イヴニング・ストロール 冷凍
【現パロ】(R-18)※玩具使用(のまま散歩)※先生が好きな同僚モブ 何でも許せる方のみ
イヴニング・ストロール 冷凍
【現パロ】(R-18)※玩具使用(のまま散歩)※先生が好きな同僚モブ 何でも許せる方のみ
「申し訳ございません」
時刻は二十一時半過ぎ。帰宅早々、青海さんはスーツに身を包んだまま玄関で深々と頭を下げた。
「お帰りなさい。夕飯にしましょう」
今夜は二人で飲みにでも行こうと約束をしていた日。……しかし数時間前、青海さんから急きょ打ち合わせが入ったと連絡が入り、予定が流れてしまった。教師として生徒や保護者に真摯に向き合い、仕事を優先する彼に対して不満に思うことは何もない。同棲をしている自分たちが帰る場所は同じ。彼と暮らせる、それだけで幸せなのだから。
自分の思いとは反面、彼は唇を引き結び表情を曇らせている。青海さんの急用で予定が流れたのはこれで二度目のことだ。尚のこと落ち込んでいるのかもしれない。いくら自分が心配いらないと伝えたところで、真面目な彼の気は収まらないのだろう。
余りものの野菜を入れて炊いた鍋から立ち昇る、湯気越しの彼の表情は未だすっきりしない。その面差しはどことなく疲労の色を浮かべていた。
「大丈夫ですか。お忙しかったんでしょう」
「……いえ。何ともありません」
素直に疲れたと言える人ではない、そうはわかっていても、胸の奥がちくりと痛む。
「先程のことでしたら気にしないてください。外食にはいつでも行けますから」
彼は持ち上げていた器を食卓に置き、短く息を吐き出した。
「申し訳なく思っています。あなたに迷惑を掛けて」
「迷惑だなんて……」
思い悩む必要はない、いつだってあなたと食事ができるのなら何だって良い。そう伝えようと、再び口を開きかけた時。
「何でもします。私にできること」
彼の真剣な眼差しは、自分に向けられた。
「約束を守れず。あなたの優しさに甘えてしまうのが嫌なんです」
「……楓さん」
元より彼は自罰的なところがある。自責の念にかられる必要はない、特に自分に対しては遠慮しないで良いと伝えたこともあった。
「気負う必要はありません。そんなことをしなくても、自分は……」
「いいえ。どうかお願いします。緋色さん」
自ら罰を受けようと願わないで欲しい。困ったように眉根を寄せ、目を潤ませて——そんな風に、見つめないで欲しい。
「本気で、そう思っているんですか」
「はい」
強く目蓋を瞑る。青海さんの震える声に、心の奥底にある加虐心が、少しずつに形になってしまう。
「……。考えておきます」
彼が定規でまっすぐ丁寧に引いた一本の線。その線に時折、複雑な感情を覚えてしまう。胸のざわつきを抑えられないまま、熱の篭もる器を手に取った。
◆◆◆
行きそびれた居酒屋に行こうか。少し遠出でもして泊まりに行こうか。家でのんびり映画でも観ようか……穏やかに過ごす方法は幾らでもあったはずなのに、自分の欲を満たすためだけの選択肢をひとつ選び取る。青海さんにとって良いことだとは到底思えないのに、それでも醜い欲を胸に抱いてしまっていた。
——お兄さんからのプレゼント。マンネリ化にもってこいのグッズだ。真面目な君たちは、見たことも使ったこともないだろう?
