二人の秘密に戸は立てられる 雪森
モブにバレないようえっちする大青の話・青海湘南十景SS後時空の想定です・モブ→青海描写が含まれますが、当たり前にモブの大敗北です。というか勝負以下です笑・青海の♡喘ぎ/大崎→青海へのフェラ表現/大崎→青海へのアナル舐め描写が含まれます
二人の秘密に戸は立てられる 雪森
モブにバレないようえっちする大青の話・青海湘南十景SS後時空の想定です・モブ→青海描写が含まれますが、当たり前にモブの大敗北です。というか勝負以下です笑・青海の♡喘ぎ/大崎→青海へのフェラ表現/大崎→青海へのアナル舐め描写が含まれます
──重たい粘液が混ざり合い泡立つ音。濡れた肉がぶつかり擦れる音。聞く者が聞けば「何をしている音なのか」が即座に伝わってしまうだろう。こんなにはしたない音を鳴らしているのが自身だと思うと、居ても立っても居られないような、形容しがたい羞恥が湧いてくる。
聞かないでほしい、知らないでほしい、そう思うのに。今すぐにでも彼の耳を覆って、隠れてしまいたい。そう思うのに。私の身体は意思とは異なりまるでそれが自然なことであるかのように、目前の男へと縋り付いていた。
「舌、出してください」
「……っぁ」
低い声で下された指示へ抗うことが出来ず唇を割った。素直に従ったことを褒めでもするかのように、彼の指は私の襟足を繊細な手つきで滑り、擽るように髪を混ぜる。それに反応して私の身体はこの上ないほどに悦びを感じていた。
熱い舌に咥内を隈無く検分され啜られる。咽の手前にまで入り込んできたのが苦しくて思わず面を引こうとすれば、叱る意図を持って舌先を柔く噛まれた。そのせいですっかりと逆上せあがってしまい、あとはされるがままだった。
互いに唇を触れ合わせることに夢中になって何時からか疎かになっていた下腹への衝撃が特に前置きも無く再開されたものだから、その感覚に着いて行くことが出来ず数秒だけ息を詰めることになった。
「……っん!あっ…!」
分厚い腰を臀部へ打ち付けられる度、その衝撃が胎で甘い波へと形を変え、全身に広がる。飢えた肉欲へ惜しげもなく与えられる性感に抗う術や理性を、今の私は持ち合わせていなかった。濡れた腸壁を熱で擦りあげられることに耐性など付けようもない。押さえつけられた手首を自由にしたいなどという意思も到底、持ち得はしない。彼の顳顬から滴った雫が頬へ落ちてきた感覚さえ、今この瞬間においては過ぎたるものであった。
「楓さん、」
「あ……っ!」
不意に、耳元から流し込まれた名前へ反応が遅れる。全てが押し流されてしまうような、絶頂の最中だった。
「愛しています」
──…愛。
「楓さん、愛しています」
「っぁ゛……ひ…いろさ……」
私は。私はあなたを。
「…………」
庭から小鳥の囀りが聞こえる。涼しい風が庭の葉を揺らすような、爽やかな朝に到底似つかわしくも無い重たい溜め息を吐き出さずには居られなかった。布団を捲らずとも分かる。洗濯が必要だろう。ついでに、べたついている肌も流す必要がある。
前回の逢瀬から、優に二月は超えている。その間彼は週に一度、欠かすことなく文を送ってきた。電話も、何度か。それによると、つい最近まで立て込んでいた仕事は粗方片付き、月末にはこちらへ来られるのだとか。その予定していた月末とは、つまり本日のことであった。
いつもより早くに目が覚めて良かった。これなら港に船が着くまでに朝風呂と軽い洗濯を済ませたとしても、当初予定していた買い出しへ出掛ける時間すら十分にあるだろう。本日の予定へと思考を切り替え、布団を出る。未だ身体の奥底で燻っている熱には気付かないふりをした。
◇◇◇
風に乱れる着物の袖を押さえながら果てしなくも思えるような水平線を眺めてしばらくが経つと、待ち人は港へと降り立った。相も変わらず、重たく切り揃えられた前髪が潮風の煽りを受けている。夏の木陰のような気配。──少し瘦せただろうか。また忙しさに感けて、食事を疎かにしていたのだろうか。もしそうなのだとしたら、小言のひとつくらいは必要になるだろう。
「お久しぶりです、青海さん」
こうして会う度に毎回、彼は変わらないようでいて、けれども確かに変わっていることもある。例えば、今回はいつもより隈が濃いように見えるだとか。例えば、今回はとても快調のように見えるだとか。けれども毎回、彼の声だけは変わらない。低く、平坦に、端的な言葉を象る彼の声にはいつも、叶った逢瀬を喜ぶ色が含まれている。
