ノリの合う友人 [R15]
ノリの合う友人 [R15]
友人と呼べるような相手ができた。
信じられないことにオレよりも強い。シエテを壊す襲撃プランを想像するだけで楽しい。シミュレーションの時点でいつも失敗してしまうから実行には移せないとても手強い相手だ。想像した内容を本人に相談すると、事細かくダメ出しをしてくるから軽い気持ちで披露するのはやめることにした。負けず嫌いでやり込めようとムキになってくるから厄介だ。
そして喋るのが好きなオレと何時間も話をしてくれる。こんなに長い時間を共にした人間はパパとママ以来だ。今日も会話が楽しくて、思いついたことをそのまま話す。
「強姦がしたいんだ」
いつもより返事が遅い。久しぶりに体を重ねたから疲れてもう寝てしまったのかと思い、顔を覗き込むと困惑した顔をしている。
「……犯罪は放っておけないなぁ。やっぱり殺すしかないか」
他の誰かにするのかと思ったのか、剣拓が部屋中に展開される。流石に言葉が足りていなかった。突き刺されないように抱きついて懇願する。
「ノンノン、嫌がるキミに無理やりしたいだけで他の人間にはしない」
「あぁー、はぁー、なるほどなるほどー、そういうことね」
納得してくれたようですぐに剣拓を消してくれた。
まだ肉体関係がなかった頃、同じように剣拓を出されて冗談だと思っていたら本当に刺されたことがある。例え本気でなくても一般人に害をなす発言はしてはならない。ちなみにその時はすぐに謝ったのと、うっかり興奮してしまい勃ったのを見てシエテの興が削がれて許してもらえた。それがきっかけでなんやかんやこうして性欲処理込みの友人にはなれたが、地雷を踏むと危険なことには変わりがない。
「眠らなくていいのかい?」
ベッドの上で裸のまま抱き合って話すことがこんなにも穏やかで充実した気持ちにさせるとは知らなかった。相手は少し疲れていて話している途中で何度も欠伸をした。それでも眠らずに話し相手になってくれている。
「うーん……この時間、楽しいし。もっと話したそうだから起きててあげるよ」
彼が忙しくて艇を離れていて、こういった時間を過ごすのは久しぶりだった。そのせいで話し過ぎてしまったようだ。
布団に潜り込んで胸に耳を当てる。トクントクンと心臓が動く音がする。他の誰の心臓の音よりも心地がいい。
「キミは今日もパルフェな音をしている。いい夢が見れそうだ。ボンレーヴ」
もう寝ようという意図は伝わったようで、埋めた頭を抱きしめて頭頂部にキスを落としてくれた。
「おやすみ、ロベリア」
眠りにおちる寸前の低く優しい声は安らぎを与えてくれる。いい夢が見れそうだ。
翌日、疲れが残っているのかシエテは起きてからもぼんやりとしていた。2人して朝食を食べてから、午後出発の依頼の前に街に買い物に行くというシエテに同行することにした。
賑やかな街の中もシエテと共に歩くと印象が変わる。歩いている人間よりも並んでいる物や景色に視線が動く。なによりもシエテに目がいく。歩いているシエテの特徴的な髪が跳ねるのを見ているだけで面白い。
人通りの少ない路地裏に差し掛かったあたりでシエテが足を止めた。同じように足を止めると、目線が合って真剣な表情で伝えられた。
「考えたんだけどさ、四肢を潰されても抵抗し続けると思うんだよね」
何を言っているのか理解出来ない。ここ最近は襲撃プランを披露していなかったはずだ。首を傾げていると、シエテはにんまりと笑みを浮かべる。
「昨日の話の続きだよー」
そう言うと同時に再び歩き始めたので慌てて追いかける。昨日していたシエテに無理やりしたいという話をずっと考えていてくれた。路地裏に来たのはこれを言いたかっただけで特に用があった訳でもなく、人通りの多い道へと戻るようだ。
