晴天、試合日和。
まあ、ドームは完全室内なので天気は関係ないが、カンと照った太陽を見ればそう思うものだ。
たまの休日にビール片手に野球観戦するのが昔からの趣味で、チームを追って県を跨ぐほどではなくとも、まあそれなりに地元チームの応援をしている。
今日の試合はどんな展開になるのだろう、勝つか負けるか、連敗は嫌だなあ。そんなことを考えながらフードコーナーで買った酒とつまみを抱え席についた。
既にチアグループによるオープニングダンスが始まっていたらしく、くるくると短いスカートを捲れ上がらせながらチアが踊っているのが目に入る。その脇をラーメン屋や薬局にあるようなのぼり旗を手に練り歩く青い物体。マス○ットキャラクターのド○ラだ。
野球観戦を始めた頃から見かけている気がする。変な動きをしたり、バク転したり…あまり注目したことはないが、目立つ風貌は意識に残る。
今日もまた突拍子もないことをするのだろうな、そんなふうに構えていたら
『突然ですが本日のスペシャルスポンサーによるデモイベントを行います!』
とアナウンスが入り、音楽が切り替わるのと共にサーっと引き上げるチアグループ。地元ドーム特有のデカくて青い扉が開きピピッという聞きなれない電子音が響いたと思えば、出てきたのは滅茶苦茶なデカさのナメクジ。
『こちらのナメクジちゃんたちはとある薬剤により巨大化しております。また、体から出す粘液の量も増加しております』
次々に扉から出てくるナメクジたち。計6匹だろうか。ピッピッという電子音に倣いがらんどうのグラウンドを這い進んでいく。10m近い体長のナメクジが6匹。遠くで見ているだけでも空恐ろしい。
やがてグラウンド中央で円を組んだナメクジたちの中心には、ド○ラがいた。
『さあド○ラさんナメクジに囲まれてしまいました!この大きさです、潰されてはかないませんね。ド○ラさんも大きくなるしかないでしょう!』
なにを言っているんだ、このアナウンサーは…。
そう思っていたが、ド○ラが大袈裟に体を震わせ、その場に膝をつき、胸を押さえ…というありがちな「く、苦しい!」といった演技を始めたので、ああ、いつものショーか。と腑に落ちる。
試合までの時間を楽しく過ごしてもらおうと思ってか、特に休日の試合前は突拍子もないイベントが始まることが多い。これもその一環だろう。
『ド○ラさんの身体がみるみるうちに巨大化していきます!これは大きい!20Mはあるのではないでしょうか!』
まるでパソコンで画像を引き伸ばす時のようにムクムクと衣服ごと等倍に巨大化したド○ラは、建物が近くにないためわかりづらいが20Mというとウルトラマンのサイズ感になっているようだ。少し子供心を刺激されワクワクしてきてしまう。
巨大化が止まったド○ラはこれ見よがしに両手を脇の横で握り「強いぞ!」といったポーズを取った。
『ド○ラさんの準備もいいようですね。それでは巨大ナメクジVSド○ラ!大迫力のバトルの始まりです!』
またあの妙な電子音が鳴ったかと思うとド○ラを囲んでいたナメクジたちが一斉に動き出した。ある個体は脚に絡みつき、ある個体は胴を這い、またある個体は股間を執拗に這い回る。
いくら半分ほどの大きさとはいえ多勢に無勢である。ものの数秒でド○ラは体勢を崩し尻餅をついた。
ズシーンという大きな音と地響き。20Mにもなれば体重も凄まじいのだろう。これが怪獣映画の世界か…と妙な感傷に浸る。
ド○ラが横たわったお陰で這いやすくなったのだろう、ナメクジたちは意気揚々とド○ラに絡みつく。脚や腕の自由を奪い、首元やズボンの隙間に頭を突っ込んでいる。元々石の下などに住んでいるような奴らだ、隙間が好きなのだろうか。