再会の挨拶を返す私の目と少しの間交わっていた視線は、次いで私の左手へと落とされる。釣られて下を見やると、握り締めていた小包に行き着いた。
「それは」
「此処へ来る途中でいただきました。近所の方に」
すかさず持ちましょうか、と掛けられる問いに断りを入れる。どう考えても、大崎さんが持つトランクの方が重量があるように思える。対してこちらが持つのは傘一本とこの小包だけであり、藍染めの風呂敷に包まれたそれは片手でも持ち運びしやすく、苦として数えるにはあまりにも軽量なものだった。問題無いので進もうと視線で訴えかけると彼は素直に従い、歩き出す私に並んだ。
「……その近所の方とは、女性の方ですか」
「いいえ。男性です。一人で暮らす私を気遣ってか よくお裾分けをくださるんです」
親切な方で、と話を続けようとしたが、寸でのところで止めにした。大崎さんが神妙な面持ちで黙り込んでしまったためだ。何か気になることがあったのか、それとも私が何か可笑しな発言をしてしまったのか。それを思案するためこちらも黙り込むと、私達の間には静寂が生まれた。
波浮港の一番地にある私の家屋は港から比較的近い場所へと位置しており、そうこうしているうちに玄関へと辿り着いていた。張り付くように背後へ立たれる気配を感じながら、取り出した鍵を差し込み開錠する。古い木材で出来た引き戸を私が開くのと同時に、背に添えられた腕によって中へと押し込まれた。多少強引にも感じられる彼の動作にこちらが瞠目していると、大崎さんはそのまま後ろ手に戸を施錠し、次いで私の手から傘と小包を奪い去る。それらと彼の持っていたトランクを式台の上へと放ったかと思うと、次いで引き寄せた私の唇を彼のそれで塞いだ。
「っなにを。っん」
「……」
「っ緋色さん。玄関です。此処は」
彼の厚い胸板を押しやり、やっとの思いで距離を離す。
「玄関でないなら、いいんですか」
「…ふざけるのは止しなさい」
到着して早々に行われた決して行儀の良いとは言えない行為を窘めると、彼の瞳には分かりやすく不満の色が滲む。叱られた子供がむきになるようなその様子に、思いがけず面を食らった。
緋色さんが可能な限り、私の前で背伸びをしようとしていることに関しては実はと言うと前々から気が付いていた。再会時の第一声で僅かに華やいだ言葉のその次に、平坦な音へと戻される声。こちらへ駆け寄る際浮かせようとした手を、一拍置いて体の横に戻しそのまま握り締める仕草。私は彼のそれらを随分と可愛らしく思っていて、だから指摘したことも、するつもりも無かった。
なので、珍しくも分かりやすく剥きだしにされた目前の青さに、咄嗟に反応することが出来ずにいた。
「先ほど、あの小包を渡した近所の方は男性の方だと言いましたね」
「はい。…それが何か」
「それと、"よく"お裾分けを下さると。何故、一人の男性があなたをそうまでして気にかけるんですか」
──言っている意味がよく分からない。
「それは彼が。私と同じ独り身だからでしょう」
よくあることだ。都会とは程遠い環境下にあるこの島では、欠けた利便性を住民の気遣いや思いやりで埋めている。皆が一人を気に掛け、一人が皆を気に掛ける。そうやって社会を形成しているのだ、此処では。その中で、一人が一人を気に掛けることだって特段、可笑しなことだとは思わなかった。
「同じ独り身としてのよしみです。恐らくは。私も彼にお裾分けすることはよく──」
あるのだと続けようとしたが目の前の、剣呑さを増して行く眼光に口を閉ざした。
「本当にそうでしょうか。ご近所には、"彼"とあなた以外にもお一人で暮らしている方が居るようですが。その"彼"は他のご近所にも等しく、気を配っているんですか」
「……それは」
答えることが出来ない。正確には、私の知るところではない。──というか私の近所事情をそこまで詳しく、いつの間に。まあひとまず、それはいい。それよりも今のこの状況だ。
何故だか不当にも責め立てられているかのようなこの状況に、こちらとしても物申したいところである。
「あなたが何をおっしゃりたいのか よく分かりません。それと。…放していただけますか」
言葉を交わす途中で握り締められた手首を軽く引く。着いて早々、いい加減に悪戯が過ぎるのではないだろうか。そう思いこちらも多少語気を強めると機敏にそれを感じ取ったのであろう彼は、途端に当初の勢いを失くした。それと同時に、緋色さんと目を合わせていた私は内心ぎくりとした心地になった。──この、縋るような視線。叱られた子供が親にするような純粋なそれとは、全くもって異なる。彼が私へと向けるこの目を、私は彼と今までに過ごした時の中で幾度となく体感し、身をもって知っていた。これは男が、慕わしく想う相手に向ける哀願の眼差しである。
