短編小説(R18)
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※2025年9月21日(日)『BinarySparksTUTORIAL WEBアンソロ(R18)』にて掲載
「対象はあの時、既に戦意を喪失していた。貴方が出る幕はなかったはずですが」
帰宅するなり、ジャケットも脱がずに一直線に迫ってきた彼の目の下には、以前よりいっそう濃い隈が刻まれていた。
「君の背後にはもう一人潜んでいた。負傷者も出ていただろう。それに俺の判断ではない、君の上司からの直々の要請だ。それを君が咎めるのか?」
「そのこと自体を責めるつもりはありません。だがあの男一人なら、残った人員だけで制圧できた。あらゆるリスクを冒してまでお前が出る必要がどこにある」
「不測の事態に応じてとるべき手段をとっただけだ。それとも、無意味に犠牲者を出すつもりだったのか?」
彼に掴まれたシャツの襟がくしゃりと音を立てる。碧の瞳に差し込んだ閃光が揺らいだ。
「……っ! 正しいですよ。貴方も、人命のために最終手段を要請したこの組織も。だとしても……俺は、お前が……」
何かを噛み殺すように途切れた彼の言葉の続きを待っていた。
「……!」
――唐突に左頬を打った痛覚が、思考を止める。
彼の拳はいつだって、ダイナミックで刺激的だ。身体が壁へと投げ出され、軽く肘をついた。その瞳に宿った燃えるような光が真っ直ぐ自分を捉えていることに高揚し、思わず口の端を上げる。
受けた拳を合図に、応戦するように身を構えた。飛び掛かってきた彼の腕を弾き、その身体をダイニングテーブルに組み敷くと、反動でグラスと小瓶が音を立てて床へと転がり落ちる。パリン、と何かが割れる音が響いたが、降谷は構わず左足を大きく振り上げた。赤井は瞬時に距離を取り、直後、振り抜かれた彼の右ストレートを正面から受ける羽目になる。唇が切れ、口内に血の味が僅かに滲んだ。
戦地をソファへと移す。降谷が赤井に馬乗りになると、強引にシャツの襟を掴まれる。振りかぶられた拳が顔面を狙うよりも早く、その手首を掴んで制止した。
「降谷君、熱烈なのは嬉しいが、このままだと部屋が強盗に入られたみたいになるぞ」
「ハッ……身の安全より部屋の秩序を案じているんですか? 赤井秀一ともあろう男が」
力を込めて上体を起こすと、彼の脇腹へ軽く足蹴りを入れた。赤井の想像よりも降谷の身体が大きく宙を舞い、リビングの外へと放り出される。
尻餅をついた降谷が少し咳き込みながら立ち上がると、赤井に向かってファイティングポーズを取った。
「ようやく応戦する気になりましたか。随分と舐められたものですね」
「君相手に手加減できるわけないだろう」
「言ってろ」
再び繰り出される拳を受け止める。そのまま寝室のドアを押し開けると、誘き寄せるように中へと進んでいく。絡み合う身体はそのままベッドへと雪崩れ込み、強い腕力で互いを打ち付け合う。
ようやく赤井が降谷の両腕を捕捉し、ベッドの上で組み敷いた時、降谷の身体からふっと力が抜けた。零れ落ちそうな瞳が赤井を見つめている。荒くなった二人の呼吸が、静かな夜の空間に響き渡った。
彼を掴んでいた腕に微かに赤い跡が付いていることに気が付いて、そっと手を離した。痛むだろうか、と問いかけそうになる言葉を飲み込む。
彼は戦意を失っていたわけではなかった。けれど、その瞳には先ほどまでの鋭さがなく、どこか諦めたような色が滲んでいた。
それがきっと気に入らなかったのだろう。緩めた手に再び力を込め、両腕を一纏めにしてベッドへと叩きつける。そのまま強引に唇を奪い、舌を捻じ込んだ。
こんなことで搔き乱されるとは、なんて浅はかで子どもじみているのかと自嘲する。たぶん君に理解はされないだろうし、気付かれたくもないのだが。
息が荒くなるのを感じながら、捕食するように唇を深く重ねる。抵抗されるかと思ったがその気配はなく、むしろそれを待ち望んでいたかのように、彼の脚が強く絡みついてくる。隙間を埋め合う身体から熱が伝わり、一気に体温が上昇した。
唇を離すと、透明の糸が細く光を引いた。少しばかり紅潮した頬に、熱を帯びた視線に、少しずつ溜飲が下がるのを感じる。
「……クソ、が……」
「もう、やめておくか?」
「誰が!」
形勢を覆すように、今度は降谷が赤井に跨り、シャツの襟を掴んで深く唇を重ねた。指の間に絡めとった彼の柔らかな髪を優しく握りしめながら、嚙み砕かれそうな激しい口付けを受け止める。
眉を歪ませて懸命に舌を絡ませる降谷の表情を、瞼を薄く開いて眺めているうちに、中心にドクドクと血液が集まっていく。
彼の背中をなぞって腰へと触れた。ベルトのバックルを外して、乱雑に衣服を剥いだ。彼からの抵抗はなく、むしろそれを手助けするように膝を立てる。
下着ごと膝まで下ろすと、降谷は一度動きを止めて唇を離した。不服そうな表情を浮かべながら、同じように赤井のベルトを外していく。
勢いよく下着をずらしたせいで、膨張したペニスが降谷の肌を激しく打ち付けた。体の向きを変えた降谷は、急かされたように男根を口の中へと含んでいく。目の前に現れた柔らかい双丘を乱雑に揉みしだきながら、彼の秘部をこじ開けるように舌で犯した。
ぴくりと褐色の肌が跳ねる。柔らかくなったそこを指で馴染ませながら、慎重に奥へと突き進めていく。
「……んっ、は……」
「口が止まっているぞ」
「……っ!」
喉の奥深くに沈み込ませていくその光景を見ながら、突き上げたくなる衝動を抑えて彼の屹立へと触れた。電流を浴びたかのように痙攣した下半身を引き寄せて、臀部へ口付けを落とす。
「……んぁっ! あん」
「……フン、随分とよさそうだ」
「殺してやる」
ペニスから顔を離した降谷は、キッと鋭い眼光を向けていた。
――そうでなければ、面白くない。
赤井は降谷の身体を翻して組み敷くと、再び深い口付けを送った。降谷の口淫によって硬く膨張した雄芯を彼のものへと擦りつけながら、両手を絡ませていく。灰青色に滲む微量の光が、カーテンの隙間から緩やかに覗いていた。ギシ、ギシ、とベッドが軋む音が静かに鳴り響く。
褐色の首筋に、滲む汗。浅い呼吸。世界が遮断されたように、吸い込まれそうになる揺ぎ無いアイスブルーの瞳。いつになればその全てを独占することが許されるのだろうかと、憐れな考えに陥る自分を心の中で嘲笑った。
※2025年2月14日(金)『沖安バレンタインWebオンリー2025』にて掲載
街灯が照らす路地に凍てつくような風が吹きつけ、左手に持っていた紙袋が音を立てる。びゅうびゅうと身を切るような冷たい風が衣服の隙間から入り込み、身震いをした。体温が内側から奪われていくような感覚は、なんだか苦手だ。強風で前髪がぶわりと舞い、額に染みるような冷気が刺さった。顔を隠すために着けていたマスクの隙間からは白息が漏れていた。
何度も足を踏み入れたこの土地に、今さら特別な感情などない。時には数時間にわたりあの大きな豪邸を監視していたこともあったが、今となっては少々非効率だったと感じる。その時ばかりはなりふり構っていられなかった。
事前に連絡を受けていた通り、正面玄関ではなく裏口から敷地内へ足を踏み入れる。インターホンを鳴らす手がわずかに震えたのは、寒さのせいだろうか。もう何度もこの手順を踏んでいるというのに、これから対峙する相手のことを考えれば心臓の奥が強く縛り付けられたような気持ちになる。
キィ、と扉が開く。ゆっくりと開かれたその先には、得体の知れない幽霊のような男が立っていた。
「こんばんは」
黒いハイネックの男が、深夜の来訪者を快く出迎えた。家の中でも変装を施すその男に対し、安室は複雑に眉を顰めた。
「……今日も、ちゃんと沖矢さんなんですね」
「不思議なことを言いますね。僕はいつだって、大学院生の沖矢ですよ」
出迎えてくれた男に促され、扉の一歩向こうへ足を踏み入れる。ガチャン、と扉が閉まったのを確認すると、持っていた紙袋を手渡した。直前まで吸っていたのだろうか、濃い煙草の匂いが鼻を掠める。
「例の資料です。現段階であなた方にとって有益な情報があるかはわかりませんが。優作氏にもよろしくお伝えください」
沖矢がそれを受け取ると、安室はその場から逃げるように引き返そうとしたが、その瞬間ぐっと手首を掴まれ、足を止めた。
「まさか、用件はそれだけ、……なはずありませんよね」
背後から男の声が降り注いだ。床を見つめたまま、黙り込む。
「よろしければ、少し休んでいきませんか」
直に触れられた場所から、体温が伝ってくる。ほんのわずかに男の気配が近づいた。耳の近くに顔を寄せて、沖矢が呟く。
「手も、こんなに冷えて」
怪しげにレンズを光らせながら、男は唇の端を上げた。
いつからだろう。こうして引き止められなければ、まともに対峙もできないほど臆病になったのは。
「コーヒーでもいかがです? あなたのようにうまく淹れられる自信はありませんが……」
ゆっくりと声のする方へ振り返れば、薄っすら開かれた深緑と視線が交差する。沈黙の中、何かを察知したかのように二人の間で音もなく交わされる言葉。
掴まれたままの手首には見向きもせず、互いに視線を離すことはなかった。
「沖矢さんが、淹れてくれるなら」
***
リビングに通された安室は、ソファに浅く腰掛けてその男を待った。
「お待たせしました」
沖矢が室内に入ったと同時に、コーヒーの香りが充満した。二人分のコーヒーカップがソーサーに乗せられた状態で差し出される。丁寧に添えられたミルクを、安室は無言のまま注いだ。
この家に招き入れてくれた男もまた、斜向かいに腰を下ろすと無言でカップに口を付けた。安室が持ち出した資料をぱらぱらと捲りながら、気になったページで動きを止める。その様子を眺めながら、安室はゆっくりとコーヒーを口に入れた。心地の良い温度が喉を伝い、少しだけ気分が和らいだ。
