岡山確率論セミナー

岡山確率論セミナーについて

  • 岡山確率論セミナーは,確率論・統計学・数値解析・機械学習等・その他関連分野の研究講演・情報共有を目的としています.

  • 遠方の研究者・社会人等の参加・講演のため,またコロナ禍における感染拡大防止のため,「オンライン(Zoom)」にて開催します.

  • 講演者を随時募集しております.ご希望の方は世話人までご連絡ください.

参加方法

  • 講演Zoomリンクなど,セミナー情報通知のメーリングリスト登録をご希望の方は「登録ページ」からご登録ください.セミナー前日にZoomリンクをお知らせします.

  • メーリスを登録希望した方で,連絡メールが届いていない場合は,「田口」までご連絡ください.

  • メーリングリストに登録しない場合でも,「今後の予定」の「参加登録」からご参加いただけます.

世話人

  • 青山 崇洋(岡山理科大学,aoyama[AT]xmath.ous.ac.jp)

  • 上原 崇人(岡山大学,takaue [AT] okayama-u.ac.jp)

  • 田口 大(岡山大学,dai.taguchi.dai [AT] gmail.com, daitaguchi [AT] okayama-u.ac.jp

今後の予定(更新日:2021年4月22日)

  • 第122022年514日(土),10:00-11:00

講演者:濵口 雄史(大阪大学

題目:LQ確率制御の基礎と発展

概要:線形状態方程式と二次形式評価関数によって定式化される最適化問題をLinear-Quadratic (LQ)制御問題と呼ぶ。状態方程式が確率微分方程式(SDE)で記述されるLQ制御問題は古くから研究されており、Riccati方程式と呼ばれる非線形1階常微分方程式を用いた最適戦略・値関数の特徴付けが知られている。本講演の前半部分では、SDEに関するLQ制御問題の先行研究を紹介する。後半部分では、状態方程式がSDEの発展形である確率Volterra積分方程式(SVIE)で記述されるLQ制御問題について得られた結果を紹介する。本講演の後半部分は四川大学のTianxiao Wang氏との共同研究に基づく。

過去の講演リスト

2021年度

  • 第11回2022年3月19日(土),10:00-11:00

講演者:藪奥 哲史(北九州工業高等専門学校)

題目:ランダム行列理論とその時間発展模型について

概要:確率変数を行列成分にもつ行列をランダム行列という.ランダム行列理論(RMT)は原子核のエネルギー準位を理論的に計算できる模型として1950年代に急速に発展し,その後数学的定式化がなされ,関連する数理物理模型とともに研究されている.本講演ではRMTの古典的な結果を紹介し,その後行列値確率過程を扱う.ランダム行列の固有値は"反発力"をもっており,実現されるランダムな固有値は,ある空間上に相関を持ったランダムな点配置と思うことができる.このランダム固有値について,行列サイズ無限大における経験測度極限や,ある区間における存在確率極限などのよく知られた結果を紹介する.後半では行列値確率過程を考える.静的RMTの結果から,その固有値過程は"反発力"をもつ非衝突過程を構成すると想像できる(Dyson's Brownian motion models).特に行列の対称性を崩したとき(Girko-Elliptic Ensemble)や三重対角行列(Gaussian Beta Ensemble)の場合に,その固有値過程がどのように振舞うかについて,確率解析を用いて講演者が得た結果を紹介する.


  • 102021年10月30日(土),10:00-11:00

講演者:長田 翔太 (九州大学)

題目:行列式点過程とPoisson点過程

キーワード:行列式点過程,普遍性,Poisson点過程,測度力学系,Bernoulli性

概要:行列式点過程は反発力が働く粒子系のスナップショットを表す.例えば,ランダム行列の固有値分布,ガウス型解析関数の零点過程,ヤング図形集団上の確率測度,一様タイリング,一様全域木など,様々な対象の中に現れる構造である.本講演では,行列式点過程の具体例と一般的な枠組みおよびその応用を紹介する.さらに,行列式点過程がPoisson点過程とどれだけ近いかという疑問を考察した結果を紹介する.


  • 92021年10月23日(土),10:00-11:00

講演者:伊縫 寛治 (慶應義塾大学)

題目:非自励系反復関数系と対応するフラクタル

概要:有限個の縮小写像からなる反復関数系やこれに対応する極限集合(フラクタル)は今までよく調べられてきたが, これだけでなく反復させる関数が毎回同じでないような反復関数系(非自励系反復関数系)やこれに対応する極限集合についても徐々に研究されつつある. しかし, これまで考えられてきた非自励系反復関数系はコンパクト距離空間上で定義されたものに制限されて考えられてきた. このような制限は今までの有限個の縮小写像からなる反復関数系には無かった制限である. 本講演では, このような制限を取り除いた, 完備(可分)距離空間上に定義された非自励系反復関数系を考える. そして, このような設定における極限集合の構成やそれらに関連する写像や測度の基本的な性質に関する結果を説明する. これらの結果を得るためのポイントは, バナッハの不動点定理を今回の設定に整合するように適切に拡張した点にある.


