科研プロジェクト:基盤(B)17H02497
EUの規範パワーの持続可能性に関する実証研究
研究目的
EUの規範パワー論を新たな理論的視角から実証的に再検討する。これまでの規範パワー論はもっぱらパワーの強度を問うものであった。本研究ではEUが規範パワーとして存在し続け る制度的な条件にアプローチする。その条件としてマルチアクターシップ、シンクロナイゼーション、リーガリゼーション、メインストリーミングの 4 点を提示、それぞれの成立・存続・変容を把握する指標を策定し、4 条件がEUの規範パワーとしての存在を担保するメカニズムに ついて、安保戦略・近隣政策・人権デモクラシー行動・貿易投資協定・対トルコ関係の5領域 を事例に仮説を定立し、政策文書分析・政治アクターのスピーチ・実務者インタビューを通じ て検証していく。
研究の学術的背景
実存的ともいわれる危機にあって、EUの行く末が厳しく問われている(実存的危機とは 2016 年 EU新世界安保戦略に盛り込まれた文言)。安易な解体論やドイツ陰謀論のたぐいが巷に溢れる言論情況にあって、学術研究サイドの確実な認識が求められるところである。本科研プロジェクトで は、実存的危機にあるEUについて、国際政治の視点からどのように認識すれば良いのかを問 う。過激なテロと大量の難民に揺さぶられ、不安定の弧とも呼ばれる(ベルテルスマン財団の報告書 による)近隣地域の(潜在的なものも含めた)紛争にさらされるEUが、Brexit(英国離脱を決めた)国 民投票の“敗北”を受けて、その求心力を高めるために、外に敵を求め、軍事のハードパワー 路線に転換し、NATOと一体化していく方向に進んだとしても、それはけっしてありえない ことではない。あるいはEU加盟各国がEUを離れ個別に力の国際政治を生き抜こうとしはじ めたとき、その負のインパクトは計り知れない。EU28がひとつにまとまり(少なくとも域内に おいては)戦争を放棄したヨーロッパ──ノーベル平和賞を受賞したEU──を創り上げている ことを、自明視してはいけない。アメリカの相対的な力の低下と中国・ロシアの相対的な力の 増強がみられる21世紀前半の国際政治状況を前に、核保有国を含む 5 億人先進国集団EUの 対外行動のあり方は、国際政治学にとって、きわめて重要な認識課題のひとつになろう。まさ にこうしたコンテクストにおいて、規範パワー論をあらためて問うことの意義を主張したい。
規範パワーとは国際社会において何が規範であるかを定義する能力をいう。それは自らのスタンダードを国際ルールに仕立て上げる力であり、規範創造者として規範追随者(フォロアー)を増やしていく魅力である。民生パワーとも軍事パワーとも異質な独特のパワーであり、EU の国際アイデンティティ──グローバル社会における一体性のあり方──をとらえる概念だと主張される。短期にダイレクトに影響するフィジカルな実力──軍事力や経済力──よりも価 値理念の長期で間接的な影響力の方が認識対象として重視される。2002 年にイアン・マナーズ がJCMS誌(Vol.40-2, pp.235-58)に発表して以来、規範パワー論はひとつの研究潮流を創り上げ てきたといってよい。しかし、当然のことながら厳しい批判が突きつけられる(Whitman, Normative Power Europe: Empirical and Theoretical Perspectives)。ほんとうにEUの規範はパワーたりえているのか。北アフリカもウクライナもEUの近隣諸国はかえって政情を不安定化させていないか。気候変動枠組 条約の交渉でもEUのリーダーシップは限定的ではないか。EUのリベラルな価値規範が非軍 事の手段でグローバルに浸透していくという想定など、願望のEU論にすぎないのではないか。
このような批判に対して、本科研プロジェクトは別の見方を提示する。EUは危機にあって なお、規範パワーでありつづけようとするだろうか。規範の“パワー”の強度を問うのではなく、“規範”のパワーたろうとするEU加盟国の集合的政治意思の持続性を問うのである。実存的危機にあるEUが不安定なグローバル社会あってなお自らを規範パワーだと定義しその方向 に進もうとするのかどうか。その集合的政治意思はどのような制度的条件の下で担保されうる のか。EUが規範パワーとして自己規定していくよう加盟国を方向づけていく制度的条件の存 在を、本科研プロジェクトにおいて特定したい。
研究期間内に明らかにすること
EUが対外的に規範パワーとして存在し続けるよう加盟国を方向づけていく(と、仮説的に 想定する)制度的条件として、次の4点を研究の出発点とする。
マルチアクターシップ:規範や政策の形成に際して、多国間の場で中央政府以外のさまざまな次元のアクターを参加させているかどうか。
シンクロナイゼーション:EU域内で確立された規範や規制、基準と同等のものをグローバル社会にも浸透させようとしているかどうか。
リーガリゼーション:多国間協議の結果はソフトローに止めずハードロー(域内批准手続きを要する国際協定や条約)の形をとるように交渉しているかどうか。
メインストリーミング:多領域のイシューリンケージを目指す包括的アプローチをとって、人権・環境・社会・ジェンダーのいずれかをコア規範として措定しているかどうか。
以上 4 つの制度的条件がEUの対外行動に現れているのかどうかを把握するために、4 条件それ ぞれの指標を策定する。その策定のために
については域内のマルチレベル・ガバナンス推進と域外でのマルチラテラリズム
についてはEU規制のグローバル化と国際協定のEU法化
についてはハードロー志向とEU政治の司法化
については包括的アプローチ採用とコア規範設定
をそれぞれ参照点とする。以上ふたつずつの参照点それぞれにさらにチェックポイントを設定 することで、研究者によって主観的にぶれることを可能なかぎりふせぐ認識を目指す。
本科研プロジェクトではこうした4つの制度的条件がEU加盟国の集合的政治意思を制約し方向づけていくとする仮説を研究の中心にすえる。その実証的検証作業を通じてEUが規範パワーとして存在し続けるための4条件が個々の加盟国の政治意思を方向づけるメカニズムをあきらかにするのである。上記指標が仮説検証のための観察の手がかりとして利用される。以上 の仮説を洗練させ既存のヨーロッパ統合理論との異同を把握する作業も必要となるが、そのた めに後述の理論班による先行研究の網羅的なレビューと集中的な検討作業を予定している。
理論的想定を経験的に検証していく作業は、グローバル安保戦略、欧州近隣政策(ENP)、人権デモクラシー行動計画、貿易投資協定(とくにCETAとTTIP)、対トルコ関係の5領域で実施する。いずもれEU最重要対外行動領域であり、それぞれ 2015〜16 年に基本となる政 策文書がリニューアルされている。これを以前の政策文書と比較することで、時系列の変化も 含め政策文書分析を進めつつ、政治アクターのスピーチと実務者インタビューを実施、上述の 4つの制度的条件の存続・変容の有無を観察しつつ、深い理解を伴った仮説の検証を目指す。
学術的特色・独創的な点、予想される結果と意義