何度目かの深夜のお茶会。初めてここへ訪れた時は、家主である工藤夫妻が同席していた。国内に滞在しているFBIの捜査官らが出入りするようになった今でも、安室がここへ来ていることは限られた人物しか知らない。
「スカウトスーツに麻袋……それにコピー用紙。さすがですね」
「……はて」
安室の言葉に、沖矢はわざとらしく顎に手を当てた。
「キャメル捜査官の胸に一発、続けて手榴弾にもう一発。威嚇でジンとキールを狙って二発。民間人が多く利用する公園で隠れもせずよくあんな真似を……耳を疑いましたよ」
「なんのことだか、さっぱり分からないのですが。あの日はたまたま、気分転換にドライブをしていただけですよ。論文に行き詰まるとどうしても海辺を走りたくなってしまって」
「……もう帰ってもいいですか」
「つれないですね。まだコーヒーも残っているじゃないですか」
目線をカップに移した。無言の時間が長く続き、次第に居心地の悪さを感じるようになる。半分ほど残っていたコーヒーからはもう湯気は立っていなかった。室内は暖房が効いていて温かく、首と額にじんわりと汗が滲む。
しばらくして、沖矢が口を開いた。
「まだ、返事は」
「それは、優作氏が同席していない場ではお答えできません」
「では、あなたが今夜ここに来た目的は?」
「……」
あの夜、安室は完全に過ちを犯した。連日の過労で正常な判断ができなくなっていたのだ。じゃなければ間違ってもライなんかに、赤井なんかにこの身体を明け渡したりしない。
一度糸がぷつりと切れてしまえば、空白を埋めるように互いを求め合った。赤井にとってそれはストレスの捌け口の一つだということももちろん理解していた。
ベッドで目覚めた時、安室は赤井にこう言ったのだ。
『もう、その顔を見せないでもらえませんか』
それ以降、赤井は安室の前で素顔を晒すことはやめた。その代わり、安室は連日のように沖矢に抱かれにこの家へやってくる。「沖矢昴」としてであれば、好きなように抱かせてやる。そんな契約を結んだ。
赤井は「君がそういうなら」と、普段と変わらぬ態度で返事をした。今思えばどこか少し困ったような、情けないような顔をしていたような気もする。
そんなものに気付いたって、どうしようもないのに。
「近くを通っただけですよ。渡すものもありましたし。気分じゃないなら、別に」
安室が言い終わる前に、視界が横転した。ふわりと身体が浮いたかと思えば、ソファの上に押し倒されていることに気が付いて目を見開く。ギシ、と何かが食い込むような音が鳴った。覆い被さるように上から見下ろされ、眼鏡の奥のエバーグリーンと視線が交差した。全てを見透かしているような双眸に、大きく鼓動が鳴る。
「あなたのあの時の言葉。今でも健気に守っているこの男に、ご褒美をくれませんか?」
ライが離脱して以来、初めてこの男と面と向かって対峙をしたあの日。ついにこの時がきたかと、ある種の高揚にも近いものを感じた。
しかし、一夜を共にしたあの日、安室は彼の触れてはいけない一面に触れてしまったような気がした。そのせいで、『降谷零』としてどのように向き合えばいいか、わからなくなってしまったのだ。
つまり端的に言えば、逃げだ。
正体を追い詰めたにもかかわらず今度はその当人から目を背けるといった、これまでの人生では考えられなかった史上最大の逃避行動。
だって分かってしまった。赤井は、とてつもなく、優しい男なのだと。
赤井のことを追い続けられたのは、いつだってうまいこと振り切ってくれると思っていたからなのかもしれない。いざそれが現実になれば、真の意味で対峙する勇気なんてなかった、ただそれだけのこと。最初からそんなもの持ち合わせていなかったことに気が付いて絶望した。最強のカードと言えたバーボンですら、叶わなかった。
だったら、今はまだライとバーボンのまま、沖矢と安室のまま。仮初め同士、与えられた任務をうまくこなせればいい。現に二人はこうして生きているのだから。
沖矢の首元に手を伸ばし、人差し指で確かめるように触れる。
「……僕の要望にしっかり応えてもらえたら考えてあげますよ、沖矢さん」
ハイネックの下にある真相に、最初に辿り着いたのは安室だった。凹凸を感じる部分をゆっくりと撫で、形を確かめる。大丈夫。確かにここに、存在している。
褐色の手は徐々に鎖骨を下り、ただの大学院生とは到底思えない、分厚く強靭に鍛え上げられた胸元へと辿り着く。衣服の上からでも分かる、逞しく男を感じさせる肉体。この精悍な身体に一度だけでなく、もう何度も組み敷かれている。
細められた双眸からは、感情が読み取れない。レンズに反射した月光が煌めく。成人した男二人の体重がかけられたソファが、ギシギシと音を立てた。欲情を煽るように安室の指が男の身体を伝う。ベルトの下まで辿り着くと、緩やかな刺激を与えるように艶めかしく撫で上げた。こんな風に挑発されて、意図を理解できない男はそういない。
クイッと眼鏡の位置を直すと、沖矢は言った。
「なんだか今日は、悪戯がすぎませんか」
「……ご褒美が欲しかったんじゃ、ないんですか?」
フ、と口角が少し上がるのが見えた。沖矢の首に腕を回し、上体を起き上がらせると、耳に唇を近づけて囁く。
「今日こそは、失望させないでくださいね」
***
暗闇に浮かぶ光に照らされながら、ビクンと肌が跳ね上がる。
場所を窓際にしたのも、カーテンを少し開けているのも、明確な意図があるのだろう。ベッドではなくわざわざデスクチェアに座らされているのも、そうしたプレイの一つなのだと理解していた。安室が身じろぐ度に椅子が軋む音でさえ性的興奮を刺激する。
「……っ、いつまで、それ、やってんですか」
既に三十分は経過していた。靴下だけを残して身ぐるみを剥がされ、椅子の上で膝を曲げて開脚を要求された。ローションを使って執拗に後ろを解してくる様子が、月明りの下で丸見えになる。来る前に多少準備をしてきていたことについては、もれなく指摘を受けたばかりである。ぐちゅぐちゅといやらしい音が結合部から鳴り響き、耳を塞ぎたくなった。
「中を傷つけてしまってはいけないですし。ほら、もっと力抜いてください」
指を挿れていない反対の手で腹部を優しく撫でられる。安室の中心は上を向きながらカウパーを流しているというのに、まだそこには一度も触れられていなかった。募るもどかしさが、安室の興奮を高めていく。
ようやく挿入していた指の本数が増える。圧迫感が強まると熱のこもった吐息が漏れた。
「はぁ、……ん……」
穏やかな抽送を施すその動きを、視界に入れないよう眉根を寄せて歯を食いしばった。
「まだ力が入ってますよ。ほら、ゆっくり空気を吸って……」
「あっ、もう、しつこ……っ」
前回もこうやって時間をかけて余すことなく身体をとろとろにされた。柔く包み込む手のぬくもりが、耐え難かった。
だから懇願したはずだった。優しくしなくていい、と。なのにどうして、この男は。
「……さっきから同じとこ、ばっかり、あっ」
ローションによって椅子がてかてかと光っている。ペニスからは粘度の高い液体が流れ続け、まるで椅子に座ったまま粗相をしているような錯覚に陥る。
抽送を繰り返していた左手を抜くと、安室の太腿を両手で抱え、そのまま大きく開かせた。くぱぁ、と広がった後孔がひくひくと痙攣を起こしている。
「安室さんのココ、すごく美味しそうですよ……」
「おい、ちょっと何考えて……!やめろ!」
沖矢の厚く長い舌が安室の体内に侵入した。蹂躙するように舌を動かすと、甲高く声が上がる。
「やっ……あぁあっ……!」
沖矢の頭を掴んで引き剥がそうとする素振りを見せるだけで、その手に力は籠っていなかった。男の鼻が会陰を掠め、媚びたような甘い声が漏れる。お尻を左右に開かせてより奥へ侵入しようとすると、それに合わせて安室の腰が浮いた。
「……ひっ、んん……ダメ、おねがい、イッちゃう……」
止めどなく溢れる先走りが沖矢の眼鏡に付着した。椅子の上で開脚したまま局部を押し付けるように仰け反る姿が男の欲を煽る。懇願するように上を向いた乳首を爪で擦ればより一層中が締まった。
「両方は、だめ、だって……!無理、はなしてっ」
両手で押し潰すように何度も乳首を刺激しながら、安室の体内を抉っていく。無意識に安室の腰が前後に揺れ動き、椅子に擦れてパン、パンと淫猥な音を鳴らしていた。
「はァッ!くる!あッ、―――~~~~ッ!!」
ぱた、ぱたと濃い白濁が飛び散り、沖矢の顔を汚した。一度舌を引き抜き、安室の肌にも付着したそれを舐め上げると、ひとたび甘い声があがった。
「あっ……んっ、ん……ぅ」
ようやく沖矢が離れた時には、安室は眉を八の字にしながら頬を紅潮させていた。脱力したように手足をくったりさせ、息を整えている。
「次は、僕もお願いできますか?」
今度は沖矢が椅子に座ると、聳え立った剛直を取り出した。既に臨戦態勢だったそれがボロン、と勢いよく安室の前に飛び出す。凶暴すぎるサイズを目の当たりにし、腰が甘く疼いた。恍惚と見つめながら、安室はゆっくりと沖矢のそれに口付ける。ぬるぬるとした舌で裏筋を舐め上げ、男の性感を煽った。
「……そう、上手ですね。いいですよ」
包み込むようにペニスを咥えると、顎を使ってゆっくりと上下に動かした。上顎を擦られるたび、まるで腔内が性感帯になったみたいにゾクゾクとした感覚が全身に流れる。喉を圧迫されまともに呼吸ができず、生理的な涙が両目に滲む。太腿が小刻みに震え、吐精したばかりだというのに安室のペニスは再び勃ちあがっていた。
「おや?どうしたんですか、安室さん。僕のを舐めている間に、寂しくなってしまいましたか?」
指摘され、耳に熱が集まる。早く前を触ってほしくて、後ろを突いて欲しくてたまらない。淫らな欲望が脳を支配する。しなやかに腰を高く上げながら、懸命に根元近くまで頬張った。
突然頭部を掴まれ、激しく喉奥へ腰を打ち付けられた。はしたない声と唾液が漏れ、目の前がスパークする。あまりの衝撃に、まだ一度も触れていない安室のペニスは二度目の射精を迎えた。
