こんな醜いものが恋愛感情なはずがない
こんな醜いものが恋愛感情なはずがない
今この場でシエテのことを抱き締めて、二人まとめてタワーにすり潰されたら、きっとタワーも満足するパルフェな幸福の音がする。ロベリアはそんなことを考えながら目を細めてシエテの様子を伺う。
「ちょっとちょっと〜、あんまりいやらしい目でこっちを見ないでよ、えっち」
「くはっ! あまりにキミが魅力的で、つい……」
二人笑い合って軽口をたたいているが、シエテは今この場でロベリアのことを抱き締めて、背中から剣拓で突き刺して空の下に落ちた方が世界は善くなるんじゃないかと迷っていた。
「思ってもいないくせに、よくぺらぺらと次から次に喋れるね。お喋りって言われない? 言われないかぁ、人間のお友達がいないもんね」
「ノン、思ってるさ。こんなにも魅力的なのに人望がないのは、年齢の割に大人気がないせいだろうと、ね。そういば、キミのご友人について一度も聞いたことがないな。紹介してくれよ」
黙ったまま数秒間睨み合い、同じタイミングで背を向けた。沈黙が続く。特に用もないが先にその場を去るのは高いプライドが許さない。
お互いに初めて顔を合わせた時から相手のことが気に食わなかった。いや、出会う前に団長からどんな人物か聞いた時点で好ましくない人間だと感じ取った。
それなのに、こうして意図せず同じ場所を選んで出くわしてしまう。そんな偶然が何度も重なると好ましくない相手でも言葉を交わす顔見知りになってしまった。ふとした瞬間に相手の顔を思い浮かべる頻度が増え、それもまた気に障る。
余裕綽々でにやついた面を、この手で歪ませてやりたい。
芽吹き始めている感情が何か、二人とも知らなかった。恋を知らず、自分とは無関係で綺麗なものだと、恋への憧れを押し殺して生きてきた二人には気付けるはずがなかった。