自分の反応を面白がるように口角を上げた人物を思い出しながら、青海さんの目の前で小さい箱の蓋を開ける。静馬さんに貰った、いわゆる大人の玩具と呼ばれるものだ。
その中には歪な形をしたものや、ボコボコとした突起がついたものが幾つか入っている。まさか使う日は来ないだろうと思っていた。自分たちには必要のないものだと思いつつ、捨てられずに取っておいたものだ。青海さんには不釣り合いなショッキングピンクのそれを、彼は手のひらに乗せてしげしげと眺めていた。
「実物を見たことはありますか」
「……いえ」
彼の白い指先が慎重に突起物をなぞる。思ったよりも興味がありそうなのが意外だった。
「どう違うのですか。こちらの太いものと」
「これはただ振動するだけのものですが」
青海さんが指をさした方のバイブを持ち上げて、側面に配置されている丸い電源ボタンを指で押す。くぐもった音を立ててバイブが左右に震えた。ボタンを押すたび、振動のパターンが変化するのを目の当たりにしながら、青海さんは眼鏡の縁をそっと持ち上げていた。
「こちらは遠隔で操作できるタイプのものです」
箱の中から紫色の、比較的小さい陰茎のような形状——ストッパーの付いたアナルプラグと呼ばれるものを机に置く。それと同じシリコン素材で作られた小さいのものを右手に持つと、真ん中にある電源ボタンを親指で押した。
「今日はこれを、あなたに使っても良いですか」
機械音を立て上下にくねくねと振動を始めた玩具に。青海さんは釘付けになっている。使い方を正しく理解しているかどうかは定かだが、普段と変わらない様子で、やがてこくりと頷いた。
「わかりました」
彼のことだ。一度やると決めたことは曲げない。……ここまでは、想定通りだった。
「これをあなたに挿れたまま、出掛けたいんです」
「……——え」
珍しく青海さんが声を上げる。小さい唇を僅かに開かせたまま、その言葉を、ゆっくりと咀嚼するように瞬きを繰り返していた。
「挿れたまま、あなたと出掛けたいんです」
「……挿れたまま」
「はい」
「……今からですか」
「……、はい」
「……何のために……」
上擦った声はあからさまに動揺して、妙な緊張感と高揚感を覚えながらも、彼の耳元へと顔を寄せる。
「あなたの困った顔を見たいんです」
青海さんがこくりと息を呑む。無論、嫌だと言うのなら止めるつもりでいた。ただの悪ふざけであることも判っている。静馬さんから貰った玩具を使うだけならまだしも、その玩具を挿入したまま出掛けたいだなんて。そんな馬鹿げたことを許してくれる筈がない——そうは思いながらも、懇願の言葉を漏らしていた。
「駄目、ですか」
震える指で眼鏡の縁に触れた青海さんが、ためらう間を置いて、やがて静かに呟いた。
「……やると言いましたから。何でも」
鼓動の跳ねる音がやけに煩い。手には紫色の玩具、敷かれた布団の上で自分たちは真正面から向き合った。
青海さんは自分に背を向けると、目の前でそうっと下着を下ろし始める。曝け出された臀部に、これから起こることを想起してくらりと眩暈がする……本当に良いのか。頭の片隅でそんなことを思いながら、覚悟を決めるようにひとつ深呼吸をした。
「解します」
「はい」
ローションで充分に濡らした指を、秘部へと慎重に潜り込ませる。普段から交わりを行っているそこは然程時間もかからず柔らかくなっていく。玩具にもたっぷりとローションを塗りたくり、すぐに準備は整った。
「……、挿れますね」
「……はい」
ぬるついた底へと宛てがうと、陰茎形の先端を埋め込ませる。無遠慮に押し込めると、つぷりと音を立て後孔を収縮させながら飲み込んでいった。やがて視界から玩具が消え、蓋をするようにストッパーだけがその場所に残される。
「ん……っ」
「入りました。服を着てください」
自分の声に反応した青海さんが、僅かに眉間に皺を寄せたまま、下着とスラックスを履き始める。
「大丈夫ですか」
「問題ありません」
床に手をついて慎重に立ち上がろうとする彼を見ながら、……無意識だった。リモコンの電源に指が触れてしまっていたのは。途端青海さんが身体をしならせ、崩れるようにその場に倒れ込んでしまう。
「っ……! お。大崎さ……!」
彼のそばに寄ると、腕を掴まれ咄嗟に戸惑いの表情を向けられた。電源を切ろうとボタンを長押しするも押し込みが甘かったようで、違うパターンの振動音が聞こえてきた。
