九大整数論セミナー

本セミナーは,整数論の研究に関する任意の話題を扱う,九州大学にて不定期に開催されるセミナーです.講演を希望される方は, 下記世話人にお気軽にご連絡ください.


2022年度世話人

岡﨑 勝男 (九州大学大学院数理学府) m-okazakiあmath.kyushu-u.ac.jp

久家 聖二 (九州大学数理学研究院,学術研究員) s-kugaあmath.kyushu-u.ac.jp

隈部 哲 (九州大学大学院マス・フォア・イノベーション連係学府,日本学術振興会DC1) kumabe.satoshi.770あs.kyushu-u.ac.jp

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これからの予定


過去のセミナー

※2022年度

2022年6月6日(月) 15:00-16:00 @場所: ハイブリッド (九州大学ウエスト1号館 6階 C-616 + Zoom online (https://zoom.us/j/94960055299))

  • 講演者:岡﨑 勝男 氏 (九州大学大学院数理学府)

  • タイトル:重み付き高さに関する体のNorthcott数の分布, 及びその幾つかの一般化

  • 概要:高さ函数とは有理点の複雑さを数値化する函数であり, 有限性に関する議論に於いてしばしば重要な役割を果たします. 代数的数に対して定義される絶対Weil高さは, 高さ函数の中でも最も古典的且つ基本的なものです. 一方で, このWeil高さを代数的数の次数で補正した相対Weil高さもしばしば用いられます. Pazuki, Technau, Widmerの3氏は, これ等2つの高さ函数を同時に一般化するものとして, 重み付きWeil高さという新たな高さ函数を定義しました. Northcott数とは, Weil高さが体にもたらす有限性(Northcott性, Bogomolov性)を特徴付ける正の定数であり, 2016年にVidaux, Videlaの両氏によって導入されました. 彼等はその著書の中で「有理数体の代数拡大のノースコット数として実現される正の実数を決定せよ」というとても基本的と思われる問題を提唱しており, これは5年以上に渡り未解決の問題でした. 今回, この問題を先の重み付き高さに一般化した上で解決しましたので, それを報告します. また, この結果の相対的なセッティングへの拡張や, Talamanca氏によって導入された行列の高さ函数への類似に関する結果も幾つか得られているので, 合わせて紹介します. 本発表は, 同志社大学の佐野薫氏との共同研究に基きます.

  • スライド


※2020年度

2021年1月28日(木) 16:00-16:20 @場所; Zoom online (URL: https://zoom.us/j/94960055299)

  • 講演者:松原 和真 氏 (九州大学大学院数理学府)

  • タイトル:Euler素数生成多項式における合成数の生成について

  • 概要:Euler素数生成多項式$f_q(x)=x^2+x+q (q=2,3,5,11,17,41)$は, $x=0,1,/cdots,q-2$のとき素数となる. この事実は虚二次体の類数と関係していることが知られている. そこで$2$以上の任意の整数$q$に対して, $f_q(x)$が表現する合成数の「生成元」という概念を定義し、その生成元の個数と虚二次体の類数との関係について研究を行った. 本講演では, ある特定の条件を満たす$q$に対して, $f_q(x)$が表現する合成数の生成元の個数が虚二次体の類数と一致することを紹介する.


2021年1月28日(木) 16:20-16:40 @場所; Zoom online (URL: https://zoom.us/j/94960055299)

  • 講演者:伊藤 巧 氏 (九州大学大学院数理学府)

  • タイトル:実二次体上における斉次多項式のintegral pointの個数について

  • 概要:$F(x,y)$を整数係数の既約な$3$次以上の斉次多項式, $k$を任意の整数としたとき、$F(x,y)=k$の形の不定方程式はThue方程式と呼ばれ整数解の個数がeffectiveに上から抑えられることが知られている.また虚二次体でも同様のことが成り立つことを児島氏は示した.そこで本講演では実二次体上の$9$次以上のThue方程式に対しintegral pointの個数が上からeffectiveに抑えられることを示す.