本科研プロジェクトは、規範パワー論の発展的改良を試みるものである。それにより、実存的危機にあるEUの認識にとって、かえって意義ある理論枠組であることを示していく。実存 的危機という以上、ただの危機ではなく、その本来的な存在のあり方が根本的な変容を被る可 能性にさらされているほどの危機だと、そういう理解になろう。したがって危機のEUをとら えるには、その本来的な存在のあり方を問うておく必要がある。規範パワー論はまさにそうし たEUのアイデンティティを掴もうとする理論枠組である。ただし、そのパワーの部分の過大 評価と過小評価の両極にたえず悩まされてきた経緯がある。本科研プロジェクトは規範“パワ ー”の強度の測定ではなく、“規範”パワーであろうとする集合的政治意思の存在の実証的把握 を目指すものである。この視点の転換は規範パワー論を甦らせる。英語による研究成果の発表は、日本発の理論形成の貴重な発信となるであろう。またEUが規範パワーであろうとするかどうかという政治の集合意思を問題にする研究は、広く国際規範研究一般にも一定の貢献とな る。規範の重要性をアプリオリに想定して規範の動態を追うのではなく、規範がパワーになりうるからこそ重要なのだという視点を明確に示した上で、その成立と持続の要件として、政治の集合意思とそれを方向づける制度的条件を実証的に明らかにしようとする本科研プロジェク トの研究は、法学研究のマテリアルや業績を政治学研究に活かしていく試みにもなる。法(規範)と政治(権力)のインターフェースのこうした追求は、国際規範研究に対して、その意義を深め、その研究対象を広げる役割を果たしていくことになるだろう。
研究計画・方法
EUの規範パワーを持続させる制度的条件としてマルチアクターシップ、シンクロナイゼー ション、リーガリゼーション、メインストリーミングの4条件に着目、先行研究のレビューを 通じて理論的考察を深め、4条件がEU加盟国の政治意思を制約し方向づけるとする仮説を検 証する。検証を進めていくため、4条件が成立し変容する様相を把握する指標を作成、それを 元に安保戦略・近隣政策・人権デモクラシー行動・貿易投資協定・対トルコ関係の5分野につ いて、政策文書分析、政治アクターのスピーチ分析、実務者のインタビューを進めていく。
本科研プロジェクトは全4年計画・半期ごと全8フェーズで次の4つの作業を行う。
EUが規範パワーを持続させる制度的条件を経験的に把握するための指標の策定
先行研究の網羅的なレビューを通じた仮説の定立・洗練化・既存の統合理論との接合
政策文書、政治アクタースピーチ、実務者インタビューの分析(上記指標利用)
研究成果報告(国内外の学会報告、研究書出版、国際ジャーナルへ英文論文投稿)
研究代表者・分担者は次のように分かれ分業体制で研究を進める。
指標策定・仮説定立のための理論班:武田健・臼井陽一郎・東野篤子・松尾秀哉
グローバル安保戦略担当 :市川顕・臼井陽一郎・松尾秀哉
人権デモクラシー行動計画担当 :小山晶子・福海さやか・小松﨑利明
欧州近隣政策(ENP)担当 :小林正英・武田健・東野篤子
貿易投資協定担当(CETA・TTIP) :小松﨑利明・市川顕・吉沢晃
対トルコ関係担当(難民合意) :東野篤子・小林正英・武田健
各班はそれぞれの担当領域で4つの制度的条件・各2つの参照点を元に、下図のとおり8つの ポイントで理論班策定の指標を用い分析を進める。全 40 のポイントの分析表が策定される。
なお、国内外6名の研究協力者に協力を依頼している。
Thomas Diez(ドイツ・チュービンゲン大学) :理論形成に関する助言
Michelle Pace(スウェーデン・ローキルデ大学):理論形成に関する助言
Dimitri Vanoverbeke(ベルギー・ルーヴェン大学) :実務者インタビューに関するサポート
Steve Van Hecke(ベルギー・ルーヴェン大学) :実務者インタビューに関するサポート
明田ゆかり(外務省):理論形成および貿易投資協定分析で助言
福井英次郎(慶應ジャンモネ研究センター):説定立・指標作成・データ処理で助言
年度ごとの研究計画は次の通りになる(下記図表参照)。
第 1 フェーズ(H29年上期):
新潟にてキックオフ・ミーティングを開催する。これにあわせて事務局の体制も整備する。 事務局は研究代表者臼井の本務校・新潟国際情報大学に設置する。
本科研プロジェクト参加者の分担と班ごとのリーダーを確認するとともに、研究課題と今後 の進め方について助言をもらうため、研究協力者2名を招聘する。ひとりは現在外務省で日E U・FTA交渉にあたっている明田ゆかり氏で、とくに貿易投資政策に関する分析の進め方に ついてコメントおよび指導を依頼する。またもう 1 名の福井英次郎氏には、同氏が非EU地域 の人々のEU認識について調査する国際プロジェクトに携わっていた経験から、日本人研究者 がEUの規範パワーに対してアプローチする際の、認識論上の注意点について、アドバイスを 依頼する。
なお、この第1フェーズに開始にあわせて、本科研プロジェクトの特設Webサイトを設置 し、プロジェクトの進行状況について定期的に(ひと月に1度程度)公表していくとともに、 プロジェクト参加メンバーの論説や記事、学術論文、学会報告など、その都度、関連研究活動 を掲載していく。
第 2 フェーズ(H29年下期):
新潟にて第1回研究会合を開催する。理論班による関連先行研究についての報告をメインに、 規範パワーの概念を中心にした理論枠組について、メンバー間で理解を深め、共有していく。 また取り上げる5つの行動領域について、分析対象とする政策文書を特定する。これは各班で 分担して作業する。文書は最新版とそれ以前のもの(10年ほど前のもの)の両方を分析対象 として、中長期の変化のパターンも探る。
9月以降は海外研究協力者2名を訪問する。まずは仮説の精緻化・洗練化に直結する理論形 成についてのアドバイスをもとめて、Thomas Diez 教授(ドイツ)と Michelle Pace 教授(スウ ェーデン)を訪ね、会合の機会をもつ。さらにインタビューを依頼する実務者のリストアップ もはじめるとともに、分析対象とする政治アクターのスピーチの特定を進める。
第 3 フェーズ(H30年上期):
新潟にて第2回研究会合を開催する。4つの制度的条件を把握するための指標をもとに分析 する政策文書と政治アクタースピーチの特定を終わらせる。本科研プロジェクトの対象アプロ ーチは、下記の図のようになる。前期までに実施する先行研究レビューの成果をベースに、こ の第3フェーズにおいて、同図の3分の2の作業計画を完成させ、全期間の見通しを立てる。
また海外研究協力者2名とブリュッセルにて会合をもち、本科研プロジェクトへのコメント ならびにインタビュー調査のための実務者選定につ いて、アドバイスを依頼する。
理論班は制度的条件把握のための指標と仮説の精緻化を進め、今期研究会合で途中経過を報告、政策 文書やアクタースピーチの特定作業と突き合わせ る。
第4フェーズ(H30年下期):
新潟にて第3回研究会合を実施する。本科研プロジェクト最重要の研究会合となる。規範パ ワーの概念、その持続可能性の制度的条件、その客観的認識を可能にする指標、そして特定し たEUの制度的条件が加盟国の集合的政治意思を方向づけるとする仮説の精緻化・洗練化につ いて、プロジェクト参加メンバーで共有する。この会合で確認しあった理解にそくして、本プ ロジェクト後半の研究を進めていくことになる。また実務者インタビューも実施する。11月 には日本EU学会でこの仮説を報告し、コメントを今後に活かしていく。
第5フェーズ(H31年上期):