「と……っ。止めてくださ……っ」
掴まれる手の力が強くなるのを感じながら、ようやく電源を落とす。脱力したように下を向いたまま、短い呼吸を繰り返す彼を見つめた。
「この状態で、出掛けるんですよ」
顔を赤くした青海さんが俯く。しかし俯いたまま、黙って頷いた。真面目で従順で、そんなところがひどく愛おしい。
青海さんの肩を支えて立ち上がり玄関へ向かう。外は薄暗く、ちょうど街灯の明かりがあちこちで点灯を始めた時だった。
「いつでも自分に掴まって構いませんから」
気丈に歩き出す青海さんの背に声を掛ける。小さな眉毛は顰められていて、目で訴えるように自分を見た。
「どうかしましたか」
「……電源を入れるときは。教えてくれませんか」
「駄目です。それでは意味がありません」
不安げに揺れる瞳を前にする。そんな風な表情を向けられれば、虐めてしまいたくもなってしまう。
「——!」
立ち止まった青海さんが、傍の電柱に寄り掛かるようにしてその場に留まる。力を入れていた親指を離すと恨めしげに睨まれた。きっと明日は、口をきいてもらえないかもしれない。それでも自分の欲望と好奇心に抗うことは、もう出来なかった。
「まずはコンビニまで行きましょう」
それでも手を差し出すと大人しく絡められる。自分達の不埒な行為に、その背徳感に、気持ちを昂らせながら夜の住宅街を歩き始めた。
目的地のコンビニが見えてくる。あれが折り返し地点だ。繋がれた手はじわりと汗ばんでいて、その汗が自分のものか、はたまた何食わぬ顔で歩く青海さんのものかはわからなかった。
その刹那、ぱっと手が離され、青海さんが自分と距離を取る。彼が目を向けた方向へ自分も視線を移した。
「あれ、青海先生?」
そこには黒縁の眼鏡を掛けた小太りの男性が立っていた。ジョギングの最中のようなジャージ姿に、首からはタオルをかけた出立ちだ。
「ああ、青海先生じゃないすか。お住まい、この辺りでしたっけ」
「こんばんは。……はい。コンビニへ用事があり」
青海さんは姿勢を正して男に向き合う。知らない男性だが、雰囲気からして学校の関係者だと察し、合わせておこうと軽く会釈した。
「こんばんは、大崎と申します。彼の友人です」
「ども、青海さんの同じ学校の者です。……ふうん、ご友人ねえ」
値踏みでもするかのような視線を自分に向けた後、青海さんの立ち姿を上から下まで、なぞるように目線を往復させている……不愉快な視線だ。
「青海先生もコンビニとか行くんだ。何買うんですか?」
「二人で酒を飲もうと。夕食後に」
「へえ。そんな学生みたいなことするんですね。……意外だな。俺とも今度飲んでくださいよぉ」
明らかに熱の篭もった眼差しに胸が騒ぐ。やはり、青海さんに対して好意的な感情を持つ男性だ。誰にでも誠実に対応する青海さんを想像して、いてもたっても居られなくなる。
「……!」
「先生? どうしたんすか?」
ざり、と地面を踏み締める音を立てて青海さんが下を向く。
「……いえ。問題ありません」
思わず手にしていたリモコンの電源を入れてしまったことを、目の前の教師だけが知らない。青海さんは素知らぬ顔で眼鏡の縁を持ち上げた。
「なら良いんですけど。そしたら、いつ飲みに行きます? 会議もないし、来週水曜とかどうですか」
「そう。ですね——」
……そうですね?
青海さんの言葉を反芻する。この状況下で、彼は物事を正常に判断できないのかもしれない。それでもその発言は聞き捨てならなかった。親指のスイッチに触れながら、目の前の男を睨む。
「! ……ぁ……」
「え? 青海先生、どうしましたか?」
「……あっ……な。なんでも……ありませ——っ!」
眉根を寄せ、あえかな声を漏らした青海さんが、とうとう膝をかくりといわせてよろける。慌てて男の手が伸びてきたが、それを奪うように彼の身体を支えた。表情を隠すように抱くと、大人しく自分の腕へと収まってくれる。
「すみません。体調が悪いみたいですので、失礼します」
「ぁ……っん……」
「だ、大丈夫ですか? なんか苦しそうですけど……」
「っう……」
「問題ありません。それと、青海さんは飲みには行けませんので。他の方をお誘いください」
戸惑う男を無視して青海さんを促す。踵を返し、彼の肩を抱いてその場を後にした。