※2019年度

2020年1月30日(木) 16:30-17:00 @場所; ウエスト1号館 6階 D-625 (伊都キャンパス)

  • 講演者:栗原 楓 氏 (九州大学大学院数理学府)

  • タイトル:次数2の整数係数エルミートモジュラー形式のなす環の生成系について

  • 概要:フーリエ係数が全て整数であるようなモジュラー形式のなす環は、アイゼンシュタイン級数$e_4$, $e_6$とデルタ関数$\delta$によって生成されることが知られている。またジーゲルモジュラー形式とエルミートモジュラー形式については、菊田によって生成元が決定されている。今回この生成元の個数を最小にすることに成功した。本講演ではその結果について紹介する。


2020年1月30日(木) 16:00-16:30 @場所; ウエスト1号館 6階 D-625 (伊都キャンパス)

  • 講演者:大窪 南美 氏 (九州大学大学院数理学府)

  • タイトル:レベル2のFricke群に対するEisenstein級数から構成されたあるモジュラー形式の零点について

  • 概要:Eisenstein級数の零点分布は1960年代から研究されてきた. モジュラー群$SL_2(\mathbb{Z})$を始めとして, 様々な群に対してEisenstein級数の零点分布が研究されている. 昨年, Jetjaroen Klangwang氏によって, $SL_2(\mathbb{Z})$に対するEisenstein級数から構成されたある重さをもつモジュラー形式の零点がすべて基本領域の円弧上にあることが証明された. そこで本公演では, 十分大きな偶数$k$, $l$に対して, レベル2のFricke群に対するEisenstein級数から構成された重さ$k+l$のモジュラー形式の零点分布について示す.


2019年4月19日(金) 16:00 -17:00 @場所: ウエスト1号館 6階 C-616 中セミナー室 (伊都キャンパス)

  • 講演者: 岡﨑 勝男 氏 (九州大学大学院数理学府)

  • タイトル: Northcottの有限性定理の行列類似について.

  • 概要 : Northcottの有限性定理とは,Weil高さの値と$¥mathbb{Q}$上の次数が共に定数で上から押さえられた代数的数が常に有限個になる事を主張する,代数的整数論に於ける古典的な結果です.Talamanca氏によって、Weil高さの行列類似である$H^{op}$が導入され、また不完全な形で先のNorthcottの有限性定理の$H^{op}$に対する類似が示されました.本講演では、Talamanca氏の証明に若干の付け足しをする事で,先の$H^{op}$に対するNorthcottの有限性定理の完全な類似を得る事が出来たので,それを報告します.

  • 当日配布のノート


※2018年度

2018年8月8日(水) 14:30 -15:30 @場所: ウエスト1号館 5階 C-512 中講義室 (伊都キャンパス)

  • 講演者: 齋藤 耕太 氏(名古屋大学多元数理科学研究科)

  • タイトル: 小湾曲列のグラフ中の等差数列 (Arithmetic progressions in the graphs of slightly curved sequences)

  • 概要 : この講演では,任意の長さの等差数列が誤差の小さい小湾曲列のグラフに含まれることを紹介する。より厳密にいうと,二階導関数が$1/x^\alpha$よりも速い速度で0となるような関数によく近似されるような狭義単調増大の整数列を「誤差の小さい小湾曲列」という。また,添え字と数列の組全体の集合を数列のグラフという。さらに,この研究でSzemer\'ediの定理の小湾曲列への拡張も得ることができた。これの系として,任意の正密度を持つ整数の部分集合$A$と任意の実数$1\le a<2$に対して,数列$\{n^{a}\}_{n\in A}$の整数部分のグラフが任意の長さの等差数列を持つことを示した。2以上の実数aについて,この数列のグラフは長さ3の等差数列も含まないことも明らかにした。以上の結果は吉田裕哉氏(名古屋大学)との共同研究で得られたものである。

  • Abstract : This talk gives that arbitrarily long arithmetic progressions are contained in the graph of a slightly curved sequence with small error. More precisely, a strictly increasing sequence of positive integers is called a slightly curved sequence with small error if the sequence can be well-approximated by a function whose second derivative goes to zero faster than or equal to $1/x^\alpha$ for some $\alpha>0$. Furthermore, we extend Szemer\'edi's theorem to a theorem for slightly curved sequences. As a corollary, it follows that the graph of the sequence of the integer parts of $\{n^{a}\}_{n\in A}$ contains arbitrarily long arithmetic progressions for every $1\le a<2$ and every $A\subset\mathbb{N}$ with positive upper density. We also prove that the same graph does not contain any arithmetic progressions of length $3$ for every $a\ge2$. This is a joint work with Yuuya Yoshida (Nagoya University).


2018年7月13日(金) 16:00 -17:00 @場所: ウエスト1号館 5階 C-512 中講義室 (伊都キャンパス)

  • 講演者: 新庄 慶基 氏 (大分大学工学研究科)

  • タイトル: 原始ヘロン数に関する研究 -原始ピタゴラス数の性質との類似-

  • 概要 : a^2+b^2=c^2を満たす正の整数a,b,cをピタゴラス数という. 三平方の定理から分かるように,a,b,cは直角三角形の3辺を成す. このピタゴラス数a,b,cが2つずつ互いに素であるとき,特に,原始ピタゴラス数という. ピタゴラス数を一般化させた三角形に関する数で,ヘロン数が知られている. 本講演では,まず,原始ピタゴラス数の行列表示・下n桁表示について紹介する. 次に,ヘロン数に関して得られた類似の結果を示す. 最後に,講演者が最も興味を持っている「3辺が連続する原始ヘロン三角形の一般化」に関する予想を提起したい.


