研究紹介

こんな動物、見たことない!

 生物分類学の醍醐味は、多種多様で混沌とした生物の世界をきちんと整理していくことと、まだ私たちが知らない新種を発見することです。そこに何の意味があるのかと問われれば返す言葉はありませんが、意味ないことを突き進めることこそが「人間らしさ」であり、教養とはそういうものだと思います。化石の研究からは、過去の生物の姿や進化、地球環境の変化など様々なことがわかるので、過去のデータを蓄積することで現在・未来の私たちの在り方を考えるヒントとなるでしょう。こうした社会的な意義に繋げていくことも大切ではありますが、私の研究はもっと単純。世界中の誰もがまだ知らない古生物を見つけたり、知らない事実を発見したりするような、科学の根本を探究しています。

研究や調査のことはブログ記事で紹介しています

(2024.Feb.更新)

東南アジアの哺乳類化石

ミャンマーやタイで、新第三紀・第四紀の哺乳類化石の発掘調査をしています。新第三紀はヒマラヤの隆起によって世界的な寒冷化と草原環境が拡大した時代で、また東南アジアでは地形変化と陸生動物の種分化が急速に進みました。絶滅種の衰退と現生種への交代劇を明らかにできる最適なフィールドで、グローバルな環境変動と哺乳類相変化の関係、現生種の起源などの研究をしています。

シカ科とウシ科の初期進化

偶蹄目の中でも、新第三紀から爆発的に多様化したグループがシカ科とウシ科です。おそらく気候の寒冷化・乾燥化とそれに伴う植生変化が影響したと考えられています。日本からは、世界最古級のシカ科化石が見つかっており、シカの起源において重要な地であることがわかってきました。また東南アジアはスイギュウやヤギュウの進化の中心地であり、祖先グループの化石が多く発見されています。

更新世末の大絶滅

ナウマンゾウやオオツノジカなど、後期更新世末に多くの哺乳類が絶滅しました。この哺乳類の大絶滅が人類による影響なのか、気候変動や火山の噴火など自然的な要因によるのか議論の最中にあります。日本の場合はネズミなど小型哺乳類の絶滅も知られており、また動物種や地域によって絶滅の程度と時期が異なっていたことがわかってきました。考古学や遺伝学、火山学など他分野の研究者と協力して哺乳類の絶滅プロセスの研究を進めています。

静岡がおもしろい!

静岡県は、どちらかというと哺乳類の化石が多く見つかる県ではありませんが、例えば「日本最古の◯◯」といったように重要な発見が多い地域です。何も見つかっていない場所から、最初の一つを見つけることは大変なこと。いつか見つかる大発見のために、特に時代や哺乳類であることにはこだわらず、地質調査と化石発掘を継続しています。