※第30回日本プロ音楽録音賞は「一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(SARTRAS)」の共通目的基金の助成を受け運営しています。
日本プロ音楽録音賞は音楽文化と産業の発展の一翼を担う録音エンジニアが制作し応募した音楽録音作品について、エンジニアが有する音楽に対する感性、技術力等を評価することにより、授賞対象優秀作品および最優秀作品並びにベストパフォーマー賞を選定し、これに携わり制作を担ったエンジニアおよびベストパフォーマーのアーティストを顕彰することでエンジニアの技術の向上と次世代エンジニアの発掘を図ることを目的とし、表彰を行うものです。
「第30回 日本プロ音楽録音賞」は、応募いただきました全123作品の中から審査委員会の厳正なる審査を経て各顕彰区分の優秀作品およびベストパフォーマー賞を選定し、12月6日(金)に『音の日2024』イベントの一つとしてKANDA SQUARE HALLにて開催した授賞式において、受賞者の顕彰および各部門最優秀作品の発表をいたしました。
ここにその受賞作品およびエンジニアをご紹介いたします。
【審査日および本審査会場】
Best Master Sound部門 2024年10月30日、11月2~4日 ソニー・ミュージックスタジオ 4st
アナログディスク部門 2024年10月24日 ビクタースタジオ 202st
Immersive部門 2024年10月22、25日 サウンド・シティ tutumu
放送部門 2024年11月10日 NHK放送センター CD-520st
【 受賞作品&エンジニア紹介 】
※作品&エンジニア紹介画像をクリックするとプロフィール・受賞感想がご覧いただけます。(※授賞式後の受賞感想につきましては随時更新いたします。)
Best Master Sound部門 クラシック、ジャズ、フュージョン 応募作品30作品
ミキシング・エンジニア:塩澤 利安 日本コロムビア(株)
《プロフィール》
クラシック、ジャズの録音に深い興味を持つ。アーティストそれぞれの「魅力」と「感動」が伝えられる作品創りを心掛けている。
スタジオ録音とホール録音の両立、そしてソロから大編成、ステレオからイマーシブオーディオ、PCM録音、DSD録音など、あらゆる録音を究めたいと努力の日々である。
過去に於いて多数作品の本賞を受賞。
《受賞の感想》
この度は名誉ある賞に選定して頂き大変光栄に思います。常に多くの目標を持って様々なレコーディングに臨んでいますが、「日本プロ音楽録音賞受賞」も私の目標の中の一つです。目標を一つ達成出来たことに心から喜びを感じております。
今回受賞した作品は、2022年9月に開催した熱気に満ちたコンサートのライブ録音です。首席指揮者アンドレア・バッティストーニ氏と東京フィルハーモニー交響楽団の名コンビによる演奏を作品として届けることができました。
録音はBunkamuraオーチャードホールによるものです。マーラーの代表曲のひとつとして最も人気のある交響曲は、複雑なスコアの隅々にメロディ、対旋律、その他が同時に奏でられる全ての声部に活き活きとした命が吹き込まれて、多様な物語が強い説得力を持って迫ってきます。
そんなエネルギーに満ちた音楽は会場に鳴り響き、私は全てを余すことなく捉えることに集中しました。マイクセッティングに関しては特別なことは行っておりません。ミックスに関しましては、複雑なスコアの内容が音として全て見える様に心掛けました。
この作品創りに於いてコンサートよりももっと深い感動を音だけで表現することができるか、直感的な印象も大切にしながらベストなサウンドを目指しました。何かを感じ取って頂ける作品となったのではないでしょうか。
最後になりますが、素晴らしい演奏を創り上げた皆様、制作に携わった全ての方々に心から感謝いたします。ありがとうございました。
マスタリング・エンジニア :佐藤 洋 日本コロムビア(株)
《プロフィール》
1990年スタジオ業務に携わる。1993年マスタリング・エンジニアとなり現在に至る。
アシスタント・エンジニア :久志本 恵里 日本コロムビア(株)
《プロフィール》
音響芸術専門学校卒業後日本コロムビア株式会社にてアシスタント・エンジニア業務に携わる。様々な生楽器の録音現場を経験する。