2018年4月13日(金) 16:00 -17:00 @場所: ウエスト1号館 5階 C-512 中講義室 (伊都キャンパス)

  • 講演者: 久家 聖二 氏 (九州大学大学院数理学府)

  • タイトル: レベル3のFricke 群上のある弱正則モジュラー形式の零点の位置について

  • 概要 : 素数p、偶数kに対して、レベルpのFricke 群上の重さkの弱正則モジュラー形式の空間には自然な基底を構成することが出来る。 レベル2の場合には、Choi 氏とIm 氏によって、ある条件をみたす自然な基底の零点が、基本領域の円弧上に全て存在することが示された。 本講演では、レベル3の場合にも同様の結果を得ることに成功したので、これを紹介する。



※2017年度

2017年7月28日(金) 16:00 -17:00 @場所: ウエスト1号館 5階 C-512 中講義室 (伊都キャンパス)

  • 講演者: 村原 英樹 氏 (中村学園大学 講師)

  • タイトル: On multiple zeta values and finite multiple zeta values of maximal height

  • Abstract : It is shown independently by K. Aomoto, V. G. Drinfel'd, D. Zagier that the height-one multiple zeta values can be represented by a polynomial of the Riemann zeta values. In addition, an explicit formula for the height-one multiple zeta values was proved by M. Kaneko and M. Sakata. In this talk, we give an alternative proof of their result and its generalization. We also introduce its counterpart for the finite multiple zeta values. This is a joint work with Sakata.

  • 概要 : Aomoto氏,Drinfel'd氏,Zagier氏によって,高さが1の多重ゼータ値はリーマンゼータ値の多項式で書き表せることが示された。 また,高さが1の多重ゼータ値を高さが最大の多重ゼータ値を用いて表す関係式が,金子昌信氏と坂田実加氏によって得られている。今回の発表では,金子昌信氏と坂田実加氏によって得られた定理の別証明と拡張について述べる。また,有限多重ゼータ値おけるその類似物について紹介する。本研究は,坂田実加氏との共同研究である。


2017年6月8日(木) 16:00 -17:00 @場所: ウエスト1号館 5階 C-515 中講義室 (伊都キャンパス)

  • 講演者: 工藤 桃成 氏 (九州大学大学院数理学府 )

  • タイトル: 計算代数幾何学入門 - グレブナー基底とその応用 -

  • 概要: 本講演では, これから本格的に研究に取り組む学部生~大学院1・2年生を主な対象として, 講演者の専門分野である計算代数幾何学(Computational Algebraic Geometry)の紹介を主な目的とする.現代の情報化社会において, 数学ソフトウェアは数学研究・教育のみならず幅広い分野において問題解決のツールとして汎用的になっている. 数学ソフトウェアを利用した問題解決においては, 数学的知見に基づくアルゴリズムの開発・改良・高速化が重要である.アルゴリズムを開発する分野の1つである計算代数幾何学では, 主に代数幾何学における問題を解くための計算手法を研究する(その中には, 連立代数方程式の求解やコホモロジー群の計算などといった, 代数幾何学以外の研究でも有用となる手法が多くある).本講演では, 計算代数幾何学において基本的な道具の1つである「グレブナー基底」とその応用例について概説する. また, 講演者は一昨年~昨年にかけて海外における数学ソフトウェア開発の現場(Magma, Singular)で研究滞在を行ってきた.講演者が研究滞在において学んだこと(アルゴリズムの設計・運用や, 計算機を活用する数学研究など)にも触れる予定であり, 学生がこれから研究を進めるにあたっての参考になれば幸いである. 時間があれば, 講演者(ら)の最近の研究成果についても触れる予定である.



