2026年10月6日
2026年10月6日
第6回数理生物学夏の学校を、2026年9月30日から10月2日まで静岡県御殿場市で開催した。筆者は共同代表の一人として、約1年間の準備と当日の運営にあたった。
名称:第6回数理生物学夏の学校
主催:数理生物学若手の会
日程:2026年9月30日〜10月2日(2泊3日)
会場:御殿場高原 時之栖(静岡県御殿場市)
形式:対面の合宿形式(講義1件はオンライン登壇)
参加者:69名(運営委員・講師を含む。学部生から教員・研究員まで)
企画:講義5件、ポスター発表2回、グループワーク企画「モデリンピック」、企業セミナー2件、懇親会2回
支援:複数の財団の助成、企業2社の協賛、参加者への旅費支援
夏の学校の目的は、若手研究者に基礎理論を学ぶ機会と、分野を越えた交流の機会を提供することである。数理生物学を学ぶ若手は全国の研究室に散在しており、数理的手法を体系的に学ぶ場が少ない。この状況を受けて、学生が主体となって企画と運営を続けてきた。
今回は、参加者が自分の研究や他分野について、ざっくばらんに、かつ熱く議論できる会を目指した。あわせて、数理モデルがさまざまな対象に使えることを、数理生物学を学ぶ人とこれから学びたい人に伝えることを狙いとした。講義は5件で、題材は感染症の流行、ウイルス、森林、生痕化石、神経回路から進化までである。
運営は、6大学の学部3年から博士3年までの学生10名が担った。共同代表2名のもとに会計、渉外、広報・IT、企画、会場の係を置き、各係のリーダーが担当範囲の判断を行った。全体ミーティングは月に1〜2回、オンラインで開いた。
2025年10月:初回ミーティング。係の分担と運営方針を決定
2025年11月〜2026年1月:会場候補の比較と見積もり。財団への助成申請を開始
2026年2月:団体名義の口座を開設。「どんな会にしたいか」を全員で議論
2026年春:会場を決定し、下見を実施。講師を投票で選定
2026年6月:参加登録と旅費支援の申請受付を開始
2026年8月:参加登録を締め切り
2026年9月30日〜10月2日:開催
終了後のアンケートには、10月6日時点で参加者69名のうち37名が回答した。全体の満足度は5段階で平均4.7だった。回答者のうち31名(84%)が初参加である。
夏の学校全体の満足度(5段階):平均4.7(5が25名、4が12名)
次回も参加したい・人に勧めたい(5段階):平均4.6
交流会の満足度(5段階):平均4.7
モデリンピックの満足度(5段階):平均4.4
講義の満足度:聴講した回答のべ178件のうち、「とても満足」または「満足」が143件(80%)
夏の学校への参加が初めて:31名
新しくつながりができた相手が6人以上:22名
最もよかった企画には、交流会を14名、モデリンピックを11名、ポスター発表を8名、講義企画を4名が挙げた。モデリンピックについては、設問に答えた36名のうち35名が「異分野の人と協働できた」を選んでいる。交流と議論を軸にした設計が評価されたと考えている。
自由記述には、異なる分野の人と交流できた、一人で初めて参加したが友人ができた、研究のモチベーションにつながった、といった声があった。2日目の夜には、懇親会の後もグループワークの議論が遅くまで続いた。
会がうまくいったのは、次の3点が揃ったためだと考えている。
運営メンバーの背景の多様性。所属も専門も異なるメンバーが講師候補を挙げ、分野ごとに投票で選んだ。参加者からは、運営の所属や分野が多様なので来やすかったという声があった。
係ごとに任せる意思決定。各係のリーダーが判断し、全体ミーティングでは報告と、全員で決めるべき議題に絞った。代表は、各係の進捗と係どうしが連動する部分を確認するだけで済んだ。運営委員は全員がボランティアである。そのため、各委員がこの活動に何のメリットを感じているかを考えながら、依頼と運営を行った。
交流が生まれる企画設計。新企画のモデリンピックでは、参加者が班に分かれ、お題を数理モデルにして発表した。作業を2日目の午後と3日目の午前に分けたため、その間の夜が議論の時間になった。
一方で、準備で最も苦労したのは運営内の合意形成である。背景が違うため、どんな雰囲気の会にするかの考えがメンバーごとに異なった。2月のミーティングで全員が希望を出し合い、その後も妥協点が見つかるまで話し合いを続けた。多様性は合意を難しくしたが、結果として会の強みにもなった。
代表は前年度の代表から指名を受け、迷わず引き受けた。務め終えて、研究と運営の両面で視座が上がったと感じている。
研究の面では、運営に携わりながら、筆者自身にも新しい研究上のつながりができた。多様な分野の最新の知見を学ぶこともできた。
運営の面では、やりたいことと予算の折り合いのつけ方を学んだ。会計も担当したため、旅費支援の拡充や会場の環境といった希望と、限られた予算との調整に繰り返し向き合った。財団の助成と企業の協賛を得たうえで、優先順位を一つずつ決めていった。
次回の運営には、早い段階で「どんな会にしたいか」を全員で話し合い、やりたい会のイメージを合わせておくことを勧めたい。
本会は、複数の財団からの助成と、企業からの協賛を受けて開催した。ご支援に深く感謝する。また、1年にわたりともに準備を進めた実行委員の皆さんに感謝する。