3年 [R15] 後編(ロベリア視点)
3年 [R15] 後編(ロベリア視点)
このところ恋人からの愛情表現が情熱的だ。
人目のある場所では素っ気なくて、ふたりっきりでもシャイでなかなか素直になってくれない。年上で強者で、プライドが高いから仕方のないものだとは理解していた。隠し事が多くてあまり会えない時もある。それでもずっと一緒にいてくれると約束したのだから我慢はしないといけない。体に無理をさせているのだ。
自身の幸せは追求する。それとは別に、シエテに合わせて生きていくのも悪い気はしなかった。
シエテはクリスマスや正月、バレンタインデーなどのイベントは大事にするくせに、出会って3年の記念には興味がないのか反応がいまいちだった。俺好みのクラポティを用意したというのに披露する機会がなかったのは残念だ。
それがここ半月ずっと俺の側から離れない。自分からもっとしたいと求めてきた。
なんでも好きにさせてくれた。体がきついからやめて欲しいと言っていたことも、恥ずかしいから見せられないと言っていたことも全部だ。
これはひょっとすると俺の愛がシエテを変えたのだろうか。そうだ。そうに違いない。出会ってから3年ではなく、結ばれてから3年の記念にあそこまでしてくれたのだ。シエテが付き合うと言ってくれた時にも感じた甘酸っぱい感動に満ち溢れる。
言いたいことがあるかと聞かれて、ついうっかり、付き合い始めに比べてキミのアナルが縦に割れているんだが大丈夫なのかと口にしそうになって思い止まった。あと乳首もふっくらしてきていると思うし、前でイクと後が辛いからと言ってイッてないせいかペニスも心なしか小さくなっている気がするのだが、これはまだ確証がないからもう少し様子を見よう。何にせよ、言うべきではないことは学習している。長い時間を過ごしていても匙加減が難しいのだ。揶揄ってはくるが、こちらが言葉で責め過ぎると暫く口を聞いてくれなくなる。そこがまた面白い。
シエテは本当にオレとのキスが好きだね、くらいは言っても良かったかもしれない。
いつもどおり、程々に体を重ねてから穏やかな時間を過ごす。シエテはなにか言いたいことがあるのか起きたままずっと俺の髪をくるくると指で弄っている。黙って待っているとようやく目を合わせて、口を開いてくれた。
「別れよう」
言うなり視線を逸し、目を閉じて俺の言葉を待っている。睫毛と唇が小刻みに震えている。自分で言っておいてショックを受けているなんておかしな話で、すぐにこれは冗談だとわかった。
シエテは突拍子もない冗談を言うことがある。害のない子供騙しなことばかりだったのに今回のは全く笑えない。
「シエテ、そのブラーグは面白くない。キミらしくないな」
瞼が開くのを確認すると、額と額を合わせる。目を合わせれば互いに惹かれあっていることは明白なのに、どうしてこんなつまらない冗談を言い出したのだろうか。快楽を与え過ぎた時に馬鹿になるからやめてと言うことがあったから、それで本当に頭がおかしくなってしまったのかもしれない。
「俺さぁ、ロベリアが飽きてすぐに別れるもんだと思ってたんだよね」
溢した言葉に首を傾げてしまう。飽きる? 別れる? 俺たちには程遠い言葉だ。俺たちの終わりは死別だけしか考えられない。先に死ぬつもりもないし、そう簡単に死なせる気もないが。
「何を言っているんだ。キミはずっとオレと一緒にいてくれるんだろ? 付き合うと決めた時にそう言っていたじゃないか」
シエテは俺が飽きるまで付き合ってくれると言った。付き合うということは俺のものでいてくれるということだ。飽きることはない。だから永遠に俺のものだ。壊さず大切にしようと思った相手を逃す訳がない。
「そんなこと言ったかなぁ」
「俺は飽きない。つまりはずっと一緒だというプロポーズだ」
「お前の中ではそうなってんだ。すごいね、あははっ」
なんでもないことですごいすごいと頭を撫でてくる。シエテは本当に俺のことが好き過ぎる。よくわからないことを言われたし、おかしくなってしまったかとも思ったが大丈夫そうだ。
「くはっ、そういことか。くははっ!」
シエテはずっと俺に飽きられて捨てられてしまうんじゃないかと不安になっていたのだろう。時折、年齢のことを気にしているし、ずっと周囲には関係を公表していないから仲のいい友人だと思われている。俺が他を選ぶわけがないのに、不安になってしまったなんて本当に可愛い恋人だ。
「どうしたの?」
「いいや、わかってる。わかってる、さ」
飽きて別れるなんてそんな可能性は万に一つもないが、不安にさせてしまったのは俺の責任でもある。これからはもっと不安を解消してあげよう。
シエテは俺のもので、逃すことはない。
「そう、わかってるのなら……いいや」
シエテが安堵したように息を吐き、目を細める。
全部わかっている。今後は隠さずに愛を伝えよう。シエテの唇に軽く噛みつくと、嬉しそうに笑ってくれた。
団長と共に魔物退治に行ったシエテが帰ってくるのを、艇の入口まで迎えに行く。今までは関係を隠していたがもうそれもやめた。遠くに小さく姿が見えてきた。まだこちらに気がついていない。
「ジュテーム、オレのシエテ!」
大きな声で言って手を振る。シエテの隣に立つ団長が、こちらを指差してシエテに話しかけている。それに何かを答えてから、シエテは照れ臭そうな顔をして小さく手を振り返してくれた。
同じように帰還を待っている団員たちが騒めきながらこちらを見る。
「くはっ、実はオレたち恋人同士なんだ。3年前から」
前から所属している団員は深く納得した声を上げた。団内で噂が広まるのは早い。
ここまで来たら抱き締めてキスをしよう。きっと喜んでくれるはずだ。走り出したいのを我慢して、いい子の顔で愛しの恋人の帰りを待つ。