「くはっ! くはははっ!」
可笑しいのと嬉しいのが混ざって大声で笑い出してしまう。目の前の道を歩く人が一瞬だけこちらに視線を向ける。
「ほらほら早く他の人に聞こえないようにして」
「ウィ、それなら脅迫して逆らえないようにしよう」
防音の魔法をかけて気兼ねなく話を続ける。雑踏に戻って歩きながら秘密の会話をするのは背徳的で愉快だ。
「人質は剣神を使って助け出しそうだしなぁ。脅すにしても後ろめたいことはないし、犯罪歴もないからねぇ」
「情事の音を拡散する、とか?」
「そんなことしようとしたら即事殺すよ。頭目の面子の問題が絡むと十天衆の他のメンバーも動かざるを得ないし」
「団長の恥ずかしい秘密をバラす」
「あー、それはいいね。未来ある若者の将来を守る為に身を犠牲にしようじゃないか」
「くはっ! 決まりだな! それじゃあ、午後の依頼が完了したらオレの部屋で」
「りょーかい」
オレたちにとってはいつものお遊びだった。友人同士でごっこ遊びもするし、気軽にセックスもする。シエテにとっては危険人物の監視も兼ねていて、オレにとっては最高の暇つぶしだった。
世界の為に自身を犠牲に出来るシエテと、自身の幸福の為に世界を破壊しても構わないオレと、正反対の信条を掲げて生きているが、不思議と考えを合わせることが出来た。凡人にはない圧倒的な力を持ち、収集癖があること以外にも通じる何かしらがあるのだと思う。その何かを追求する気はない。
深い意味なんてないドライな関係で、他人から見たらどう見えるかなんて、全て隠し通せばなんの問題もない。2人の中で完結している関係だ。
そう、誰にも知られなければ、という前提の話だ。
「……それで、ロベリア。申し開きはある?」
団長の前で、甲板の隅に正座をさせられている。
どうしてこのような状態になっているのかわからないが、団長の言葉の勢いが凄まじく言うことを聞いてしまった。恩人がこんな激しい一面も持っているだなんて少しドキドキする。
「くはっ! なんのことだい、団長」
「知らばっくれないで。なんなのよこのクラポティは! シエテになんてことをっ!」
鑑賞してクラポティを出しっぱなしのまま眠ってしまったのは失態だ。いちいち再生するのも面倒だからと耳に当てたら音が流れるようにしておいたのもよくない。指を鳴らして全て収納する。
シエテの声が心地いいのと、終わった後のことを思い出すと眠たくなってきてしまって、ついうっかり眠ってしまった。それも寝てしまった場所が良くなかった。甲板の端で風の音と破壊される自身の音とシエテの嬌声を聞こうと思いついた時は、なんて素晴らしいアイディアだと思ったが、まさか団長に知られてしまうだなんて予想もしていなかった。
「今更証拠を消しても無駄なんだからね」
「ちなみにどれを聞いたんだ? 全部?」
「全部聞く訳ないでしょ! あんたがシエテのこと脅して無理やり……馬鹿っ! 私まだ15歳なのにあんな酷いのを聞いちゃったんだよ!」
「……オーララ」
よりによって先日のプレイを聞いてしまったようだ。出していたクラポティの大半がオレが破壊される音だというのに、どうしてよりにもよってそれを聞いてしまったのか。どうせならオレが破壊されるパルフェな音を聞いてくれたら良かったのに残念でならない。
それにしても団長に名前ではなく、あんたと呼ばれるのも新しくて良い。たまにシエテに冷たい目と低い声でお前と呼ばれる時に近い良さがある。
「今後シエテには接触禁止にするから。他の団員にも近づかないで」
なんと言って説明したらいいのか思い浮かばない。このままだとシエテに会うのが今までよりも難しくなってしまう。それはそれで面白そうだが今以上に会える時間が減るのはよくない。
