キミは彼女たちの作品を無碍にはしないよな[R15]
キミは彼女たちの作品を無碍にはしないよな[R15]
朝早く目が覚めてしまった。些細なことでタワーと喧嘩になって壊し合いを始めたが、決着がつかないまま解散して眠ったせいか話しかけても反応が返ってこない。全く本当にまだまだ子供だ。
言葉に反応しないというのは、誰かと喋りたいオレには一定の効果がある。このままタワーに喋り続けてもいいが、甘やかし過ぎるのも教育によくない。甲板に行けば誰かしらいるだろうと足を運んだ。
珍しく誰も甲板の上に出ていないかと思ったが、少し奥まった場所に人影が見える。近寄るとまだ鎧とマントを身に纏っていない、シンプルな服装をしたシエテだった。こうして改めて見ると全空一の剣士とは思えない細身の体型をしている。
いつもにやけた顔をしているのに、何故か空を睨むように真剣な眼差しで見つめている。
「何か難しい問題でも抱えているのかい?」
喋るのが好きで顔を合わせるとよく話す相手だ。今は誰かと喋りたくて仕方ないから、悩みがあるなら聞きたい。シエテが喋ってこなくてもオレがタワーについて愚痴を言ってもいい。
シエテはこちらを見ると苦笑を浮かべている。思い悩んでいる姿を他人に見られるつもりはなかったのだろう。戸惑いながら口を開いては閉じを繰り返して、ようやく声を発した。
「今日、俺えっちな下着着けてるんだよね」
「はっ?」
シエテは人を翻弄するようなことを言ってはくるが、性的な話を匂わせることは今までに一度もなかった。露出の高い女性団員を目の前にしても苦言を呈することはあっても、動揺したりいやらしい視線を向けたりすることがない。
えっちな下着とはどういうことだろう。面積が極端に少ないのか、逆にブラジャーを着けているのか、革だったり金属の鎖だったりするのだろうか。この、シエテが?
水着姿や浴衣姿を思い出し、あれらが通常だとすると『えっちな下着』はどれだけえっちなのだろうと疑問を抱いた。
「……あははっ、冗談だよ。想像しちゃった? 朝から男の下着なんて想像したくないよねー」
朝日を背にして、目を細めて笑っている顔からはえっちな下着姿が想像もつかない。
「見たい」
この際、えっちな下着でなくてもいい。下着姿のシエテを見てみたい。普段からブーメランパンツなのだろうか。
「いや、だから冗談だって」
シエテの背中に手を当てると、全身が強張った。ゆっくりと動かすと胸の周辺にだけ微かに厚みを感じる。
「くはっ、そういう」
ブラジャータイプの下着を身につけている。ただの胸当てとは素材も違うようだ。
「ち、違うんだよ。剣士用のサポーターを考案したから試して欲しいって言われて。それが少しでも可愛くしたいからって総レースでさぁ」
人のいいシエテは期待に満ちた人間に頼まれたら絶対に断れない。忙しいだのなんだの言って遠回しに断ろうとはしても、最後には笑顔で任せてと言って受け取る姿が思い浮かぶ。
「どうして渡された時点で断らなかったんだ」
「作ってる側はえっちな下着なんて思ってないんだよ……そんなこと言えないでしょ……」
頬を赤らめ、もじもじと指先を弄り始めた。正直言ってシエテのことを性的な目で見たことがなかったのに、現在進行形で性癖がぐちゃぐちゃに歪められていくのを感じる。
どうして着たのか。適当に着ようとしたが、サイズが合わなかったとでも言って返せばいいのに。
「着け心地が良くないから綿にした方がいいって言って止めるにしても、一度は着用しないとね。他の人に見つかる前に着替えてくるよ。あぁ、言い難いなぁ〜」
大きくため息を吐く、薄く開いた唇も性的に見えてきた。
