宮内庁 上皇職 皇居内生物学研究所 専門官
タイトル
潮汐サイクルの中で生活するハゼ科魚類の多様性~生物リズム研究の可能性~
専門
魚類の生態形態学(Ecomorphology)
最近はまっていること
植物の葉っぱの観察、野鳥の行動の観察
ハゼ科魚類は、これまでに世界で約2000種、国内で約560種が記載され、魚類の中でも最も多様化したグループの一つである。深海から山上の湖沼まで、あらゆる環境に進出して適応・種分化を繰り返しているが、その主要な生息環境の一つが、河川から海洋への移行帯として形成される汽水域である。汽水域のハゼは、1日2回の干潮・満潮、半月周期の大潮~小潮の潮汐サイクルの中で生活しており、特に太平洋側では干満の差が大きいため、多くの種が潮汐に対応した体内リズムを持っていると想定されるが、ハゼの生物リズムの研究はまだまだ少ないようである。本講演では、日本のハゼ研究の流れを大まかに紹介した上で、演者がこれまでに取り組んでいる汽水域のハゼを対象とした生態形態学の研究について紹介するとともに、生物リズム研究の対象としての潜在的可能性について、具体例を挙げて論じてみたい。当該分野における今後の研究の進展を期待している。
名古屋大学 特任助教
タイトル
メダカから明らかとなった動物の季節適応戦略の分子基盤
専門
動物生理学
最近はまっていること
もうすぐ1歳になる娘と遊ぶこと
Webページ
https://researchmap.jp/nakayama.t
四季が存在する温帯地域では、季節の変化に伴って1年を周期とした環境変動が起きる。このような環境変動に適応するため、温帯に生息する多くの動物は季節変化する環境情報を頼りに自身の生理機能や行動を柔軟に変化させる季節適応戦略を取るが、行動や繁殖以外の生理機能の季節変化を制御するメカニズムは未解明のままである。私たちは動物の季節適応戦略を理解することを目的として、洗練された季節応答を示すメダカ(Oryzias latipes)をモデルとして研究を進めてきた。本発表では、季節適応研究において優れたモデルであるメダカにトランスクリプトーム解析やゲノム編集を適用することで明らかとなってきた季節によって変化するストレス応答や色覚、冬のうつ様行動の分子基盤について紹介したい。
東京女子大学 現代教養学部 数理科学科 情報理学専攻 特任講師
タイトル
生物の性の不思議を数理モデルで解き明かす:生命現象と理論の結びつけ方のこれまでとこれから
専門
数理生物学
最近はまっていること
大学構内の植物写真を撮ること、自宅で観葉植物を育てること、猫雑貨を集めること
Webページ
https://sites.google.com/site/sachidwarfmale/ https://www.twcu.ac.jp/main/academics/sas/teacherlist/yamaguchi.html
大学院生の時から、ずっと海洋生物の性の多様性に興味を持ち、理論研究を展開してきました。時には共同研究者の野外調査に同行したり、実験データの詳細なお話を伺ったりしながら、シンプルで直感的な説明を与えられるモデル作りを目指してきました。そんななか、大きな壁にぶち当たります。科研費がなかなか取得できず、どうしたらこの状況を打破できるのか…?数年考えた末、共同研究者からのアドバイスもあり、いままでツールとして使ってきた「残せる子の数を最大化するような生き方を生物は採っている」という適応度最適化から、研究の方向性を変えてみることにしました。分子生物学や内分泌学などにより、どんな遺伝子が発現しているのか、どんなホルモンが作られているのかといったことが詳しくわかってきました。これらの知見をもとに、体内で起きていることと生物の行動・生態を結びつけて、性に限らず形質がどのように環境適応するのかを調べるアプローチを進めています。いままでとこれからの研究について、2つ理論研究の話題をご紹介したいと思います。