目にかかるほどに伸ばされた重たい前髪から覗く、存外に精緻な形をした眼の輪郭。そこから注がれる、切実な視線。──彼のこの目に弱いのだ、私は。
「……すみません、嫉妬しました。自分はこの二月の間あなたに会いたいと、そう願わなかった日はありません。自分のそれが叶わない間にあなたから目を掛けられた男が他に居たのかと思うと、悔しくて」
こういう時ばかり流暢に話す彼が恨めしい。そしてそれにまんまとしてやられ、すっかりと溜飲を下げてしまっている自分のことも恨めしい。自分では口下手だとかなんだとか言って、それもこちらを篭絡する為の方便なのではと疑いたくもなる。──分かっている。彼が嘘を吐けない質なのだということを、本当は。
「…狭量な男だと、呆れますか」
降参。白旗。観念。
「……いいえ」
私の、溜息交じりのこの一言から言外に潜んだ"よし"を感じ取ったらしい彼は、結局解放せずにいた私の手首を引き寄せ首筋に鼻先を埋めてくる。
「朝、湯浴みをしたんですか」
吐息だけの微笑を含んだその問いかけに、首元へかっと血が集まるのを感じた。
違う。別に"こういうこと"を期待して風呂を済ませたわけではない。けれども、湯を浴びた本当の理由も相当に不純なものであったし、ともすればそちらの方がよほどバレたくはないものだった。眼鏡のつなぎに触れたまま何も返せないでいる間に私は、廊下の壁を背にして取次へと膝を突かされた。自然な動作で着物の前を開かれ、素肌に唇を落とされる。
「…っん。緋色さん。此処では」
せめて寝室に、という望みは彼の「駄目です」という一言で打ち砕かれた。再三だが、ここは玄関である。
私が居を構えるこの平屋に建付けられた木製の引き戸は、格子の入らない意匠となっているため戸越しに中の様子を伺い知ることは出来ない。けれど引き戸の両脇にある掃き出し窓は格子状の木枠にすり硝子を嵌め込んだもので、中の様子は見えずとも近くにある人の気配を写し取ってしまうかもしれない。もし、急な来客があったら。頻度はそう多くはないが、あり合えない話でもない。
──やはり、場所を移してもらうよう言い含めるしか。そう思った矢先唐突に与えられた性感に、言葉は形を成さなかった。
「っぁ……」
見れば、彼は私の乳暈の上で幾度も舌を滑らせていた。私達以外が居ない、静かな家屋の玄関に響くぴちゃぴちゃとした水音に居ても立っても居られなくなり彼の後ろ髪を掴んだが、引き離すことが叶う前に全身の力が抜けていく。実に、二カ月ぶりの愛撫だった。
「っふ。……は…ぁ…」
緋色さんは口付けていた片方を徐に放したかと思うと、今度はもう片方に吸い付いた。先ほどまで舐められていたせいで彼の唾液に濡れた胸が、放り出されたことにより外気に触れる。ひやりとして感じるのに、内側に籠ったじんじんとした熱が落ち着かずより一層感覚が尖っていく。そちらを気にしていると今度は、彼が咥えたもう片方に鋭い刺激があって身体が勝手にしなった。どうやら中に埋もれている芯ごと歯で潰されたようだと、後になってから気が付く。そのままくにくにと噛み遊ばれて、すすり泣く様な情けない声が止まらなくなった。
「あ!…もっ……や…ぁっ」
甘く痺れる芯の快感を引き摺り出すように吸われて、胸に広がった熱がじわじわと下腹に溜まっていく。唇を離されると、誤魔化し様のないほどにぴんと勃ち上がった乳頭が現れた。その先端と彼の唇とを粘度のある銀糸が繋いでいて、その卑猥な光景をとても直視していられずに目を背ける。
「駄目ですよ。ちゃんと見ていてください」
「っひ…」
叱るように手袋越しの指先で先端を抓まれて、自身の痴態を直視するよう仕向けられた。
「……平等にしないといけませんね」
そう言って彼はまだ先端が起立していない方の胸を再び愛撫する。窪んだ割れ目に舌の先端を差し込み過敏になった内側を擽られると、抗いようのない快楽が胸を満たした。唾液で満たされた窪みの中で、熱い舌にちろちろと乳頭を撫でられると思考が白く飛んでしまう。ぬかるんだ咥内で乳暈ごとを歯で挟み、圧力をかけられた芯が無理やり押し出される。同時に、放られていたもう片方の乳頭を親指の腹で優しく撫で付けられてしまい、敏感な皮膚と手袋の皮が擦れるそのあまりの刺激に思わず彼の頭を抱き込んだ。
