ここは、小説本編では書ききれなかった裏話やちょっとした設定などを色々と書き散らしているページです。物語の余白についての考察も含まれます。
私:日記を書いた人物の孫。年齢も性別も不明。一人で祖父の遺品整理をできる程度の年齢なので、ある程度自立している前提ではあります。
祖父:日記を書いた人物。数年前に妻を亡くし、忘れ形見のマホイップと共に喫茶店を続けていた。
ジムリーダー:メロンさん、マクワさん、どちらでも読めるように書いたつもりなので、お好みの方で解釈してください。
ジムトレーナー:性別も人数も不明なのでお好みで解釈してください。
ほいちゃん:亡き「祖母」の相棒だったポケモン。大人になって喫茶店を始めてからこの家に来た。
レオン:実質この小説の主人公。
書き始めたときは「ある喫茶店の老店主の日記」というタイトルで、日記の部分だけ書いて「置き去りにされた卵から産まれたメッソンが素敵なおじいちゃんに拾われて幸せに過ごす物語」にしようと思っていたのですが、それだとオチがなくなって延々幸せな描写が続いてしまうので、適当な長さで切り上げるために急遽別の街から"私"を召喚しました。他人の日記を読む機会があるとすれば、日記の主が亡くなった時だろうと思ったので、「祖父が死んだ。」で始まる小説になってしまいました。
当初の構想では、卵は3つあって、御三家が1匹ずつ生まれて、里親を募集するもメッソンだけ引き取り手が無くて……という展開にするつもりでしたが、冗長になるかな、と思ってやめました。引き取り手のいなかったメッソンが、少なくとも彼自信の主観では誰よりも幸せになる物語を書こうとしてました。
この話を書こうと思ったきっかけは「孵化厳選で余った卵って、実際どうなるんだろうな」という疑問でした。ゲームだからマジカルに流すとか、逃がすとかできるけれど、もしもポケモンの世界が現実だったらどういう扱いになるんだろう、と……。だからこの小説のメッソンは孵化余りで、個体値もあまり高くないという設定です(活かせてないけど)。
日記風小説の体裁をとった理由としては二つあって、まず一つ目は時間の流れが可視化できること。日付が書いてあるので、わかりやすいだろうと思いました。書いている私もわかりやすかったです。もう一つは、構成がしやすいこと。書き手である祖父の目線で印象的だったことだけを時系列順に書けばいいし、1日分で一旦完結するので、普通の小説の"章"にあたる部分が作りやすくてリハビリにはちょうど良かったです。
マホイップは♀しか存在しないのでほいちゃんは女の子です。インテレオンは♂の方が多いとはいえ♀も存在はするのですが、「ちっちゃいお姉ちゃんとでっかい弟」という構図にしたかったので男の子にしました。見た目はインテレオンの方が大人びていてしっかりしてそうだけど、実はマホイップがお姉ちゃんなのすごく可愛くないですか……?
亡き祖母の相棒だったほいちゃんは、喫茶店を始めた後にこの家に来たということだけを決めていて、年齢ははっきり決めていません。開店と同時に来た子でもいいし、子供たちが全員自立して家の中が寂しくなったから新しい家族が欲しくて人から譲ってもらったのでもいいと思います。"私"とほいちゃんのどちらが年上なのかも決めていません。
ほいちゃんは最初タマゴをしげしげと見つめて、なんだろうこれはって顔をして、子供みたいな反応をするのですが、すぐにそれがポケモンのタマゴだと察したのか、それに対して優しい態度をとったり、祖母が編んでくれた大事なマフラーをかけてあげたりと、お母さんのおなかに赤ちゃんができたときのお姉ちゃんのような反応をイメージして書いています。レオンの成長に先立って、ちょっとずつお姉ちゃんになっていく彼女の成長もちょっと見えたらいいなあと思ったり、その一方でエプロンをもらってぴょんぴょこしてしまう可愛らしくて甘えん坊な面も残っているのも描写したかったりと、出番の割に忙しい子でした。
ほいちゃんが冒頭で"私"を見てほっとした顔をするのは、祖父が亡くなってから、せいぜい1日2日程度とはいえずっとレオンの「お姉ちゃん」として、気を張っていたところに、見覚えのある顔の、少しでも甘えられる関係性の相手が来たから。レオンは大きくなったし、立派になったけど、それでもほいちゃんはそんなレオンのお姉ちゃんとして一生懸命振る舞っていたらいじらしいな、と思って書きました。
レオンはポケモンバトルで最前線を張れるような個体値ではとてもないけれど、とても頭がよく、察しも良い子で、進化に伴う手の形状の変化から見て、どんどん器用になっていくと良いなと思ったので、最終的にコーヒーまで淹れてもらいました。あの手ならケトルくらい持てるかなと思って……。レオンの事は本文でほぼ書ききったと思うので、あんまり補足することはありません。
誰が置いていったのかは特に決めていませんが、この街の人じゃないといいなあと私は思っています。観光客も多そうな土地柄なので、どこかから来た人が孵化余りを持て余して困って置いていった、みたいな感じかな……と。本当に育てきれなくて困っていて、悪意はなくて、ちゃんと面倒を見てくれそうな人を見極めた上で置いていったのかな、と思いたいところです。特に決めてないので、純粋に責任感の無いやつだと思って読んでもらってもいいし、誰かからのプレゼントということにしてもいいし、いろんな可能性を持てる部分かなと思います。
