安眠 [R15] 後編(シエテ視点)
安眠 [R15] 後編(シエテ視点)
「シエテ、シエテ! 起きてくれ!」
切羽詰まった声で呼ばれて目が覚める。
「……うぅ、なにぃ……えっ……ぁんっ、あっ、だめっ! ああっ、なんでぇ?」
意識がはっきりしてくると体の違和感がわかってくる。脚を持ち上げられて尻に太いものをギチギチに挿れられている。目の前の男に犯されている。
「ああ、やっぱり。トレッビアンッ! 思ったとおり、キミの奏でる音のアルモニーは最高に満たされる!」
ロベリアがやけに興奮した様子で腰を動かす。気持ちのいい場所をごりごりと抉られる。眠っている間にそういうことをされているとはわかっていたつもりだった。実際にされている状態になって理解した。いくら眠りたいからといってこんな行為は許容してはだめだ。
「あっ、あっ、やめっ、動くなぁ!」
背中を叩いて抗議すると動きは止まった。動きは止まったが呼吸が荒く体が熱い。息を整えたいのに上手く体を制御出来ない。
「わかった一旦止める……ノンッ、締めつけないでくれっ! 達しそうなんだ!」
珍しく怒気を込めて声を上げるもんだから思わずこちらが狼狽えてしまう。
「そ、そんなこと言われても」
こちらとしても締めつけたくて締めつけている訳ではない。体は言うことを聞かないし圧迫感が強い。入っているだけで気持ちよくて辛い。こんなに快楽に襲われたことは今まで生きていて一度も経験したことがない。痛みよりも我慢ならない。初めての経験にどう対処していいのか、寝起きの頭は動いてくれない。
「シエテ、キスがしたい。許可してくれ」
「はぁ?」
「キミの言うとおり口だけは避けていたがキスがしたい。キスしながらしたい」
息も荒いし目がギラギラと殺気立っていて怖い。
「うぅ、まさかその為に起こしたの?」
「くはっ、いい子だから締めつけるなって。ウィ。そうだ。キスさせてくれたらいつもよりもずっと可愛がってみせるよ。終わったらちゃんとキミの望む魔法もかける。頼むよシエテ」
懇願しているような口調のくせにこれは脅迫だ。尻に挿入された状態で、股間で固くなった陰茎を強く握られて言われたら頷くしかない。
「うぅっ……」
唇に啄むように何度もキスをしてくる。歯を食いしばり顔を背けるが顎を掴まれ正面を向かせようとしてくる。
「口を開けてくれ。ほら、いい子だから」
「やらぁ……ぅ……んぐぅ」
止めて欲しくて言葉を発すると、唇が開いた隙間に舌を捩じ込まれ口の中を舌で蹂躙される。気持ちがいい。息ができなくて目の奥がチカチカする。
満足してくれたのか口を解放されるが、浅く息を繰り返すことしかできない。
「声を出して。大丈夫、他の連中には聞かせないから。キミの声を聞くのはオレだけだ」
耳に息を吹き込むように囁かれ、熱い舌を入れられると全身に快感の大きな波が寄せる。
「あっ、あっ、いっ……イッてる、イッてるからやめて、うぅっ、あぁーっ」
「くはっ、トレビアン、とても官能的だよ、シエテ」
ロベリアの体は止まったままなのに、耳への接触だけで達してしまった。混乱と恥ずかしさで頭の中がぐちゃぐちゃになって、目の前にいるロベリアの名前を呼ぶ。
「ロベ、リア、ロベリアぁ……」
「ウィ、もっと呼んでくれ」
熱で浮かれた目でこちらを見つめている。にやけ顔があまりにも喜びに満ちていて腹が立つ。こんな表情を見たら許してしまいそうになる。
「ロベリア…………お前、あとで殺すっ」
「くっは、くはははっ、いいよシエテ。本当にキミは最っ高だ!」
意識が飛ぶまでずっと貪り続けられ、気絶するように眠りについた。
ベッドが小さく軋む音で徐々に目が覚めていく。
血流を即すように耳から首、肩、背中にかけて撫でられる。
「殺さないのか?」
こちらが起きたことに気がついたのか話しかけてきた。手が離れてベッドから遠ざかっていく。撫でられていた部位がじんわりと温かい。
ベッドの上に戻ってきたので寝返りを打つ。水の入ったコップを取ってきたようだ。コップを受け取り、体を起こして水を飲む。こちらの様子を伺う視線には応えない。目を合わせないままコップを返すと、背を向けてもう一度横たわった。
頭と体もすっきりとしていて、不調なのは腰と股関節の辺りの違和感だけだ。
「マッサージ、腰の方もしてよ」
「……ウィ」
うつ伏せになるとすぐに腰周りを指圧される。気持ち良さに微睡んでくるが指が徐々に下の方に降りてくる。双丘を割るように指の動きが変わっていき、いやらしさを含みはじめる。
「腰って言ったよね」
寝返りを打って腕を払う。その動きの影響で尻の穴から何かが垂れる感触がして、思わず顔を顰める。
「腰の方だと言った。……ほら、後処理をしないと」
布切れでされるがままに拭かれていき、羞恥心で顔が熱くなっていく。この状況を見ていられず両手で顔を覆う。
「こういうの寝てる間にしておいて欲しかったなぁ」
指の隙間から睨みつけると、ロベリアは恍惚の表情を浮かべて言い放つ。
「くはっ、起きてるキミの反応が見たいんだ」
「悪趣味」
散々悩んでいた音は、いつの間にか聞こえなくなった。とても調子がいい状態が続いている。
標神には「悪趣味なのは君だろう」と小言を言われたが、ロベリアが隣にいると干渉してこないから非常に助かっている。あれだけ視線を合わせて常にこちらを見て耳を澄ましている奴とは対面したくないのだろう。しかも自分と同じ顔した人間があれこれされているのを見るのは嫌みたいだ。気を抜ける時間が出来て助かっている。
「あのさ、また防音の魔法をかけて欲しいんだけど、いい?」
「ウィ! 後でキミの部屋に行くよ」
頼めばいつだってロベリアは上機嫌に返事をする。
自分としては非常に不本意なことなのだが、ロベリアとは良好な関係を築けている。意外にも献身的でとてもマッサージが上手い。ぐっすり眠りたいだけで声をかけるのに深い意味はない、ことにしておきたい。部屋に飾られた瑞々しい花からいい香りがしている。ロベリアが置いていった着替えの入った布袋を部屋の隅に寄せて、ベッドの上に横たわった。ロベリアが部屋にやって来る時間まで余裕がある。目を閉じればすぐに眠気はやってくる。
実際に魔法をかけてもらうことは、あれから一度もない。