塩澤 利安
ミキシング・エンジニア :今関 邦裕 (株)サウンド・シティ
《プロフィール》
2003年 クレッセントスタジオ入社。
2014年 フリーランスエンジニアとして独立。
2012年 第19回JAPRS日本プロ音楽録音賞 新人賞受賞。
2014年 第21回JAPRS日本プロ音楽録音賞 Jazz/Fusion部門 最優秀賞受賞
2019年 第26回JAPRS日本プロ音楽録音賞 Classic/jazz/Fusion部門 優秀賞受賞
舞台・映画・ドラマ・ゲームの劇伴からJ-Pops・Rock・Jazzまで生録音を中心にオールジャンルで活動中。
《受賞の感想》
この度はBest Master Sound部門 優秀賞に選定いただきありがとうございます。
今作はスクウェア(現スクウェア・エニックス)が1997年にSonyのゲーム機 初代プレイスーション用ソフトで発売した『Final Fantasy 7』(以下略 FF7)のリメイク作品で、現代の技術で完全リメイクされた全3部作の2部作目『Final Fantasy 7 Rebirth』(以下略 FF7R) の物語の途中で現れるボス曲になります。
2部作目にも関わらず、このFF7Rだけでも400曲を超える曲数に上ります。
私が担当したのは作曲家の島翔太朗さん担当分で、作品のメインどころを担っており、それだけでも100曲を超える楽曲になりました。
ボス戦の戦闘曲は、プレイヤーが敵に一定数ダメージを与えるとパワーアップし更に強くなり、段階的にその都度曲のアレンジが変化していくのですが、変化と共に派手にしていければいいのですが初めて対峙するボスとのインパクトを印象付けるために1段階目からフルスロットルのアレンジが来ます。
変化するとテンポが上がり緊張感を高めアレンジも更に派手になって行く訳ですが、200trを超える音数とオケ構成だとスペースが奪われ飽和して行きがちになるのをコントロールするのが大変難しく、最終段階に向けて初段を控えめには出来ないのでトータルのEQの処理で段々とわざと耳障りにしていく様施したりリミッティングの処理を変化させたりと一筋縄では行かない事に毎回チャレンジしております。
世界中のファンから高い評価をいただいており、この作品に携われた事に心より感謝申し上げたく思います。
マスタリング・エンジニア:小泉 由香 (有)オレンジ
今関 邦裕
Best Sound部門 ポップス、歌謡曲 応募作品36作品
マスタリング・エンジニア :酒井 秀和 (株)ソニー・ミュージックソリューションズ
《プロフィール》
1995年、ソニー・ミュージック信濃町スタジオにてマスタリングキャリアスタート。
2003年よりソニー・ミュージック乃木坂スタジオにマスタリングエンジニアとして所属、現在に至る。
《受賞の感想》
この度は、第30回日本プロ音楽録音賞、Best Master Sound部門「ポップス、歌謡曲」にて、最優秀賞にご選定いただき、心より感謝申し上げます。
今回担当した受賞曲「Sweetest Tune」はリズムとメロディがバランス良く調和し、ダンスミュージックが持つグルーヴ感をしっかりと感じられる楽曲です。
それぞれの音の立ち上がりが絶妙で、軽快に曲が展開していきます。シルキーな高域と厚みのある低域が心地よい音像を作り出しています。
サウンドの方向性はミックス段階で既に明確に表現されており、特にリズムの組み立てが素晴らしく、中高域と低域の関係性がしっかりと整理されています。
また、歌を中心に各音が分離良く定位し、広い音像を持って楽曲のアンサンブルが非常に良く伝わってきます。
マスタリングではミックスのバランスを踏襲しながら、音の動きがより鮮明に感じられるようにEQを施し、配信時のラウドネス値を考慮してダイナミクスを調整しています。
この楽曲の素晴らしさをエンジニアリングで十分に表現でき、その成果を評価していただけたことを心より嬉しく思っております。
日々、さまざまなリスニング環境で再生される事を考えながら音のバランスを調整していますが、どんな場所や機器でも楽曲の良さがしっかり伝わるような音作りを目指して、これからも努力していきたいと思います。