「ホー……? 後ろで達しただけでなく、今度は喉を突かれただけでイッたのですか。やはり才能があるようだ」
沖矢は安室からペニスを引き抜くと、先走りや唾液で汚れた口回りを手で拭った。ハニーブロンドの髪を撫でながら、まだ呼吸が乱れている安室の耳元で囁く。
「これではどっちがご褒美なのか、わかりませんね」
「はぁっ……はぁ、うるさ、い」
沖矢は安室を抱きかかえると、広いベッドへと移動した。シーツの上で四つん這いにさせられ、充分に解れた後孔に熱棒が宛てがれる。待ち望んだそれを、今か今かと期待するように腰が揺れた。ペニスが何度か狭間を行き来した後、緩やかに熱が捻じ込まれた。
「あぁん……あぁ……」
馴染ませるように、形を覚えさせるように、たっぷり時間をかけて。緩やかな動きに焦らされ、つい腰が揺れてしまう。安室は枕に顔を押し付けその時を待った。背中に沖矢の手が触れるのを感じて、びくりと身体が跳ねた。
「ほら、また力が入っているじゃないですか。リラックスして……」
沖矢は一度その剛直を引き抜くと、褐色の肌にマーキングをするように上下に擦り上げた。卵のように艶めいた双丘の狭間でグロテスクな熱棒が宛がわれ、それをひたすら物欲しそうにしている光景に、沖矢は仄暗い情欲が沸き上がるのを感じていた。
脚を大きく開かせ、内壁が懇願するように収縮を繰り返す様子を確認すると、ひと息に貫いた。
「――~~~~ッ!!」
本来入ってはいけない場所に迫りくる夥しい圧迫感。それがこんなにも気持ちいいだなんて、安室は想像もしていなかった。まるで重力などなくなってしまったみたいに、ふわふわと浮き立つような気持ちになる。沖矢の動きに合わせて、突き上げるように腰を動かした。ペニスが前立腺を掠めると、火花が散ったように目の周りが熱くなる。
「はあっ!!うぅ……!あぁ……」
ぽた、ぽたと再び吐精した。染みを作っているというのにお構いなく、最後の一滴まで必死に快楽を享受しようと自らシーツに擦りつけているその様子は傍から見れば滑稽なことだろう。
惨めで情けなくて、納得がいかなくて、叶うならば今すぐこの男と存在ごと消えてなくなってしまえばいいとさえ思った。しかしながら、男が触れた部分から伝う熱がどうしようもなく存在を主張していて、消し去ることなんて到底できない。
「はぁ、あか……っ」
声に出したその瞬間身体を翻され、先ほどまで腰を振っていた男と対峙するとその手で口を塞がれてしまった。
「これを持ち出したのは、あなたでしょう。その名前を呼ぶのは、契約違反じゃありませんか?」
視界が歪み、鮮明にその表情を確認することはできなかった。ただどういうわけか目の前の男が、心の深い部分にある何かを押し殺して笑っているような、そんな気がしてしまった。
どうして、お前がそんな顔をするんだ。
沖矢の手が安室のペニスへと伸び、先端をぐちゅぐちゅと弄られる。強烈な快楽に、全身が沸騰してしまいそうだった。
「んっ……んん!ごめん、な、さ、あぁ…………!」
「約束も守れないだなんて、ひどい人だ」
「沖矢、さん……」
男の名前を呼べば、愛撫する手が止まった。
「……どうしましたか」
息が整わないまま、アイスブルーを煌々とさせながら呟いた。
「キス、して………」
「……それは」
沖矢が次の言葉を紡ぐまで、間があった。
ライの時も同じだった。性欲の捌け口に愛を確かめるような行為は必要ない。だから別に不思議なことは何もなかった。でもこの時、安室は、試してみたかったのだ。
沖矢は軽く安室の目を手で覆うと、頬に軽く口付けた。
「これで許してくれませんか」
視界が開かれると、沖矢は眼を開いて困ったように笑っていた。
またこれだ。
これまでも、これからも、この男が対等に自分に向き合ってくる日など、訪れない。
体勢を立て直し、再び腰をぐっと掴まれると、先ほどまでの緩やかな動きが嘘だったかのように強く腰を打ち突かれる。パン!パン!と肌がぶつかる音が部屋中に鳴り響き、声を押し潰すようにして枕を顔の前で抱えた。激しく身体を揺さぶられ、生理的な涙が溢れ出す。それに気付かれまいと、枕をぎゅっと強く抱きしめる。
「んんっ……、ん!ん……」
「どうして声を抑えるんですか。ほら、顔を見せて」
強引に枕を引き剥がされ、再び目の前の男と対峙する。厚みのある屈強な肉体が、自分を組み敷いていて、そんな相手に大きく脚を広げている。なんて屈辱的で、滑稽なのか。この感覚を身体に刻みこんでおかなければ。そんな義務感に駆られながら、赤井は今どんな気持ちでこの身体を抱いているのだろう、と考えた。
契約を持ち込んだのは降谷の方だった。
赤井は、それに付き合ってくれているにすぎない。だからこんな行為、赤井にとっては何の意味もなさないのだろう。
ではどうして、その左手で涙を拭ってくれるのか。
沖矢が身体を倒し、体を密着させた。耳の近くで激しい息遣いがして、中がキュンとなる。お互いに快楽だけを求めるように、骨張った身体にしがみつく。
「あぁっ!もう、また、イきそ……」
「僕も、ですよ。安室さんの中、奥まで誘うように吸い付いてくる。気を抜いたら、持っていかれそうだ……」
「いいから、早く、……もう、あっ」
限界が近かった。迫りくる快楽から逃げたいのに、欲しい、と願ってしまう。歯を食いしばっているものの、媚びるような声が漏れてしまい、耳を塞ぎたくなる。それでも沖矢の背中に縋る手を離せなかった。
「あぁっ……!!くる、きちゃう!あっ、イく……!」
押し寄せる快楽が、熱が、思考を堕落させる。ずっと、このままこうしていられたらどんなにいいことだろう。
安室が何度目かの射精を迎えた後、ようやく沖矢も達したようだった。結局朝方まで抱き潰され、いつの間にか気を失っていた。
***
朝の冬の陽射が、カーテンの隙間から漏れている。シャワーを済ませた赤井は、タオルで無造作に髪の毛を拭きながらタブレットを覗き込んでいた。
昨晩この家を訪れた天使のような悪魔のような男は、今は隣で安らかに寝息を立てている。今この状況で彼が目を覚ましたら、問答無用で殴られそうだな、と自嘲するように笑った。
無防備な寝顔を見つめながら、細く柔らかい前髪を搔き上げる。まさか現役であの組織に潜入している捜査官とは思えないくらい、子どものようなあどけない寝顔に、どこか安堵の感情が流れてくるのが分かった。
「君が望んだものは、どんな形だろうと叶えてやる。だから安心してくれ」
軽く額に口付けると、チョーカーと衣服を取りに部屋を出る。
少し前から意識が覚めていた安室は、赤井が部屋を出ていった気配を感じ取ると、緩やかに瞼をあげた。
「……契約違反はどっちだ、バーカ」
2024.10.10 ♡Happy秀零の日♡
雨が降っていた。静かなようでいて、時折激しく窓を叩いた。それは今の僕の内なる心を隠してくれるようなあたたかさもある、そんな雨音だった。
その音をかき消すようにシャワーを浴び、火照って少し赤くなった身体が洗面台の鏡に映し出される。後ろには、僕よりも色が白くて、それでいて逞しく主張した肉体が写り込んでいる。隠れてしまった男の顔を全て見ることはできないが、時折覗く深緑の瞳が僕の緩んだ顔を見つめる。
バスタオルは辛うじて身体に巻き付いているが、本来の用途が完全に無視されている。あと少しでも動けば零れ落ちて、隠したかったその全てが鏡に映し出されてしまいそうだ。
脚の間からどろっとした液体が垂れていくのがわかる。太腿の内側を伝い、ぽと、ぽと、と脱衣所の床を濡らした。それを確認する余裕もなく、はぁ、はぁと呼吸を繰り返すので精一杯だった。
頬を掴まれたかと思えば、後ろへ顔を向けさせられる。ようやく、生身の深緑と目があった。鏡越しに見ていた時よりも、それはもう、酷く凶暴な猛禽類を思い起こさせる目だ。キスをするのに夢中で、思うように身体をコントロールできない。されるがまま、赤井のそれに応戦していると、僕の中に包まれていたそれが抜けていった。
「……はぁっはぁっ……あ、待っ、ひゃん」
僕の中から出ていく瞬間にも、その振動が内部を刺激する。赤井は体勢を変えて、洗面台に降谷を座らせたかと思えば、大きく脚を開かせた。腰まで落ちかけていたバスタオルは、はらりと床へ舞い落ちる。
悲惨な状態になった下半身を確認させるのが目的だと理解した降谷は、さらに耳を紅葉させた。くったりと力を失った中心の先端からは、だらしなく透明の液体が流れ続けている。タオルでどうにか誤魔化していた部分が鮮烈に映し出されてしまい、目を瞑りたくなった。鏡越しの方がまだマシだった、だなんて口に出してしまったら、次にどんなことをされるかわからない。涙が出そうだった。こんなことで負けたくない。それでも、ぽっかり空いたそれが疼いて仕方がなかった。切なくて寂しくて、雨音なんかじゃかき消せないくらい心の鼓動がうるさかった。
「……赤井、赤井、」
「うん?」
「もっとぐちゅぐちゅってして……」
「汚れるけどいいのか?」
「もう十分汚してるだろ……」
「それもそうだな」
既に熱く蕩けた降谷の後孔に、再び剛直が宛てがられる。ぬるり、と隙間を埋めるように内側への侵入を許すと、また中央部から小さく液体が噴出した。
「んっ……♡はぁ……もっと、きて、いいから、……あっ♡」
ぺちゃ、ぺちゃとはしたない音が鳴り響いている。扉が開いたままだから、リビングまで響き渡っているかもしれない。
耳元で小さく「好きだよ」と囁かれ、また内部が蠕動した。あたたかくて、はずかしくて、きもちがよくて、どうにかなってしまいそうだった。
全身が心臓になってしまったかのように、その鼓動は一晩中鳴り続いていた。
二人分の食材を購入して機嫌よく帰路についた降谷は、同居人が今日からしばらく家を空けることになったんだと思い出した。
つい今しがた、霞が関を出た時にも「今日は久しぶりに一人でゆっくりできるな」と考えていたところだったというのに。
