リモートワークに
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はじめに
このサイトは、リモートワークに関する各種ノウハウを収集し共有するために作成されてます。
情報処理学会グループウェアとネットワークサービス研究会 の関係者を中心とする有志によって編集されています。
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遠隔会議のポイント
リモートワークの特徴の一つに,遠隔会議があります。遠隔会議には,対面会議時には生じない独特の問題があるため,普段から対面会議をこなしている方でも上手くコミュニケーションが行えないことがあります。この主な原因は,対面会議を円滑に進めるための手がかりであるノンバーバル情報(例:視線,表情,ジェスチャ)が,遠隔地間ではうまく伝わらないためです [松下ら, 1995]。これをふまえ,次のような点を意識してみましょう。
明示的にリアクションしましょう
対面時のように,黙って頷くだけでは相手に伝わりません。対面時以上に「そうですね」「はい」と声を出して相槌を打ちましょう。大勢が同時参加していて,全員が声で相槌を打つと大変な場合もあります。その場合は,テキストチャットツールなどでリアクションを行うのも有効でしょう。
進行役を決めましょう
コミュニケーション時に発話が衝突すると,人は発話を諦めてしまう傾向があることが分かっています [Sacks et al., 1974]。対面時は相手が話し始めようとする様子が視線・表情などからうかがえるので,人は自然に発話の衝突をある程度回避しています。しかし,遠隔地間では上述のとおりこれらのノンバーバル情報が伝わりにくいので,誰がいつ発話し始めるか互いに判断しにくく,発話の衝突が起こりやすいです [玉木ら, 2012]。あるいは,発言の衝突をおそれて,ほとんど発言しない参加者が現れることも多いです。この事態を避けるためには,明示的に会議の進行役を設け,進行役が発言の衝突が起こりにくいように会議を制御したり,発言が少ない人に発言機会を与えたりする工夫が必要でしょう。
互いのプライバシーに配慮しましょう
テレワークの実施にあたっては,公私の境が曖昧になるためプライバシーへの配慮が必要であることが報告されています [大塚ら, 2019]。この報告によりますと,テレワーク利用者は,操作・行動履歴の共有(例:PCログイン日時・場所やWeb閲覧履歴が会社に伝わる)や,公私環境の混在(例:自宅の様子や生活音が同僚に伝わる)に不安を感じることが多いです。この不安感は,男性よりも女性が,テレワーク経験者よりも未経験者が,若年層より年齢が高い方が大きいことが分かっています。互いに,必要以上の情報共有を強要しないように心がけましょう。例えば,必要無い場合は,映像や音声をオフにすることを許すなどの配慮が必要でしょう。
参考文献
松下温, 岡田謙一:コラボレーションとコミュニケーション. 共立出版 (1995).
Harvey Sacks, Emanuel A. Schegloff and Gail Jefferson: A Simplest Systematics for the Organization of Turn-Taking for Conversation. Language, Vol.50, No.4, Part 1, pp. 696--735 (1974).
玉木秀和, 東野豪, 小林稔, 井原雅行, 岡田謙一: 遠隔会議における発話衝突低減手法. 情報処理学会論文誌, Vol.53, No.7, pp.1797--1806 (2012).
大塚亜未, 滝澤友里, 村山優子:テレワーク時のプライバシ懸念に関する調査.情報処理学会論文誌, Vol.60, No.12, pp.2157--2169 (2019).
大規模会議をリモートで行うポイント
感染症対策によって、学会・展示会・ライブ・スポーツイベントなど多くの人が集まる場は中止になったりオンライン開催になっています。ここでは、学会をオンライン開催したときの知見を基に、大規模会議をリモートで行う際のノウハウをまとめます。
オンライン大規模会議の事例
情報処理学会第82回全国大会 オンライン開催に関する手引き
・情報処理学会では、3/5から3/7に行われた全国大会をオンライン開催で行い、多数の参加者・同時に多数の発表ルームがある中での運営を経験しました。その際のマニュアルなどノウハウが公開されています。大変有益なものなので、同様の会議を実施される際に参考にされることをお勧めします。
第12回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム/第18回日本データベース学会年次大会(DEIM2020)
・3/2-3/4に行われたDEIM2020では、宿泊施設における集合型会議を完全オンライン化して実施されました。COVID-19が拡がったあと、情報系の大規模学会がオンライン開催された初の事例だったことから、多くのメディアから取材がありました。以下の記事では、当日の雰囲気や運営者の感想が紹介されています。「新型コロナで中止」はさせない。完全オンラインで学会の形は変わるのか? (BUSINESS INSIDER)
情報処理学会インタラクションシンポジウム 動画アーカイブ
・3/9から3/11に行われた「インタラクション」シンポジウムも、全国大会と同様にオンライン開催で実施されました。その際の講演内容や様子はYoutubeLiveでオンライン配信されました。アーカイブが今も公開されていますが、大規模会議をオンライン開催した際の雰囲気を動画で知ることができ、会議を運営される人にとって参考になります。