「ん…っ!はっ、はぁっ、……ぁっ、ぁ゛……♡♡」
残り微かな理性を搔き集めてほんの数秒だけ表面張力のように耐えていたが、結局は押し負けその後は唯々だらしくなく、甘い絶頂に呑まれて蕩ける。
「……っ、…ぁ……♡」
胸だけで達するのがこれで何度目なのかは思い出せないくらいではあったがこれはいつも厄介で、束の間の陶酔と満足を得られはするがそれが放出されることはなく、与えられた熱がただ胎の中を燻るだけ。つまりは乾きが酷くなるだけなのだ。だからもう私の中に、抵抗する意思は残っていなかった。
緋色さんが手袋をゆっくりと脱ぎ捨てていくのを、壁に凭れたまま眺めていた。両手を覆っていた蛹を床板へ落とした彼はそのまま、私の着物の下前を開く。じっと注がれる視線にいたたまれなくなって視線を逸らした。もう何度も素肌を暴かれているというのに、下着を直視されることすら未だに慣れない。
「濡れていますね」
「ぁ……」
見下ろすとそこには、言われた通りの惨状があった。下着の白い綿は多量の律液を吸収して下腹へ張り付き、下の肉色をはっきりと透かしていた。そのせいで形までもがくっきりと浮かび上がっている。
涙の滲むような羞恥心と、恥をわざわざ口に出して指摘されたことへの不満に彼の瞳を睨むと、それを受けて口元だけで笑った彼が目元へ口付けてくる。
「……すみません、反応してくださったことが嬉しくて。もっと善くするので許してください」
耳元で吹き付けるように囁かれた言葉に思わず、こくりと唾を飲み込んだ。
「姿勢を正せますか」
聞かれて、もう一刻も早くどうにかしてほしかった私は大人しく彼の指示に従い、自重を壁へと預けていた姿勢を正し、今度は両膝に預ける。すると下着を膝元まで下げられて、濡れそぼったそこを顕わにされた。掃き出し窓のすり硝子越しに差し込む外界の光を受けた先端は、汁を溢しながらぬらぬらと光を反射させている。
「可愛らしいです」
反応し、新たな刺激を求めてひくりひくりと小刻みに揺れる亀頭部の、つるりとした面を彼は人差し指の腹で優しく突いた。それだけ。たったそれだけのことなのに、期待していた身体は過剰に悦び、竿を伝って胎の内側をじんと熱くする。瞬間、はくつく孔からぴゅっと少量の律液が飛んだ。
「ぁっ…♡」
恍惚としたのは一瞬だけで、過ぎたる辱めを遅れて理解した私は流石に叱責を飛ばそうとしたが、彼の方が一瞬早かった。緋色さんはそのまま、指でその小さな孔をこしょこしょと擽る。
「っんくぅ♡」
もどかしい刺激。けれども乾いた身体に与えられたそれをたまらない甘露に感じて、私の中の憤りは新たにこぷりと溢れ出た透明な汁と混ぜられてそのまま滴り落ちていった。
次いで彼は唐突に顔を近づけて来たかと思うと、張り詰めるそれを素通りし私の下生えへと鼻先を埋める。
「っ!なにを、」
するのかと言う前に、濡れた肉が付け根を滑った。
「っぁ!♡やめ、……やめなさ、んっ♡あ!あぁ…っ」
熱い舌は滑らかに竿の上を滑っていき雁首へ辿り着くと、今度は薄い唇が低く張り出た段差の裏側へちゅうと吸い付く。
「ひっ♡」
ほんの一瞬だけ、雁首と竿との境目に柔らかく歯を立てられて、本能が竦み上がった。今度はそれを宥めるかのように先ほど歯の当たった部分をぺちゃぺちゃと舐め回される。ぞわぞわと腰が痺れるような快楽に思考は着いて行かず、抵抗もままならない。
「すみません、裾をご自身で持っておいてもらえますか」
そう言われて、大きく開かれた着物の両裾を自身の手でたくし上げるような格好にさせられた。帯はとうに緩んでしまっていて、最早気休め程度に巻かれているだけである。
──こんな。こんな格好ではまるで、自分から強請っているようではないか。
けれどそんな抵抗感も、熱い舌に律液を拭われ蒸発していった。
「……腰、動いていますよ」
「ちが、!…ぃます。……ぁ、♡やっ」
指摘されて、初めて気が付いた。へこへことはしたなく揺れている自身の腰つきの、なんと浅ましいことか。消え入りたいほどに恥ずかしくて、彼の目を見ることが出来なかった。
「やめてっ、くださ…♡あ、ぁっ♡や、」
先程までは、あんなに制止を求めても聞き入れてくれなかったくせに。今度は律液を啜るのをぴたりと止めて、よく躾のされたお利口な犬のようにこちらの目をじっと見つめてくる。緋色さんは戸惑う私を少しばかりの間見つめてから、愛撫を再開するではなく、まるで些細な悪戯をするかのように私の先端の、濡れそぼった部分にふうと息を吹きかけた。生暖かい風を受けて思わず、鼻から情けなく鳴くような高くか細い音が漏れ出る。