買い物をしながら今晩の献立について思案しているうちに、あいつとの共同生活故の慣れなのか、昨日はあれを食べたしな、さすがに二日連続だとあいつも飽きるだろう、栄養素的にもバランスが悪いし……などと考える癖がついてしまっていた。
当たり前に今夜もあいつが隣にいるような気がしてしまっていたのだ。それもそうだ、赤井が発ったのはつい今朝のことなんだから。
赤井が米国に一時的に戻ると聞かされたのはつい二日前。相変わらず報連相のできないやつだがこれでも早めに共有をしたつもりだという。
降谷が目覚める前に姿を消したわけだが、その恋人へ置手紙を残していた。寝起きにそれを見た降谷は眉を顰め、そして慌ただしく一日を始めた。
「恋人」と呼ばれる関係を始めて早一年、それなりに生活にも慣れてきた。互いの仕事には極力干渉しない。別々に食事を摂る時は一報を入れる。喧嘩をして口を利かなくなっても朝晩の挨拶はする。……など、直接何か取り決めを交わしたというわけでもなく暗黙のルールが二人の間で共有されている。
決して口数の多くない赤井が、普段から何かを伝えようと精一杯降谷に寄り添ってくれている、というのは少なからず感じていた。それが降谷にとっては新鮮であり、むず痒くもあった。別に赤井にこっちの事情を汲んで欲しいだとか、気を遣ってほしいだとかは端から思ってはいないのだが、赤井に優しくされることに、一年経った今もどうにも慣れずにいたのだった。
***
「……あっ……ん……ふぅ」
どうしてこんなことになっているのだろう。数日前にも恋人の手によって解され愛しつくされた後孔に自ら指を挿れながら、恍惚とした表情で降谷は嬌声を漏らしていた。
降谷は元来性行為に対して無頓着であったし、自慰なんて一ヶ月に数回する程度で事足りていた。ましてや後ろを使うようになるなんて全くの想定外だ。
こうなってしまった元凶については口に出したくもないのだが、どういうわけか降谷は今、その元凶にかけられた『呪い』により屈辱的な仕打ちを受けている。
「なんで、こんな……っ、あいつがあんなこと言わなければこんなことには……」
男を知ってしまった降谷の身体は、食べごろの白桃のように熟しては蒸れて甘美な宝石のようだった。
降谷がかけられた呪い、それは『自慰の禁止』だった。
あれだけ人を淫乱な身体に仕立てあげておいて、それを禁ずるといった、なんとも意地が悪い恋人は、降谷を二人の愛の巣に閉じ込めておきながら一週間は不在にするという置手紙を残していったのだ。
――単純に『禁止』とされるだけならまだよかった。
降谷は手紙に残されたメッセージを見て、数日前の赤井との会話を思い出しては点と点が繋がった。繋げたくなかった。
「あいつ、まさかそういう……」
***
「うん、上手だよ零くん」
数日前の赤井の言葉が脳内に響き渡って煩わしくも消えない。
赤井が降谷に言い渡したのはこうだ。
【赤井が不在にしている間、基本的に自慰は禁止。だが、これから教える通りの手順で行うのであれば許可する】というもの。
なんでお前の言いつけ通りにしないといけないんだ、そもそも貴方の指図に僕が素直に従うと思いますか?と苦い顔をする降谷に、「まあ、いいから、ほら」と太腿をぽんぽんと叩きまるでペットを呼ぶような仕草で自分の元へ呼びつける。
不服そうに頬を膨らませ、何か言いたげな表情を浮かばせながらも、赤井に呼ばれるとソロソロ……と動いてすっぽり腕の中に収まる。脚の間に座らせると、下着一枚の姿で少しひんやりしていた降谷の身体を後ろからぎゅっと包み込んだ。
「今から俺が教える通り、俺がいない間も手順通りにするんだ。わかるな?」
耳元で低温が響き、心拍数があがる。それを悟られまいと、胸元付近に触れていた赤井の手をぎゅっと握りしめてさりげなく距離を離す。
「……わかりましたけど、赤井って案外変態なところあるんですね」
「こうなるのは君にだけだよ」
降谷の髪に顔を埋めながら身体を摺り寄せる。緊張はしているようだが、身体を密着させることに対して嫌がる素振りを決して見せることのない降谷に、赤井は機嫌をよくしていた。まぁ、嫌がられてもそれはそれで興味深いが……。散々恥ずかしいことをしてきたというのに、まるで初めて抱かれるかのような初々しさが赤井の心を擽る。
ぴったりと肌と肌を摺り寄せ、互いの温度を交換する。しばらくして「……はじめるぞ」と赤井による降谷零限定の特別カリキュラムが開始された。
ごくり、と降谷は唾を飲み込む。
手始めに赤井は降谷の陰茎の裏を指の腹で撫でるように、下から上へとなぞり上げる。触られている、という感じがするだけで特別気持ちいいという訳ではなかったが、指が当てられた場所から徐々に緩く反応を見せ始める。いつものように手のひら全体で包み込むようなことはせず、ただひたすら指の腹で線を書くように触れているだけだ。
「これ、何か意味あるんです?」
「まあまあ、いいから。ほら、ちゃんと見ていないと。忘れてしまうだろ?」
「僕の記憶力を見くびってもらっちゃ困ります」
「ホォー」
挑戦的な視線を向ける降谷の瞳に吸い込まれそうになる。こんな時でも自分に対して勝負を挑んでくるその双眸は、赤井の好奇心を煽るにはあまりに効果が抜群だった。とめどなく溢れ出る愛おしさに、思わず唇にキスをする。
「おい、聞いてるのか」
怪訝な表情で赤井を咎めるが、咎められた当人は上機嫌のようだった。なぜなら唇に触れた瞬間、赤井の指が、降谷の陰茎が硬度を増したという事実を捉えたからだ。
もう一度触れるだけのキスをしたかと思えば、角度を変えてやがて深い口付けに変わる。
触れているだけの左手に、ドクドクと脈打つのが分かる。いつの間にか降谷の中心はぴんと上を向いていて、先端からはとろとろと透明に光る液体が溢れ出していた。
完勃ちになったところへ、続いて手のひら全体を使って包み込む。熟した果実のように湿り気を帯びた降谷の中心は、少しでも強い刺激を与えればすぐにでも感じ入ってしまいそうだ。赤井の大きな手に包み込まれて逃げ場を失った果物は、何かに救いを求めるように自らを染め上げていく。
赤井はそんな可哀想な降谷の中心を包み込んだまま決して動かすことはせず、代わりに内腿へ軽く触れ脚を開くように促した。
「えっと……こう、ですか」
「もっと大きく開けるか。うん、そんな感じだ、えらいな」
「ただ脚を開いただけで褒められても…」
降谷の口から出た言葉とは裏腹に、頬は桃色に染まっており瞳孔がやや開いている。肌も薄っすらと汗ばんでいて、開いた脚が微かに震えていた。目に見える形でこうもわかりやすく反応を見せつけられると、今すぐに押し倒して思う存分可愛がってあげたくなる。ただ、現段階で進行中の『訓練』を中断するわけにはいかなかった。
「じゃあ、ここからは自分でしてみてくれ」
「え…この状態で…?」
「何か問題でもあるのか?」
「大ありでしょ!そもそも貴方が邪魔だし。それにここまでしてもらってるならもう…」
言いかけて口を噤んだ。その続きを言ってしまったら、自分がまるで赤井にシてほしいと懇願しているみたいで負けた気になる。
それだけは許せなかった降谷は、おずおずと赤井の言う通りに自身の陰茎を扱き始めた。
「どうだ、気持ちいいか?」
「集中してるんだから、黙っててくださいっ!」
降谷が自慰を始めてから、変わらず赤井の膝の上にいるものの、一切手を触れてこなくなった。これも訓練の一つなのだろうか。
赤井に触れられていた時と違って、どうにもしっくりこない。あんなわけのわからない触れ方じゃなくて、しっかり握っているはずなのに直接的な快感が訪れず降谷は困惑した。
どうすればいいのだろう。気持ちよくなるどころか、焦りで心が萎えてしまい、降谷の下半身もほんの僅かながら落ち込んでしまっている。
その様子に気が付いたのか、赤井が「どうした?」と耳元で声をかけてきた。
「なんでも……ありません。ていうかこっち見ないでください」
「でもさっきよりは少しマシになってるじゃないか」
赤井の指摘通り、降谷の陰茎は硬度を取り戻し始めていた。たかが赤井の声を聞いただけで、どうして……!
悔しさを噛みしめながらも、降谷は手を動かすことを再開した。
「……うん、上手だ」
後ろから頭を一撫でされ、ぶわっと顔が熱くなる。その後も赤井は手を出してくるようなことはなかったが、うなじを執拗に嗅がれたり、肩に頬をぴったりと重ねられたりと、さりげない接触を幾度と繰り返され、『赤井に抱きかかえられながら一人でシている』状況を意識せざるを得なかった。今こいつと目を合わせたら絶対にまずい。
「……零」
突然、耳元で低音が鳴り響きドクンと心臓が高鳴る。射精感が一気に強まり一度手を離した。こんなことで達してしまいそうになるなんて、赤井にバレたら死にたくなる。あと少しのところでグッと堪えた降谷は、赤井の方を振り返った。
「なんですか、さっきから集中を削ぐようなことばかり……」
「物足りなくなったら、こっちに触れてもいい」
赤井は降谷の左手首を柔らかく掴み、その手を胸部まで移動させた。そう、自ら乳首を触るよう促したのだ、この男は。
「なっっ………………!!!」
赤井に掴まれている自分の手が先端を掠める。「ひゃ!」と小さく声が漏れたのを赤井は聞き逃さなかった。
「やっぱり物足りなかったんだな。君、両方されるの好きだから……」
「うる、さ、黙れっ………………」
「手が止まってるぞ」
赤井に両手首を掴まれ、勝手に降谷の手を動かし始める。今自分の陰茎を掴んでいる右の手の甲には、赤井の体温がじわりと広がっていた。それでいて自分がしたいように動かすことも許されず、赤井に身を委ねてしまっている。乳首に触れているだけの指先は、いつも赤井が触れる時みたいに爪を立てて少し強めに擦った。
赤井に両手首をコントロールされているので、性的刺激がいつ訪れるのか見当がつかない。突如痛みを感じるほどの電流が走ると、昂奮が声から漏れてしまう。
「……んっ、あぁっ………………」