新潟にて第4回研究会合を実施する。このフェーズは研究の遅れが生じた場合にそれを取り 戻すための調整期間とするが、9月に実務者インタビューを実施する。また研究会合では、4 つの制度的条件の成立・存続・変容を認識するための指標の共有と実証すべき仮説の精緻化・ 洗練化をさらに進め、プロジェクト参加メンバー間の共有の程度をいまいちど、強化しておく。
第 6 フェーズ(H31年下期):
新潟にて第5回研究会を開催する。各班から政策文書分析、政治アクタースピーチ分析、政策実務者インタビュー分析の結果(遅れている場合には途中経過)を報告してもらい、4つの制度的条件の成立・存続・変容について認識を共有していく。前期中に予定していた実務者インタビューが不可能だった場合、今期に実施する。各班の分析結果についてはWebサイトにまとめて掲載する。また10月に国際政治学会にてパネルを立てる(国際統合分科会にパネルプロポーザルを出す。そのための構成については、前期中に議論を重ね、終わらせておく)。
第 7 フェーズ(H32年上期):
新潟にて第6回研究会を開催する。各班から最終的なまとめを見すえた分析報告をもらい、4つの制度的条件の存続・変容について最終判断をくだすとともに、それをベースに仮説の検 証作業に集中する。その作業と同時並行で研究書出版へ向けて構成を決め、出版社との交渉に入る。9月第1週にUACES(英国EU学会)で報告する(3名を予定)。
第 8 フェーズ(H32年下期):
研究成果報告の執筆を主とする。新潟で最後の研究会合を開催するが、研究書として出版する本のドラフト原稿の書評会を実施する。国内研究協力者2名を招聘してコメントをもらう。 また国際ジャーナルに英文の論文を投稿する。その内容についても研究会合で検討し合う。なお関連研究動向のチェックも行い、必要に応じて研究書および英文論文の内容を微調整する。
中間成果:『変わりゆくEU─永遠平和のプロジェクトの行方』
明石書店より2020年4月に刊行予定
序 章 EU によるリベラル国際秩序? ◉臼井陽一郎
第 1 節 規範パワーへの意思
第 2 節 EU のグローバル戦略
第 3 節 集合的政治意思を支える制度
第 4 節 脱ペーパー・ヨーロッパの条件
第 5 節 本書があきらかにすること
第 1 章 規範的な政体としての EU の歩み ◉武田 健
第 1 節 規範的な政体としての EU
第 2 節 規範を重視し始めるきっかけ
第 3 節 政府間主義的な性格を残しながらの発展
第 4 節 法の支配の危機を契機とするさらなる発展の可能性
第 5 節 今後の行方
第 2 章 共通外交安全保障政策 (CFSP)に対するEU司法裁判所(CJEU)の裁判管轄権拡大 ◉吉本 文
第 1 節 CFSP の特殊性と裁判管轄権
第 2 節 判決理由の共通点
第 3 節 判決理由の正当化根拠
第 3 章 欧州逮捕状(EAW)─EU 刑事司法協力の理念と現実 ◉福海さやか
第 1 節 EAW とは何か─ EU 的刑事司法協力モデル
第 2 節 EAW の運用と問題点
第 3 節 刑事司法協力の Brexit への影響
第 4 節 EU 刑事司法協力の理想と現実
第 4 章 欧州テロ対策をめぐる EU・CoE 関係─テロ防止と基本権保障 ◉大道寺隆也
第 1 節 CoE テロ防止条約をめぐる EU と CoE の軋轢
第 2 節 標的制裁をめぐる法と政治
第 3 節 欧州テロ対策をめぐる二つの《溝》
第 5 章 EU の移民統合政策─域内でメインストリーミング、域外でパートナーと連携 ◉ 小山晶子
第1節 メインストリーミングを志向する移民統合政策
第 2 節 ガバナンスのツールとしての基金とモニタリング
第 3 節 域外パートナーを引き込んだ移民統合政策
第 6 章 ネオリベラリズムとデモクラシーの相克─EU・カナダ包括的経済貿易協定(CETA)におけるワロンの反乱 ◉松尾秀哉
第 1 節 EU の通商政策をめぐる規範政治
第 2 節 ベルギーとは
第 3 節 CETA のサーガ
第 4 節 EU の規範政治として
第 5 節 ネオリベラリズムか、それとも亀裂と分裂か
第 7 章 競争政策における規範パワーとしての EU ─ 変化と継続性 ◉吉沢 晃
第 1 節 規範パワーの政治的・制度的基盤の強靭性を測る
第 2 節 競争政策における EU 対外関係の発達
第 3 節 多国間協力─ ルール作りから政策収斂へ
第 4 節 二国間協力─ 多様な形態の模索
第 5 節 規範パワーの政治的・制度的基盤の揺らぎ
第 8 章 EU と国際貿易規律改革─ 規範性から現実的な機能性へのシフト? ◉関根豪政
第 1 節 EU の国際貿易規律改革のアプローチ
第 2 節 EU 単独の国際貿易規律改革提案 (コンセプト・ペーパー)
第 3 節 日米欧三極貿易大臣会合において示された国際貿易規律 改革提案
第 4 節 EU・中国間の WTO 改革提案
第 5 節 EU の貿易規律関連提案に透ける EU の狙いと限界
第 6 節 EU の国際貿易規律の改革提案の行方
第 9 章 ヨーロッパの『東』における EU 規範─ リベラルな秩序の変容と中国の台頭 ◉東野篤子
第 1 節 問題の所在
第 2 節 1990 年代から 2000 年代─ EU の規範パワーの「成功例」?
第 3 節 「ヨーロッパの東」への中国の進出─ EU の懸念と規範
第 4 節 中国をめぐる EU 規範─現状と持続性、戦略形成とイシュー
第 5 節 リベラルな秩序の変容と EU 規範の行方
第 10 章 対中関係に見る規範パワー EU ◉小林正英
第 1 節 勃興する大国と対峙する規範パワー EU
第 2 節 ケースとしての EU・中国関係
第 3 節 EU と中国の規範的一致と不一致 206
補 論 Brexit の政治と EU の規範 ◉臼井陽一郎
第 1 節 主権の政治化─ Brexit 政治の構図
第 2 節 北アイルランドと EU
第 3 節 主権の非政治化─ EU の制度特性
第 4 節 主権の政治化がもたらすもの
関連研究成果2020
学会報告
市川顕
「イリベラル・デモクラシーをめぐるポーランド=EU関係」日本国際政治学会2020年度研究大会国際統合分科会Ⅰ「欧州統合の求心力─域内と域外の比較」(武田健企画)、2020年10月24日(土)、オンライン開催。
臼井陽一郎
学会研究大会部会企画:「国際規制の政治─経済に公正を実現するもの」第13回グローバルガバナンス学会研究大会部会1、2020年11月14日・15日、オンライン開催。本科研分担研究者・吉沢晃が参加。
学会研究大会部会企画:「<法の支配>をめぐる政治:ヨーロッパ・ロシア・アメリカの視点」日本政治学会2020年度研究大会企画委員会企画、2020年9月27日(日)、オンライン開催。本科研分担研究者・武田健が参加。
小松﨑利明
「2010年代におけるEUの対国際刑事裁判所政策の態様」日本国際政治学会2020年度研究大会国際統合分科会III「ヨーロッパ統合の多次元連関─サブナショナル、ナショナル、EU、インターナショナル」(武田健企画)、2020年10月25日(日)、オンライン開催。
東野篤子
"The concept of Regional Security Complex and the EU connectivity strategy", EU-Japan Round Table series, 12 March 2020, Brussels.