「っくぅ、♡……、っふ。……ぁ」
最初は、やめてほしいと。彼にこんなことはさせられないと思っていたくせに浅ましくも、一度あの舌の温度を知ってしまうともう駄目で。濡れた屹立に彼の息が当たって一瞬だけひやりと感じるその感覚ですらも今は、腰の奥で燻る熱を助長させるだけに過ぎない。
どんなに目で訴えかけてみても、恥を捨てて腰を揺らしてみても、再び愛撫を与えられることはない。
──…何故。
「ど…して」
早く舐めて、ほしいのに。
三大欲求とはよく言ったもので、人が持つ様々な欲求の中から特に"三大"と数えられる性欲という本能にこの時ばかりは支配され、此処が玄関であることなぞすっかりと忘れ去っていた。──戸が叩かれるまでは。
「ごめんください~!青海さん、ご在宅ですかぁ?」
外側から引き戸を叩かれて、次いで響く他人の声に蒸発していた理性の全てが一瞬で、冷や汗と共に舞い戻ってきた。緋色さんも同じだったのか、私達は揃って静止し声を出さずにいる。
いつの間に。こんなに近くまで来ていた他人の気配に、今この時に至るまで全くもって気が付かなかった。それは先ほどまでの"行為"にどれだけ自身が没頭していたのかを裏付けていたが、今何よりも必要となるのは冷静さである。
戸は、先ほど緋色さんが内側から施錠していた。開けられる心配は無い。先ほどの呼び掛け内容を考えるに今のところ、先方には私達の存在を気取られてはいないはずだ。普段通りであれば出て対応したところだが、今の自身はとても人前に出られるような状態ではなかった。では次にこの状況で必要となるのは、やり過ごすことである。静かに、息を殺して、決して動かず。嵐が過ぎ去るのを、ただ待てばいい。来客に対した居留守に該当する行為は多少なりとも気が引けるが、今はそのような理屈を捏ねている場合ではなかった。
正直に言うとかなり、もの凄く、肝を冷やしたが。この分であれば、問題ない。緋色さんも同じように考えているようで、先ほどから気配を殺し微動だにしていない。──しばらく彼とこのまま同じ格好で居るには随分と、今の私は間抜けな姿をしているに違いなかったがそれはこの際考えないことにしよう。
ひとまず九死に一生を得たことで、強張っていた肩の力が少しずつ抜けてきた。動悸が落ち着いたことにより脳に思考する分の余白が生まれる。先ほどの声から思うに、来客は近所の男性だろう。
「青海さぁん~追加のお裾分けをお持ちしましたよ!居ないんですか?」
そう。彼は今式台の上へと置かれている小包を、船を迎えに港へ向かう途中の私へ手渡してくれた近所の方だった。こちらがしばらく返事をしないでいても、引き戸の外に立つ男は一向に立ち去る様子を見せない。それどころか戸の外でなにやら独り言を呟いている様子だ。確かに彼は普段から、独り言の多い気質だった記憶がある。
「おかしいなぁ。居ると思ったんだけど。追加のお裾分け、持ってきたのに」
それは、申し訳ないことをしてしまった。折角こうして訪ねて来てくれたというのに。
真心に対して礼を述べることの出来ない不甲斐なさを感じはするものの、今は仕方がない。後で改めて、こちらから彼の邸宅を訪ねよう。伝えはしないが実質的な謝罪としてこちらからも、お裾分けを持って行けばいい。
そのようなことを考えていた私は唐突に、宙へと浮いた。よくよく状況が吞み込めずにいると私を抱き上げた彼の人は何をとち狂ったのか、いつもと変わらぬ平坦な顔をして靴下のまま土間へと降り立った。緋色さんが私を抱えたまま引き戸の方へ向かうので私は、抗議の意を込めて何らかの抵抗を示したいところではあったが、もし私が下手に動いて物音が立ってしまえばそれを外に居る男性に聞かれてしまう可能性がある。
緋色さんの足取りはとても慎重なもので、極力物音を立てないよう細心の注意を払っていることが伺い知れた。そうすると余計にこの不可解な行動の理由が分からない。そうこうしているうちにとうとう戸の前へ辿り着いてしまった緋色さんはこれまた慎重な動作でそっと、私を土間へと下ろした。音が立つような意思疎通を図ることが出来ないためそれ以外の方法で意図を探ろうと私は緋色さんの瞳を見つめてみたが、彼から返される視線からは特に理由のようなものを受け取ることが出来ない。けれど全く収穫が無いわけでもなかった。これは気のせいであってほしい事項なのだが、今の彼はたまに見かける虫の居所が悪い時の彼であるように見える。