※2016年度

2016年11月8日(火) 16:00 -17:00 @場所: ウエスト1号館 5階 C-501 大講義室 (伊都キャンパス)

  • 講演者: 落合 啓之 氏 (九州大学 マス・フォア・インダストリ研究所)

  • タイトル: 数論との出会い

  • 概要: 私が数論と出会った頃のことを話してほしい、という依頼をセミナーの主催者か ら受けました。なんだかふだんの整数論セミナーとおもむきが違うような気がす るけれど、ま、それも一興と思いました。当日までに、私が数論といつ頃どこで 出会ったのかや、きっかけとなったできごとを思い出して、そんな話をしてみま す。日本語で話します。スライドは使いません。数式もほとんど書きません。


2016年10月27日(木) 16:00 -17:00 @場所: ウエスト1号館 5階 C-512 中講義室 (伊都キャンパス)

  • 講演者: 奥村 伸也 氏 (公益財団法人九州先端科学技術研究所) #プロジェクター使用

  • タイトル: 導手が素数冪の円分体に関する短い生成元の復元問題概説

  • 概要: 近年、イデアル格子を用いた耐量子暗号、完全準同型暗号、 多重線形写像暗号等の次世代型高機能暗号が注目を集めている。 それらの暗号のいくつかは、公開鍵として代数体の単項イデアルの整基底、 秘密鍵として単項イデアルの短い生成元を利用している。 そのため、代数体上の単項イデアル問題と短い生成元の復元問題を 解くことにより短い 生成元(秘密鍵) を復元することができる。 代数体上の単項イデアル問題については、BiasseやSongによって 量子計算機により多項式時間で解けることが示されている。 一方、導手が素数冪の円分体に関する短い生成元の復元問題については、 Cramer, Ducas, Peikert, Regevらや奥村、杉山、安田、高木らにより 解析が行われ、ある仮定の下この問題は実用的な時間で 解くことができることを示唆する結果が得られている。 本講演では、短い生成元の復元問題に関する上記の解析について概説する。 また、いくつかの未解決問題の紹介も行う予定である。


2016年9月1日(木) 16:00 -17:00 @場所: ウエスト1号館 5階 C-512 中講義室 (伊都キャンパス)

  • 講演者: 工藤 桃成 氏(九州大学大学院数理学府) #プロジェクター使用

  • Speaker: Momonari Kudo(Kyushu Uni.)

  • Title: Cryptanalysis of a public key cryptosystem based on Diophantine equations via weighted LLL reduction

  • Abstract: Okumura proposed in 2015 a candidate of post-quantum cryptosystem based on Diophantine equations of degree increasing type (DEC). In this talk, we give a polynomial time attack against DEC. We show that the one-wayness of DEC is reduced to finding special short vectors in some lattices, which means that the security of DEC does not depend on the hardness of the Diophantine problem. The "usual" LLL algorithm does not work well for finding the most important target vector in our attack. The most technical point of our method is to heuristically find a special norm called a weighted norm to find the most important target vector. We call this method "weighted LLL algorithm" in this talk. Our experimental results suggest that the one-wayness of DEC can be broken with sufficiently high probability. This work is a joint work with Jintai Ding, Shinya Okumura, Tsuyoshi Takagi and Chengdong Tao.


2016年7月1日(金) 16:00 -17:00 @場所: ウエスト1号館 5階 C-512 中講義室 (伊都キャンパス)

  • 講演者: 松坂 俊輝 氏(九州大学大学院数理学府)

  • タイトル: Hauptmodulnのフーリエ係数と特異モジュライのトレースについて

  • Title:Fourier coefficients of Hauptmoduln and traces of singular moduli

  • 概要: モジュラー函数論において最も基本的な函数の一つとされる楕円モジュラーj函数は、そのフーリエ係数にモンスター群の対称性を秘めているなど、美しい性質を持つ。 今から約20年前、金子氏によりこのフーリエ係数がj函数の特異モジュライのトレースによって表示できることが証明され、 その後、大田氏、長内氏により他のHauptmodulnへの拡張が試みられた。 今回、我々はレベル5までのHauptmodulnについてフーリエ係数の明示公式を得ることに成功した。また昨年Murty、Sampath両氏により金子氏の結果が応用されたが、 同様の方法でHauptmodulnのフーリエ係数の漸近挙動について結果を得たので紹介する。


2016年5月27日(金) 16:00 -17:00 @場所: ウエスト1号館 5階 C-512 中講義室 (伊都キャンパス)

  • 講演者: 森園 明範 氏(九州大学大学院数理学府)

  • タイトル: 体上の多項式環におけるオイラー素数の類似

  • 概要: 有理整数環におけるオイラー素数は, ある特殊な性質をみたす素数として定義され, その構成には有理整数環の商体である有理数体の二次拡大の類数が関係している. 有理整数環と類似した代数構造を持つ例として, 体上で定義された 1 変数多項式環がある. 多項式環においても, その商体である有理関数体の二次拡大の類数を考えることができる. そこで, 体上の多項式環においても, 有理関数体の二次拡大を調べることで, オイラー素数に類似する多項式を構成できるのではないかと考えた. 本講演では, 体上で定義された多項式環において, オイラー素数に類似する特殊な多項式の定式化と具体例を与える.