M&Aでは、買収前のステップとして「法務DD」「財務DD」などのDD(デューデリジェンス)が行われるのが通常です。
デューデリジェンスとは、契約内容や相手方企業の法務体制や財務体制に不安がないかを、買収前に専門家の目でチェックすることです。
当然、多額の費用をかけて相手方企業を買収する以上、
買う側の企業は売り手の内情を詳しく確認し、どの程度のリスクを孕んだ企業なのかを、
細かく精査していくことが通常です。
ただ、最近では多くの企業が、合わせて「労務DD」を実施するようになってきています。
労務DDでは、労働と社会保険の専門家である社会保険労務士が、売り手側企業の未払い残業代や社会保険の未加入、労務関係の紛争リスクなどの項目を、細かくチェックしていきます。
様々な労務リスクを抱えた企業は意外と多く、
状況によっては数百万円の未払い残業代や、数千万円の訴訟リスクを抱えた企業もあります。
未払い残業等の債務は決算書類などの帳簿には載らない、「簿外債務」と言われています。
普段は表沙汰にならないものの、労働基準監督署の調査や、
退職した従業員から訴訟を起こされる等で一気に表面化し、
突然請求が行われる性格のものであるためです。
買収前にこの問題が表面化していれば、
予め未払い残業代や訴訟リスクを解消した上で買収ができたところ、
買収した後で発覚した場合は、買い手側が全てのリスクを引き受ける形になります。
そのため、帳簿に載らない「簿外債務」、および訴訟リスクである「偶発債務」のチェックを行う労務DDは、
今やM&Aではなくてはならない必須業務となっています。
買い手側の企業と打合せを行い、重点的に調査して欲しい内容などをヒヤリングし、労務DDの方針を決定します。
売り手側企業から、法定帳簿などのDDに必要な書類を回収します。
回収した書類をもとに、労務DDを実施します。また、関係各者にヒヤリングを行い、詳細なリスクについて調査します。
調査結果を買い手側企業に報告します。M&Aリスクを可視化し、実施可否の判断や買収額を交渉するための材料として提供します。
M&Aは、労務DDを実施して終わりではありません。
各専門家からのDDの結果をもとに、買い手側企業はM&Aの実施を取りやめるかどうかの判断を行い、
予定通り買収する場合には、リスクをどのように処理していくのかを決定します。
場合によっては、リスク額を踏まえてM&Aの買収額を調整することもあります。
また、M&A実施後は、企業間の人事面、組織風土などが異なる企業が1つになった状態です。
むしろ買収後がスタートラインであり、
ここから異なる人事制度、給与体系、評価制度をどのように一本化していくかを考えなくてはなりません。
弊所では、労務DDだけではなく、統合後のPMIの実施まで、労務の専門家の立場からサポート致します。
弊所では、買い手側、売り手側の両方の労務DDをお受けしております。
買い手側企業様からは、M&Aによる未払い残業や訴訟リスクの発見や、買収額の交渉材料として、
売り手側企業様からは、事業承継やM&A買収前の市場価格上乗せのための交渉材料として、
ご利用いただいております。
現在労務DDを請け負っている社労士は多くはありませんが、
弊所では労務DDの豊富な実績をもとに、M&Aに関わる企業様をサポート致します。
M&Aをお考えの企業様や、M&A仲介の企業様がいらっしゃいましたら、
是非お気軽にお問い合わせくださいませ。