赤井の体温に包まれている自らの手の動きが速度を増す。目を瞑りながら、迫りくる射精感を追うことに必死だった。いつの間にか、乳首を弄るように促されていた左手は赤井の拘束から外れていて、ぐったりと腕を下ろしていた。
あと少しで達してしまいそうなほど極限状態にまで上り詰めた降谷は、無意識に赤井の腕を掴もうと左手を探す。探し物はすぐに見つかり、その手を摑まえると、男もそれ応えようと手を握り返してくれる。安心感と多幸感に包まれながらラストスパートに向かおうとした、その時だった。
「!?」
右手首を掴まれ、それまで順調に事に及んでいた行為を中断されたのだ。突然の事態に頭がついていけず、混乱する。
射精に向けてぷるぷると震えあがった果実が、行き場をなくした幼子のようにしくしくと泣き始めている。細くしなやかな腰は降谷の意識の範疇外で勝手に揺れ始め、今なお無意識に淫乱な身体はその先を求めていた。
「ここで終わったらおもしろくないだろ?……なぁ、零」
そう言って降谷を見つめるその表情は慈愛に満ちた表情をしているが、優しく笑う瞳の奥底には得体のしれない不気味さが含まれていた。
降谷は赤井に言われるがまま態勢を変えてベッドの上で四つん這いになり、お尻を突き出す体勢で昼間干したばかりのふかふかな枕に顔を埋める。未だ勃起したままの中心からは、たらたらと透明の糸がシーツに伸びていた。それを視認した赤井に視界の外から嗤われた気がして、気が気じゃない。
その体勢のまま、数分経っても何も指示を出してこないので、降谷は痺れを切らした。
「……なんなんです、さっさと次進んでくださいよ……」
不満を垂れると、しばらくして降谷の左手にどろっとした温かい液体が手渡される。一瞬何を渡されたのか分からずびくっと身体が反応したが、すぐにそれがお尻を解すためのものだと理解した。
「そのまま手のひらの上で馴染ませたら自分で指を入れて……いきなり入れると中を傷つける可能性があるから慎重にな」
「…………」
赤井に指示された通り、ローションのついた指を自ら後孔に差し込む。初めは違和感が強かったが、次第に中が指の形に慣れ、ぐいぐいと吸い込んでいった。
意図せず善いところに掠めてしまい、荒い呼吸が漏れ出す。
「…………っん、うぅ……、ふぅ…………」
「声は抑えなくていい。体勢が辛ければ少し崩したっていい。無理はしないでくれ」
負けず嫌いな降谷は赤井の心配を気に留めず、お尻を解すことに集中する。異物感の強かったそれも、抜き差しするたびにやがて明確な快感へと変わっていく。甘くじれったい電流のようなものが全身を駆け巡る。
「指、増やしてみようか」
ふわふわとした頭で二本目を差し入れる。圧迫感が増し、先ほどより肉壁が指に吸い付いてくるのが分かる。赤井の視界ではそんな淫らな光景が丸見えなのだろうと思った瞬間、羞恥と情けなさと抗えない性的快感で涙が溜まった。なんでこんな仕打ちを受けているんだ、僕は。
前方はといえば大量のカウパーが止まらなくなりシーツを湿らせてしまっている。そんなこともお構いなく、しなるように突き出した腰は指の形を追いかけるように揺れ動く。
「…………んぁっ、ひゃ……あ、あん、うぅ……」
「そうだ、それでいい。もっと声を出して。そろそろ三本目、いけるんじゃないか?」
促されるまま指を増やし、まるで後ろから犯されているかのような感覚に陥る。実際には赤井は見ているだけで、一度も触れてはいないのだが。
張り詰めた中心が限界を迎えようとしていた。無意識に右手が中央に手が伸びる。またしても、後ろで自慰行為を監視している男に手首を掴まれ制止される。
「言い忘れていた。後ろを弄っている間は前を触るのは禁止。覚えたな?」
「……ぅ、なんでぇ…………?」
顔を真っ赤にさせて泣きそうになりながら赤井の方を振り向く。汗で額に張り付いた髪の毛がきらきらと光って眩しい。
「君は優秀だから、いつも後ろだけでイけるじゃないか。俺がいなくてもできるだろ?」
うんと甘く低い声で囁かれ、腰がズンと重くなる。端正な顔で見つめられ、またこの男のペースに飲み込まれそうになっていた。いや、絶賛飲み込まれ中ではあるのだが。
唇に軽くキスをすると、また先ほどと同じ体勢に戻った。お尻に突き挿した三本の指を、奥へ奥へと侵入させる。
「……はあ、はあっ、……もぉやだ……イきたい…………」
「そう、それでいい。今みたいになったら、俺に電話をかけてきてくれ。何時だっていい。約束できるな?」
「うぅ……、うん……やくそく……」
恍惚と表情を浮かべながら、赤井の頬に手のひらを寄せる。ぺろぺろ、とまるで子犬のように赤井の口に吸い付くようにキスをせがんだ。応えるように赤井が降谷に覆いかぶさり、その日の訓練は幕を閉じたのだった。
***
――――――誰が電話なんかっ!
頭の中では怒号を放っていたが、自分が想像するより何倍も欲望に素直だったらしい。枕元に置いていたスマホに手を伸ばし、着信履歴を辿る。二回ほどコール音が響くと、すぐに相手からの応答があった。
「どうした?零くん」
相手は至って通常通りの声色だ。かける前から分かっていたことだが、この期に及んで赤井に助けを求めるなんて……後悔はするがもうどうしようもない。それに、あの約束を赤井が覚えている保証なんてどこにもない。赤井がそう言うから…って、言われた通りに従順に自慰なんかして、しっかりそのタイミングで電話までするなんて、こんなの本当に変態みたいじゃないか。
自分がしでかしたことに対して羞恥と後悔の念で感情が溢れそうになる。目元に溜まった涙を悟られないように、適当に受け流して電話を切る、そのつもりだった。
「……零?」
そんな優しい声で僕の名前を呼ぶな。ますます惨めな気持ちになり、言葉が出てこない。
「ちゃんと入るまで我慢したんだな、偉いよ、零」
少し湿度を持った声がスピーカー越しに降谷の耳へ響き渡る。全身が粟立ち、さっきまで指を入れていた後ろがキュンと疼いた。
「どうした?声を聴かせてくれ、零くん」
「…………この変態」
「君限定でな。まぁ、君も人のことは言えないと思うが」
「……っ!それで勝った気になるなよこの馬鹿!」
「ははは、まあまあ、ほら、続けて」
赤井の声を聞きながら再び後孔に指を挿し入れ抽送を繰り返す。既にしっかりと解されて柔らかくなった降谷のナカは、あっさりと三本の指を吸い込んだ。浅い部分でぐちゅぐちゅと鳴り響く卑猥な音が鼓膜を刺激し、膝ががくがくと震えだす。
「零、聞こえるか?」
しばらく二人の間に静寂が続いていたところに、突然赤井が声を発したので心臓が止まりそうになった。
「……突然声をかけないでください。なんですか」
「君があまりにも夢中のようだったから、しばらく観察していたかったんだ」
「観察も何も、今僕がどうなっているのかなんて見えていないじゃないですか」
「わかるよ、声を聞けば君がどうなっているかくらい」
冗談なのかそうではないのか、どちらとも取れない赤井の言葉に降谷は溜息をつく。二番目の引き出しを、とベッドサイドのチェストを開けるよう促され開けてみると、降谷がこの家で初めて見かけるアイテムが飛び込んできた。一般的な規格よりは一回りサイズの大きそうなディルドだ。
「それをはめてみてくれ」
「いつ用意したんですかこんなの…」
渋々後ろへあてがい、思い切って侵入を試みた。指より重圧感はあるが、普段から赤井の規格外なサイズを嵌めこんでいることもあり特に違和感はなかった。むしろ少し物足りないくらいだ。
「どうだ、そいつの具合は」
「うーん、まあまあです」
感情を声色に乗せないよう、平静を装って答えた降谷だったが、返ってきた言葉に辟易することになる。
「すまんな。今日はそれで我慢してくれ……」
本当に申し訳なさそうに言うので、もしや自分が赤井のものでしか満足できない身体になってしまっていることを揶揄されているのでは?という思考に転換され、面白くない。――事実、そうなのだが。
「なんかむかつくので画面つけてくださいよ」
「俺は構わないが…君はいいのか?」
一瞬、迷ったがもう散々なことをしておいて今更…とヤケになる。
「別にいいですよ、カメラくらい……」
返事をした瞬間、光の速さでビデオ通話へと切り替わる。――降谷の目にとんでもない光景が飛び込んできた。
あの赤井秀一が、少し汗ばんで顔を火照らせている。その表情は明らかに性的なものを彷彿とさせた。いつも自分を抱く時に見せる顔だ。降谷しか知らない、降谷にしか見せない表情。
つまり、赤井も、現在進行形で抜いていた……?僕の声を聞きながら?
あんな澄ました会話しながら抜いていたのかこいつ。どうしようもなく、通話の向こうの男を愛おしく感じてしまい、気分が高揚していく。
「しょうがないから今日だけ特別ですよ」
「ん?俺はどんなサービスを受けさせてもらえるのかな?」
「フフン、それはこのあとのお楽しみです」
「ホォー……なんだか機嫌がよさそうだな。そんなによかったのか?嵌めているおもちゃ」
真正面から揶揄われたことにより腹を立てた降谷はカメラをオフにした。
「……俺が悪かった、零。頼むよ」
あまりに弱々しい、しゅん……とか細げな声が聞こえてくるのでまた少し愉快な気持ちになった。そういうところだぞ、赤井秀一。
気を取り直してスマホを立てかけ、全身が映る場所へと移動する。再びカメラをオンにした降谷は、スマホに向かってうつ伏せになり、細腰を突き上げる体勢を取った。カメラは降谷の頭の目の前にあるため、赤井からは際どい箇所まで視認することができない。
「いつからそんな意地の悪いいたずらを思いつくようになったんだ……」
「まさか、僕はあなたからしか教わってませんよ。意地の悪さもセックスも」
立ち上がったり伸びをしたり、体勢を変えてるだけなんだが、…その、むず痒いというか、どうも落ち着かない。
どうしてくれるんだ。僕は経験が少ないし勝手も分からないから、全部任せると言ったのに。
…どうしよう。僕っておかしいのか?
