まずはメンバーが揃うまで、「ラブレター」で軽くウォーミングアップ。
「ラブレター」は日本のデザイナー、カナイセイジ氏によるミニマルなカードゲームです。
2012年日本ボードゲーム大賞をはじめ、海外でも高い評価を得ています。
カードはたった16枚で、プレイ時間も1回5分~10分というスピーディなゲームとなっています。
シンプルなルールで運の要素が強めですが、他プレイヤーの手札を推理しながら勝ちを目指すことも可能です。
このゲームは同人作品として発表されたものですので、2014年3月現在は入手しにくい状態になっています。
しかし、2014年5月にアークライトより発売予定という情報もありますので、プレイしてみたい方は発売を待つといいでしょう。
「Becoming」はBrian Engard氏による、「ヒロイズムと犠牲のゲーム」です。
この作品は「英雄が何かを成し遂げる」ことと、「それによって失うもの」に焦点を当てたRPGとなっています。
英雄が冒険に出たとき、その英雄性が試される苛烈な試練が降りかかります。
最後の瞬間まで英雄でいられたのかどうか、あるいは別の存在に成り果ててしまったのか、それに至る物語を綴るゲームなのです。
上記のような一貫したテーマがありますが、英雄の設定や世界の雰囲気(ファンタジー?SF?)は様々なものが用意されています。
今回プレイしたのは「Long Live The King」(国王陛下万歳!)というもので、暴君の圧政に苦しむ民衆を救おうと立ち上がった英雄のお話です。
参加したプレイヤーは4名、1名が英雄の役を引き受け、残る3人は「苦痛」「疑念」「恐怖」といった試練をそれぞれ担当します。
(RPG経験者の方は、「プレイヤー1人にゲームマスター3人」という表現の方がピンとくるかもしれません。)
<今回の英雄>
勇敢な男 ガレス・ハロゥ
<英雄の資質>
美徳:「家族はわたしの命だ」、「民衆が英雄を必要としている」、「寛大・慈悲・正義」
長所:「弓の名人」、「剣の扱いが上手い」、「恐れ知らず」
味方:「親友ジョン」、「姉アリア」、「献身の騎士マーク」
英雄の強みである「資質」をプレイヤー全員で決め、今回の英雄が誕生しました。
これらの資質は、振りかかる試練を乗り切るための強力な武器になります。
一方で、苦境に立たされた結果それを失ったり、却って英雄の足を引っ張る要因になることもあります。
シナリオの各シーン毎に、「苦痛」「疑念」「恐怖」のいずれかがそのシーンの「脅威の代理人」を受け持ちます。
「脅威の代理人」は、各シーンで英雄にどのような困難が振りかかるのか、語りを入れて物語を進行させます。
その後、英雄を受け持つプレイヤーとダイスを振り合い、最高値の目が出ているダイスの数が多い方が勝利します。
英雄が勝利すると、その時に活用した資質のいずれかが強化され、勝利点を得ます。
(例:「剣の扱いが上手い」かつ「剣の腕にますます自信を深めた」など)
「脅威の代理人」が勝利した場合、英雄の資質で強化されたものを弱体化したり、資質に「不利な状態」を付け加えることができます。
(例:「恐れ知らず」の資質に、「狂気からくる無謀さ」を付与するなど)
こうした場合、その資質の「不利な状態」を使って「脅威の代理人」が振るダイスの数を増やすことができます。
「不利な状態」が3つ以上付与されると、その資質はもはや機能しなくなります。
英雄に不利な状況をもたらす度に「脅威の代理人」側に勝利点が入っていきます。
このようにして自らのさまざまなものを犠牲にしながら、まさしく英雄的な戦いを続けることになるのです。
<オープニング>
ドラーシス王国は、平和で秩序ある王国だ。
だがその実情は、無慈悲な暴君が鉄の支配をしいており、民衆は圧政に苦しんでいた…
<シーン1>
脅威の代理人:「苦痛」
平和なペレン村で、若い二人の婚礼が行われていた。そこへ王の兵士たちが税を取り立てにやってくる。
徴税を口実に、好き放題狼藉を働く兵士たち。ついにガレスという名の男が剣を手に立ち上がった。
このシーンでは、兵士と英雄が戦うことになりました。
ダイスを振り合った結果、英雄側の圧勝。
戦いで発揮した「剣の扱いが上手い」特徴がさらに強化されます。
<シーン2>
脅威の代理人:「疑念」
村の有力者たちが、王の圧政や兵士たちの横暴な態度について意見を交わしている。
王に逆らうべきではないとする意見に対し、ガレスは嘆願のため王の元へ向かうことを告げる。
弱気になる村人達を勇気づけ、説得しなければいけません。
ここでも英雄側が首尾よく勝利を収めました。
必要なものを揃え、ガレスは姉や親友とともに王都へ旅立ちました。
<シーン3>
脅威の代理人:「恐怖」
王都へと続く街道で、山賊の一団に遭遇することになる。勇気を出して撃退しなければいけない。
ここでは英雄の味方として「献身の騎士マーク」を登場させ、協力して山賊を退けました。
ガレスとマークは友情を深め、再会を約束してそれぞれの道を急ぎます。
<シーン4>
脅威の代理人:「苦痛」
遠くに立ち上る煙を目にする英雄。この先の村が燃えている!