今回この様な栄誉ある賞を頂き、レコーディング・エンジニアの松橋さんをはじめ、これまでに関わってくださったすべての方々に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。
ミキシング・エンジニア:松橋 秀幸 (株)バーディハウス
《プロフィール》
2002年、IRc2STUDIOSにてレコーディングエンジニアのキャリアスタート。
2007年より株式会社バーディハウス(文化村スタジオ/ABSRecording)に所属。
2014年よりフリーランス、現在に至る。
アシスタント・エンジニア:大島 丈明 (株)プラネット・キングダム
《プロフィール》
2022年、株式会社プラネット・キングダムにてレコーディングエンジニアのキャリアスタート、現在に至る。
酒井 秀和
ミキシング・エンジニア :安達 義規 (株)ミキサーズラボ
《プロフィール》
2001年ミキサーズラボ入社。WESTSIDE STUDIO勤務。数々のレコーディングのアシスタント~エンジニアの経験を経て、2007年よりマネージメント契約。2019年よりミキサーズラボ外部取締役。
《受賞の感想》
この度は第30回日本プロ音楽録音賞 Best Master Sound部門「ポップス、歌謡曲」にて、優秀賞に選定して頂き大変光栄に思います。
I Don't Like Mondays.とはデビューの頃から音へのこだわりを常に意識して一緒にやってきました。
彼らは4人組のバンドですが、打ち込みにもとても精通しており今までもさまざまなジャンルのサウンドに挑戦してきました。
今回の作品はデビュー10周年の節目の年に、原点回帰ということでバンドスタイルにこだわって制作した一曲です。
意識して目指したのは聴いていて心地の良いサウンドです。
何度聴いても疲れない柔らかいサウンドを基本軸にしながら今の時代にあったLow感やM/Sを意識しました。
ドラムとベースのグルーブ感、ギターのエフェクトなど後処理に頼らず音作りの段階から時間をかけてサウンドメイキングをして、ナチュラルなグルーブ感が出るまでこだわって録りました。
山崎さんの素晴らしいマスタリングのおかげもあり、メンバー、スタッフ共にとても満足のいく作品ができたと話しておりましたので、このような賞を実際にいただけてとても励みになりました。
このような素晴らしい機会を与えて下さった、メンバースタッフの皆様に改めて心より感謝申し上げます。
マスタリング・エンジニア :山崎 翼 Flugel Mastering
《プロフィール》
経専音楽放送芸術専門学校卒業後、バーニーグランドマンマスタリングに勤務。
2020年より独立後、Flugel Masteringを設立。現在に至る。
アシスタント・エンジニア :吉見 潮音 (株)ミキサーズラボ
《プロフィール》
2022年ミキサーズラボ入社。LAB recorders勤務。
安達 義規
Immersive部門 応募作品20作品
ミキシング・エンジニア :鈴木 浩二 (株)ソニー・ミュージックソリューションズ
《プロフィール》
1985年にソニーミュージックグループ入社。ソニー・ミュージックスタジオにてエンジニアとしてキャリアをスタート。クラシック・ジャズを中心に、J-POPまで幅広いジャンルで、レコーディング、ミキシング、マスタリングを手がける。
《受賞の感想》
この度Immersive部門 最優秀録音賞を頂き、大変嬉しく光栄に思います。
本作品は、360 Reality Audioを用いてクラシック楽曲をいかに立体化できるか、音楽表現としての立体音響の可能性を探る、制作者、奏者、作曲家、そしてエンジニアの共働による実験的挑戦が実を結んだ作品です。
2台のピアノのための楽曲に対し立体設計図を作成、収録では音楽ホールの空間を捉える上下前後のマイクと、ピアノに近接したオンマイクとのバランスをとる形でのセッティングになりました。
その上で、楽曲を分解してパーツやフレーズごとに演奏してもらい多重録音をし、ミックスで再構築していきました。通常の自然な演奏のように組み立てるために細かなディレクションが入りました。
ミックスでは、物理的なホール空間の再現だけではなく、音楽自体を立体に組み上げていくことを考えて360RA WalkMixのパレットに広げていきました。苦労した点は、フレーズ毎に響きを含めた20トラック以上があり、多点の同時定位のみならず、パーツを複数同時に動かしたことです。