トイレの個室の壁に手をつきながら呼吸を整える。そしてついに手を伸ばしてしまった。
出勤して間もなく降谷零を悩ませている正体、それは―――"乳首がシャツに擦れて変な感じがする。"
「…ぁっ…」
昨晩散々噛んだり舐めたり吸われたりと散々可愛がられたそれを、爪の先でそっとシャツの上から触れてみる。
今朝からずっと違和感があったそれは、明らかにピクッピクッと反応を示していた。じん…と電流が身体を駆け巡り宙に浮くような感覚。
片方だけでは物足りなくなると続いて両手で摘まんでみる。「ふぁっ」とさっきよりも大きな声が出てしまいぎょっとした。
職場のトイレで何をやっているんだと罪悪感に苛まれながらも、僕は悪くない…と心の中で言い訳をする。
はふ…はふ…と息を乱しながら昨夜の情事のことを思い出す。
途中記憶を失うくらい抱き潰された自覚はあるが、途中までの記憶は鮮明に残っている。
全身ありとあらゆる場所を吸いつくされ、何をされても気持ちがよくって、赤井が自分の名前を呼ぶ度に愛おしさが込み上げてしまい何度もキスを強請った。
口をあけて舌を差し出すなんてみっともないなんて思いながらもやめられなかった。淫乱だと思われたかな、僕。今こんなことをしている時点で、認めざるを得ないのかもしれないけど。
乳首を弄りながら昨晩の濃厚すぎるキスを脳内で再現したら息が出来なくなりそうだった。
カチャカチャとベルトを外し、中で熱を持ったそれに直接触れようとしてその時―――
「降谷くん、そこにいるのか?」
今聞いたら一番まずい声が頭上から降ってきた。
上擦りそうになる声を抑えるため、一度手で口を押さえる。
「資料を届けに行こうとしたらデスクにいなかったから…君の部下に確かめたら、具合悪そうにしてトイレに向かったと聞いたものでな」
返事をしていないのにも関わらず話し続ける赤井に僕以外の誰かが入ってたらどうするつもりなんだ…と悪態をつきそうになるが、今は一刻も早く退散してほしい。
だんまりを決めているとそれ以上は声をかけてこなかったので、ひとまず安心した。
気配が消えたのを個室の扉越しに察知する。諦めが早くて助かる。
これ以上ここにいると怪しまれるだろうしそろそろ戻った方がいい。人の気配もないことだし、……不完全燃焼ではあるが早くここを出よう。
ゆっくりと個室のドアを開けた瞬間、勢いよく腕を掴まれたと思えば再び個室の中に引き戻されてしまった。
黒ずくめの、今一番会いたくない男と共に。
「やっぱり君、いたんじゃないか…なんで無視するんだ」
「貴方こそ、返事もないのに個室に入ってる人間に話しかけ続けるなんて正気ですか!?」
そこそこ力を込めて腕を掴まれていて振りほどけない。絶対に見られてはいけないものがある。どうにかして逃げないと。
「それで、身体は大丈夫なのか…?」
どうやら赤井は本気で僕の体調を心配しているようだった。確かに昨日は一時的に意識がなくなることもあったが、そんなヤワなことがあるか。舐められているようで面白くない。
「別になんともないですけど…」
赤井と目を合わせないように左下を向く。僕のことを掴んでいた手の力がすっと抜けるのが分かった。
「じゃあどうしてここに?」
本当に無神経だな、と思いつつも顔を合わせたら全て見透かされてしまう気がして目を見れない。この男を前にするとどうしてこうもうまくいかないんだ。納得いかない。
赤井の視線が少し下がったような気がした。シャツの下の秘部はきっと赤く腫れ上がっている。それに気づかれたらもうおしまいだ。
「…まさか一人で?」
僕が黙って俯いていると、クク…と笑われているような気がして顔が熱くなった。
「…あのねえ!貴方がしつこくねちっこく弄るから、シャツに擦れてムズムズするんです!だからこうやって一人でどうにかしようとしてるのに貴方って人は…っ!!!」
思わず右ストレートが出そうになったところをぐいっと手首を掴まれ引き寄せられる。狭い個室で身体が密着し赤井の匂いが鼻を掠めると、昨晩の記憶が鮮明に蘇り身体が火照ってしまう。
「俺にも手伝わせてくれ」
そう言って壁に両手首を押さえつけると、シャツの上から吸い付かれる。長い舌の先端でちろ…ちろ…と乳首をもてあそんだかと思えば、いきなりぎゅぅっ!と強く吸引され目の前がスパークした。
あまりにも視覚の暴力だった。シャツの色が変わるくらい充分に唾液が浸み込むと、乳首の周りだけてらてらと光っているのが見え卑猥だった。
「…んっ…はぁ…も、やめろ…」
「一人で乳首だけ弄っていたみたいだが、こっちはどうするつもりだったんだ?」
いつの間にかスラックスを下ろされていたことにも驚愕したが、熱を持ったそれはグレーの下着に大きな染みを作り濃い色に変色していた。
僕の答えを待っているかのように、染みが付いた部分と僕の顔を交互に見つめてくるのが腹立たしかった。
「…………シてください。今ここで」
「了解」
「はぁっ…ぁあんっ気持ち…あっやだ…ダメ…駄目だってばぁ……!」
貪るように身体を重ね、欲望のままに求め合う影がカーテン越しに揺らめく。
全身が沸騰して、自分が自分のものではないような感覚。
降谷の後孔には数時間前から熱を持った剛直が突き刺さったまま、ゆらゆらと揺さぶられていた。
時折不規則に激しく抜き挿しされ、途中何度中に出されたかわからない赤井の精液とローションが混ざり合い、ぐちゅぐちゅといやらしい音が立つ。
「もっ…ぁ、だめ、ちくび、触らない、でっ…!」
汗や唾液で充分な湿度を持った降谷の胸の尖りは、物欲しげにぴく、ぴく、と反応を示し、持ち主と同様悩まし気な表情を見せる。
少しだけ指で抓っていじめた後に、むしゃぶりつくように舌を触れ合わせると、赤井にしがみついていたしなやかな身体が何度目かの射精を迎えた。
「きもち、いい、からっ!あっ!もっと…奥にきてっ…」
「零は強欲だな。これでもまだ足りない?」
「ん…足り、ない…駄目…!はぁ…ヤダ…もっとこっち…ああっ」
降谷の頭部を抱えて固定すると、勢いよく噛みついて舌を絡めあう。
両耳を塞がれた降谷は、ぐちゅぐちゅ、と性器が交わりあう音と深い口づけの音だけが脳内へと鳴り響き、全身が甘い痺れに包まれた。
ふわふわとした感覚が長く続き、全身がぽかぽかと温かい気持ちになる。
しょろ…とさらさらした液体が陰茎から噴き出した。既に意識が朦朧としかけている降谷には、それがいつもと部類の異なる液体であるということは知る由もなかった。
「ほー…すごいな、零。そんなによかったのか?」
「?…んっ…なんか…とまらな…」
「もしかして気づいてないのか?君、嬉しそうにお漏らししているぞ」
「な、に……おも…らし…?ぼくが……?」
降谷の身体から放出されていたのは精液でも潮でもなく、生理現象を催した時に出るそれであった。
ぷるぷると力を失ったペニスが規則的に動きながら、ゆっくりと少量の尿を放出していく。
「……はぁっ、君は、本当に、最高だ、なっ!」
降谷の腰を引き寄せると、先ほどまでの行為が嘘だったかと思うくらい、ズチュ!ズチュ!と奥深くへと剛直を突き動かした。
目の前に白い火花が散り、重く痺れる快感が駆け巡る。
擦り上げるたびに肉壁がビクビクと嬉しそうな反応を示し、逃げていく赤井を捕まえて離そうとしない。
「ここに男のペニスを咥えて漏らすなんて、とんだ変態だな?零」
「あぁっ!ちがう…ちがうのにぃ…んんっあ…とまらな…なんで…うぅ…」
獰猛な眼光を向けながら抽送のスピードを高めていく。シーツは既に水分を十分に含んでおり、床まで散乱してしまっていた。これはあとで処理しておかないと、怒られるどころじゃ済まなそうだ…。
耳を真っ赤にしてぱくぱくと口を緩ませながら、自ら膝裏を抱え大きく脚を広げながら快感を追う降谷の表情があまりに淫猥で、かなり限界が近かった。
強請る降谷の身体を仰向けにし背中を組み敷くと、バックから勢いよく挿入し、己の欲望のまま腰を振る。
「……っは……零…!」
「ああんっ!うぅ…!うぅうう…あかぃ…」
「っ…大丈夫か、少し休むか?」
「ちがう…顔見えないの…いやぁ…」
君、そういうとこだぞ。
片手で降谷の顎を掴むと、強引に唇を奪い取った。
しばらく舌先を絡ませあった後、赤井は唾液を降谷に無理やり送りこみ飲ませることで、心の奥底に封じこめていた支配欲が少しだけ満たされた気がした。
そのまま腰の動きを加速させ、降谷の両腕を拘束しながらベッドへと抑え付けた。
「あぁ♡はぁっ…!ひゃ…う♡だめぇ…イッちゃう…おもらし、しながら、お尻でもイッちゃうよぉ…♡」
「そうだな、お漏らししながらこっちでもイけるなんて、零は悪い子だな…」
「やぁっ…ひどぃ……赤井……僕のナカ、気持ちい…?」
「あぁ最高だ…っは、だめだな、俺も限界がきてる」
「はぁん…っ♡いいよ、僕のナカでイッて♡ねぇ…はやくぅ…♡ん…♡~~~~~~♡♡♡~~~!!!!」
ドクドクと脈打つ感覚が全身を駆け巡り、赤井が射精したタイミングと同時に降谷もオーガズムを迎えた。
くたくたになった陰茎からは既に尿は垂れていなかったが、精液も潮も全ての液体を出し切ってしまったようで降谷の身体はカラッカラになっていた。
汗で張り付いた前髪を持ち上げると、天使みたいに可愛いおでこに触れるだけの口づけを落とした。
※Attention※
以下の表現を含みます。苦手な方はご注意ください。
#足舐め #攻めフェ
***
「あなたって本当、いやみなひとですね」
全身にマッサージを施しながら、あまりにも完璧で強靭な身体に思わず嫉妬が漏れた。
うつ伏せ状態の赤井に跨り、この憎たらしい筋肉を好きにできるのは恋人である僕の特権だ。
「ん?どうした?」
目線だけをこちらに向けた赤井と目が合い、なんとなく目をそらしてしまう。
「別になんでもないです…よっ!」
「痛い…それは勘弁してくれ降谷くん…」
力いっぱい拳でぐりぐりといじめてみる。
ほんとうに赤井が痛そうにしているので、ちょっと可笑しい。
赤井の身体から降りて横になると、力を抜いてだらんとしている赤井の腕にしがみつく。
昨日買い換えたばかりの夏用のカーペットと、冷房の効きすぎで少し冷たくなった赤井の腕がひんやりと気持ちがいい。
今日はまだそれほど吸っていないのか、いつもより煙草の匂いが薄くて、衣服から柔軟剤の匂いがする。
猫みたいにすりすりと頬擦りしていると、次第に眠気が襲ってきた。このまま、だらだらと眠ったら最高だなあ、とぼんやりした頭で考える。
「降谷くん、かわいい」
うとうとしていると、頬にくちびるの感触があった。ゆっくり瞼をあげてみると、顔の整った僕好みの男がなにやら楽しそうな表情を浮かべていた。
僕に無許可で触れたそのくちびるに、僕も無許可でキスを返してやる。
糸が切れたかのように、キスの雨がふりそそがれる。がっつきすぎだ、と抗議したいものの、息する暇もないくらい口内を侵されているのでそれが叶わない。
歯と歯がぶつかるくらい激しい行為なのに、甘くて優しい愛情たっぷりのキス。
しばらくの間カーペットの上でだらしなく抱き合っていたら、不意に赤井が立ち上がり、僕の身体をうつ伏せにさせた。
「次は俺の番だな。眠かったら、そのまま寝てもいいぞ」
「ふふ…お手並み拝見といきましょうか」
「特に気になる部位はありますか、お客様」
「うーん、そうだな…脚、かな」
降谷の希望通り、赤井は脚の付け根から下の方を重点的にほぐしはじめた。ほどよい力加減で、きもちがよくて、ほんとうに眠ってしまいそうになる。
太もも全体をもみこまれ、次に膝裏を親指でぐっぐっと押し込まれる。特別なことをしているわけではないが、絶妙な力加減が降谷には心地が良かった。
まるで降谷が良いと思うところを全て把握されているみたいに。
太ももの次はふくらはぎ。あまり大きな力は入れずにゆっくりとくるぶしから膝の方へと解していく。
じんわりと温かみを感じ、もしかして割と重度な血行不良だったのかな、と思うくらいには脚が軽くなってきたような気がする。
「……っはぁ……」
思わず声が漏れてしまい咄嗟に口を抑える。赤井は気にしていない様子で淡々とマッサージを進めていくが、こっちはこっちで気が気じゃない。
あくまでマッサージをしているだけなのだが、自分が漏らしたそれが"そういう時"のものを想起させるから。変に意識してしまい、もどかしい気持ちになる。
赤井の手がついに足裏まで移動した。表面を漫勉なくほぐした後、一番凝りが固まっていそうな箇所を重点的に押し潰した。
気持ちいいと痛いが良い塩梅で混ざり合い、蕩けてしまいそうだった。
数か所をある程度押し解したあと、赤井の手つきがなんだか軽いものに変わる。足の裏を軽く撫で、形を確かめるように指先をしっとりとなぞるような感覚。
「?」という視線を赤井に送ってみると、何やら怪訝な顔を浮かべていた。
僕の足の裏に何か…?