緋色さんは相変わらず静かに、けれど抵抗を許さない手付きで私の肩を掴んだかと思うとそのまま、私が引き戸と向かい合う形となるように身を翻させた。私が留守だとしてしばらく外で待つことにしたのか、近所の男は未だこの戸を隔てたその向こう側に居た。多くの音階を外した何らかの鼻歌がこちらにも響いてきている。
私が今現在もこの状況から脱する方法を思い付けないでいると、更に信じられないことが起こった。突然背後でしゃがみ込んだ緋色さんが私の着物の裾を捲り上げたのだ。いくら彼でもこのような状況における悪戯は到底看過出来るものでは無いため、物理的にお灸を据えようと片足を持ち上げる。軽く蹴飛ばしてやろうと後ろへ蹴り出した足は制裁を叶えることが出来ずに、それどころか彼の腕で固定される始末となった。焦ったが、緋色さんは私が体勢を前方へ崩さないようにするためかすぐさま掴んだ私の片足を地に下ろしてくれる。それにより私が体勢を崩すことはなくそこまでは良かったが、結果的に大きく開脚することとなった私は未だ裾を捲り上げられ肌が露出しているのでしゃがんだ体勢でいる彼の目前にとてつもない恥を晒しているのではないかと、今更ながらに思い当たった。
不意に、尻臀へ唇を落とされて驚く。一瞬上げかけた悲鳴を寸でのところで噛み殺すと、そのまま肉を齧られた。ぞくりと背筋を這い上がった場違いな感覚に眩暈がする。実はと言うと彼が私の背後でしゃがみだした当初からずっと、嫌な予感があった。心の片隅でそれが当たることはないようにと、願っていたのに。底へかかった彼の吐息に泣き出したい気持ちに駆られた。
程無くして、潤んだ"何か"が底へぴとりと押し当てられて、それはそのまま鈍重な速度で、下から上へ。底の皺を上り切ったかと思うとまた下から上へ。何度も何度も、そのひどい行為は繰り返された。私がどんなに胸中で彼がそれを止めるように願っても、いっそのこと刻が早く過ぎ去るように祈っても、そのどちらも叶いはしない。彼はただゆっくりと、ともすれば怠惰にも思えるような速度でそれを繰り返す。最悪なのは彼のその酷い行いに、私の身体が熱を上げ始めていることだった。本来は決して人前に晒すことなど無いはずのその場所を舐め上げられて私は、どうしようもない性感に声を漏らさずいることだけで精一杯で。
こんなこと、在ってはならないはずなのに。今すぐにでも止めてほしいはずなのに。先ほど中途半端に温められた身体の芯がじくじくと疼きだすのをただ茫然と受け入れることしか出来なかった。
少し前から鼻歌は止んでいたがまだ、戸の向こうにある気配はここから去る様子を見せない。私は間違っても声を漏らしてしまわないように、自身の掌で必死に口元を覆った。もう片方の手で戸の嵌め込まれた木枠を掴んで体を支える。そうしていなければとうにこの状況は破綻していただろう。
そうこうしている間にも、彼の熱を帯びた厚い舌が尻の間をぬるぬると往復していた。繰り返しばかりかのように思われたが稀に、舌は穴を中心として円形に集中しているであろう皺の上を円を描くようにしてくるくると滑る。とても、とてもひどいことをされているというのに彼から与えられる愛撫はどこまでも繊細で優しく、それがこんな状況下にある私の理性を少しずつおかしくさせていった。
緊張で萎えていた前はとっくに硬度を取り戻しており、先端から垂れた律液が伝い落ちて土間へ小さく点々とした水溜まりをこさえている。ふちを沢山甘やかされた底が食い締める熱を求めて、ひくひくと口を開けていることにも気が付いていた。
舌で散々にふやかされた底へ唐突に指が差し込まれた。普段緋色さんの手に触れる時は、彼の指を私のそれよりも熱く感じるというのに今は、形は分かるが熱を感じない。つまりそれだけ自身の底が熱を持っているという証拠に他ならなかった。──これは、中指だろうか。
腸壁の表面を撫でるような動きでゆっくりと侵入してきたそれが今度は、入ってきた時と同じ程度の速度で抜けていく。それを、何度も何度も繰り返された。指は次第に増えていき今では恐らく、三本が突き入れられている。増えた質量分壁を擦る面積も増えて、浅いところでぬちゃぬちゃと抜き差しされると腰に堪えがたいような甘い波が広がり足の力が全て抜けてしまいそうになる。それを、内股になることで必死に耐え忍んでいた。