聴き手を空間ではなく音楽の中に没入させる新しい立体感への挑戦でした。
アルバムに収録した3曲は、音楽表現に即した立体空間のサイズ感、音像の大きさに試行錯誤を重ね、それぞれに立体サウンドの趣向を変えています。ぜひお聴ききいただけたら幸いです。
レコーディング・アシスタント・エンジニア :房野 哲士 (株)ソニー・ミュージックソリューションズ
《プロフィール》
中学生の頃ベートーヴェンの第九の4楽章の低弦部がラジカセで聴こえなかったことからオーディオに興味を持ち、高校生の頃に行ったオーディオショーで音のリアルさに衝撃を受け、これを録音している人がいることに気付きレコーディングの道を志す。
音楽大学にてレコーディングを学んだ後、2014年にソニー・ミュージックスタジオに入社。ポップスに限らず、クラシックやジャズ、劇伴も手がける。
鈴木 浩二
ミキシング・エンジニア:甲斐 俊郎 (株) ARLT
《プロフィール》
1997年Sony Music入社。Sony信濃町スタジオy〜Sony Music Studios Tokyoに所属。2011年にARLTを設立。これまでに、いきものがかり、スキマスイッチ、古内東子、YUKI、中島美嘉、Moumoon、川崎鷹也、菅田将暉などの諸作に参加。
《受賞の感想》
この度は、2024年日本プロ音楽録音賞Immersive部門において優秀賞をいただき、ありがとうございます。
今回のプロジェクトに携わることができたのは、素晴らしいアーティストやミュージシャン、そして制作チーム皆様のおかげです。心より感謝申し上げます。
特にアーティストのビジョンをミックスダウン時に音として具現化する過程で、スキマスイッチのお二人に多くのインスピレーションを頂きました。
360 Reality Audioという私にも、アーティストにも初めてのフォーマットでありましたが、試行錯誤しながら感性を頼りに作ったものが評価をいただけたことは大変嬉しいことでした。
今後も精進して参ります、引き続きご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。
セカンド・エンジニア :米山 雄大 (株)ソニー・ミュージックソリューションズ
《プロフィール》
2004年株式会社ミキサーズラボに入社し、ON AIR麻布スタジオでアシスタントとして勤務、2008年株式会社ミキサーズラボを退社し、株式会社ソニー・ミュージックコミュニケーションズに入社。レコーディング・エンジニアとして多くにセッションに携わっている。
甲斐 俊郎
アナログディスク部門 応募作品14作品
カッティング・エンジニア:北村 勝敏 (株)ミキサーズラボ
《プロフィール》
1977年 日本電子専門学校 放送工学部 放送技術科卒
1977年 ポリグラムRS 入社
1984年 日本ビクター 入社
2017年 ミキサーズラボ エンジニア契約
《受賞の感想》
この度は第30回日本プロ音楽録音賞、アナログディスク部門で誉高き賞を頂き、大変嬉しく思っております。このような機会に恵まれるたびに素晴らしい音源に携われたことと有能なスタッフ、メンテナンスの行き届いたマシンに感謝の念が絶えません。
今回のビッグ・バンドの音源は初のアナログ・テープでハーフ・インチ、76cm/s という闘志を掻き立てられる仕様です。ダイナミック・レンジが広く、高音域から低音域まで周波数レンジの広いこの音をカッティングするだけでなく、最も重要なことはレコード盤になった後、ピック・アップでトレースできる音溝にしなくてはなりません。応募作品の「小さな花」はレコード盤面3曲入りの3曲目で、レコード盤の特製条件は不利です。R-chにはミュート・トランペット、L-chにはハイ・ハットという定位で、どちらも高音域成分がたっぷり含まれた音源です。艶やかなクラリネットの音色を再現するためにも高音域成分を崩壊させるわけにはいきません。今回はイコライザー補正も行わず、カッティング・マシンの微調整を繰り返してカッティングしました。一方で豊かな拡がりがある低音域もレコード盤に於いては音溝切れや接触を起こす要因です。基本音溝幅の設定や音溝のピッチ調整もカッティング・マシンのヴァリアブル・ピッチ機能に頼り切ること無く、リアル・タイムで微調整を行いながらカッティングいたしました。