コンビニには向かわず人通りのない近所の公園へと足を運ぶ。街灯のない暗い木の下へと青海さんを誘導すると、人がいないことを見計らい、体重を預けるように自分に寄り掛かった。
「……ぉおさきさっ……ずっと……動いて……っ」
耳を澄ませば微かに、二人にしか聞こえない機械音が響いている。そっと抱き締め、褒めるように頭を優しく撫ぜた。
「我慢できて、偉いですね」
「は……んっ」
形の良い耳に唇を寄せ軽く歯を立てると、膝を笑わせてかくりと力を抜かしてしまう。抱き留めていなければ崩れ落ちていただろう。
「ゃ……っいや……」
「どうしたいですか。このまま、帰れますか」
「嫌……です。と……とって。取ってください……っはやく……」
目には涙を浮かべ、努めて小声で話そうとするはいじらしく、加虐心が刺激されるだけだった。いつも凛として表情を崩さない、青海楓という高潔な人が、恥じらいを捨て、快楽を求めて自分のもとへ堕ちてきてくれる。
この瞬間が、いつも堪らなかった。
「後ろを向いて、手をついてください」
地面に膝をつけると、大人しく背を向けた青海さんのスラックスへ早急に手をかけた。彼の性器は芯を持ち、先走りで濡れそぼり、膝下まで下ろした下着は湿っていた。こんな状態で歩いていたなんて、痴態に思考が焼き切れてどうにかなりそうだ。逸る鼓動に一刻も早く熱を解放したい欲が込み上げる。
秘部に蓋をするように被さったプラグのストッパーを指で軽く引っ張ると、木に凭れる青海さんが喘ぐ声で返事をした。
「ひぁっ……」
「これ、出して欲しいですか」
振動する玩具を押してみたり、引いてみたりして反応を確かめる。
「……は……んっ」
「ちゃんと口にしてくれないと、分かりません」
ぐりぐりと奥へ擦り付けるようにプラグを回すと、声が止まらなくなっていく。
「やっ……! やめてくださっ……も……はいらな……」
「いいえ、楓さんはいつも自分のを入れていますから、まだ奥まで入ります」
青海さんの好いところ——前立腺の裏の部分を探して、震えるそれを押し付けた。
「ここも好きでしょう」
「あ——ッ!」
びくびくと中が痙攣して、外へと押し出す力を無理矢理押さえ込む。ぱたぱたと前から落ちる精液は、達したことの証明だ。
「……は……んんッ」
振動したままの玩具に快楽を引き摺られ、唇から声が漏れる青海さんの顔を上に向かせる。口の端から零れていた唾液を舌先で舐めとった。
「あまり声を出してはいけませんよ、ここは外なんですから」
「——!」
咄嗟に口を手で覆う仕草をするも、足に力が入らないのか、倒れ込みそうになる彼の腰を掴む。まだバテて貰っては困る。入れたままだった玩具に手を掛けると、水音と共に一気に引き抜いた。
「んううっーー……!」
かく、かくと不随に揺れる身体に、また達したのだと悟る。
「先ほどお会いした男性は、教師ですか」
「っは……っは……ひ……」
返事もままならない彼に、自らのスラックスのベルトに手を掛けながら問い掛ける。
「よく話すんですか」
「……っい。いえ——」
「見ていました、あなたの事を」
あれは単なる視線ではなかった。隙を見て、あわよくば青海さんに付け入ろうとしている。あんな男たちが青海さんの傍にいるのだと思うだけで、苛立ちが沸き立ってしまう。
「あんな風に見られているんですね。いつも、学校でも」
立ち上がったものを秘部へと擦り付ける。ひくついた底は早く欲しいと求めるようで、誘われるままに挿入した。時間を掛けてゆっくりと押し進める。彼の唇からは甘い吐息が漏れ出る。繋がった場所は蕩けてしまいそうな程に熱い。今すぐに動き出したい欲を抑え込んで、腰をぐっと押し付けて馴染むのを待った。
「あぅう……く……」
「すごい締め付けですね」
「——っ……」
シャツ越しに彼の身体を弄り胸の先端を摘むと、ぎゅうと絞られるように中が戦慄いた。後ろから攻めるこの体勢では、彼の顔を窺うことが出来ないことが残念だ。
「やめ……こんなばしょ……で……っ」
「恥ずかしいですか? でも腰、動いていますよ」
吐息混じりに囁くと、繋がったままのそこがぐちゅりと水音を立て、同時に中がひくりと蠢いた。こんなにも悦んで受け入れてくれる。嬉しさ反面、膨れ上がるのは醜い独占欲だった。
「楓さん。あなたのことが好きです。自分が、他の誰よりも」
