要らないと 捨て去るのなら オレにくれ
要らないと 捨て去るのなら オレにくれ
甲板の上に差し込んだ日光が眩しくて、目を細めていると背後から声をかけられた。
「やぁやぁ、元気してた?」
振り向いて見た愛しい相手は久しぶりに会うせいか、笑みを浮かべた顔をより眩しく感じる。
「ウィ、キミも随分と調子が良さそうだ」
「分かる? なんか色々とスッキリして……」
突風が吹いて二人してたたらを踏む。ここ最近、全空域で風が荒れている。お互いに支え合うように背中に手を添えていた。自然と接触出来るなんて今日は本当に運が良い。このまま離れるのは勿体ない。気を反らせるように話しかける。
「強い風が吹くとキミを思い出すんだ。数日前も吹いてただろう」
「風なんていつも吹いてるじゃない」
シエテが一歩下がったところを一歩踏み出して距離をつめる。下がれないように壁のある方へ追い詰めていく。
「くはっ、いつもキミを想ってるということさ」
目を丸くして口を開いた顔も可愛い。年上のムッシュに可愛いと思うなんて、恋は盲目とはこういうことをいうのだろう。こうして小動物のような顔をするくせに、敵と対峙した時や他者を見下す顔は鋭く、殺意を帯びた時なんてパルフェ! パルフェとしか言いようがない。あのヴォリュプテを誘う瞳に貫かれてからずっと特別な仲になろうと狙っている。どうやら今日が絶好のタイミングのようだ。
風になびく綺羅々と光輝く髪の先を目で追っていると、耳が赤くなっていることに気がついた。触れようと手を伸ばすと叩き落される。
「これは、違う、から」
耳だけではなく顔も首も赤くなってきた。両手で覆い隠そうとしているが隠しきれていない。
「シエテ?」
「おかしい。捨てたはずなのに」
「何を捨てたんだい? 捨てるくらいならオレに譲ってくれよ。キミから貰ったものなら何だって大切にするから、さ」
「えええぇっ!?」
結局、シエテが大きな声を出したのを聞いた他の団員が様子を見に来たせいで話が有耶無耶になって解散した。邪魔が入らなければシエテから何か貰えたかもしれなかったのにとても残念でならない。今日がその時だと思ったのにどうやら違ったらしい。
それでも何度も繰り返し言い続ければ、そのうちきっとプレゼントをくれる。シエテは甘い……ノン、優しくて強いからオレとタワーくらい抱えて生きてくれる。オレが支えたっていい。
風が吹き、白い雲がたなびく。幸福が近づいてきている予感がする。
シエテはオレに何をくれるのか、今からとても楽しみだ。