ミキシング・エンジニア :内沼 映二 (株)ミキサーズラボ
《プロフィール》
「テイチク」、「ビクター」、「RVC」録音部を経て、1979年(株)ミキサーズラボを設立。
現在(株)ミキサーズラボ会長。
北村 勝敏
ミキシング・エンジニア :深田 晃 (株)dream window
《プロフィール》
CBS/SONY録音部チーフエンジニア、NHK放送技術制作技術センター番組制作技術部チーフエンジニアを歴任、dream window inc.を設立。CD及びTV番組制作のバランスエンジニア、オーディオディレクターとしてまた劇場やコンサート会場の空間音響デザイナーとしての活動を行っている。AES Fellow、英国IPS Member、レコーディングアカデミー(グラミー)会員
《受賞の感想》
作品にたいして御評価いただきありがとうございます。
故小澤征爾氏との長年の交流の結果。30年ぶりに来日したJohn Williams氏が指揮したサイトウ・キネン・オーケストラの力のこもった演奏をレコードに収めることが出来、またドイツ・グラモフォンとの仕事ができた事を光栄に思っています。この仕事のチャンスを頂いた皆様に改めてお礼申し上げます。このレコードはドイツ・グラモフォン125周年のガラ・コンサートの一つとして計画されました。コンサートでは作曲家・演奏家。観客が一体となりとても熱い音楽が生まれていました。
John Williams氏とオーケストラの共演は今までウィーンフィル、ベルリンフィルなどで行われています。日本のサイトウ・キネン・オーケストラの演奏はそれらと比べても演奏自体を楽しみ、作曲家に対する敬意を感じられる素晴らしい演奏でした。
サントリーホールでの演奏会の数日前に松本で行われている、セイジオザワ松本フェスティバルでも同じプログラムが演奏されており、Johnとオーケストラの信頼関係はすでに構築されていました。サントリーホールでのリハーサルもほとんどない中、集中して演奏できたのはその成果ではないかと思います。
その熱い演奏をレコードで楽しんでいただければ幸いです。
カッティング・エンジニア:手塚 和巳 東洋化成(株)
《プロフィール》
1969年03月 川崎市内の高校を卒業
1969年04月 東洋化成株式入社 現在に至る
深田 晃
カッティング・スタジオ賞
スタジオ賞
ニュー・プロミネント賞
ミキシングエンジニア :久志本 恵里 日本コロムビア(株)
《プロフィール》
音響芸術専門学校卒業後日本コロムビア株式会社にてアシスタント・エンジニア業務に携わる。様々な生楽器の録音現場を経験する。
《受賞の感想》
この度は第30回日本プロ音楽録音賞ニュープロミネント賞に選定していただき、大変光栄に感じております。
私は学生の頃より生楽器の録音に高い関心をもち、特にホールでの収録ができるようになることを志して日本コロムビアでお仕事をさせていただくようになり、経験ゼロからこれまでホールにおいてもスタジオにおいても、アシスタントから見学、お手伝いまで、経験のためと多くの現場に入れていただきました。
社内だけでなく社外の方も含め周りの方々から寛大にもそれを受け入れていただき、温かく声をかけてくださったり、時に厳しい声もいただいたり、様々な面で助けていただくことがなければお仕事を続けてこのような賞をいただくことは叶わなかったと思います。これまで見守ってくださった皆様へ心より感謝申し上げます。
この作品は高崎芸術劇場の音楽ホールでの収録で、何度か伺ったことがあるので響きの美しさもよく存じておりましたが、カウンターテナーの上村さんにお会いしてホール内でリハーサルを聴かせていただいた時に歌声の美しさとホールの響きがとてもよくマッチしていると感じたことが強く印象に残っていて、自分のふれたこの感動をたくさんの人に届けたいという一心でつくりました。
その作品でこのように形に残る評価をいただけたことは私にとって大変励みとなります。今後も研鑽を積み、よりよい作品づくりをもって音楽制作に貢献できるよう努めてまいります。
久志本恵里
ミキシングエンジニア :田宮 空 (株)ミキサーズラボ
《プロフィール》
