MON TAMIA
MON TAMIA
「お土産買って来たから一緒に食べよう。皆には内緒だよ」
恋人がやたらと土産にチョコレートを買ってくるようになった。オレがケーキのチョコプレートが好きだとタワーから聞いたらしい。
どうも恋人と相棒の間で、オレのいないところでこっそりとオレの話をするのが流行っているようだ。止めさせようにも二人とも上手い具合に隠していて現場を抑えることが出来ない。どんな話をしているのかどうしても聞きたくていろいろと魔術を工夫してみたが、すぐにバレてしまって未だに聞けていない。
「メルシー」
チョコレートそのものが特別好きという訳ではないが、甘いものは好きなので喜んで貰う。
自分で食べるよりもシエテが食べている一部始終を堪能する方が好きだ。キャラメリゼされたナッツが入っているチョコをコリコリいいながら食べる音もイイし、頬に詰めて食べる姿は小栗鼠のようで愛くるしい。思わず抱きついてしまう。
「くはっ、モンタミア!」
「はいはい」
二人きりの時に抱き付いても抵抗されることはなくなった。常に肩が触れるくらい近くに隣り合って座るようになってからはずっとそうだ。以前よりも許されることが格段に増えた。
最初の頃は何を言っても信じては貰えなかった。全て聞き流されているものだと思っていたが、ほんの僅かばかりシエテの中に積もっていった。何度も何度も伝えていくうちに照れくさそうに笑みを浮かべてくれるようになって、とうとう恋人と呼べる関係にまでなれた。
「ジュテーム」
「うんうん、俺もだよ~」
オレから贈る愛の言葉に、恥ずかしがることもなくなってしまったのは少しだけ面白くない。なんてことない日常のように流されてしまうのは初めの頃に戻ってしまったかのようだ。頬を赤く染めながらも、無表情を保とうとする姿はとても愛らしいというのに。
「もっと心を込めて言ってくれよ、モンシェリ」
「込めてるって。いいから黙ってお前も食べろよ」
オレの使う言葉が、どういう意味なのかもあまり聞いてこなくなった。毎回、それはどういう意味? と確認してきていたのに。まさかとは思うがこれが倦怠期なのか。不満があってタワーに相談しているのか。オレよりもタワーがいいだなんて言い出さないだろうな。
疑念を抱きつつ、じっくりと観察する。チョコを早いペースで口に入れて、本当に栗鼠のようになってきている。ずっと見つめているのに視線を合わせずに食べることに集中しているようだ。視線を感じているはずなのに、不自然なほどこちらを見ない。
一つ、閃いて言葉に出した。
「シエテ、……愛してる」
膨らんだ頬を優しく突くと。チョコを口に運ぶ手が止まった。徐々に顔が赤くなってきて、耳や首まで真っ赤になった。暫くして、ガリガリとイイ音で腔内のナッツを噛み砕き飲み込んでから睨まれる。
「わかってるからさぁ~~」
「なにがだい?」
問い掛けへの答えよりも先に指と指を絡めてしっかりと握られる。緊張しているのか手のひらが温かくしっとりとしている。触れられただけだというのに、やけに心臓が暴れ出して苦しさすら感じる。
「だから、お前が俺のこと大好きだって、言わなくてもわかってるよ?」
変わっていない。愛情表現を向けられて、受け止めることに慣れていない。慣れていないけれど確実に受け止めて返してくれる。
「ノンノン、言わせてくれよ。いい子で待ってたんだぜ」
シエテがこの艇に滞在する時間は他の団員に比べて長くはない。この空の何処まで行っているかも知り得ない。それでも、手土産を持って帰ってきてくれるから、タワーと共に他の楽しいことをして待っていられる。
「うん、俺も、少しは悪いとは思ってるよ。ほんの少しだけね」
土産のチョコを苦々しい顔をして見るものだから、片手で残り全てを掴んで無理やり口に入れた。それを見たシエテが驚いたように目を口を開いて大声で笑い始めた。
「ははは、間抜けな栗鼠みたい」
頬が膨らんだまま何も言い返せない。ガリガリとナッツを噛み砕いて威嚇するが余計に笑って涙を拭い始めた。口の端から唾液が垂れる。指で拭う前に顔が寄ってきて舐められる。
「ん、いつもより甘いね」
にやにやと意地の悪い顔で真っ赤な舌を出して見せつけてくる。さっきまでこちらが優勢だったのに翻弄されてしまう。再び主導権を握るべく、唇に噛みついた。