オンライン大規模会議実施上のノウハウ
上記の学会に参加・運営をした際の工夫や感想をまとめます。
発言方法のルールを決めましょう
一度に大勢いると誰がどういうタイミングで話せばよいのかわからないので、モデレータになった人は、発言方法を決めておくと良いです。Zoomの場合、「手をあげる」機能があり、それにより、発言を希望する参加者をモデレータが把握する方法があります。他に、質問したい人がチャットルームに質問の概要を簡単に記し、モデレータがチャットルームを見て発言者を指名する方法も有効です。
会議の雰囲気をつくりましょう
参加者の参加している場所はまちまちです、自宅の人、会社の人、出先の人、雰囲気が違うままです。また、それぞれのリアクションが伝わりませんので、静かに参加しているだけでは、盛り上がりに欠ける感じになることがあります。その結果、発言もしづらくなります。発表が終わったらみんなで「拍手をする」など、場の雰囲気を作るように働きかけましょう。
参加者と資料を確認しましょう
オンライン大規模会議では、通信環境の問題などから、参加者が常に聴講し続けているとは限らないことから、会議とは非同期に資料を閲覧する手段があることが望ましいです。そのため、参加案内の際に、資料の場所や共有方法を案内しましょう。守秘の問題がなければオンラインスライド共有サービスなどを活用して共有するのが便利です。
また、誰が参加しているのかがわかりにくいことが多いので、会議が始まる前に、発表予定者がログインしているかなどを事前に確認するようにしましょう。
参加者するための環境を確保しましょう
会議内での発言は、守秘性があるときがあります。したがって、オープンな場所からの参加を避ける、周囲に情報が漏れない環境やデバイス(ヘッドホンなど)を用いて実施するといった留意をするようにしましょう。
指示代名詞は避けましょう
参加者それぞれが何を見ているかわからないので、資料を指して議論する場合や話者を指定する場合、指示代名詞は使わずに「資料何番のどこどこ」、「誰誰さん意見はいかがでしょうか?」のように具体的に指示して議事を進行するとよいです。
また、録音してあとで文字おこしするときなど、指示するものを具体的に言っておくと、楽になります。例えば、冒頭で参加者の名前や会合日時、会合名称などを明示的に発言しておけば、議事録の作成が楽になります。
著作権に配慮しましょう
会議ツールによっては、自分の部屋画像を別の画像に変換するなど、便利な機能を用いることができることがありますが、使用するコンテンツの著作権には配慮しましょう。
海外居住の参加者がいる場合の留意点
時差のあるオンラインミーティングは、参加者の一部が深夜になってしまう可能性が高まります。全員が満足に参加できる日程を組めない場合は、会議の録画を行い後で参照できるようにすることをトライするのが望ましいです。
また、会議日程参加においては、どこの時間の何時なのかを指定するようにしましょう。
リモートワーク導入のガイドライン
リモートワークになると、コミュニケーション方法・タスク管理方法を中心に様々な業務のルールが変わります。ここでは、社内のルール・ワークスタイルに関するガイドラインの整備において参考になりそうな情報をまとめます。
情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン (厚生労働省)
・リモートワーク導入に伴い発生する「労働基準法の適応に関する留意点」「長時間労働対策」「労働安全衛生法適応および留意点」「労災」「テレワーク時の注意点」などが記載されています。労働状況の管理という観点でまとまっており、管理職への指針として有益なものです。
FREE Remote Playbook from the world's largest all-remote company (GitLab)
・GitLabにおけるリモートワークのガイドラインです。こちらの記事(Gigazine)で、概要が解説されています。コミュニケーションルールの設定例など実用的な指針が紹介されています。
在宅勤務アイデア集 (日本テレワーク協会)
・在宅勤務においてよく発生する困りごとと、それに対する解決策の例が多数挙げられています。
サイボウズがテレワークをするまで──テレワークの運用は「信頼関係」が前提(サイボウズ総研:2020/02/25 )
・リモートワークの運用のためのルールの整備の事例が紹介されています。
Zapier's guide to working remotely (Zapier社)
・リモートワークにおける各種ノウハウや困りごと解決の例が網羅的に紹介されていて、記事が充実しています。
リモートワークを支援するツール・環境
リモートワークが増加すると、対面での会話が電話・web会議・チャットなどによって代替されることが多くなります。そのことから、遠隔会議ツールやチャットツールの導入・普及が重要となります。遠隔会議やチャットを支援するツールは様々なものがあります。ここでは代表的なものを紹介しますが組織の規模・目的・コミュニケーション頻度に応じて選択するとよいと考えられます。
遠隔会議ツール
遠隔会議・遠隔コミュニケーションを支援するサービスは下記など多数のものがあります。同時接続数・会議室への設置方法・ID管理の方法などが異なります。利用目的に応じて適切なツールを選ぶのが良いと考えられます。
チャットツール