2014年 札幌ビジュアルアーツ 音響エンジニア科 卒業
2014年 ミキサーズラボ入社
2021年 フリーランスとしてミキサーズラボ所属
《受賞の感想》
この度は、このような素晴らしい賞をいただき大変光栄に存じます。
本作品はデモ音源から素晴らしく、インパクトの強い楽曲で、Rec前から妄想が膨らんでMixに向けて終始ワクワクしていました。
作曲した竹内 聖さんの奇抜かつ秀逸なアレンジとトラッキング、圧倒的な歌唱力・表現力をもつCenaさんが書く独特な世界観の歌詞。
Mixは大胆に世界観を作りながらも、一文字ごとにEQをしたり隅々まで細かい調整を施しました。
全体的に意識したことは”ストリーミング映え”です。
マスタリングはダイナミクス(流れ)を重視する為、できるだけレベルを最小限でお願いしました。
山崎さんのマスタリングがとにかく素晴らしく、小さめながら聴感上は聴き劣りせず、Mix的にも1段階良くなったような感覚でした。
改めて一人一人が最高の役割を果たしてバトンをつなぐ事の重要性を再認識できました。
なにより、本作品にお声かけいただいたディレクター近藤さんにはとても感謝しています。
数年前に一度だけお仕事をしたことがあったのですが、ひょんなことから偶然再会してその流れでこの曲のMixをさせていただくことになりました。
そしてこの素晴らしい楽曲に出会い、栄誉ある賞までいただくことができてまさに奇跡の連続です。
これを励みに今後もエンジニアリングに尽力し、より多くの素晴らしい瞬間に出会えるように勉強してまいります。
この度は本当にありがとうございました。
田宮 空
放送部門 2chステレオ 応募作品17作品
ミキシングエンジニア :田中 聖二 (株)毎日放送
《プロフィール》
2000年 九州芸術工科大学大学院芸術情報伝達修士課程終了
2000年 株式会社毎日放送入社
2009年 第16回日本プロ音楽録音賞放送部門優秀賞受賞
2015年 第22回日本プロ音楽録音賞放送部門最優秀賞受賞
2021年 第25回JPPA AWARDS 音響技術部門 審査員奨励賞受賞
2021年 第74回MPTE AWARDS 映像技術賞音声部門受章
2023年 第29回日本プロ音楽録音賞放送部門優秀賞受賞
2024年 2024年日本民間放送連盟賞 技術部門優秀賞受賞
現在、毎日放送総合技術局制作技術センター音声担当
《受賞の感想》
栄誉ある賞をいただき、エンジニアとして大きな喜びを感じています。
本作品の収録は、世界遺産・東寺という特別な場所で行われました。歴史的建造物での収録には音量制限があり、MIYAVIさんのギターを中心とした独自のサウンドをいかに表現するかが大きな課題でした。ドラムプレーヤーは通常のドラムセットの代わりにカホン、小型のスネア、小型シンバル、ブラシを使用。またベース演奏者無しという編成でしたが、ギターとリズム隊の持ち味を引き出せるよう、丁寧な音作りを心がけました。
MIYAVIさんのギターは、ギター/ベース両アンプを通して作られた豊かな音色で、特に低域では、カホンとギターの低音を絶妙にバランスさせ、ベースレスでありながら厚みのあるサウンドを目指しました。また英語詞のヴォーカルは楽器の一部として捉え、グルーヴ感を大切にしたミキシングを心がけ、バンドサウンド全体の一体感を追求しました。
東寺という場所ならではの空気感と、MIYAVIさんの音楽性との調和を大切にしました。様々な制約はありましたが、それらを活かした音作りを追求しました。結果として、伝統的な空間と現代音楽が溶け合う音響空間が作れたように思います。この経験は、エンジニアとして貴重な学びとなりました。
音楽はチームワークの産物であり、共に歩んでくださったすべての方々に心から感謝申し上げます。これからもより一層精進し、音楽の世界に貢献していけるよう、さらなる挑戦に挑んでいきたいと思います。
収録エンジニア:石田 良馬 (株)毎日放送
《プロフィール》
2015年 神戸大学大学院工学研究科電気電子工学専攻修了
2015年 株式会社毎日放送入社 ポスプロ担当として編集業務に従事
2020年 音声担当 バラエティ・スポーツ含め多くの番組に関わる
2024年~現在 DX推進部 社内インフラシステムの保守管理を担当