もう許してほしい。これ以上は、とても。そう胸中で懇願すると同時に指が抜き取られる。流石にこれ以上されはしないと思いたかったが、次いで底へと押し付けられたずしりと重たい質量にまたもや希望は砕かれた。
後生だから、本当に。これ以上はとても、堪えていられない。
首だけを後ろへ捻り、彼を見つめる。懇願の意を込めて戸を超えてしまわない程度の小声で名を呼んでも、彼は聞こえているのかいないのか、底のふちを亀頭で何度も撫で付けて止めようとする素振りは見せなかった。
突然、彼の大きな掌が私の口元を覆って強く押さえた。それに驚く暇もなく、熱くて硬い剛直がふちを押し広げて、肉の抵抗をものともせずに突き込まれる。
「~~~~っ゛……♡♡」
ごぷりと吞み込まされたそれからの衝撃を殺し切れずに、私は上体を崩して引き戸へ雪崩れ込む。気が付いた時には既に、引き戸の木目へ両腕と額を押し付けていた。体重の掛けられた戸が揺れて嵌め込み枠にぶつかり、がたりと大きな音が立つ。そのことに流れた冷や汗による悪寒と、底の中で浅い部分を行き来する亀頭で馴らされることによる快楽が同時に身の内側を満たして今度こそ、本当に、駄目になってしまった。
抜かれて、入ってきて、また抜かれて、また割り開かれる。それを繰り返される度に少しずつ深度は増していった。このじっくりと下拵えをされるような感覚は堪えようと思ってもそれが可能な部類のものではなくて、性の欲求を備えた生物なら誰しもが抗うことは出来ないだろう。まだ食んでいたいのに抜けていったそれを寂しく思う度また深くへ突き込まれるという責め苦と褒美の繰り返しは、一人の人間の頭をすっかりと役立たずにしてしまうのに十分すぎるほどであった。
両足の内側をとろりとしたものが後から後から伝っていく感覚があって、それが結合部から伝った腸液なのか、それとも前から垂れた律液なのか、区別が付かない。
「……っ…♡…ん゛♡……っ゛、♡……♡♡」
私の口元を押さえる彼の手は恐らく、私が垂らす唾液に塗れている。身体中が攣縮して鼓動が走り、血液が巡って酸素を消費するので鼻孔から供給される酸素だけでは息苦しい。けれどそれすらも、勝手に悦へと塗り替えられていった。
散々腸壁を嬲りながら底を抉じ開け続けた肉筒は、とうとう奥へと辿り着く。ぞわぞわとそれを待ち望んでいた私の身体は、従順に、無抵抗に、とろりと潤んだ粘膜を使ってそれへしゃぶりついた。
「ン゛ッ♡♡……んぶ、♡~~~~~っ゛♡♡♡」
胎内で脈動を続ける亀頭とぬかるんだ行き止まりがねっとりとした口付けを交わす。緋色さんに教え込まれることが無ければ生涯知らずに済んでいたはずの、生き物を堕落させるために存在する快楽が胎の中を満たす。もう限界なのに、十分なのにもしかしたら、今の彼には人の心が無いのかもしれない。そのままゆらゆら、くちくちと腰を回されてじっくりと奥を嬲られた。過ぎたる快楽は最早暴力とも言える。私は本能に従えられて足を限界まで張り、腰を上げて男に屈服していた。
自身がいつ絶頂していたのか知覚が出来てはいないが、内腿を伝った粘液を多量に吸い込んだ両の足袋は水気によって湿り切っており、下腹の真下に位置する土間には今も新しい律液がとろとろと落とされ続けている。納まったかと息をつく間もなく何度も何度も押し寄せる絶頂は、耐え難いほどに重たく甘く、身体の端までもを余すことなく蹂躙していた。
古い木製の戸が、がたがたと大きな音を立てて揺れている。最早下半身は殆どを彼に支えられており、それで庇われきれなかった体重と衝撃が戸を軋ませていた。
ぐいと顎を掴まれて、ようやく解放された口元が今度は緋色さんの唇によって塞がれる。声も、呼吸も、全てを食らい尽くすような深い深い口付け。
ええと、後で、土間を掃除しないと。それと何かを失念しているような気がしたが、それがなんだったか。
「っぁ゛♡♡……んぶ♡……っ♡~~ん゛は、♡はぁ、……ん゛ゔ♡♡」
──…嗚呼、でも。うれしい、
◇◇◇
「大変申し訳ありませんでした」
「………」
「……あの、青海さん」
「………」
居間で茶を啜る私に向かって、土下座を見せる男が一人。
背丈が高いから普段はその場に居るだけで存在感があるというのに、今の彼はそれを感じさせないほどに縮こまっていた。ちらちらと感じる視線に無視を決め込みながら含んだお茶へ舌鼓を打つ。
「青海先生、………楓さん」
「………はい」
たった一言返事をしただけなのに彼はそれを受けて、纏う空気を芽吹く春のようなそれに変えて見せた。数秒後、無表情ながらもはっとした様子で再び縮こまる。