シエテは変な部分が真面目過ぎる。剣士として一流の腕前をしていて、きちんとレビューするだろう真面目さがあるから無茶なことを頼まれるのだろう。伝える時も相手に配慮して、えっちな下着とは思っていても直接的には言わない気でいて、それで悩んでいる。はっきり言ってやればいいものを。なんだか無性に苛立ってきた。もう脱いでしまうのか。惜しい。
「オレが見て、代わりに問題点を指摘してこようか」
「本当!? いいの?」
「ウィ、勿論。シエテには日頃世話になってるから、役に立てるならそのくらいさせてくれよ」
すっかり信じ込んで感動しているところに申し訳ないが、期待で大きくなっていく心臓の音を聞こえないように抑えるのに必死になって余裕がない。
個室に入ってすぐ、恥ずかしげもなく上着を脱いだシエテの姿に思わず息を飲んだ。黒のレースのサポーターとやらで胸部だけが覆われている。黒なのかという衝撃で脳が揺さぶられる。想像以上に『えっち』な光景だ。
「朝っぱらから変な姿を見せてごめんねー。あっ、変なっていうのはこの下着じゃなくて着てる俺が……」
近くに寄って見ると乳首の周りだけ赤みが目立つ。
「擦れて腫れているぜ」
小さな粒に触れると面白いくらい反応した。顔がどんどん赤くなっていく。
「さ、触るのはダメだって」
「レビューを伝えないと、だろう?」
水着になれば見えるような場所なのに、黒いレースの合間から見える肌は艶めかしい。
「これ……、下も揃えて作ってくれて……それは流石に見せられないけど……」
「ノン、見ないと分からない」
パンツまで黒いレースだなんて聞いていない。ベルトに手を伸ばして引っ張るとすぐに抵抗される。
「わー、だめだめ。自分で脱ぐから待ってよ」
カチャカチャとベルトのバックルを外す音が部屋に響く。下履きをベルトごと床に下げると、股間周辺だけが黒のレースに包まれている。真っ白い脚が映えるのは水着姿と変わらないのに、透けている分いやらしさが出ている。
「オーララ……」
思わず言葉を失ってしまう。シエテも恥ずかしくなってきたのか自然と少し内股になっているのが余計にヴォリュプテを誘う。
「俺がブーメランパンツが好きだって聞いたみたいで、好みに合わせてくれたんだって」
制作者は何を考えて作ったのだろう。こんな下着をつけた剣士はダメだろう。何もサポートしていない。
「これ伸縮性のあるレースだけど、勃つと締め付けられて痛いから心を無にしないといけなくてさ」
そう言ってシエテは、すっと表情を消して背筋を伸ばし真っ直ぐに立った。一瞬で動揺も肌の赤みも消してみせるのは超人的な精神力をしていると分かるが、格好が格好だけに逆に酷くいやらしく感じる。
陰茎の部分も透けてはっきりと見える。こんなものを身につけて艇の中を歩き、甲板に立っていたのか。頭がどうかしていると指摘したいが堪えた。そのおかげでオレだけがこの光景を見ることが出来ている。
「下の毛はどうなってるんだ?」
上手い具合に収納されているのか全く陰毛が見えない。毛の色が薄いからだろうか。オレならこうはいかない。そもそもレースに毛が巻き込まれて履くことも出来ないんじゃないか。そう考えていると、とても小さな声が聞こえた。
「……剃った」
「は?」
股間を凝視し過ぎたせいか両手で覆い隠されてしまった。再び肌が赤みを帯びていた。
「全部剃ったの! 元から薄いし、ブーメランパンツの時もはみ出ないように剃ってるから今更全部剃るくらいは……わっ!? えっ、ちょっと!」
手首を掴んで退けさせる。当然拒んでくるからベッドの上に押し倒して、強引に脚を広げさせた。
「いやいや、いくらおかしな格好だからってそんなに見ないでよぉ〜」
暫く抵抗した後、オレが諦めないと理解したのか力を抜いて顔を覆い隠すことにしたようだ。遠慮なくじっくりと眺める。白い肌に黒い下着は確かに良いが、シエテには白や赤の方が合いそうだ。