フロア・チーフ :東 光信 (株)サウンドエースプロダクション
《プロフィール》
1998 年 大阪スクールオブミュージック商業音楽科 PAコース卒業
1998 年〜2016 年PA会社2社で従事、内3年間東京で勤務
2023 年 日本プロ音楽録音賞放送部門優秀賞受賞
現在 株式会社サウンドエースプロダクション
田中 聖二
ミキシング・エンジニア :垣内 章宏 日本放送協会
《プロフィール》
2009年NHK入局。様々な番組でミキサーを担当。現在は「うたコン」「SONGS」などの音楽番組や、ドラマの劇伴を担当。
《受賞の感想》
この度はこのような栄誉ある賞を頂き、大変光栄に思います。
音楽で日本にエールを送る「ライブ・エール」という番組から、松任谷由実さんのacasia[アカシア]を応募させていただきました。この楽曲は、松任谷さんが石川県河北郡内灘町に群生するアカシアの美しい花に感動して書かれたものだそうです。番組では、今と未来、形が変わってしまっても大切な想いは変わらない、そういった松任谷さんの能登への想いが語られています。
録音は、松任谷さんの歌とミュージシャンの方々の演奏のダイナミクスを丁寧に捉えるよう心がけました。多くの木をあしらったセットに光が差し込み、少し幻想的なイメージで創られた映像と、その中で歌う松任谷さんの歌声に意識がいくように、歌のエフェクトはあえてオケからほんの少しだけ浮かせるようなアプローチをとりました。松任谷さんの歌声を通じて、能登への想いが多くの視聴者の皆さまに届けられ、優しさのあるシーンに仕上げることができたと思います。
「ライブ・エール」には他にもたくさんの素晴らしい楽曲があり、番組音声チーフとして視聴者の皆さまに届ける役割を担うことができました。これからもいただいた賞を励みに精進し、出演者のパフォーマンスや想いをしっかり届けられるようなミキシング・エンジニアを目指したいと思います。この度は誠にありがとうございました。
セカンド・エンジニア :遠藤 美紀 日本放送協会
《プロフィール》
2017年NHK入局。秋田放送局、メディア技術コンテンツテクノロジーセンターを経て、現在は富山放送局に所属。「紅白歌合戦」など音楽番組のフロア業務、クラシック番組のMIXを担当。
セカンド・エンジニア :高橋 義洋 (株)ネオテック
《プロフィール》
2003年 音響技術専門学校卒業
2005年 (株)ネオテック入社
主にNHK番組の音楽録音に従事
現在に至る
垣内 章宏
放送部門 マルチchサラウンド 応募作品6作品
ミキシング・エンジニア :萩原 路子 日本放送協会
《プロフィール》
2009年4月 NHK入局、大阪放送局配属。2012年より放送技術局制作技術部(現メディア技術局コンテンツテクノロジーセンター)所属。2021年より「クラシック音楽館」などの番組制作においてミキサーを担当している。
《受賞の感想》
プロ音楽録音賞は、これまで尊敬する先輩方が受賞され、いつかは私もと目標にしておりましたので、今回受賞できたことを大変嬉しく光栄に思います。
歌劇「ばらの騎士」はドイツオペラの大作で、3月に行われたびわ湖ホールプロデュースによる公演を収録しました。上演時間は約3時間半。バンダによる演奏も多く、オペラ全幕の収録を初担当するには少し難易度が高く思えましたが、関係する皆様のご協力のもと無事に収録を終えることができました。
トラックダウンでは、オペラに造詣の深いプロデューサーの浅利洋氏と音作りの方向性を共有し、臨場感がありながらもR.シュトラウスのオーケストレーションの魅力を生かす鮮やかな音色を目指し、各場面で特徴となる楽器の印象付けや、歌の響きと言葉の明瞭度に留意しながらダウンミックスとの整合も取れるようミキシングしました。アシスタント・エンジニアの中野氏、岩井氏にも客席の咳等のノイズ除去にご尽力いただき、完成した音声データを納品できた時の達成感がとても大きかったことを覚えています。
最後に、ご指導頂いた先輩や同僚の皆様に感謝を申し上げますとともに、今後も研鑽を積み、番組を通じて視聴者の皆様に素晴らしい演奏を楽しんで頂けるよう励んでまいります。
セカンド・エンジニア :植松 俊子 日本放送協会
《プロフィール》