松尾秀哉
「分離独立運動とEU:ベルギーを例として」日本国際政治学会2020年度研究大会国際統合分科会III「ヨーロッパ統合の多次元連関─サブナショナル、ナショナル、EU、インターナショナル」(武田健企画)、2020年10月25日(日)、オンライン開催。
吉沢晃
「国際競争ネットワーク(ICN)の役割と限界―規制の実効性と公正の観点からの考察」グローバル・ガバナンス学会第13回研究大会部会1「国際規制の政治─経済に公正を実現するもの」(臼井陽一郎企画)、2020年11月14日、オンライン開催。
論文・著書
市川顕
『EUの規範とパワー』中央経済社、2021年3月3日(高林喜久生と共編著)。
「ポーランド:新型コロナ対策から見えるポーランド政治の特徴」植田隆子(2021)編著『新型コロナ危機と欧州─EU・加盟10カ国と英国の対応』文眞堂、228-248頁。
市川顕(2021)「EUエネルギー同盟の政治過程における気候変動規範の強靭性と脆弱性」市川顕・高林喜久生(2021)編著『EUの規範とパワー』中央経済社、87-106頁。
「EUにおけるガス供給源多様化をめぐる欧州諸国の動向―2015年7-12月を中心に」『政策情報学会誌』第14巻第1号(2020年11月)、43-51頁。
「欧州グリーンディール(概要)―何が人々の耳目を集めるのか」日本国際問題研究所、研究レポート<https://www.jiia.or.jp/column/post-23.html>2020年12月4日。
「ポーランド」坂井一成・八十田博人編著(2020)『よくわかるEU政治』ミネルヴァ書房、146-147頁。
小山晶子
「EUの移民統合政策―域内でメインストリーミング、域外でパートナーとの連携」臼井陽一郎編著(2020)『変わりゆくEU』明石書店、105-119頁。
“Brexit and Its Impact on the Integration of Migrants in the UK”, in Birte Wassenberg & Noriko Suzuki eds., Origins and Consequences of European Crisis: Global Views on Brexit, Peter Lang, 2020, pp.105-120.
「EUによる早期離学に関する教育訓練政策の展開」園山大祐編著(2020)『学校を離れる若者たち』ナカニシヤ出版、2020年3月、39-53頁。
小林正英
「対中関係に見る規範パワーEU」臼井陽一郎編著(2020)『変わりゆくEU: 永遠平和のプロジェクトの行方』明石書店、191-207頁。
「NATO」「OSCE」坂井一成・八十田博人編著(2020)『よくわかるEU政治』ミネルヴァ書房、176-179頁。
「英国EU離脱後の米欧関係」『国際問題』2020年5月号、16〜26頁。
東野篤子
「EU拡大の歴史」坂井一成・八十田博人編著(2020)『よくわかるEU政治』ミネルヴァ書房、14-15頁。
「拡大」坂井一成・八十田博人編著(2020)『よくわかるEU政治』ミネルヴァ書房、108ー109頁。
福海さやか
「ロンビアにおけるEU麻薬規制政策の展開」市川顕・高林喜久生(2021)編著『EUの規範とパワー』中央経済社、191〜207頁。
吉沢晃
「競争政策」坂井一成・八十田博人編著(2020)『よくわかるEU政治』 ミネルヴァ書房、2020年、76-77頁。
「産業」坂井一成・八十田博人編著(2020)『よくわかるEU政治』ミネルヴァ書房、2020年、72-73頁。
「EUのカルテル規制における域外企業の無差別待遇—実態か単なるスローガンか」市川顕・髙林喜久生編(2021)『EUの規範とパワー』中央経済社、67-86頁。
‘The EU’s External Competition Policy: A Hybrid Approach’, Weyembergh, A. and Telò, M. (eds) (2020) Supranational Governance at Stake: The EU's External Competences Caught between Complexity and Fragmentation, Routledge, pp. 195-208.
インタビュー
東野篤子
バレンティナ・ロマノヴァ元キエフモヒラ大学准教授、独立後のウクライナの政治的リーダーシップに関するインタビュー。2020年7月19日。
ヴィシェグラード諸国在京大使館員。2020年7月22日および8月28日。対中国関係についてインタビュー。
その他
臼井陽一郎
「EUは真にリベラルな秩序を目指せるのか」『図書新聞』第3477号1月1日。
関連研究成果2019
学会報告
市川顕
「EU エネルギー同盟の政治過程における気候変動規範の強靭性 と脆弱性」日本国際政治学会2019年度研究大会、部会 16「国際社会における強靭性の検討」、朱鷺メッセ(新潟)、10月20日。
臼井陽一郎
「EU によるリベラル国際秩序?――その構想と手法」日本国際政治学会2019年度研究大会、共通論題「リーダーシップと国際秩序」、朱鷺メッセ(新潟)、10月19日。
「Brexitの政治とEUの規範──主権を政治化させない仕組みについて」企画委員会企画「Brexit再考―「主権」のゆくえ」、成蹊大学、10月6日。
小山晶子
「EU における移民の社会統合政策と庇護・移住基金(AMF)への新たな展開」日本国際政治学会2019年度研究大会、国際統合分科会II(セッションE)「EUの新しい政策アプローチ」、朱鷺メッセ(新潟)、10月20日。
東野篤子
「EUの東方パートナーシップ(EaP)とその安全保障認識」公開シンポジウム「エネルギー安全保障:欧州の経験とアジアへの示唆」【第Ⅲ部】異なる安全保障認識、2020年2月16日。
The UK and Japan towards China: Any room for cooperation/coordination? Post(?)-Brexit: UK-Japan Relations workshop, September 9-10, 2019.
