンド村へ向かって出発します。
デッドエンド村の近くにある大洞窟にやって来た4人は、その洞窟の入り口でロバが1頭死んでいることに気づきました。
死骸はまだ新しく、何か肉食の大きな生き物に食い荒らされたような様子です。
恐る恐る奥へと進んでいくと、とてつもなく広い部屋の真ん中に、巨大なオベリスクが建っている場所へ辿り着きます。
オベリスクは、黒くなめらかな金属でできており、ところどころに魔法のルーンが彫り込まれています。
そしてそのすぐ側には、地面に広げられた「銅の書」と、倒れて死んでいる男の姿がありました。
遺体を調べようとしたとき、暗闇の中から巨大なサソリが3匹、音もなく進み出てきました。
この洞窟にはいつからかジャイアントスコーピオンが住み着き、不用心な侵入者に針の一撃を加えたようです。
4人はサソリの毒に怯えながらも武器を手に取り、傷を負ったものの何とか敵を殲滅することができました。
「銅の書」によると、このオベリスクは古のエルフ「ジャヤドラン」族が、この土地を離れる際に遺したもののようでした。
このオベリスクから発する魔法の力が、この辺り一帯の土地で取れる作物を護り、豊かな実りを約束していたのでした。
しかし今やこのオベリスクから魔法の力は失われていました。
ここで死体になっている男、「天界の息子」のマンルがサソリに襲われるよりも先に、オベリスクの魔法を破壊していたのでした。
「天界の息子」の構成員たちは、以前からこの土地のあちらこちらに点在する魔法の遺物を破壊し続けていたのです。
その結果、長い間この地域を護ってきた魔法の力が弱まり、作物の不作や異常気象に見舞われることになったのです。
オベリスクの魔法を蘇らせられるのは、はるか昔にこの地を去ったジャヤドラン族だけです。
4人は「銅の書」を調べ、彼らがこの土地を取り囲む山脈を越えた向こう側の土地に移り住んだことを突き止めます。
山脈には「リンドルーン・パス」と呼ばれる、ドワーフによって穿たれたトンネルがあり、ジャヤドラン族はそこを通って行ったのです。
「リンドルーン・パス」は今ではもう使われておらず、行き来する者はありません。
山脈を越えた向こう側に、今でもジャヤドラン族が住んでいるのかどうかもわかりません。
4人は僅かな望みに賭け、リンドルーン・パスを通る旅に出ることを決意しました。
旅に出た4人は、打ち捨てられたリンドルーン・パスへの入り口までやって来ました。
ここにはその昔ドワーフ達によって作られた門があり、その門の向こう側にリンドルーン・パスへの入り口があります。
古びた門はかたく閉ざされており、門を開ける手段は見つかりません。
もしかすると門の先にはまだドワーフ達が居るのではないかと、呼びかけてみるものの返事はありません。
途方に暮れていたそのとき、門の上から声がしてきました。
「門は今じゃもう開かないんだ。縄梯子を垂らすから、それで上がってきな。」
門の上から声をかけてきたのは、若いドワーフの男性でした。
縄梯子を伝って門の向こう側に行った4人は、2人のドワーフと対面します。
彼らの名前はオードとムーアで、少し前に故郷を離れてこの場所へ旅をしてきたのでした。
とうの昔に見捨てられたこの場所に住み着き、何か新しい商売ができないかと考えていたところだということです。
ドワーフ達にリンドルーン・パスへの入り口を尋ねると、古い居住区の奥にある大きなトンネルの入り口に案内してくれました。
トンネルは巨大な扉で閉ざされています。オードが扉の側にある小窓を開けると、そこにはたくさんの歯車が収められていました。
「扉を開くには、ここに正しい歯車をはめ込まないといけない。歯車がどこにあるかも知っている。しかし…」
その歯車は昔の鍛冶場に保管されています。しかし、度重なる地震や地下水の流入により、鍛冶場とその周辺の区画は水没してしまいました。
その上、水の中には様々な水棲モンスターが住み着いているということです。
4人の手には以前の冒険で手に入れた「ウォーターブリージング」(水中呼吸)のポーションがあります。
4人は意を決し、鍵となる歯車を求めて水の中へ入って行きました。
水中に入った4人は、突然大きな魚の襲撃を受けます。
魚の正体は「ロックフィッシュ」。毒を持った凶暴な魚です。
毒を警戒しながらの戦いになりましたが、パリューンが「コンティニュアル・ライト」(持続光)の魔法を使って魚の視力を奪います。
突然の強烈な光に驚いたロックフィッシュは、あっという間に退散してしまいました。
歯車を求めて入った次の部屋では、水棲の「シー・トロール」に襲われます。
この珍しいモンスターがいつから水の中で生きるようになったのかはわかりませんが、強さと凶暴さは陸のトロールと同等です。
トロールの強力な一撃に苦戦を強いられたものの、何とか撃退することができました。
次に入った部屋で、ようやくドワーフの鍛冶場を発見することができました。
しかしここでも厄介なモンスター「シー・ヒドラ」に遭遇します。大きな鰭のある、水棲のヒドラです。
陸のヒドラと同様たくさんの頭部を持ち、それらを全て切り落とすしか倒す術はありません。
長い戦いの末、どうにか全ての頭部を破壊し、ヒドラを倒すことに成功しました。
4人は鍛冶場の隅に置き去りにされた歯車を見つけ、満身創痍で水中から帰還します。
4人は十分に休息をとった後、ドワーフの2人組に案内され、リンドルーン・パスへの入り口に向かいました。
鍛冶場から持ち帰った歯車をはめ込むと、歯車が回り始め、トンネルへと続く扉が重々しい音をたてて開きました。
「リンドルーン・パスは何十年も使われていない。今も向こう側まで続いているかは分からんが、ともかく気をつけてな。」
4人はドワーフ達に礼を言い、暗いトンネルへと足を踏み入れました。
後半へ続く