体育・スポーツのジェンダー・セクシュアリティのポリティクス
ー「誰も置き去りにしない体育」をめざしてー
PEGP研究プロジェクトについて
体育は初等中等教育の必修科目として存在感があるだけでなく,部活動や学校行事と輻輳しながらそこで学び活動する人々に正負のインパクトを与え続けています.
私たちがこれまで進めてきた研究では,競争や他者の視線にさらされ,「ボールこないで」と願うような学習者の存在が明らかになりました.「友達の視線が刺さる」「頑張っても評価されない」「生理中でも水泳を強制された」など,苦しい体育授業の経験についての声が浮かび上がってきました.「運動のできない自分が悪い」と沈黙してきた声から,体育の学びが保証されず,学びの格差が拡大している状況が見て取れます.学校体育では,ゲーム性を楽しみ,ハイパフォーマンスを競うことに喜びを見出す生徒の存在やその価値がクローズアップされる一方,「体育嫌い」の声は不可視化される傾向にあると言えるでしょう.
また,性別二元制,異性愛が当然のように受け入れられている学校文化やスポーツ制度では,規範的セクシュアリティに沿うことのできない生徒の存在が潜在化するだけでなく,当事者に息苦しさや生きづらささえもたらしていることが推測できます.
「体育嫌い」の声は,体育で教え学びとることは何かという体育の目的を問い,競争的なスポーツ中心のカリキュラムに疑義が投げかけてもいます.
このPEGP(Physical Education & Gender Politics)研究プロジェクトでは,体育カリキュラムをジェンダー・セクシュアリティの視点から問い直し,そのポリティクス(政治性)について検討しています.特に,「体育嫌い」は個人の好き嫌いの問題というよりも,体育カリキュラムの目的や内容などによる「教育政策の要因が強く関連する」のではないかと考え,調査研究を進めてきました.海外に目を向けると,新たな理念に基づく体育カリキュラムの発展を見ることができます.
このホームページには,本研究プロジェクトの成果や関連資料などを掲載しています.特にジェンダー・セクシュアリティの視点から「誰も置き去りにしない体育」について考えてみたいという方は,ぜひご活用ください.
PEGP研究プロジェクトの経緯
・H28-H30年度 科研費 基盤研究(C)(一般)
「体育カリキュラムにおけるジェンダー・ポリティクス:周辺化される人々の経験への着目」
・R1-R4年度 科研費 基盤研究(C)(一般)
「包摂的な体育カリキュラムの構築に向けて:クイア・ペダゴジー及びリテラシーを中心に」
・R4-R6年度 科研費 基盤研究(C)(一般)
「『体育嫌い』の沈黙する声に注目した体育カリキュラムの探究」