炎に包まれた村で、村人たちの救出活動を手助けする英雄と仲間たち。
引き続き英雄側が勝利を収め、「恐れ知らず」の資質を発揮して、危険を顧みず活躍しました。
<シーン5>
脅威の代理人:「疑念」
降りだした雨が炎の勢いを弱めた。焼け出された村人たちが集まってくる。
村に火を放ったのは王の兵士たちだった。「王に逆らった罪」で村ごと復讐に遭ったのだ。
村人たちの話を聞いた英雄と仲間たちは、強い動揺をおぼえます。
このまま王都に向かえば、自分たちの村も同じ目に遭うのではないか?
このシーンでは「脅威」側が初めて勝利し、ガレスは力なくその場を立ち去ることになります。
<シーン6>
脅威の代理人:「恐怖」
雨は嵐となって一行を襲う。辛うじて風雨を避けることのできる窪地で野営する英雄たち。
英雄は自身と仲間たちを勇気づけ、十分な休息を得なければいけない。
このシーンでも「脅威」側の勝利です。英雄たちは先ほどの衝撃的な光景を忘れられません。
ここでの敗北で、味方である「姉のマリア」の資質が転覆し、機能しなくなります。
次の朝、姉のマリアは行方が分からなくなりました。村を案じて単身帰路についたのかもしれません。
<シーン7>
脅威の代理人:「苦痛」
王都を目の前にして、兵士の一団に遭遇する。
残酷な兵士たちは、英雄を捕らえるかあるいは殺してしまうかもしれない。
有効な「資質」をたくさん失ってきたことで、英雄側は挽回できません。
何とか兵士をやり過ごしたものの、武器は傷つき、もはや剣を振るう気力もありません。
ここまで一緒に戦ってきた親友は、自分を見捨てて逃げてしまいました。
満身創痍の英雄は、それでも王都へ向かって歩き出します。
<シーン8>
脅威の代理人:「疑念」
ついに王宮の入り口まで辿り着いた英雄。だがそこは厳しい警備がしかれていた。
王宮に入ろうとするものは、その目的や身元を追求されることになる。
ガレスは王宮に忍び込もうとしますが、失敗し、捕らえられます。
ここまで自分を支えてきた誇りも、全て消えかけていくようです。
<シーン9>
脅威の代理人:「恐怖」
拘束された状態で王と対面することになった英雄。
彼は残酷な王を目の前にしてどうするのだろうか。
最後のシーンです。ここでは再び英雄側が勝利することができました。
その場で処刑されるかもしれないという恐怖に耐え、ガレスは民の窮状を王に訴えます。
王の側にはかつて友情を結んだ騎士のマークがおり、彼の口添えがあったのかもしれません。
英雄の言葉が届いたのかどうか、暴君がその態度を改めるのかどうかはわかりません。
いずれにせよガレスは赦され、再び村へ帰る道のりを出発しました。
<エンディング>
全てを失い、身一つで故郷の村に帰ったガレス。そこで彼が目にしたものは…
エンディングを決めるのは、その時点で勝利点の一番多かったプレイヤーです。
今回は「苦痛の代理人」のプレイヤーが選ばれました。
故郷に戻ったガレスを待っていたのは、残酷な現実でした。
かつて村があった場所には、焼け跡と瓦礫が残るばかり。他には何もありません。
「英雄」はその場で力なく膝を付くのでした。
今回のプレイでは、英雄にとって悲劇的な結末になってしまいました。
しかし「バッドエンド」ではあっても、「失敗」ではないのがRPGのRPGたる所以ではないかと思います。
後半は英雄側が負け続けていましたが、そのようにして「大切なものを失っていく」過程を描くのもこのゲームの楽しみの一つではないでしょうか。
今回の主人公ガレスは、全てを失ったにもかかわらず最後まで英雄であり続けました。
そういう意味では、このゲームのテーマにぴったりのキャラクターだったと言えるでしょう。
勝利点や各シーンでの勝ち負けはありますが、「競う」ゲームではなく「勝ち、負けという結果をどのように語るか」ということが大切になってきます。
これはRPG以外の他の種類のゲームでは経験できない要素だと思われます。
ルール自体は単純で覚えることも少ないのですが、プレイヤーの想像力が強く求められる作品でした。
今回は3対1でしたが、2対2でのプレイや他の設定でもいずれ再挑戦してみたいと思います。
最後は前回に引き続き、「エルダーサイン」をプレイしました。
クトゥルフ神話をテーマにしたダイスゲームで、プレイヤーが協力して「旧支配者」の復活を阻止するゲームです。
今回は6人でプレイすることになったので、前回よりも楽にクリアできるのではないか?と予想していました。
今回選ばれた敵は、「ヨグ=ソトース」。「外なる神」の一柱にして、アザトースに次ぐ強力な存在です。
封印するためには、冒険を通じて12個の「旧き印」を集めなければいけません。
序盤、深夜12時に発動する「神話カード」の効果で早速探索者1名が命を落とすことになります。
プレイヤーは別の探索者を選んでゲームに再挑戦できるのですが、探索者が死亡するごとに敵の復活も早まります。
前回のように協力して冒険をクリアしていきますが、運に恵まれず、「旧き印」がなかなか集まりません。
結果、6個の「旧き印」を集めた段階でヨグ=ソトースが復活してしまいました。
それまでに集めた武器や呪文を総動員して立ち向かいますが、惜しくもあと少しのところで全滅の憂き目にあいました。
残念な結果には終わりましたが、ダイスでいい目が出たときにはワーッと盛り上がり、運が悪いとええ~っと悲鳴をあげる、楽しいプレイになりました。
プレイ人数は「1人~8人」とかなり幅がありますが、大人数で遊ぶ方が楽める作品かもしれません。