復活した通信技術

電力線搬送通信PLC

昨年(2021)6月に電波法の規制緩和が実施された.それにょってPLCの英文字が目につくようになった.PLCとは Power Line Communicationの略名であり,LANケーブルの代わりに電力線(屋内電気配線)を使ってデータ通信を行う通信技術である.平成18年頃に認可された技術であり,家じゅうに張り巡らされている電力線を使用するため特別な工事を行う必要もなくPLCアダプターをコンセントに挿すだけでネットワーク構築ができる.当時,私は1階フロアから屋上に電波を飛ばすのに使用できるのではないかと思ったのを記憶している.しかし,無線LAN機器の普及でPLC機器は話題に上らなくなってしまった.話題にならなくなった技術が再び注目されるのにはそれなりの理由がある.これまで100ボルトあるいは200ボルトに限られていた適用範囲が600ボルト三相電圧に広がり,無線通信がやりにくかった工場などでも使用できるようになり,さらには船舶,トンネル,地下駐車場などでの使用箇所の制限が緩和されたためである.それに伴い通信速度も向上したらしく第4世代と書かれている.

製造メーカーの説明書には,「必要であればHD-PLCに無線LANのアクセスポイントをつなぐこともできるので,アクセスポイント同士の連携にも使える.Wi-Fiの普及で瀕死になったPLCが,今度はWi-Fiを助けることになる」と記載されている.また,HD-PLC(注)はWi-Fi相当かそれ以上の暗号化「AES128bit」を採用しているので,公共の場で使っても通信の安全を担保できるとのことである.さらに,街路灯に新たにLANケーブルを敷設することなく,監視カメラを設置することもできる.親機,子機の間隔は200メーター以内であるが,子機間でバケツリレーする「マルチホップ」を搭載しているので遠距離通信が可能である.PLCの関連情報を調べてみると電話回線の機能を収容する試みもなされている.現在,近くの電柱から一般家庭に引き込まれている電力線,電話線,CATV回線などがすべて電力線一本で事足りる時代が来るかもしれない.

アマゾンで検索すると,親機,子機のペアで1万数千円で購入できる.家庭内で使用する際.周囲にノイズを発生する電気器具があると通信速度が低下するとのことである.

注 パナソニックが提唱する高速電力線通信方式の名称で,日本およびその他の国での登録商標もしくは商標になっている.

(2022.01.17)

参考資料

[HD-PLC] : 電波法の規制緩和(2021年6月)による用途拡大

HD-PLC」対応PLCアダプターは、電力を供給している既存の電力線を利用してデータ通信を行いので, 通信専用線の敷設や無線通信が困難な場面でのネットワーク構築を可能にする. また, 従来の家庭用電力や従来のPLCに比べ, 高周波帯域(2~28MHz)を使用することで高速通信が可能である.

コンセントに挿すと通信できる「PLC」、再び注目の理由とは? 電波法改正で新たな用途