タマゴを孵して育てると決めたとき(11月20日)、祖父は「カビゴンくらいまでのサイズなら育てられる」と思っていて、それを日記に書くかどうかで3時間くらい筆が止まりました。
剣盾どっちのプレイヤーにもすんなり読んでほしくて、名前や口調を一切出しませんでした。既に読んで頂いた方たちに聞いた限りでは、どちらでも違和感なく読んでもらえたようで、よかったなと思っています。祖父の文章が比較的淡泊なので、他の人物から聞いた話をセリフではなく伝聞として書いても全く違和感がなく、そういう意味では日記風小説という体裁をとったことは結果的にかなり都合が良かったです。
世界観は剣盾の世界観そのものです。でも、剣盾の「主人公」はあくまで"新しいチャンピオン"であって、この小説の"私"や祖父はこの世界の脇役に過ぎない。だから彼らには固有の名前はつけていません。この話は、この世界の隅っこで起こった、小さな、小さな物語にすぎなくて、でもそんな小さな幸せな世界を書けたらいいなと思って書きました。
冒頭部の「新しいチャンピオンが使っているポケモン」という描写からわかる通り、この世界は剣盾の時間軸で言えば「殿堂入り後」で、日記の中の11月下旬に主人公たちが立て続けに街を訪れているような時間軸です。この日記が何年分あるのかはあえて明記していないのですが、"私"が3年ほど前にキルクスタウンに来たときにはまだレオンがいなかったので、最大で見積もって殿堂入りの3年後くらいになると思います。
舞台をキルクスタウンに置いたのは単なる好みが八割ですが、雪の降る街の、寒い冬の日の、とても暖かい物語、みたいなものを目指したかったので最終的にキルクスタウンを舞台にすることを決めました。
成長がやたら早い件については、メタな理由と作品内での理由と両方あって、前者は単にあんまりだらだら長く書きたくなかったということと、剣盾のゲーム内時間の進みからして不可能ではないだろうなと思ったからです。後者としては、レオンはとても聡い子で、自分が平和に生きていられるのは祖父が自分を大事に育ててくれているおかげだと気づき、早く大きくなってお手伝いをできるようになりたいと思って頑張ったり、それをジムが総出でサポートしていたため、成長が早くなったという設定にしています。
この喫茶店は、祖父が祖母と結婚した時に始めた店で、当初は祖父がコーヒーを、祖母がスイーツを担当していた、という設定です。個人経営の小さなお店で、エンジンシティなどにあるカフェよりも一回り小さめの規模を想定しています。カウンター席が4~5席と、2人掛けのテーブルが3組程度。
カウンターの上にはほいちゃんがいてお出迎えしてくれたり、帰り際に飴をくれたりします。常連客は大体カウンターで、ジムリーダーも常連の一人なのでカウンターの一番端、入口から見て左側が指定席……という、絶対に本文では伝わらない設定を考えていたら、私の想定とほぼ同じものをポケマスの方でイメージして描いて下さった方がいてびっくりしました。一応私の中でこういうイメージ、というのはあって、せっかくだからと思ってトゥートしたので、よかったら……。でもなんとなく小規模だということがつたわれば、あとは自由に想像してほしい気持ちもあるので、あんまり縛られないでほしいなとも思います。
祖父の性格描写からして、おそらく彼は日記を書くことを昔からの習慣にしていると思います。なので、祖母が健在だった頃の日記も、祖母が亡くなってほいちゃんとふたり取り残されたときの困惑も、その後ふたりがどうやって生きてきたのかも、全てを読めばわかるのだと思います。
もちろん続きもあって、そこにはほいちゃんとレオンとさんにんで過ごした日々の事が綴られています。そこに何が書いてあるかは自由に想像してほしいなと思うので、私は続きは書きません。ただ、一つだけ明言してもいいのなら、祖父の最期についてこんな描写を入れたいです。
"私"が見た祖父の最期の顔はとても安らかに、眠っているように見えた。そこには苦しみや悲しみは微塵もなかった。彼が最期に見たものは、大切なふたりの家族と、対岸で待つ懐かしい妻の笑顔だったに違いない。
12月20日の日記で「遠いどこかの街では、ルンパッパがウェイターを務める喫茶店もあるのだという」という描写がありますが、これは名探偵ピカチュウのハイハットカフェのことです。途中までしかプレイできていないのですが、ポケモンと人間の共存の仕方として、あの世界観はとても好きです。
12月21日の「レオンの淹れたコーヒーは私のそれよりも少し苦く、どこか懐かしい味と香りがした」について、ちょっと伝わりにくかったかもしれないなと思うので補足ですが、「自分が昔、初めてコーヒーを淹れたときの味と香りによく似ている気がした」という意図でした。
ここに書いたことはあくまで私の解釈にすぎないので、本文に書かれていない余白の部分は自由に解釈して頂いて構いませんし、三次創作大歓迎です、むしろください。 またマストドンなどで「ここんとこどうなの」と聞かれたら、裏話の方をちょこちょこ加筆するかもしれません。