この記事と一緒に見てほしい景色(笠山山頂から見た萩六島)
萩沖では、漁師さんたちの間で「瀬」や「グリ」と呼ばれる海底の岩礁に、魚がたくさん集まることが昔から知られています。この豊かな漁場が、萩の漁業を支えています。
「瀬」や「グリ」の正体は、海底に沈んだの火山や溶岩です。山口県萩市と阿武町の海から陸に渡って、1ヶ所で1度しか噴火をしない小型の火山が約50ヶ所に点在しています(阿武火山群)。これらの火山は、地下のマグマだまりから、毎回異なる出口を通って溶岩が噴き出したと考えられている、いわば家族のようなもの。そのうち、溶岩台地の上部を残して水没したのが、平らな地形が特徴的な萩沖の島々です。海面よりも低い火山が、瀬やグリと呼ばれている岩礁です。
萩沖の海底地形(海上保安庁提供)
萩沖の大部分は、平坦な砂地の海底が占めています。その中で海水の流れが瀬やグリにぶつかると流れが乱れ、栄養たっぷりの砂や泥がまき上げられます。その栄養と太陽の光でプランクトンが良く育ち、それを食べに魚が集まってきます。広い海を泳ぎまわるアジなどの回遊魚も、瀬にとどまってたっぷりとエサを食べ、脂ののった体に育ちます。
また、瀬やグリにはワカメなどの海藻がはえ、岩のすき間もたくさんあるため、魚だけでなく、ウニやサザエ、アワビなどの海の生き物たちの住処にもなっています。萩の魚介類は海底に沈んだ火山で育っているのです。
火山の島々は、波消しの役割もしています。冬に荒れることの多い日本海でも萩沿岸は比較的おだやか。これらのおかげで、1年を通して豊富な魚種を味わうことができ、干物、干しわかめ、焼き抜き蒲鉾、ごぼう巻き、ちりめん・釜揚げしらすなどの多様な水産加工品も私たちを楽しませてくれます。
素潜り漁で獲れたサザエ
しらすの天日干し
わかめ干し
焼き抜き蒲鉾