腰をより一層強く掴む。怒張は一番太い部分を超えると奥の方まで侵入を許してしまう。青海さんは返事をしない。奥へと突き入れる度にああ、とか、うう、とか、言葉にならない声だけを零している。こんなにもあられもない姿の彼を、自分だけが知っている。
「お願いですから、蔑ろにしないでください。自分が一番大切にしている、あなた自身のことを」
きつく締めつける動きは、徐々に食むような動きに変わってゆく。まるでもっと欲しいと強請るように。
「頼ってください、何でも話してください、……もっと自分を、求めてください……」
「ッ——ああ……う……」
耳元でひとつ囁くたび、呼応するように内壁がびくびくと震える。彼の甘ったるい声に頭を痺れさせたまま、彼の中で自分のものを扱くように何度も擦り付けた。二人の体液が混ざり合う粘液と荒い息は、人が通ればきっと聞こえてしまう。最早彼は……いや、自分達は、ここが外だということを忘れている。互いが与える快楽に夢中になって耽っていた。
「愛しています、楓さん」
「っあ……——」
首筋に歯を立てると、彼の体が一際大きく揺れたと同時に奥の方に吐精した。どくどくと長い射精を、搾り取るように中が収縮した。
額からは汗が噴き出て、手の甲で乱暴に拭う。完全に力を抜かしてしまった青海さんの衣服を着させ、その場に座らせると、顔に張り付いた汗をハンカチで拭った。
「楓さん。……大丈夫ですか」
かろうじて残った意識で一度だけ頷く。焦点の合わない瞳で涙を浮かべる目元へ、宥めるように唇を落とすと、それさえも甘やかな刺激となるのか、震える息を吐き出した。自分の上着を彼の肩へと掛けて丸ごと抱き締める。鼻を啜る音を立てながら大人しく自分の腕の中へと収まってくれた彼を愛おしく思いながら、いくら伝えてもまだ足りない言葉を囁く。
今だけは、自分だけの青海楓でいて欲しい。自分だけを、見つめていて欲しかった。
◆◆◆
眩い橙色に染まる視界。柔らかい布の感触に、自宅のソファの上で横になっていたことに気がつく。顔を上げると、目の前には青海さんが立っていた。
「……え……」
おかしい。先程まで外にいた筈だ。誰もいない公園に、二人きりで——。
「目が覚めましたか」
「自分達はいつの間に帰ってきたんですか」
青海さんはきょとんとした顔で僅かに首を傾げる。
「何の話です」
「自分は帰宅して、すぐに寝てしまいましたか? あの玩具は……」
「玩具」
そういえばあの時間帯は夜だった。たった今、窓の外から見える夕陽は地平線と交わり……その時ようやく、あの出来事が全て夢だったことに気がついた。
「今日は出掛けていません。あなたは昼食のあと横になると言ってそのまま」
何と生々しい夢なのか。思わず自らの手を見つめる。触れ合った肌の温かさを、口付けの柔らかい感触を、今でも鮮明に思い出せるのに。
「ところで玩具とは。どういう意味ですか」
「……、……」
夢の内容を口に出来るはずもなく。顔を合わせることができずに俯くと、ぎしり、と鈍い音を立て、ソファがゆっくりと弛んで揺れた。
「言えないような夢ですか。私には」
「……!」
何事だと思う暇もなく、青海さんが顔を近づけてくる。彼の手のひらが覆い被さった場所、寝起きで緩く立ち上がっていたものを撫でられ、腰の奥がじわりと熱くなる。まるで誘うような熱のこもった視線に、未だ夢の中にいるのではないかと錯覚する。
「か、楓さん……?」
「お待ちしていました。あなたの目が覚めるのを」
愛おしいものでも触れるように優しく撫でられ思わず逃げ腰になる。夢に落ちる前の記憶を慌てて手繰り寄せる。そういえば、今朝から青海さんは、少しだけ落ち着きのない様子だったような——。
「申し訳ありません。いつも上手く伝えられず。……ですが。本当は……」
……もしかして、今日のことを期待していたのではないか。
そう思わせるほどに、彼の瞳は潤んでいて。
「触れて欲しいと思っています。あなたに。……いつも」
これが夢ならば、もう夢でもいい。今は目の前の欲に溺れるかと青海さんの腰を抱く。
「してください。夢の続き」
夕焼けに染められた顔は橙色に染まり、双眸を細めた彼のなんと美しくひどく扇状的なことか。
寝ても醒めても彼のことしか頭にないのだと情けなくも思いながら、恍惚を孕んだ溜め息ごと口付けた。