「EU/NATOにとっての東地中海ー安全保障化アプローチ適用の試み」2019年度地域紛争研究会第4回例会、2019年8月31日。
福海さやか
「コロンビアにおける EU 麻薬規制政策の展開」日本国際政治学会2019年度研究大会、分科会セッション E(国際統合II)・EUの新しい政策アプローチ、朱鷺メッセ(新潟)、10月20日。
論文・著書
東野篤子
「EUの安全保障・防衛政策の新たな展開」『現代ヨーロッパの安全保障 ポスト2014:パワーバランスの構図を読む』ミネルヴァ書房、192-208ページ、2019年9月。
「『国際政治』におけるヨーロッパ研究の傾向」『日本の国際政治学―日本国際政治学会における研究の系譜と特徴』日本国際政治学会、1-11ページ、2019年4月。
「EUの対ウクライナ政策-近隣諸国政策の成立からゼレンスキー政権の発足まで」『ロシア・ユーラシアの経済と社会』第1043号、14-27ページ、2019年9月。
「ヨーロッパと一帯一路 脅威認識・落胆・期待の共存」『国際安全保障』第47巻第1号、32-51ページ、2019年6月。
吉沢晃
「EU競争政策の正統性と消費者の役割―集団損害賠償請求制度案の失敗を事例として」『日本EU学会年報』第39号(2019年)153-172頁。
「欧州議会選挙と筆頭候補制―正統性の観点からの分析」『ワセダアジアレビュー』第22号(2020年)46-50頁。
「競争政策」鷲江義勝編『EU―欧州統合の現在(第4版)』創元社(2020年)188-195頁。
インタビュー
臼井陽一郎
EUobserver.com編集者および欧州議会議員の秘書、Brexit交渉に関するEU機関間関係について。ブリュッセル、2019年8月23日。
小松﨑利明
ベルギー出身欧州議会議員の元秘書および現秘書、ベルギーの対外関係について。ブリュッセル、2019年8月23日。
東野篤子
在京ハンガリー大使館関係者、EUの規範と中国の欧州進出に関するインタビュー。2020年1月24日。
松尾秀哉
ベルギー出身欧州議会議員の元秘書および現秘書、ベルギー国内政治の現況および2016年のブリュッセル空港およびマールベーク駅でのテロについて。ブリュッセル、2019年8月23日。
その他
臼井陽一郎
「クロスロードのEU─歴史的使命を担うべき政体は矛盾の塊」『図書新聞』第3429号1月1日。
関連研究成果2018
論文
市川顕
「EUエネルギー同盟の政治過程―2014年3月から9月を中心として」藤井和夫(2019)編著『現代世界とヨーロッパ―見直される政治・経済・文化―』中央経済社、1-20頁。
「EUエネルギー同盟の政治過程―2015年2月25日から3月20日までを中心に」『現代経済経営研究』第5巻第2号pp.54-75。
市川顕(2018)「EUエネルギー同盟パッケージ―2015年1月から2月のEUエネルギー同盟パッケージをめぐる政治過程」『政策情報学会誌』第12巻第1号(2019年)19-30頁。
「欧州におけるポピュリズムについて」『産研論集』第46号(2019)、159-160頁。
小林正英
「外交・安全保障政策」松尾秀哉他共編著『現代ベルギー政治』ミネルヴァ書房、2018年5月、235-250頁(全282頁)。
小山晶子
“Development of education policies for migrant children towards Social Inclusion? : The cases of England and France”, 『教養学部紀要』東海大学、第49輯(2018)、2019年3月、掲載予定、査読有。
東野篤子
「ウクライナ危機とブダペスト覚書ーー国際規範からの逸脱をめぐる国際社会の対応」『グローバル・ガバナンス学I 理論・歴史・規範』205-220頁、2018年。
「EUの東方パートナーシップ(EaP)政策の展開」『ロシア・ユーラシアの経済と社会』(1034) pp.29-51, 2019年。
「中欧における「法の支配の危機」――EU内部に深まる亀裂」『αシノドス』259, 2019年1月16日。
「ウクライナとNATO 遠い加盟への道のり」服部倫卓 ・原田義也編『ウクライナを知るための65章』明石書店、356-360頁、2019年。
「EUと「絶縁体国家」トルコ --疎外と期待」川名晋史編『共振する国際政治学と地域研究』勁草書房、223-245頁、 2019年。
「ビッグ・バン拡大からリスボン条約へ――危機の序章としての2000年代」益田実・山本健編『二つの世界大戦からブレグジットまで』ミネルヴァ書房、2019年。
臼井陽一郎
Normative politics in the European Union’s external actions: The case of ENI Cross-Border Cooperation. Edited By Hidetoshi Taga, and Seiichi Igarashi, The New International Relations of Sub-Regionalism: Asia and Europe. Routledge. pp.183-196.
「国連」中田晋自・松尾秀哉・臼井陽一郎・金敬黙・平賀正剛編『入門政治学365日』120-124ページ
「地域統合」中田晋自・松尾秀哉・臼井陽一郎・金敬黙・平賀正剛編『入門政治学365日』125-219ページ
「西欧」中田晋自・松尾秀哉・臼井陽一郎・金敬黙・平賀正剛編『入門政治学365日』139-143ページ
学会報告
市川顕
「2015年EUエネルギー同盟パッケージをめぐる政治過程」政治社会学会第9回研究大会、大東文化会館、2018年12月16日。
小山晶子
「イングランドにおけるEAL学習者への支援の現状―保守党政権下の取り組みに着目して―」第54回日本比較教育学会、2018年6月23日、広島(菊地かおりと共同報告)。
「EUにおける早期離学に対する教育政策について」、ラウンド・テーブル『早期離学(無資格退学)を考える ―欧州を中心に-』第54回日本比較教育学会、2018年6月23日、広島。
‘Brexit and its impact on education policy for inclusion of migrant children in England’, “The consequences of Brexit (Les conséquences du Brexit); Crossed Japanese-European views (Des regards croisés japonais-européens), Jean Monnet Project, 6-7 December 2018, Lieu d’Europe, Strasbourg.
東野篤子
会議報告 招待講演「国際関係の中のジョージア」、「ジョージアの主権回復及び初の共和国宣言100周年」記念特別セミナー、首都大学東京南大沢キャンパス国際交流会館、2018-12
会議発表 口頭発表 「東方パートナーシップ(EaP)の10年」日本国際政治学会2018年度研究大会 国際統合分科会C-4、大宮ソニックシティ、 2018-11
会議発表 口頭発表 「コペンハーゲン学派による「絶縁体国家」トルコ概念の再検討」、「国際政治学と地域研究の共振」研究会、笹川平和財団、2018-06
会議発表 口頭発表 「『国際政治』にみるヨーロッパ研究の動向」日本国際政治学会制度整備・自己点検タスクフォース 東京外国語大学お茶の水サテライトキャンパス、2018-06
会議発表 口頭発表 "Relations between the EU, Turkey and Japan: Dissonances in the strategic triangle? " 18th ‘European Union in International Affairs’ (EUIA) Conference, Vrije Universteit Brussel, 2018-05
吉沢晃
「EU競争政策の正統性ー消費者の視点から」日本国際政治学会2018年度研究大会、2018年11月4日
「EU競争政策における域外企業の(無)差別ーカルテル規制の事例」同志社大学政策学会セミナー、2018年12月19日
吉本文
“EP Power’s Creeping Expansion in Ratifying Process”. 28 June 2018, EUSA AP (at National Taiwan University).
