そのメカニズムの解明を目指して
更新:2024年12月10日
親しい人との死別は、最も強いストレス反応を引き起こしうる出来事のひとつです。とりわけ子供や配偶者(パートナー)などの近親者を、ある日突然もしくは暴力的に失った場合には、故人を追い求める気持ちとともに、強い悲しみや感情的な痛みといった心理反応が通常よりも長く続き、日常生活の妨げになることがあります。このような状態は遷延性悲嘆と呼ばれ、専門的な支援が必要と考えられています。
しかし、長引く悲嘆が通常の悲嘆とどのように違うのか、また、関係の深いいくつかの精神疾患(うつ病、心的外傷後ストレス障害、不安症)とどのように違うのか、生物学的にはよくわかっていません。
私たちのこれまでの研究により、死別から1年以上経過しても悲嘆反応が強く現れている人ほど、故人への共感性が保たれる一方で、残された家族に対しては共感性に関わる脳領域が適切に働かない可能性が示されました。これは、私たちが社会で生活する上で欠くことのできない他者への共感性が、近親者との死別後に特有の変化をきたし、その後の社会生活に支障をもたらすことを示唆します。
本研究の目的は、親しい人との死別という出来事に対する脳や体の反応、社会的行動の変化について調べ、なぜ悲嘆が長引くのか、その回復にどのような要因が関わるのかを生物学的に理解することです。客観性の高い評価法を用いることで、遷延性悲嘆の治療・診断法の信頼性および妥当性を高めることが可能になります。私たちは皆さまに研究参加という形でご協力をいただき、遷延性悲嘆の科学的理解を深めたいと考えております。
研究責任者:吉池 卓也
国立精神・神経医療研究センター
本研究に関心をお寄せいただき誠にありがとうございます。
以下に本研究の概要,参加申し込みから研究終了までの流れをご紹介いたします。
研究への参加をご希望される方は下記の参加申請フォームよりお申し込みください。
また、ご不明な点のお問い合わせは下記のお問い合わせフォームよりご連絡ください。
研究参加の要件
1. 主な選択基準
以下のすべての項目に当てはまる方は研究にご参加いただける可能性があります。
・20歳以上の方
・13か月以上前に大切な人(家族、親戚、友人、恋人)を亡くされた方
・磁気共鳴画像(MRI)の撮像が可能な方
2. 主な除外基準
以下のいずれかの項目に当てはまる方は研究にご参加いただけません。
・半年以内にアルコール・薬物依存症と診断された方
・半年以内に自傷行為や自殺企図があった方
・認知症や他の神経疾患が疑われる方
上記以外にも、担当医師が研究参加の可否を診察や検査の結果から判断します。
研究の流れ
1. 研究参加申し込み
本研究への参加を希望される場合、下の「研究参加申請フォーム」から参加希望の旨をご連絡ください。
数日以内に担当者が返信し,医師による問診を行う日程を調整します。
2. 研究説明、問診、研究同意
研究に関するご説明と問診を行います。参加要件を満たす場合、検査日の日程を調整します。
その後,研究参加の同意書をメールもしくは郵送にてご提出いただきます。
3. 1回目の評価
(ア) 質問票及び活動量計の送付
事前に送付する質問票にご回答いただきます。また,操作が簡便な腕時計型の機器を用いて、
来所前1週間の身体活動量(睡眠・覚醒リズム)の測定を行っていただきます。
(イ) 検査のための来所
質問票と活動量計を持参していただきます。研究用MRI室において、頭部MRI撮像(脳の機能や構造の評価),
心電図測定(自律神経系の評価),少量の唾液採取(免疫系や愛着にかかわるホルモンの評価)を実施いたします。
所要時間は2時間程度です。
4. 2回目の評価
3~6か月の期間を空けて,手順3の評価を再度行います。
その他
研究参加による直接の利益はありませんが、遷延性悲嘆の科学的理解、より良い診断法や治療法の開発に貢献することができます。
研究にご参加いただいた場合、負担軽減費をお支払いいたします。
研究資金
本研究は、令和5年度~令和7年度 科学研究費助成事業(科学研究費補助金)(基盤研究(B))「遷延性悲嘆症の心理療法の有効性の検証および病態解明に関する研究 」(研究代表者:中島聡美)によって行われています。
1.下記の「研究参加申請フォーム」から研究参加希望の旨をご連絡ください。
2.担当者より数日以内に折り返しのご連絡をいたします。
メールにて,お電話での事前の研究説明日の調整を行います。
候補日をいくつか提示いたしますので,スケジュールをご確認ください。
3.お電話にて適格性の調査を行います。
研究参加の要件を満たしているかお電話にて医師が問診を実施いたします。
参加要件を満たしていることが確認されましたら,来所日の調整を行います。
4.同意書の提出を行っていただきます。
問診にて研究参加が可能と判断されましたら,「研究説明書」「同意書」「同意撤回書」を郵送もしくはメールにてお送りいたします。
資料をよくお読みになった上で,参加を希望される場合は,同意書へ署名していただき郵便での返送をお願いいたします。
参加をご希望の方はこちら
不明な点などのお問い合わせはこちら
2023年
1.死別後に長引く悲嘆が共感性を抑制:悲嘆の脳科学的メカニズムを解明(国立精神・神経医療研究センター)
2023年
1.死別後の悲嘆で共感低下 脳活動の測定で判明(共同通信)