考えているうちにシエテも呼び出されたようで、こちらに近づいてくる。団長が庇うように間に立った。
「団長ちゃん、何かあった?」
団長の様子と、正座しているオレという組み合わせに首を傾げる。何があったのか理解していないようだ。そりゃあこれまで完璧に隠していたのだ。身に覚えがないに決まっている。
「シエテ……ごめんね。私がロベリアを放置したばっかりに」
「えっ?」
シエテは団長の様子に困惑してこちらを見てくる。ジェスチャーで伝えようとするが伝わることもなく、ゆっくりと呼び出された理由を聞き出してしまった。
「そっかー、音声を聞いちゃったんだね。ごめんね、団長ちゃんには刺激が強かったよね……そうだよ。俺はロベリアに脅されて無理やり……」
両手で顔を覆って項垂れる。団長がこちらを睨んでくるが、そいつは被害者ではなく共犯者だ。道連れにしようと口を開きかけたところで、シエテが指の隙間からこちらを見てウインクしてきた。なにか考えがあるようなので一旦は口を閉じる。
「ねぇ、団長ちゃん。このことは恥ずかしいから皆には黙っていてくれないかな。大丈夫だから。こいつは愛情表現がわかってないだけで、始まりはおかしかったけど今はちゃんと恋人同士? みたいな? そういうのだから無理やりじゃなくなったんだよ」
「ほ、本当に? それも脅されてない?」
「本当だって。そうじゃなかったらとっくに殺してるから。ね?」
「でもそれって吊り橋効果とかいうやつじゃない? ロベリアだよ!」
「はははっ、団長ちゃんは難しい言葉を知っているねぇ。大丈夫だって。なぁ、ロベリア?」
よくそこまで適当な嘘が吐けるなと感心していると急に同意を求められた。首を縦に振って答える。
「……もちろんさ、モナムール」
恋人同士? を演出するためにシエテに抱きつき頬にキスすると、背中を思いっきり抓られた。
「くはっ!」
笑ったことで更に捻りを加えて引っ張られる。これは後で青痣になるやつだ。患部がじんじんと痛む。
「なんだか本当みたいだね。大人の関係ってむずかしすぎてよくわからないよ。でもシエテがそう言うなら……うーん?」
「こいつのこと上手く使うからお兄さんに免じて許してくれないかな? 録音してたのは全部壊すからさぁ」
「なっ? それはだめだ! シエテの音は宝物なんだ」
再び抓られる。やられてばかりは性に合わない。仕返しに腰回りを撫でて耳に唇を落とす。
「本当に仲がいいんだね。……わかった。2人がそういう関係で上手くいってるのなら口を挟まない。ただし、ロベリアは今後クラポティを出しっぱなしにするのは禁止。ルリアや小さい子が聞いちゃう可能性だってあったんだよ」
「ウィ! 理解してくれて嬉しいよ、団長」
「ごめんね、団長ちゃん。お付き合いしてるって言ってなくて」
「もう、そうだよ。ちゃんと監視して躾けておいてよ。シエテも悪いんだからね!」
「ごめんってば。また皆でご飯食べに行こう。お兄さんがご馳走するからさ。もちろん、ロベリアは留守番で」
なんとか上手い具合に話はまとまって誤魔化せた。団長が完全に去っていくのを見届けるとシエテを抱き締める。
「メルシー、シエテ! 助かった」
「それで、どうすんだよ。団長ちゃんに誤解されちゃったよ」
散々抓られた箇所を撫でられながら、なにかこれ以上することがあったかと考えてみるが思い浮かばない。シエテが大きくため息を吐いてから言う。
「俺たちは恋人じゃない」
その場しのぎのでたらめで、決して恋人同士ではない。愛を囁き合ったこともないどころか、相手が自分をどう想っているかなんて気にしたこともない。
「くはっ、なら今からそう振る舞おう」
団長の前だけでもそれらしい設定を守らなくてはいけない。節度を持った大人の恋人同士のふりだ。