「申し訳、ありませんでした」
──あの後。私達はやっとのことで寝室へと場所を移した。
寝室での事象は省略とする。彼方へ飛んでいた大切なものの何もかもが戻り切って落ち着いた頃に二人で、急ぎ玄関戸の外を確認しに向かった。その場所には、当たり前だがもう既に近所の男性の姿はなく。途方に暮れていても仕方がないので、ひとまず心を落ち着ける用途も兼ねてお茶を淹れていたが今は、淹れたてのお茶を啜る私のもとに、玄関を掃除し終えた緋色さんが戻ってきていた。
「何に対しての謝罪ですか。それは」
「嫉妬に駆られあなたに無体を強いたこと。あなたの制止を聞かず、無理やりあなたを暴いたことを謝罪させていただきたいです」
「………」
全くである。こればかりは祈る他無いのだが、あの男性は何も聞かず、何も気づかずに家へと帰って行った。絶対的な事実として、そうであってほしい。そうでなくては困る。そうしないと私の尊厳や、これから先のことが──…考えると頭痛が訪れそうな事項だ。
──しかし。まあ。何も、彼だけの責任とは言い切れない。本来であれば未だ年若く、熱情が先走りがちな彼に対して年上の身である私が、もっと強く出なければならない場面だった。けれど、私もそれを果たすことが出来なかったので。
「……あなたの分が冷めてしまいます。要りませんか」
「……!っいただきます」
私の分の他に、食台の上へもう一つ用意してあった湯呑をちらりと見やる。私からのその返事を正しく許しとして受け取ったらしい彼は、幾らか慌てた様子で私の隣へと居直したかと思うとその勢いのまま冷ますこともせずに茶を啜った。
「っ……、……」
案の定、舌をやけどしている。
「見せてください」
緋色さんは猫舌のようだ。そのことには以前から気が付いていて、たまに意外と抜けたところのある彼が飲食の際に舌をやけどしているところを目撃したのは、これで数度目のことだった。けれど今までに一度も「見せろ」だなどと指示したことはなかったので、今回突然そのように申し付けた私に対して彼は一瞬不思議に思ったようだが、結果的には素直に小さく口を開いた。
私は少しばかり赤らんでしまった彼の唇と舌に、一瞬だけ自身のそれらを触れさせる。
「っか、楓さん……」
「……ふ」
緋色さんがあまりにも分かりやすく、豆を食らった鳩のような顔をするものだからそれが少しばかり可笑しくて、可愛い。本当に憤慨していたのなら彼の分の茶など、出しはしない。その辺りを未だ理解していないのだ、彼は。
以前、同僚であり人生の先達でもある女性教員から年下の恋人を上手く躾ける術を伝授してもらったことがある。曰く、たまにはお灸を据えてやることが必要らしい。そうしないと際限なくつけ上がるそうで。まあ正直なところ、私が許すと目元を明るくさせて喜ぶ彼を私も満更ではなく思ってしまっているので、塩梅が難しいのだが。これは今後の課題としよう。私自身在り方の全てが綺麗な人間ではないため、本来であれば彼を詰めることの出来る立場にはないけれど。私達は互いに躾け合っていけばいい、今後も。
それと緋色さんに言って明日の朝、近所の男性に私からのお裾分けを持って行かせる。その際に、今日のことが気取られたかどうかを探ってもらうことにした。探偵だから、もしかしたら取り調べは彼の得意分野かもしれない。万が一、男性が何かに勘付いていた様子を見せたのならその時は、緋色さんの手腕に頼ってしまおう。そう決めた。
「緋色さん。こちらへ」
この後そんな大役を任されることになるとも露知らずに緋色さんは、素直な様子で私の広げた腕の中へと納まった。
彼の襟足に触れる。さらりと流れるそれに従い項を辿る私の指は次第に、彼の広い背中へと辿り着く。そこに手のひらを添えると彼の体は、私のものよりも幾許か熱を宿しているようだとまるで、その時になって初めて知ることかのように感じるのだ。もう何度も触れているはずなのに。
そろりと身を離すと、緋色さんは少しばかり名残惜しそうな目をして私を見た。
彼から熱を移されるのは、嫌いじゃない。ただじっと乞うように見つめられるのも。低い声で囁かれることも。少し苦しいくらいに抱き締められるのも。その後遅れて気がついたかのように、緩む優しい腕も。
だから私だって、いつか次に触れるその熱を、今もまた求めている。
雪森(X:@yukimori_Ooe)(スペース:花‐か1)
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