1988年4月 NHK入局、制作技術局番組技術部配属。1998年福岡放送局、2008年名古屋放送局、2014年NHKメディアテクノロジー出向等を経て、2017年より放送技術局制作技術センター(現メディア技術局コンテンツテクノロジーセンター)所属。
アシスタント・エンジニア :桐原 麻美 日本放送協会
《プロフィール》
2018年4月 NHK入局、放送技術局番組制作技術部配属。2020年長崎放送局技術部(現コンテンツセンター)、2023年よりメディア技術局コンテンツテクノロジーセンター所属。
萩原 路子
ミキシング・エンジニア :島㟢 砂生 日本放送協会
《プロフィール》
1992年4月 NHK入局 仙台放送局配属 1996年放送技術局 2015年大阪放送局 2019年より放送技術局制作技術センター(現メディア技術局コンテンツテクノロジーセンター)所属
《受賞の感想》
この度は名誉ある賞をいただき、誠にありがとうございます。
本作品は2023年11月、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団と首席指揮者キリルペトレンコによる来日公演をサントリーホールにて収録しました。NHKのオーケストラ収録では、ダイレクトミキシングで制作することが多いのですが、今回の収録素材はベルリン・フィルの会員制配信サービス、デジタル・コンサートホールにて配信されるということもあり、マルチトラック素材からミックスダウンし作成しました。ライブならではの雰囲気を保ちながら、各楽器のバランスを整えるように心がけました。キリル・ペトレンコ&ベルリン・フィルの奏でる重厚かつ力強いブラームスの響きを視聴者に届けられればと思っております。
このような機会を与えてくださった関係各所の方々に感謝申し上げます。
セカンド・エンジニア :萩原 路子 日本放送協会
《プロフィール》
2009年4月 NHK入局、大阪放送局配属。2012年より放送技術局制作技術部(現メディア技術局コンテンツテクノロジーセンター)所属
島㟢 砂生
ベストパフォーマー賞 受賞アーティスト「角田健一ビッグバンド」
角田健一ビッグバンド
「BIGBAND SUPREME」より「シボネー」
発売元:株式会社ワーナーミュージック・ジャパン
《プロフィール》
1990年「ビッグバンドよ永遠に!」をモットーに結成。デビット・サンボーン、シカゴ、シャーリー・バッシーなどと共演。CDは14枚、その内3枚は米国シーブリーズレコード社より全米リリースされている。2007年の定期公演「もうひとつの武満徹」は平成19年度文化庁芸術祭の優秀賞を受賞した。
2020年、無観客で開催した公演「角田健一ビッグバンド結成30周年無観客ライブat紀尾井ホール」はYouTubeで配信されて,世界中のビッグバンドファンにご好評頂いている。
《受賞の感想》
今回、日本プロ音楽録音賞のベスト・パフォーマー賞を頂きました事はとても嬉しく、また大変誇りに思います。プロデューサーの内沼さんはじめ,関係者の皆様に心からお礼を申し上げます。
角田健一ビッグバンドは結成から34年を迎えましたが,時代の流れと共に,ビッグバンドの需要も減り,活動も大変ですが,「ビッグバンドよ永遠に!」をモットーに「スイングからラテンまで!」と題した公演を年に2回,東京の紀尾井ホールで続けております。
今回受賞した「シボネー」はキューバの作曲家のエルネスト・レクオーナが1929年発表したラテンの名曲で,アルバム「BIGBAND SUPREME」に収録されています。
このアルバムは全10曲で,「A列車で行こう」などスイングが8曲,それに「シボネー」他のラテンが2曲です。
ところで今回の「シボネー」の録音で心掛けた事ですが,マイナー調のテーマとメジャー調のサビが交互に出てくる事がこの曲の特徴だと思い,この特徴を最大限活かして表情豊かに演奏する事が大切と考えました。またコンガやラテンパーカッション,リズムセクションと管楽器セクションの絡みもスムーズに流れる事が大事と感じました。
大人数のビッグバンドは高音域のトランペット,高音域のサックス,そして低音域のトロンボーンまで,全ての音域を網羅しています。どうぞ多くの方に大編成のビッグバンドサウンドの醍醐味を体感して頂ける事を願っています。
最後になりますが演奏をしてくれたメンバー,関係者の皆様に心からお礼を申し上げます。