不信に思いつつも沈黙に耐えていると、赤井がさらに眉間に皺を寄せながら声を発した。
「すまん、勃ってしまった」
…なんて?
いや、正直僕もそういう気持ちになっていたのは否めない。がしかし、こいつは今足の裏を見てただけだよな?
疑問に思いつつも、次に続く言葉を待った。
「足の指、舐めてもいいか?」
「だめにきまってんだろ」
思わず足が出そうになったが寸前のところで耐えた。それから赤井は、本当に形を確かめるようにじろじろと様々な角度から観察をはじめる。
こいつ、もしかして特殊な性癖持ちなのか…?足の指なんておいしくないし汚いしなんなら少しグロテスクだし。
しばらくの間形をなぞるように足を触られて、こそばゆい気分だった。
部屋着はしっかり着込んでいるはずなのに、なぜかぼくの裸をじっと観察されているような…
いやいや何考えてるんだ。足の裏をじっと見つめられていやらしい気分になるなんて、僕の方がやばい性癖持ってるみたいじゃないか。
「初めて君の足を観察したんだが、形がすごく良い。指の腹の丸くてかわいい膨らみも、全体的にしっとりしていて滑らかな肌触りなのに、ところどころ豆があるところも。降谷くんの足って感じがする」
「何ばかなこと言ってるんですか。男の足なんて汚いだけでしょ。ほら続けてください」
「君の足は綺麗だ。いい匂いもする」
「おい嗅ぐな!」
すんすん、と鼻を近づけられたので殴りかかろうとするが腕を掴まれて制止された。そのまま赤井を見上げる形でソファへ押し倒され、両手を拘束される。
「じゃあ今からここで君を抱くのは?」
「…………………嫌だと言ったらやめるんですかあなた」
「もちろんそのつもりだよ」
そう言い終わる前にTシャツの中に手が侵入する。何がもちろんだ、まったくやめる気なんてないじゃないか。
肌をなぞり小さな突起に辿り着いた赤井の指が優しくそれを愛撫する。コリ…コリ…と転がされるとあっという間に小粒の突起は上を向きぴくぴくと反応してしまう。
快感を追いながら、少し癖のある前髪を優しくとかしてやる。目が合うと、顔を近づけられたのでゆっくり目を閉じて本日何度目かのくちづけを受け入れた。
長くて深いキスに2人とも気持ちが昂っていくのが、ルームウェア越しにわかる。
下着ごと衣服をずらすと、勃起したペニスが苦しそうに涙を流し震えていた。指でカウパーを掬った赤井は、それを降谷に見せつけるように舐めとる。
はずかしくて、きもちがよくて、あたまがおかしくなりそうだ。
その状態のまま、突然赤井が後ずさった。マッサージをしてくれていたときと同じ体勢になり、脹脛を掴んで片脚を持ち上げようとする。おい待て、まさか…
降谷に声をかけることもないまま、無言で右足の親指を口に含んだ。舌を絡ませ、丁寧にやさしく舐めとっている。
「ちょっ…!おま、やめろ!」
降谷の制止に脇目も振らず舐め続ける。蹴って抵抗することも考えたが、すぐに組み敷かれてしまう可能性を考えてやめた。
入念に親指を舐め回したのち、次に他の指を一本ずつ丁寧に舌先で可愛がる。足の指がてかてかと光り、徐々にそれが卑猥なものに見えてくる。
赤井が僕の足を舐めてる…
そう考えた途端、ひどく背徳的な気分になり興奮を高めた。あの赤井秀一が、僕の足を美味しそうに食んでいる。
小指まで順番に舐めあげると、付け根の広い面積を大きくて長い舌を使ってひと舐めし、さらにかかとからつま先にかけてツツー…と舐めあげた。
時折赤井と目が合い、獲物を射抜くような瞳で見つめられるから、本当に食べられてしまうのではないかと思った。
片方の足を舐めながら、反対側の足をくすぐるようにフェザータッチされる。
足の指と指の間を擽られ、あたかもこれからここを犯すぞと宣言されているような手つきに恐怖と期待が入り混じった気持ちになる。
「ふぁっ…」
くるくると円を描くように足の裏をくすぐられるだけで、声が溢れてしまう。
「降谷くん…」
「な、なんだよ…」
「もしかして気づいてないのか?」
「へ?」
まさかとは思ったが、足を舐められてる間にイッてしまっていたのだ。その証拠に、臍とお腹周りに白い水溜まりを作っている。
かなりの量が出ていたようで、Tシャツの端にまで飛び散っていた。
気づかないうちに射精していたなんて、そんなに夢中になっていたのか僕は。これじゃあまるで、僕の方が変態みたいじゃないか。
泣きそうな気分になっていると、お腹に散らばった精子を、さっきまで足の指を咥えていた口で綺麗に舐めとられた。
そのままくったりしたペニスを咥えられ、叫びだしそうになる。
「あぁっ!……イッたばっか…だからぁ!あんっ…むりぃ…」
降谷が出した白濁を手に取り、後孔に指を入れるとゆっくりと侵入した。角度を付けながら、降谷の善いところを探っていく。
「あっ!同時はダメ…あっ…♡」
すぐにウィークポイントを探り当てたようで、指の腹でゆっくりとスイッチを押してみるとあっけなく射精した。
ごくん、とそれを飲み干した赤井は、連続でイかされてつらそうにしている降谷の表情を堪能しながら指を中へと押し進める。
「も…やめて…っっだめなの、きちゃう…からぁ♡ぁあっ…はぁっ…」
「大丈夫だ…ほら、さっきみたいにリラックスして…」
「だめ!気持ち良すぎて変になる…うぅ…ぁんっ…」
「そうだ、気持ちよくなるだけだよ…ちゃんと気持ちよくなれて偉いな、零くん…」
「そう…なの…?きもち、いい…?赤井は…?」
「君を見ているだけで、俺もすごく気持ちいいよ」
「そっかぁ…よかったぁ……」
ふにゃあ、とした笑みを零したとともに、しょろしょろと勢いを失った潮が溢れ出す。まるで失禁をしてしまったみたいに、全身をくたっとさせ力を失った降谷を寝室へと運ぶ。
すやすやと寝息を立てる天使を、これからどうしようか。
Tatami+
マストドンで呟いてた妄想です 内容はあれなのでご注意ください
すやすやと規則正しい寝息を立てている天使は、今晩も下着一枚といった刺激的な恰好で寝ている。
しなやかで程よい肉付きのある太腿に手が伸びそうになるのを必死に堪え、夏用の軽い毛布を肌へとかける。
降谷はうつ伏せになりながら可愛い寝顔を晒し、むにゃむにゃと何かを呟いていた。
魔が差した赤井は降谷の頬に少しだけ指を触れさせた。すると、それが気になるのか無意識なのか降谷が手を伸ばして追ってくる。
しばらくして、悪戯な指がついに降谷の手に堕ちた。
赤井の人差し指をぎゅっと大事に握りしめたまま、口元へと運ぶ。赤ん坊が柔らかいガーゼを口元に運びたがるときのような、愛らしい仕草で赤井の指に口づけを送ってくる。
そんな可憐で愛おしい子を前にして何もせず立ち去ることができるほど、人が出来ていなかった。
シャワーも浴びていない汗ばんだ身体のままジャケットを乱雑に脱ぎ捨て、寝ている降谷の上に被さると、ちょうどそれが双丘にぴったりと重なり柔らかな感触が包み込んだ。
とっくに熱り立っていたそれは、今にでも暴発しそうなくらい凶暴な形状と化していたが、今はこの天使の寝顔と柔らかい肌を堪能していたいので無体は働かない。
ゆさ…ゆさ…とゆっくり上下運動をし、降谷の頸を深く吸い込めば脳が沸騰しそうなくらい甘い香りが広がった。
気持ちよさそうに寝息を立てていた降谷が眉毛をハの字にし、少しずつ息が上がっていくのを感じた。
首筋に甘噛みを残しながら、臀部に擦り付けるように体を動かしていると、その動きに伴い降谷の身体がもぞもぞと反応する。
「あっ…はぁ…」
小さな吐息が溢れる頃には降谷のそれも元気になっていて、こっそり下着に手を入れ扱きを始めた。
あんまり性急すぎると眠りを妨げてしまう。あくまでゆっくりと…
しばらく続けていると、降谷が赤井の指を口に含め飴を舐めるようにぺろぺろと舐め始めた。
「どんな夢を見てるんだ、零…」
手を差し出して降谷のやりたいようにさせてあげると、嬉しそうに口にくわえるので思わず頬にキスをした。
中指と人差し指を咥えさせたまま下着をずらし、割れ目をなぞるように剛直を擦り付ける。
今朝、出勤する前にも愛撫され柔らかくなったそこは、容易く侵入を許してくれるのでゆっくりとナカを味わうように突き進んでいく。
「…ふぁ、ぁ、あ、う」
意識がない中でもしっかりと気持ちいいところを感じ取れるのか、奥へ突き進むごとに声量は大きくなり声に甘さが含まれるようになる。
咥えられたままの指で口内を撫で上げる。甘美な声と共に唾液で濡れていくのを見て、次第に心が満たされていくのが分かった。
根本まで入ったタイミングで上体を起こし、下から突き上げるように最奥を目指していく。
「ふぐぅ…!う!あ!♡♡」
さすがに起きたか…?と思い降谷の顔を覗くと依然として目を閉じたままだった。
ズチュッ!ズチュッ!と下から突くたび降谷はお腹と太腿を白濁と透明な何かでびしょびしょに濡らし、おまけに瞼には涙を浮かべている。
「零……起きなくていいのか?このままだと一番奥に入ってしまうぞ?」
ギュ〜ッと片手で乳首を摘むと「ひゃっ!あっ!あっ!」と嬉しそうな悲鳴が聞こえるが、最後まで降谷が目覚めることはなかった。
降谷の意識とは反対に、身体の中の動きが活発になってくる。搾り取るように肉壁が絡みつき、小刻みに震えている。
「…っは、零、だすぞ」
そのまま降谷の中に欲を放つと、内壁に擦り付けるように腰を動かした。
耳朶を甘噛みし、裏筋を下からゆっくりと舐めあげる。
降谷の弱点を全て知り尽くしている赤井は、ありとあらゆる性感帯を刺激することで降谷の目覚めのタイミングを探っていた。
よく観察していると、いつからか降谷のペニスから透明な液体がピュッピュッと弧を描いていることに気づいたが、意識が覚醒する気配はなさそうだった。
あまりにもよく寝ているので、急な疑念が押し寄せる。君、俺以外の前でもこんなに無防備なのか…?
