(1984年公開)
監督 マーティン・ブレスト
作品紹介
デトロイト市警のアクセル・フォーリーは腕は確かだが、独断行動が多い問題児だ。旧友が事件に巻き込まれ殺されてしまう。旧友の仇を打つため、デトロイトからビバリーヒルズへ(直線距離で約3,500キロを超えて)やってくる。土地勘のないビバリーヒルズで事件の解決はできるのか否か!
と、映画に出てくる警察官はダイ・ハードのマクレーンやラッシュ・アワーのリーなど捜査権とか管轄とかを無視しがちだが、本作も多分にもれず、しっかり管轄無視をする。
ストーリーは何遍聞いたかわからないレベル。
「友達の死の真相は、、、」
「麻薬組織の影が、、、」
と、煽り文句だけではきっと「どの映画?」となるに違いない。
「そんな映画腐るほどある」と言われてしまいそうだ。
しかし、刑事がおしゃべりマシンガンなのは本作だけだ!
「手八丁、口八丁」と言う言葉を聞いて、本作の主人公アクセル・フォーリーを思い浮かべる人も多いのではなかろうか。
「凄腕で熱血なデカでありながら、上司には嫌われている男が主人です。」 と聞いて、それだけでなぜこんなにも、ウキウキしてしまうのだろうか?
本作の主人公アクセル・フォーリーは大胆な作り話をテンポよくかまし、ハッタリを事実のように語る!
一挙手一投足が軽快でリズミカル、陽気な雰囲気を常に醸し出している。
そんなキャラクターをコメディ色強めで、魅力たっぷりに演じているのがエディー・マーフィーである!!
ターミネーターと聞いてアーノルド・シュワツェネッガーしか思い浮かべられないように。
ランボーと聞いてシルべスタ・スタローンしか思い浮かべられないように。石丸博也と聞いて、ジャッキー・チェンしか思い浮かべられないように。
いまやこのおしゃべりマシンガン刑事アクセル・フォーリーはエディー・マーフィー以外に考えられない存在となっている。
ビバリーヒルズ・コップそのものは元々シルベスター・スタローンが主演で進められた企画と言うのだから驚きであるが、当時のスタローンイメージからすると、完成したビバリーヒルズ・コップとかけ離れたものになった事は間違いない。事実、予算の都合でスタローンの主演が見送られ、途中までリライトされていた脚本を使用したのが「コブラ」であることから、想像に難くない。
本作ほど、コメディをしっかり狙ってホームランを打ち込んでいながら、キリッとしたアクションを見せてくれる作品も珍しいのではないだろうか。
現在でもコメディアンのイメージが強いエディー・マーフィーであるが、本作が公開された1984年はアメリカで人気のコメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」に出演していた時期でもあるため「スベる」ことが許されなかったという側面もあるだろうが、それにしても恐ろしいレベルで面白く仕上がっている。
エディー・マーフィだけが良いのではなく、協力関係になるビリー(ジャッジ・ラインホルド)とタガート(ジョン・アシュトン)のキャラクターバランスが極めて良く、どうしてもコメディに目が行き、軽さが目立つアクセルというキャラクターを二人が実在感のあるキャラに押し上げているとも言える。
また、脇役の中で出番が少ないにも関わらず異彩を放っている人物が一人いる。アクセルの上司であるトッド警部だ。やたら目力のあるこのインパクトのあるおじさん。
実は役者ではない。当時実際にデトロイト警察の殺人課に所属するギルバート・R・ヒル警部が演じている。演じているのか、普段通りなのか定かではないが、数分しか出ないのにインパクトがあり、同時にアクセルがどのようなキャラクターか完結に説明もしている。
主役よし、脇役よし、音楽よし、コメディよし、アクションよし、と何拍子揃ったかわからない本作を堪能して頂きたい。
ただ一つ願わくば、是非とも「吹き替え」で見ていただきたい。
現在配信サービスには残念ながら字幕版のみしかない。ぜひ、山寺宏一版のエディー・マーフィーで楽しんで欲しい!!