「えー、今のままでよくない? 俺、ロベリアが恋人とか嫌なんだけど」
本気で嫌なようで心なしか髪の毛の跳ねも元気がない。こちらだって本気で恋人になろうと言った訳ではないから心外だ。
ふと、思い出したことをそのまますぐに口に出す。
「シエテ、恋人同士のセックスはイイらしい」
快楽を追求する上で関係性を変えてみることは有効的だ。この前の脅迫する者とされる者はとても官能的で愉悦を感じられた。恋人同士も盛り上がることだろう。なんだかとても楽しいことになりそうな予感がしてきた。
「……今から試してみようか」
シエテが少し照れ臭そうに微笑みながら言うものだから、心臓に締めつけられるような痛みを感じる。
「トレビアンッ! オレもそう思ったところだ」
部屋に雪崩れ込んでそれぞれ鎧とローブを脱ぎ捨てる。
「ジュテーム、シエテ」
恋人同士という設定なのだから愛の言葉を囁かないといけない。目と目を合わせて、なるべく甘く口にする。
「ふふっ、俺も好きだよロベリア」
お互いの考えをよく理解した掛け合いだ。笑いながら応えてくれたのでそのまま唇を重ねた。はじめは軽く合わせるだけで、徐々に長く、目を合わせてゆっくりと舌を入れて絡め合う。
「くはっ、悪くないな。満たされる気がする」
「確かに、これ……なんか、すごい……」
シエテはすでに息が上がっていて、惚けた顔をしている。桃色になった頬が美味そうだ。
「いつもより感じるのが早いんじゃないか」
あらゆる場所にキスを落としながらインナーを脱がせていく。耳に吸い付いて舌でじっくりと嬲り、同時に両の胸も弄る。こまめに好きだ、綺麗だ、可愛いと褒めていくとどんどん肌が赤くなり震える。
「待って、やっぱりやめよう。こういうの苦手かも」
片手で自身の顔を覆い隠し、もう片方の手でこちらの胸元を押して動きを止めてきた。
「苦手という感じはしないが? ほら、良さそうだ」
乳首が赤く色づきピンと硬くなっていて、股間も先走りで下着を濡らしていて気持ちがいいことを主張している。顔だって快楽に酔った表情だ。もっと気持ちよくなっているシエテのことが知りたくて目を見つめるが顔ごと逸らされてしまう。
「だめ、やめろ、その目」
「目?」
「演技とはいえそんな優しい目で見るなよ」
「よくわからない。シエテこそ目が官能的に蕩けてるだろ」
爛れた関係をそこそこ長く続けていたのに、こんな表情をするなんて知らなかった。快楽だけを求めて溺れた顔とは違う。恋人にしか見せない顔はこんなにも良いものなのか。
「ジュテーム、シエテ。愛してるよ」
恋人という設定を盛り上げるためにではなく、自然と口から出てきた。
「俺は、お前のことが好きだなんて、認めたくない」
なんて可愛いらしい抵抗なんだろう。シエテはこうでなくては面白くない。
「くはっ、愛されてるな。大丈夫だシエテ、オレの方がキミを愛している。今から証明してみせるよ」
キスをしようと顔を寄せると顎を掴まれて止められた。
「はぁ? 俺の方が愛してるに決まってるだろ。こんな恥ずかしいこと許してんだよ?」
先ほどまでの恥じらいを含んだ表情から一転して真顔で責められ、苦笑するしかない。甘ったるい雰囲気がぶち壊しだ。これで萎えるどころか興奮する男はオレくらいだと思う。
「……キミ、負けず嫌いにも程がある」
これ以上、口を開かせないように無理やり唇を塞いで舌を捩じ込む。口の端から漏れる声で、気持ちがいいのは自分だけでないとわかる。激しい心臓の痛みと、脳が溶けてしまいそうな快楽を知ってしまった。もう元の関係には戻れそうにない。
こうしてまたオレには友人と呼べる相手がいなくなったが、幸福の音とタワーと恩人と恋人がいればそれでいい。