ほんの些細な確認事項 [R15]
ほんの些細な確認事項 [R15]
オレの恩人と、オレの恋人が楽しそうに話をしている。好きなものと好きなものとが合わさるとこんなにも良い光景なのか。二人の間に割って入りたい気持ちを抑えて何の話をしているのか鑑賞することにした。
団長が緊張感のある声で囁くように言葉を紡ぐ。
「もしかして、シエテとロベリアってお付き合いしてるの?」
そういえばまだ団長に言っていなかった。今、シエテから言ってくれれば次に団長と二人きりで話す時に恋人としてのシエテの可愛いところを教えてあげられる。説明もシエテに任せることが出来て良かった。
「えぇっ!? ただの気の合う団員同士だよ。お兄さんそんなに趣味が悪いと思われてるの~?」
予想外にシエテが否定したところでルリアとビィがやってきて解散となった。
付き合ったばかりという訳でもあるまいし、そんなにも照れなくていいのに。そう言ってあげようと、オレの部屋に向かって歩くシエテの後を追う。
最初から気がついているのか足取りは緩やかですぐに隣に並んだ。
「ロベリアからも違うって言ってくれれば良かったのに」
こちらを見ずにそう言われた。そんなに恥ずかしがることなのか疑問に思いながら部屋に入るとすぐに腕が背中に回ってくる。こちらからも抱き締めて唇を重ねる。会えずにいた時間を埋めるように舌を絡め合い見つめ合う。
忘れる前に言っておこうと気楽に話しかけた。次の食事のメニューを提案するような、他愛のない会話のように軽く言葉を発した。
「団長には恋人同士だって言ってもいいんじゃないか」
「えっ」
シエテは間の抜けた声をあげた後、ぽかんと口を開いて目をパチパチと瞬きさせてから、気まずそうに目線を横に反らした。
冷静になって考えてみれば否定するにしても趣味が悪いと言う必要はない。頬を染めて照れるのではなく、気まずそうにするのは不自然だ。手のひらが汗ばんできて服の裾で拭う。
「……オレは、キミの恋人だろう?」
まさか恋人じゃないなんてことがあるのか。そんな訳ないさと思いながらも疑問を口にした。もう何度も体を重ねているし、この関係はオレが好きだと言ってから始まったのだから、それで付き合っていないなんてことはないだろう。デートだってしてるし、他の人間とはキスもしたことなかったと言っていた。オレだけのはずなのに。
面白くない冗談だと思いながらシエテの返事を待つ。
「ご、ごめん」
謝罪の言葉の後、沈黙が続く。
「恋人だと思って紳士的に振る舞っていたのに。恋人じゃなかったらなんなんだ」
「ごめんってー。でもそんなこと別にどうでもいいじゃない。それよりも、ね?」
へらへらと笑いながら謝るだけで、ベッドに行こうと視線で誘われる。
服を脱がされながら段々と腹が立ってきた。暴力的になりそうな衝動を抑えて不満を口に出す。
「性的なパートナーだったらもっと好き勝手していたさ。常識の範囲内の振る舞いをして、避妊具まで付けて。くはっ、ずっとお行儀良く振る舞っていたのが馬鹿みたいだ」
インナーを脱いでいる途中のシエテの動きがピタリと止まった。オレの顔をじっと見ながらゆっくりと口を開いた。
「……それって、もっと激しく出来るってこと?」
期待するような艶めかしい瞳をして見つめてくる。
「なぁ、シエテ、オレは恋人だよな?」
オレからの確認に対して、シエテはそわそわと落ち着きのない様子で暫く考え込んだ後、こちらを見ずに黙ったまま首を横に振った。
「シエテ」
いつもより低い声が出て、シエテの体が強張る。頬に手を伸ばすと拒まれることはなく受け入れられる。親指の先で唇を突くと軽く啄まれた。無防備な行動に苛立って頬を摘むと薄く開いた唇から吐息が漏れた。
「い、いや、ほら、お互いに立場ってものがあっ……」
唇を塞いで舌をねじ込む。これ以上否定の言葉を聞く必要はない。
真っ白な肌が薄らと赤みを帯びて、潤んだ瞳が物言いたげにこちらを見つめてくる。シエテの望みが手に取るようにわかって笑ってしまう。
手間のかかる恋人の期待に応えるように″激しく″努めた。苦しげに艶めいた悲鳴が上がるように、好き勝手思うまま腰を動かすと聞いたことのない音が聞けた。オレとしてもメリットのある我儘だった。
誠意を持って行為中に話し合いをした結果、恋人だと認めるから許して欲しいと言ってもらえた。途切れ途切れでぐずぐずだとしてもシエテ自身の声だ。きちんと録音して厳重に保管した。円満に解決したと言える。
翌日、団長に本当は交際していると訂正してくれたから、オレたちは恋人同士で間違いない。