チャットには、LINE・Skype・Facebook Messangerなど、通話サービスやSNSに付帯して主に1対1または少人数で会話するものや、IRC(Internet Relay Chat)などのようなチャットルームに複数人が入り会話するものがあります。近年は、特定企業に所属する人のみにアクセス可能にするようなセキュリティ要件などを満たしたビジネスチャットサービスが増加しています。代表的なものに以下があります。多機能のものは、タスク管理やファイル共有を兼ねることもあり、組織内の人数やチャットを業務において用いる目的に応じて選ぶのがよいと考えられます。
その他のツール
組織内の各人の所在が分かりづらくなるため、新しいツールの導入や既存のツールの利用ポリシーの変化を必要とすることがあります。例えば、スケジューラに各人の所在を必ず記載するようにする方法や、勤務管理システムにおいて在宅勤務時の入力ルールを決め、オフィスの外での勤務状態を正しく収集することが挙げられます。
リモートワークを行うための環境
リモートワークを行うためには、会社支給のPCを自宅に持ち帰れること(個人所有環境をセキュアに業務活用するBYODツールもあります)、自宅から会社のネットワークに接続できること、自宅にインターネット環境があることなどの環境の整備も重要です。参考:テレワークに必要な「環境」と「範囲」──チェックリストから考える「テレワークの導入」(サイボウズ総研)
また、自宅では業務に集中することが難しい場合や、出先でリモートワークする場合のために、サテライトオフィスを用意する企業が増加しています。サテライトオフィスの活用により、勤務と私生活のメリハリを付けながらも通勤時間を削減する、郊外に居住しやすくなるなどの効果が得られます。参考:サテライトオフィスとは?メリットとデメリット、事例を含め解説(Work×IT)
リモートワーク時代の過ごし方
遠隔共食のススメ:”共食”とは一緒にご飯を食べることです。人は誰かと一緒にご飯を食べることで喜びや楽しさを感じ、孤独感が減少します。外出が自粛されている現在、遠くに住むおじいちゃんおばあちゃんとの共食や、一人暮らしの学生、単身赴任の方など活用してみてはいかがでしょうか。
リモートワークに関する最近の記事
リモートワークの事例集
テレワーク導入事例(総務省)
・リモートワークを導入した企業の事例が多く紹介されています。
リモートワークにおけるワーカーや管理者の心構え
2020/03/03 テレワーク浸透に大切な2つのポイント──活用を阻む意外な「あるある」(サイボウズ総研)
・リモートワーク推進に対する考え方、心構えが紹介されています。
2020/03/06 テレワークにおけるコミュニケーションの「2つの落とし穴」と「10のコツ」 (CNET Japan)
・対面のコミュニケーションに慣れていた人がリモートワークになった時に気を付けることの例が紹介されています。
集合型学習をオンラインなどリモートで行う取り組み
学校教育や学習塾など、多くの学習者が集合する場も自宅学習に切り替わるようになっています。
2020/03/03 全国一斉休校を受け無償提供されたオンラインサービスをまとめてみた (piyolog)
・教育系を中心に、オンラインサービスが紹介されています。
2020/03- 新型コロナ感染症による学校休業対策『#学びを止めない未来の教室』 (未来の教室:経済産業省)
・Edtech事業者を中心に、学校休業に対して支援するサービスが紹介されています。
懇親会・飲み会・パーティなどをリモートで行う取り組み
2020/03/12 オン飲み、宴席自粛で盛り上がってる?のぞいてみました (朝日新聞デジタル)
・飲み会をオンラインで行ったときの感想が紹介されています。
リモートワークに関する研究事例
DICOMO2020から
・活発な遠隔議論の実現を目的とした,自身の動きの拡張により,遠隔者の動きの理解を容易にする手法の提案
山田 篤志, 小林 稔 (明治大学)
・テレワーク環境における日報としての動画の利用可能性
何 臻, 戴 鑫偉 (筑波大学), 山上 俊彦 (株式会社ACCESS), 井上 智雄 (筑波大学)
・(招待講演) ビデオ会議のアウェアネス
敷田 幹文 (高知工科大)
・Asynchronous Multi-Party Video Chat System with Reaction
Ari Nugraha, 井上 智雄, Izhar Wahono, Jianpeng Zhanghe, 原田 倫行 (筑波大)
第110回GN研究発表会から
・VR会議におけるアバターを介したジェスチャー表現の影響
井出将弘, 大島昇時, 森真吾(TIS株式会社), 市野順子(東京都市大学), 田野俊一(電気通信大学)
・ 組織間テレビ会議の円滑な進行を支援する意思表示方式の提案と評価
小松眞子, 澤村三奈, 敷田幹文(高知工科大学)
第113回GN研究発表会から
・オンラインミーティングでの発言障壁を低減するカードによる匿名での意思表示支援手法
杉本 知佳,又吉 康綱,古市 冴佳,中村 聡史(明治大学)
・遠隔会議における相手の顔を変換することによる緊張緩和手法に関する研究
Gong Ziting,金井 秀明(北陸先端大)
国際会議から
・Yamakami, T.: Toward Interactive People Analytics: A New Approach to Leverage Organizational Engagement, KICSS 2019, pp.11-15, Ho-Chi-Minh, Vietnam (2019.11)
博士論文から
・非同期環境における共食コミュニケーション支援システムの研究,野口 康人,筑波大学,2017