「Case C‑263/14, European Parliament v Council, EU:C:2016:435」2018年11月9日、東京EU法研究会(於 早稲田大学)
講演
小林正英
「EU・中国関係の駆動要因と制動要因: Ciderella Honeymoon」霞山会研究会「変わる欧州の対中認識」、2019年2月13日。
「EUの文民的安全保障政策-規範的な中二階は持続可能か-」関西学院大学産業研究所産研講演会、2018年12月22日。
「Multiple Multilateral(s)」青山学院大学 国際研究センター/ 日本戦略研究フォーラム(JFSS)共催セミナー「Sending International Peace Operation in Africa -Experience of the Netherland in MINUSMA」、2018年11月27日。
吉沢晃
「EU国家補助規制における加盟国の優遇税制の制限ー国際規範との関連に着目して」関西学院大学産業研究者講演会、2018年9月29日
その他
臼井陽一郎
「EUは誰のために?─沈まない船の向かう先」『図書新聞』2019年1月1日号。
関連研究成果2017
<論文>
市川顕
「EUが目指す脱炭素社会」『環境会議』2017年秋号、64-69頁。
「欧州エネルギー同盟の政治過程—エネルギー担当副委員長選出過程を中心に」『政策情報学会誌』第11巻第1号(2017年)、pp.57-64。
「欧州エネルギー同盟の政治過程」―2014年9月から12月」『産研論集』第45号(2018年)、pp.57-68。
小林正英
「EU-NATO関係の現在〜ソマリア沖海賊対策作戦の事例を中心に〜」『尚美学園大学総合政策論集』第25号、2017年12月、19-32頁。
小山晶子
「EUの教育政策にみるガバナンスの展開と課題―外国語教育政策と早期離学を抑制するための教育政策に着目して―」『教養学部紀要』東海大学、第48輯(2017)、2018年3月、査読有。
武田健
「難民の分担をめぐる欧州諸国の世論分析ー欧州懐疑要因の検討」『国際政治』第190号(石井由香編「移民・難民をめぐるグローバル・ポリティクス」)、49-64頁、2018年2月、査読有り。中井遼との共著。
Ken Takeda & Ryo Nakai “Is solidarity a long way off? Explaining divergent national positions towards refugee-sharing in the midst of the EU’s refugee crisis”, Journal of Inter-Regional Studies, vol.1, pp.74-93. March 2018(査読あり).
東野篤子
「国際関係と政治」月村太郎編『解体後のユーゴスラヴィア』晃洋書房、2017年。
「ウクライナ危機とブダペスト覚書―国際規範からの逸脱をめぐる国際社会の対応」グローバルガバナンス学会編『グローバル・ガバナンス学Ⅰ:理論・歴史・規範』法律文化社、2018年。
吉沢晃
「WTOにおける競争法制定失敗の政治過程ーEUの役割を中心に」『ワセダアジアレビュー』(早稲田大学地域・地域間研究機構紀要)2018年、No.20, 71-76頁。
<学会報告>
市川顕
「欧州エネルギー同盟の政治過程―2014年を中心として」日本国際政治学会2017年度研究大会(神戸国際会議場)、2017年10月27日。
「ヨーロッパが目指す脱炭素社会」政治社会学会2017年度研究大会(追手門学院大学)、2017年11月12日。
“The Political Process of the EU Energy Union: from March to September in 2014”, WISC (World International Studies Conference) 5th Conference, at National Taiwan University in Taipei. April 1st, 2017.
小山晶子
「イギリス連立政権下における移民の子どもに対する教育政策の転換―アカデミー政策と地方当局の権限低下による影響」第53回日本比較教育学会、2017年6月25日、東京大学。
小林正英
「EU-NATO 関係の現在―ソマリア沖海賊対策作戦の事例を中心に」日本国際政治学会(神戸国際会議場)2017年10月29日。
武田健
「外交戦術としての国民投票:EUの諸事例の考察」日本国際政治学会2017年度研究大会(神戸国際会議場)、2017年10月28日。
東野篤子
"Turkey-EU-Japan relationship in a changing international environment" 11th Pan-European Conference on International Relations, European International Studies Association (EISA), 2017-09-16.
"Disinformation and its impact on democracy", German Marshall Fund Japan Trilateral Forum, Brussels, 2017-10-23.
"Relations between the EU, Turkey and Japan: Dissonances in the strategic triangle?" at ‘European Union in International Affairs’ (EUIA) Conference, panel tIII-4 'No trust, no democracy, no partners? The EU’s struggles in its Southern Neighbourhood', Brussels, 17 May 2018.
吉沢晃
"Promoting sustainable forest governance by conditionality: the Indonesia-EU Voluntary Partnership Agreement on illegal timber trade", アジア太平洋地域EU学会(EUSA-AP)年次大会、青山学院大学、2017年7月2日。
"The Legitimacy Problem in EU Competition Policy", EU-Japan Forum 2018 at ULB, Brussels, 12 March 2018.
吉本文
"Horizontal Consistency: Focus on the Judgments of the Court of Justice of the European Union" アジア太平洋地域EU学会(EUSA-AP)年次大会(青山学院大学)2017年7月2日。
「EU諸政策間の整合性とEU機関間の誠実協力原則」一橋EU法研究会(一橋大学)2017年10月7日。
「水平的協力原則に関する一考察:EU司法裁判所の判決の分析に基づいて」日本EU学会(九州大学)2017年11月19日。
<インタビュー>
市川顕
クラクフ経済大学国際関係学部カロリナ・クレハ・ティレッツ准教授、同大学財政学部クシメナ・ロシェク講師へのインタビュー。ポーランド(クラクフ)2017年9月3-10日。
欧州環境庁、MHIヴェスタッス社、ケンジ・ステファン・スズキ氏、日本気象株式会社へのインタビュー。デンマーク(コペンハーゲン、オーフス) 2017年7月4-9日。
武田健
フランス大統領の元上級顧問(欧州問題担当)に、EU憲法条約否決からリスボン条約の交渉に至る過程についてのインタビュー、パリ、2018年3月14日。
デンマーク政府の外交官(欧州問題担当)に、過去のEU条約改正交渉(とくにリスボン条約)についてのインタビュー、コペンハーゲン、2018年3月15日。
オランダ政府の外交官(欧州問題担当)に、リスボン条約の交渉についてのインタビュー、ハーグ、2018年3月16日。