顔を隠しても髪が特徴的で誰だかすぐに分かる。なんだかよく分からないが煽られているようにしか感じられない。
レースに隠された部分よりももっと奥の窄みが見えそうで見えなくてイライラしてきた。ごくりと、はしたなく喉が鳴る。
「ロベリア? えっ、な、なんで?」
指の隙間からこちらを見て、視線を下げる。ようやくオレの異変に気がついたのだろう。既に興奮しきっていて、下着を押し上げて痛いくらいに張り詰めている。
「くはっ、えっちな下着姿で誘惑されたらこうもなるさ。責任を取ってくれよ」
この後に及んでオレの昂ぶりを理解していないのはシエテの俗世に染まりきっていない良い部分でもあり、圧倒的強者の自身が性的な目で見られる訳がないと驕った悪い部分でもある。
「いや、その、今のシエテお兄さんの姿がいくら魅力的に見えても……」
「シエテ、キミはいつも魅力に溢れているよ」
「えぇっ!?」
それもそうかも、とでも考えているだろう。混乱している隙をついてレースの上から敏感な部分に吸い付いてやった。
聞いたことのない可愛い悲鳴が上がって、脳が沸いた。
•⭐︎ ✧ ⭐︎ ✧ ⭐︎ ✧ ⭐︎ •
「えええぇっ! あのえっちな下着、本当にシエテさんに渡したの!?」
「えっちな下着じゃないよ。剣士用のサポーター」
「えっちな下着だよ。すけすけだった」
「伸縮性のある糸で作った可愛いレースなだけだもん」
「えっちな下着を……シエテさんに……」
「シエテさんの水着と同じ黒だから大丈夫だよ」
騒がしい声の元に向かって声をかける。
「サリュ、プティ・フィーユたち」
数人はこちらを警戒するような目で見てくるが、オレに対する困惑の方が強いようだ。オレから積極的に女性団員の集まりに対して話しかけることはない。反応は気にせずに用件を話を始める。とっとと終わらせて一刻も早く部屋に帰りたい。
「シエテが試着していた下着だが、実際に着ている姿を考えたのかい? あれは少々……いや、かなり刺激的な光景だったぜ」
キャーッと黄色い声が上がるのを、指を口元に持っていってシッと言って落ち着かせる。
制作者らしき団員も顔を真っ赤にしている。ようやくどんなものを渡したのか分かってくれたらしい。
「あぁ、そういえば綿ならとも言っていたが……、個人的に同じ素材で白と赤も作れるなら依頼したい。勿論、報酬は出すぜ。たっぷりと、ね」
その場にいた全員が顔を立てに振って頷くのを見届けるとすぐにその場を後にした。背後から悲鳴が聞こえてくるが、今はそんな音よりも出来たばかりのえっちな恋人の元に向かうことの方が重要だ。
「最近、女の子たちがチラチラ見てくるんだけど、目が合うと逃げられちゃうんだよね」
「気のせいじゃないか?」
「せっかく作ってくれたものを駄目にしちゃったし、嫌われちゃったのかな」
「それはないさ。オレたちが付き合い始めたから気になるんじゃないか。恋愛に興味がある年頃だろう?」
顔を寄せると、キャーと悲鳴のような声が聞こえた。彼女らはオレたちが付き合っているだけではなく、その先の関係もあることをよく理解している。そこまで把握されていることはシエテにはまだ知られたくない。恥ずかしいからやっぱり付き合うのはなしでと言われたら困る。
腰に手を当てて移動を促すとシエテは気まずそうな顔をしつつも、納得はしてくれたようで口元を緩めている。浮かれているのはお互い様で二人して足取りが軽い。
「風紀を乱すようなことはダメだよ?」
「ウィ、そういうのは二人きりの時だけ、だろう?」
シエテの要望は分かっている。恋人として弁えている。
新しいえっちな下着が出来上がってシエテに伝えに行く時も、真っ先に個室に向かった。