  • 82021年8月28日(土),10:00-11:00

講演者:大泉 嶺(国立社会保障・人口問題研究所)

題目:生活史進化と確率制御理論

キーワード:齢―多状態構造化モデル,繁殖価,安定齢分布,Hamilton-Jacobi-Bellman 方程式

概要:生物の成長・繁殖・死亡というスケジュールを生活史(life history)と呼ぶ.生物学では,現在存在する様々な生き物を特徴付ける生活史は進化の過程でその環境において最適化された結果と考えられている.成長期間、繁殖率、死亡率といった生活史を決定づける要素を最適に制御することで,自分の子孫数を最大化することを生活史進化という.本講演では,栄養器官や生殖器官など年齢に応じて成長するサイズなどの状態成長の過程と,年齢とその状態に依存した出生率と死亡率からなる人口動態を表す偏微分方程式:齢―多状態構造化モデルを題材に生活史進化を論じたい.ここで,齢―多状態構造化モデルの作用素が持つ最大スペクトルに関する固有関数を安定齢分布とよび,その随伴固有関数を繁殖価とよぶ.前者は定常状態での集団内の年齢および状態の分布を表し,後者は各年齢・状態における(ヒトの場合女性の)出生に関する寄与度を表している.これらの固有関数が持つ特性とそれらが従う方程式から Hamilton-Jacobi-Bellman 方程式が導けること,進化に関する目的関数を見いだせることを紹介し,自然選択が働く対象について議論したい.


  • 72021年7月31日(土),10:00-11:00

講演者:兼子 晃寛大阪大学

題目:スパースグリッドを用いた後退確率差分方程式の数値解法の研究

キーワード:後退確率差分方程式、スパースグリッド法

概要:後退確率差分方程式 (Backward Stochastic Difference Equation ; BS∆Eと略記) は、その連続時間版である後退確率微分方程式 (Backward Stochastic Differential Equation ; BSDEと略記) と比べ、ノイズ過程の従う分布に関して自由度が高く、幅広い応用可能性を持つ。講演者は、高次元連続状態空間を持つBSΔEに対応した数値解法として、一次元求積/補間アルゴリズムの効率的高次元化手法であるスパースグリッド法を用いた手法を開発し、その誤差評価を行った。本講演では、BSΔEやスパースグリッド法の紹介を交えつつ、開発手法の定式化や誤差評価を理論的に与える。


  • 62021年7月17日(土),10:00-11:00

講演者:山野辺 貴信北海道大学

題目:確率過程の漸近展開による確率的振動子モデルの解析

キーワード:jump-diffusion過程、神経細胞モデル、漸近展開

概要:神経系ではスパイクと呼ばれる電位変化の列で情報伝達が行われる。しかし、スパイク列のどの統計量が情報キャリアか明らかになっていない。スパイクはほぼ一定の形状をとるため、スパイク発生時刻列の何らかの統計量が情報キャリアであると考えられる。神経回路網理論によれば神経回路モデルにおける情報キャリアは構成素子の「出力関数」に依存することが示唆される。また、神経細胞は、拡散過程で近似されるイオンチャネルノイズ、シナプス小胞の自発的放出によるジャンプノイズなどが存在する状況下で動作する素子でもある。従って、これらのノイズを含む神経細胞モデルの統計的大域挙動を調べ、その特性を調べることは情報キャリアの理解のために必要である。そのために推移確率密度が必要となる。神経細胞が一定間隔でスパイクを発生するときのダイナミクスは、モデルがリミットサイクルを持つ場合に対応し、そのダイナミクスは非線形振動子であるStuart-Landau方程式により記述される。本研究では、確率過程の漸近展開理論を用い、jump-diffusion過程を加えたStuart-Landau方程式の推移確率密度の漸近展開を計算した。セミナーではこの結果を紹介する。本研究は、石川保志氏(愛媛大・理工学研究科)との共同研究にもとづく。