ポーランド政府の外交官(欧州問題担当)にポーランドのEU加盟と憲法条約の交渉についてのインタビュー、ワルシャワ、2018年3月20日。
オランダ政府の外交官二人(ともにEU問題担当)に、リスボン条約を中心とする過去のEU基本条約交渉についてのインタビュー、ハーグ、2018年3月21日。
東野篤子
Centre for European Policy Studies (CEPS)のトビー・フォーゲル研究員に、西バルカン諸国とEUとの関係に関するインタビュー、ブリュッセル。2017年4月28日。
テュービンゲン大学トマス・ディーズ教授および同大学ベッティーナ・ア―レンズ准教授に、EU規範研究の全般的傾向に関するインタビュー、ブリュッセル。2017年5月20日。
欧州委員会DG ENER、NATOパブリックリレーションズ、ロシア、ウクライナ、ジョージア担当者、EaP対象国大使館関係者、CEPSのフラント・コンスタニャン研究員等に、近隣諸国に関するインタビュー、ブリュッセル。2017年11月2-3, 6日。
Stiftung Wissenschaft und Politik(SWP)ブリュッセル支部ドゥシャン・レイリッチ所長、西バルカン諸国大使館関係者(EU加盟交渉担当)、Vrije Unitersiteit BrusselsのInstitute for European Studiesのフロリアン・トラウナー等に、西バルカン諸国のEU加盟プロセスに関するインタビュー、ブリュッセル。2017年11月29-30日。
テュービンゲン大学 トマス・ディーズ教授および同大学ベッティーナ・ア―レンズ准教授に、EUの近隣諸国政策に対する規範的アプローチ適用方法に関するインタビュー、テュービンゲン。2017年12月23-24日。
中東工科大学フセイン・バージュ教授、EU・トルコ・アジア関係に関する意見交換、東京、2018年2月15日。
ハンガリー外交通商研究所ラーズロー・ヴァサ副所長 16プラス1および中東欧諸国の現状に関するインタビュー、東京、2018年2月22日。
福海さやか
駐ベルギーコロンビア大使館、2017年7月19日。
EU欧州委員会司法内務局および開発局—Directorate General Migration and Home AffairsおよびDirectorate General International Cooperation and Developmentにて、2017年7月20日。
駐ボゴタ欧州連合代表部職員(An official of EU delegation in Bogotá)、2018年2月7日。
開発・平和地域プログラム全国ネットワーク職員(Members of Red Nacional de Programas Regionales de Desarrollo y Paz)、 2018年2月19日。
ハベリアナ大学・国土局リエゾンオフィサー(Liaison Officer of la Universidad Javeriana y la Agencia Nacional de Tierras)、2018年2月23日。
カウカ原住民組織職員、およびカウカ大学元教授(A Member of organización indígena de Cauca, An ex-professor of la Universidad de Cauca)、 2018年2月26日。
コスルカ職員(A Member of Cooperativa del Sur del Cauca)、2018年2月27日。
シーマ人権部門コーディネーターおよびシーマ職員 (Coordinador Area DDHH Comité de Integración del Macizo Colombiano and a Memberl of Comité de Integración del Macizo Colombiano)、2018年2月27日。
バレンパス職員(Members of Vallenpaz)、2018年3月1日。
<講演>
市川顕
「EUの気候変動エネルギー政策とパリ協定」、「ヨーロッパが目指す脱炭素社会」 尚美学園大学、2017年10月26日。
臼井陽一郎
「規範パワーEUの行方—危機の真っ只中でEUのアイデンティティについて考える」関西学院大学産業研究所講演会、2017年5月27日、関西学院大学上ヶ原キャンパス、図書館ホール。
「分断と格差のEU2017—規範パワーEUの行方」早稲田大学現代政治経済研究所EU研究部会、2018年1月30日、早稲田大学。
小松﨑利明
「EU法の自律性と国際法体系」関西学院大学産業研究所講演会、2017年10月14日、関西学院大学上ヶ原キャンパス、図書館ホール
松尾秀哉
「試論:なぜベルギーはテロの温床となったのか――もうひとつの『連邦制の逆説』?」関西学院大学産業研究所講演会、2017年10月14日、関西学院大学上ヶ原キャンパス、図書館ホール。
<その他>
臼井陽一郎
「格差と分断のEU2017」『図書新聞』2018年1月1日号。
2020年度実績報告書
昨年度中に本プロジェクト参加者の論攷を集め中間報告論文集にしたものを成果物として出版した(『変わりゆくEU:永遠平和のプロジェクトの行方』明石書店)。また関連研究書(英書)を同プロジェクト参加者4名で翻訳し出版した(クルト・ドゥブーフ『トライバル化する世界―集合的トラウマがもたらす戦争の危機』明石書店)。これら研究成果出版書と関連研究翻訳書を比較することを通じて、本プロジェクトにより獲得し得た知見をさらに深めることができた。研究成果出版書では本プロジェクトの基本仮説(規範パワーであり続けようと欲するEU加盟国間の集合的政治意思を持続させる4つの制度条件=意思決定におけるマルチアクターシップ、域内外規範のシンクロナイゼーション、規範形成におけるリーガリゼーション、包括的アプローチにおける基本規範のメインストリーミング)の有効性を次の10点に即して検証した。(1)EU基本規範(第7条)の生成(ハンガリー、ポーランドの反抗)、(2)共通外交安全保障政策に関するEU司法裁判所管轄権、(3)欧州逮捕状をめぐる政治的思惑、(4)テロ対策における人権規範をめぐるEU・CoE関係、(5)EU移民統合政策の変容、(6)EU競争政策の展開、(7)EUのWTO改革案、(8)EU中国関係①(海洋ガバナンスなど)、(9)EU中国関係(東方政策など)、(10)Brexitのインパクト。これに対して翻訳書はEUにおけるマルチアクターシップやリーガリゼーションを損なうトライバル化の動きを歴史的に追ったものであった。以上のうち成果物出版書についてはオンライン研究会合を開催し本プロジェクトの基本仮説の有効性につきさらに突き詰めて議論した。また関連研究の翻訳書については、天理大学(奈良県)にて研究会合を開催、本プロジェクトの基本仮説の継続的成立を損なう動きを追っていく方法論について議論を深めることができた。
2019年度実績報告書
中間報告の取りまとめへ向けて、上半期に名古屋商科大学で研究会を開催した。この研究会では、本科研プロジェクトの基本仮説(規範パワーたろうとする集合的政治意思を持続させる4つの制度的条件)を再確認するとともに、理論編・政策分野編・地域編にパートを分けて、それぞれの分担研究者から、この仮説の問題発見機能および予想される問題点について、議論を重ねた。これにより、4つの制度的条件(マルチアクターシップ・シンクロナイゼーション・リーガライゼーション・メインストリーミング)の成立・存続・変容を認識するための基本論点を共有するとともに、実証すべき仮説の精緻化・洗練化をさらに進め、プロジェクト参加メンバー間の共有の程度を強化しておくことができた。
また8月の後半に研究代表者臼井と分担者の松尾、小松﨑の3名でブリュッセルに行き、欧州議会関係者にインタビューし、本科研プロジェクトの基本仮説の成立・不成立の状況について、とくにBrexitの交渉過程に引きつけて、具体的に検討することができた。そして下半期には本科研プロジェクトの成果発表の一環として、研究代表者の臼井が日本政治学会および国際政治学会にて、また研究分担者の市川、小山、福海が国際政治学会にて、それぞれ報告した。