アナウンスにあったように粘液の量が増えているようで、ド○ラの身体は既にヌルヌルだ。遠目に見てわかるほどだ、全身ローション漬けのようになっているのだろう。その上で至る所を這い回られ、ド○ラの股間がググ…っと隆起していくのが見える。
『あーっとぉ!ド○ラさんボッキしている!ナメクジちゃんたちの粘液が気持ちいいのでしょうか!?』
20Mの体の勃起だ、凄まじいデカさである。ヒトの身長ほどのそれが逞しく天を向いている。
『はちきれんばかりの巨根!ズボンの中で苦しそうですね〜』
体の自由を奪われているド○ラはブンブンと頭を振りながら身体をくねらせている。腹の隙間から頭を突っ込んでいたナメクジが、体を薄く伸ばしながらその身の全てをズボンの中に潜り込ませようとしているからである。
首元から侵入していた個体もまた、シャツの中に全身を収めようとしていた。
『ド○ラさんナメクジちゃんの侵入をあっけなく許してしまいます!これでは直接ヌルヌルされてしまいますね〜』
なんとも呑気な実況だが当のド○ラはビクビクとのたまい大変そうである。
ユニフォームの中は直接見えるわけではないが、巨大なナメクジの形に沿ってもこもこと蠢いているためだいたいなにが起きているのかはわかる。
下半身は股間と脚をゆっくりと行き来するのを繰り返しており、上半身は腹の上に斜めになるように乗ったナメクジの頭部と思われる部分が細かく伸縮している。
『ああ〜〜これは乳首吸われちゃってますかね〜』
手を握ったり開いたりしながら、腰を浮かしてモジモジとしているド○ラのユニフォームの下はえらいことになっているらしい。
ド○ラも大変だなあと他人事を眺めながらビールを飲む。
やがてへこへこと天に向かい腰を振り出したド○ラの情けない姿で酒が進む。
『ド○ラさん限界ですか〜?そろそろお時間もいい感じですし…ナメクジちゃんたち、やっちゃって!』
そうしてピュイ、という電子音が鳴った途端下半身の巨大ナメクジが股間の周りをグルグルと回り出した。
勃起に絡みつくように回転するナメクジに、ド○ラはあっけなくビクビクと体を震わせた。
『おっ、射精したようですね〜!ド○ラVS巨大ナメクジの圧巻のショーはいかがでしたか?残念ながらド○ラさんは負けてしまいましたが、やはり大きいものはロマンと言いますか、グッとくるものがありますね。』
大人しくなったナメクジに埋もれながらぜえぜえと肩で息をするド○ラを眺めながら最後の一口を飲む。
『今回ご提供頂きましたのはFF製薬さんのデッカクナールEX!通常のデッカクナールよりもさらに大きくなる!特撮やショーなどにぴったりの商品でございます。是非イベントなどでご利用ください!なお、こちらの商品は一般向けには販売されておりませんのでご了承下さい。』
最後にスポンサーの紹介をするアナウンスを聴きながら、巨大なヒトやナメクジの暴れた後の荒れたグラウンドにこの後の試合の心配をしていると
『それではグラウンドの整備をいたします。FF製薬モトニモドールの散布を行いますので、電子機器などの水濡れにご注意ください』
とのアナウンスが入り、数秒後にはグラウンド上スプリンクラーから薬剤が撒かれた。まるで魔法のように、ド○ラやナメクジの体格、地面が数分前の状況に戻っていくのを目の当たりにする。なるほどデモンストレーションが完璧だ。
すっかり元通りになったド○ラは遠目にはやはり小さく見づらいが、右手の平を天に向けているあたりナメクジを乗せているのだろうか。よろよろと立ち上がり客席に一礼、二礼、三礼としてから小走りで捌けていった。
大きなアクションこそなかったものの、やはりこうして比べると大きいのはいい。ロマンもあるし何より臨場感がある。
今度は選手も大きくなって試合してくれないかな、などと考えながら空になってしまった酒を買い直しに席を立った。