  • 52021年6月26日(土),10:00-11:00

講演者:高畠 哲也広島大学

題目:連続観測に基づく非整数Ornstein-Uhlenbeck過程の局所漸近正規性

キーワード:非整数Ornstein-Uhlenbeck過程、局所漸近正規性、連続観測

概要:本講演では、非整数Ornstein-Uhlenbeck過程の平均回帰係数と平均回帰水準の同時推定問題を連続観測のもとで考察する。平均回帰係数と平均回帰水準を同時推定する際、通常の対角なレート行列を用いた場合にはFisher情報行列が退化し、尤度比の局所漸近正規性が成立しないことが知られている。近年Brouste-Fukasawa(2018)で提案された方法と同様に適切な非対角レート行列のクラスを定めることで、非退化なFisher情報行列が導出でき、尤度比の局所漸近正規性が成立することを紹介する。本研究は、千葉航平氏(阪大・基礎工)との共同研究に基づく。


  • 第4回2021年6月12日(土),10:00-11:00

講演者:江口 脩(福岡大学)

題目:Energy Conservation in Infinitely Wide Neural-Networks

キーワード:Wide neural-networks,Cumulative sum of parameters,Energy conservation

概要:層幅が十分に大きいNTK-parametrizedニューラルネットワークは,学習過程においてパラメータが初期値からほとんど変化しないことが知られている.入力層,層幅が十分に大きい1つの隠れ層,出力層からなる3層ニューラルネットワークは入力データにかけ合わせる重み,閾値パラメータ,活性化後にかけ合わせる重みの3種類のパラメータをもつ.本論文では,このネットワークにおいて以下の2つの研究を行った.1つめは,各エポックごとに各種類のパラメータをすべてのニューロンにわたり累積して,ニューロン番号を時間と見立てた3種類の確率過程を考える.層幅無限大のとき,活性化前のパラメータにより構成されるこの確率過程は学習前と学習後でほとんど変化せず,一方で活性化後のパラメータにより構成される確率過程は変化することを示す.これまでの既存の研究では,層幅無限大のNTK-parametrizedニューラルネットワークのすべてのパラメータは学習の過程でほとんど動かないという普遍的な性質があるためにそれぞれのパラメータ自身の挙動に注目しても,それが活性化前であるか活性化後であるかは区別できなかった.本研究により,パラメータの累積和の挙動に注目することでそれらが明確に区別できるようになった.2つめは,層幅無限大におけるパラメータの分散(``energy'')が学習過程で不変であり,ゆえに学習の保存量となることを示す.この研究は,NTK-parametrizedニューラルネットワークの層幅無限大におけるモデルを,パラメータ空間を無限次元の関数空間として考え,極限操作を経由せずに直接その性質を理論的に解析するための扉を開ける.


  • 第3回2021年5月29日(土),10:00-11:00

講演者:湯浅 智意立命館大学

題目:非有界係数を持つstochastic volatility modelの汎関数に対する部分積分公式(論文Chen-Frikha-Li (2021+)の紹介)

キーワード:部分積分公式,マルコフ連鎖による確率表現,Unbiased simulation method,parametrix method

概要:本講演では,Mallavin解析ではなくBally-Kohatsu (2015)を基にした 非有界係数を持つstochastic volatility modelの汎関数に対する部分積分公式を紹介する. 部分積分公式を導出するにあたって,Bally-Kohatsu (2015)で述べられている半群の無限級数展開に対して,直接ルベーグ測度に関する部分積分公式を適用した場合,その無限級数は収束するとは限らない. そこで,近似過程の離散時間の各区間毎に部分積分公式を行い,それらを上手く組み合わせることで,その収束を可能とさせる. このテクニックに焦点を当て,マルコフ連鎖による確率表現の導出方法などを解説する.


  • 第2回2021年5月15日(土),10:00-11:00

講演者:塚田 大史(鹿児島大学)

題目:Pathwise uniqueness of SDEs driven by finite variation Levy processes

キーワード:Pathwise uniqueness, stochastic differential equations, Levy processes

概要:We consider one-dimensional stochastic differential equations driven by Levy processes with finite variation paths. In this talk, we give some non-Lipschitz conditions on the coefficients, under which the pathwise uniqueness of the solution to the equations is established.


  • 第1回2021年4月17日(土),10:00-11:00

講演者:田中 章博(三井住友銀行)

題目:xVAと後退確率微分方程式の近似について

キーワード:後退確率微分方程式, 後退確率差分方程式, xVA, Wasserstein distance

概要:デリバティブプライシングにおいて、xVAと呼ばれる価格調整が実務において昨今行われている。 一方で、xVAはBSDEの 解を用いて定義されることから、数値計算が難しく、簡素的な手法で計算されている。 発表では、xVAと後退確率微分方程式の関係について述べ、格子上のランダムウォークを用いたBSDEの近似について紹介する。