しかし、下半期に予定していた(成果発表のための図書出版へ向けた)全体会合は、新型コロナウィルス感染拡大のため延期せざるをえなくなり、補助金の一部を次年度に繰り越すこととなった。
現在までの達成度:おおむね順調に進展している
研究成果報告の一環としての図書出版に目途がつき、2020年度上半期の早い時期に出版が可能となった。その出版へ向けた相互討論のプロセスを通じて、本科研プロジェクトの基本仮説をベースにすると、共通外交安保政策(CSFP)やEUテロ対策、警察協力とくに欧州逮捕状、EU競争政策そしてWTO対応といった様々な視角からするEU規範政治の比較研究(全加盟国がEUを規範パワーとして維持していこうとする集合的政治意思の成立・不成立に帰結する政治状況の把握を目指した政策分野間研究)が可能であることが見えてきた。また他方で、中国ファクターが本科研プロジェクトの基本仮説が想定する制度条件を損なう可能性があることも、本年度確認できた知見である。
今後の研究の推進方策
2019年度中に予定していた(研究成果報告の批判的検討のための)全体会合を2020年度のできるだけ早い時期に実施するとともに、成果報告として出版する図書へのコメントを収集すべく、ターゲットをしぼって同書を送付しコメントを求めるとともに、同書の書評会を開催し、本科研プロジェクトの基本テーマについて知見を深めていく。またブリュッセルでのインタビューの派生的成果として、本科研プロジェクトの基本仮説にいう4つの制度条件の不成立の可能性について論じた英語書籍の翻訳を進めることとした(同書はインタビューした者(EUの主要政治家の元スタッフ)によるもの)。
2018年度実績報告書
上半期に東京で理論研究担当分担者数名と代表者で会合を開き、本科研プロジェクトの理論枠組を批判的に考察した。とくにBrexitの動向について、実証研究の対象に取り上げるべきかを再考した。下半期には京都にて全体研究会合を開催、分担研究者9名に研究協力者2名を加え、本科研プロジェクトで設定した理論枠組と実証研究対象のすりあわせを実施した。この会合では、EUの通商政策と競争政策に関して、とくにWTO改革の視点から明確に異なるふたつの実証分析が示され、マルチラテラリズムとリーガリゼーションの視点について重要な検討課題を得ることができた。またEUトルコ関係に加えて、EU中国関係を本科研プロジェクトの検討課題に加えるかどうかを理論的に詰めて議論した。そして実証研究対象については柔軟に調整していくべきことを確認した。また3月には人権デモクラシー担当分担者によるブリュッセルでの聞き取り調査を実施、難民社会統合と域内治安確保の規範対抗関係に関して、リーガリゼーションとメインストリーミングの視点から重要な知見を得ることができた。
なお、代表者・分担者による本研究プロジェクト関連の講演や新聞記事寄稿、学会報告などについては、本科研プロジェクトのWebサイトに掲載しているが、その内容については、代表者・分担者の間でLINEグループを通じて共有している。日常的なディスカッションもこれにより進められている。
現在までの達成度:おおむね順調に進展している
当初2年目に予定していた作業はほぼ完了した。2回予定していた全体研究会合は1回のみに終わったが、理論担当分担者と代表者の会合により補足した。上半期に予定していた政策文書とアクタースピーチアクトの分析は、Brexitの予想外の情勢により当初予定のものからシフトし、Brexitに関わる規範言説分析を追加的に進めた。全体会合は京都で開催し、規範パワーの概念、その持続可能性の制度的条件、その客観的認識を可能にする指標、EUの制度的条件が加盟国の集合的政治意思を方向づけるとする仮説の精緻化・洗練化について、プロジェクト参加メンバーで批判的に検討を進め、概念枠組や経験事例選定に関する部分的な問題も発見した。海外インタビューは3月にブリュッセルにて、人権デモクラシー関連(難民社会統合と治安確保の規範対抗関係)で実施した。なお昨年度設置したWebサイト上で研究活動を適宜公表している。
今後の研究の推進方策
全体会合をあと2回ほど実施、中間研究成果を研究書として公表する。出版社との交渉はすでに終了しており、2019年度8月末を目途に本プロジェクト参加10名と研究協力者3名が入稿、2020年3月までに公刊する。公刊後は外部からコメンテーターを招聘し書評会を開催するとともに、EU学会や国際政治学会あるいはUACESにおいて、研究発表を行っていく。そうした出版と学会報告を通じて本研究プロジェクトの成果と意義を批判的に再検討したのちに、研究代表者が本プロジェクトにより生みだされた知見を再確認し、批判的コメントに対してフォローアップしていくための研究書を、2021年3月までに公刊する。
2017年度実績報告書
先行研究のレビューを進めるとともに、海外学会(英国EU学会など)に参加、さらにブリュッセルなどヨーロッパ諸国で実務者および海外研究者にアクセス、インタビューを実施するなかで、本研究課題に関わる研究状況をサーベイし、<EUの規範パワーの持続性>という研究テーマの意義およびアクチュアリティについて再確認できた。規範パワー論はEU政治研究においていまだ<終わった>研究課題ではなかった。
研究会を3回実施(関学大・東海大・新潟国際情報大)、理論枠組と役割分担の微調整を行った。また4名の研究協力者に参加してもらい、理論枠組と実証事例の整合性について批判的視点を加えてもらった。この一連の研究会の結果、規範パワーたろうとする加盟国首脳の政治意思と、EUの対外関係にみられる4つの制度的特徴(マルチアクターシップ・シンクロナイゼーション・リーガライゼーション・メインストリーミング)の関係性をどう理論的に突き詰めていくかについて、メンバー間に意見の不一致があることが分かり、今後の理論的討究の課題が浮き彫りとなった。それは大きくは、合理主義アプローチに依拠した因果関係として仮説化していくべきか、それとも構成主義アプローチに依拠した構造化プロセスの把握を目指していくべきなのか、という二つのアプローチの対抗関係であり、次年度の研究会で詰めていくべき課題となった。
なお4年後の研究成果発表のため、メンバーそれぞれの研究課題を仮題として章立てを作り、出版社を決め、出版へ向けた交渉に入った。
現在までの達成度:おおむね順調に進展している
一年目に当初予定した作業はほぼ完了した。理論的課題を確認し事例分担を調整する研究会を実施(予定では2回のところ、3回実施できた)、海外連携者とコンタクトを取り本研究課題の意義についてコメントをもらい、海外の学会に出席、関連研究状況について確認し、関連研究文献を購入、過去2、3年ほどに出版された学術書の内容を見定めつつ、本研究課題の意義とオリジナリティについて認識を固めることができた。なお、適宜研究活動を公表するためにWebサイトも設置した。
今後の研究の推進方策
当初の予定通り進めていく。2018年度は引き続き、先行研究の網羅的なレビューを通じた仮説の洗練化・既存の統合理論との接合と、政策文書、政治アクタースピーチ、実務者インタビューの分析(上記指標利用)を進め、研究会を最低でも2回開催し、メンバー間で知見を共有、ピアレビューの形で相互に批判的に認識を深めていく。またBrexit交渉が最終局面を迎えているので、本研究課題の研究作業分担に再調整が必要となる事態が発生していくかどうか、注視していく。そのため本年度は英国で開催される海外学会に参加、本研究課題に関連したパネルにも出て、動向をつかんでおきたい。加えて、PESCOの進展が著しいので、事例研究に付け加えていくべきか検討する必要が出てきている。そこで(当初は予定していなかったが)PESCOの動向把握にも時間を割いていきたい。
プロジェクト参加メンバー
市川顕(分担者)
臼井陽一郎(代表者)
小山晶子(分担者)
小林正英(分担者)
小松﨑利明(分担者)
大道寺隆也(協力者)
武田健(分担者)
東野篤子(分担者)
福井英次郎(協力者)
福海さやか(分担者)
松尾秀哉(分担者)
吉沢晃(分担者)
吉本文(協力者)