これ以上意識のない降谷に無体を働くわけにもいかないので、一度中断をし、暖かい濡れタオルで全身を綺麗にした後、自らも身体を清めたあとで降谷を横抱きにしながら眠りについた。
目が覚めると腕の中で意識を取り戻した降谷が、不思議そうな顔でこちらを覗いていた。
じっと見つめてくる降谷に触れるだけのキスをして「昨日はすまなかった」と謝罪をした。
「え?」と瞳をパチクリさせる降谷は、本当に意識がなかったようだった。
そんな降谷をもう一度強く抱きしめて、大きく息を吸う。首筋から、あまくて優しい香りがする。その香りに心の底から安堵し、同時に昨晩の自分の行いに対する罪悪感が助長される。
「…赤井?なんでそんな泣きそうな顔なんだよ」
「いや…すまない。君が今日も同じベッドで目覚めてくれて、本当によかった。神に感謝している」
「急にどうしたんですか、頭でも打ったんですか」
降谷が身体を反転させるので、赤井は背後から後ろ抱きするような形で降谷を包み込む。脇腹をぐっと掴むと、「くすぐったいからやめろ」と軽く手を叩かれてしまったが、そんな平凡なやりとりさえも不思議と優しい時間に思えてくる。
「あの、赤井」
「うん?」
「昨日、すごく怖い夢を見て。で、一度目が覚めたんですけど、もう一度眠りについたら、貴方がずっと優しく僕のことを抱いてくれる夢を見たんです。
それがあまりにもふわふわしていて、幸せで、夢から覚めたくなくて、覚めそうになっても、自分の意思で夢の中に閉じこもろうって思ってたら、知らない間に寝入ってしまって、気づいたら朝になってました」
夢の中じゃなくたって、いつでも会えるのに。
いつだって君のことを優しく、重すぎるくらいの愛情を注いであげられるのに。
そんな儚い告白を受けた赤井は、降谷をまた強く優しく抱きしめて、一つの誓いを立てた。
※Attention※
以下の表現を含みます。苦手な方はご注意ください。
#攻めフェ #イラマ
もう我慢できない!
突然立ち上がった降谷は、別フロアで暇そうに仕事をしている(実際暇なのかはともかく、降谷にはそう見える)FBIの男を捕まえ人気のない資料室へ連れ込んだ。
「どうした、今日は積極的だな…?」
「うるさい、黙ってて」
ぎゅー。無言で力いっぱいこのガタイのいい男の身体を抱きしめる。
広い胸板に顔を埋め、すぅーっと息を吸い込むと、煙草と男の体臭が入り混じった香りが広がった。
なんだかとても吸いたかったのだ。この男の匂いを。
3徹目の昼下がり、もう頭は限界に近づいていた。
スーハーと息を吸いながら顔をぐりぐりと押し付ける。男の心臓の音が聞こえると、たちまち安心感に包まれた。
赤井は降谷の丸くて綺麗な頭や背中をやさしく撫でた。
ちなみにこの男も、4徹目である。
睡眠不足も相俟って、それはもうイライラしていた。主に下半身が。
降谷から漂う官能的な香りが鼻を刺激し、身体の中心に熱が集まる。
「………なあ、零くん、ちょっとだけ」
背中に回ってた手がいつの間にか降谷のベルトへと伸びる。カチャカチャ、とバックルに手をかけすんなり外してしまうと、降谷の首筋の匂いを思いっきり吸い込んでは舌を這わせた。
次に、やわらかくて甘そうな耳たぶを、ぺろりといただく。
「あっ、何して…っ!」
耳の一番弱いところを攻められた降谷は、抵抗しながらもすぐに快楽に堕ちてしまう。
高潔なグレースーツを纏った身体からペニスだけが取り出され、あっという間に赤井に咥えられてしまった。
目にハートを浮かばせながら、自然と腰が揺れる。
降谷は無意識に赤井の後頭部を掴んで、自ら押し付けるように引き寄せていた。
射精まではあっという間だった。恋人繋ぎをしながら、赤井の口に出してしまった。…正直、とてもよかった。
スーツを汚すわけにもいかなかったので、「ほら、全部出して」と赤井が誘導してくれたのだ。
息を整えながら、首下まで真っ赤になってる降谷の頭を赤井は優しくぽんぽん撫でると、「じゃあまたあとで」と頬にキスをして立ち去ろうとする。
「……貴方は、いいんですか?」
ジャケットの裾を遠慮がちに掴みながら上目遣いを向けられた赤井はたじろいだ。
やめてくれ、さっきからもう限界なんだ。
このままでは君の神聖な職場でブチ犯してしまいそうになる。
「君に無理はさせたくない」
そう言いながらも腕を引かれて資料室の奥の方へ連行されてしまい、溜息をつかずにはいられなかった。
降谷は赤井がしてくれたように、赤井の前を寛げていきり立ったそれを取り出すと、雄の香りが目の前に充満した。
(赤井の匂いだ………♡)
床にぺたん座りをしながら赤井の腰をぎゅ〜っとホールドする。
先端に口づけをすると、いっきに喉奥まで押し込み、抽送を繰り返す。
しばらく帰宅していないだけあって、ずっしりとした男の匂いがもうすごかった。フェラをしているだけで、奥がキュンキュンしてしまう。
赤井はといえば、とうに限界を超えており、降谷の後頭部を掴むとたまらず奥まで突き上げた。
「おごっ…!!!♡♡」
その衝撃で再びイッてしまった降谷は、結局下着をベチャベチャにしてしまったのでその日は早退を余儀なくされた。
「これから君のここ(乳首)を開発する」
突然の宣言に、正直なところ僕は大いに期待してしまっていた。
…もう一度言う。僕はとても期待していた。
赤井のことだからそりゃあもう…僕の想像つかないくらいすごいテクニックで……意識飛んじゃったらどうしよう……
舐めたり抓ったりあんなことやこんなことまで………と、妄想に耽っていたのも束の間だった。
数日経っても、あの宣言以降一切触ってこない。しかも乳首だけ!なんでだよ!?
おかしい。なぜ触ってこない。
おかげさまで四六時中意識してしまうようになってしまったじゃないか。どうしてくれるんだ。
赤井とのセックスに不満はなかったが、あの日以来本当に乳首に興味をなくしたようで、赤井がいない夜はついつい自分で弄るようになってしまった。
「ふぅ…ん…はぁっ…」
左の乳首を薬指でこりこりと弄りながら、右の乳首を人差し指と親指でぎゅぅ~っと抓る。赤井だったら…どんなふうに触るんだろう…
まだ見ぬ未知の世界を妄想しながら、僕は乳首オナニーにドハマりしてしまっていた。
「…っは……なんで……はぁんっ…あっ!」
抱かれている最中の赤井の息遣いや表情を思い出しながら刺激を与えると、お腹につきそうなくらいせりあがっていたペニスから勢いよく白濁が溢れだす。
「はぁっ…ぁあん…好きっ…好き……赤井……」
恋人の名を呼びながら、てのひらを大きく広げ、親指と中指を伸ばし乳首を深く押し弄りながらもう片方の手で激しくペニスを扱いた。透明な液体が瞬く間に飛び散りシーツと下着を汚す羽目となった。
しばらくして落ち着きを取り戻すと、再び乳首に爪を立て、赤井と深い口づけを交わしながら乳首が壊れてしまうくらい激しいセックスを想像し、自慰に耽った。
***
とある日の夜。
「――零くん。そこはダメだ」
暗く沈んだ声が響き渡る。赤井に抱かれている最中、無意識にそこに手が伸びていたのだ。体温が急降下していくとともに、心臓が張り裂けそうになる。
口内に赤井の舌が侵入し、深いキスを重ねながら手首を掴まされ、身動きがとれない。つらい。触ってほしい。触ってくれないなら、せめて自分でさせろよぉ…
「…大丈夫。きっと善くなるから、心配するな…」
その日はうんと優しく抱かれた。
……な~にが善くなるだ!!!!
耳元で良い声がするからついぼーっと流してしまったが、赤井の意図がわからなすぎる。
またしてもお預けを食らってしまったせいで、もう乳首のことしか考えられなくなってしまっていた。
どうにも脳内で赤井に乳首を舐められたり齧られたりあれやこれやされるシチュエーションを妄想してしまい、触れてもいないのに反応してしまいそうになる。
おまけに赤井には乳首オナニーをしていたことがバレていたようで(そういうことを平気で指摘してくるデリカシーのないやつだ)、自慰をする時ですら勝手に触るのは禁止だと言い渡されてしまった。
***
一週間ほど、互いに多忙でなかなか会えない日が続いた。
その間しっかり乳首オナニーを我慢した真面目な降谷は、毎日決まった時間に赤井から渡されていた絆創膏の張り替えを行っていた。
絆創膏を剥がすときにどうしても先端に擦れ、刺激が全身に走ってしまう。僕の体はどうしてこんなにも淫乱になってしまったんだろう…と不安が襲う。
少し泣きそうになりながらもゆっくりと丁寧に絆創膏を剥がし、皮がむけていないか具合を確かめながら、ワセリンを少量手に取る。
あまり多く塗ってしまうとそれだけで感じてしまいそうになるので、なるべく息を止めながら意識を反らして張り替えを行う。ぷっくりと大きく膨れ上がった乳首は、いつも物欲しそうに上を向いていた。
***
ひさしぶりに赤井に会えた降谷は、期待と辛さで感情がぐちゃぐちゃだった。
さっそく絆創膏を剝がして具合を確かめられ、「ちゃんと約束守れてえらいな」と頭をポンポンされる。嬉しさと恥ずかしさで爆発しそうになったが耐えた。
しかし、またしても肝心の乳首には触れてくれなかった。
「……一週間も我慢したのに……なんでだよぉ」
溜まってたものが崩壊し、涙がこぼれてしまう。
少しばかり動揺を見せた赤井は、シャンパンゴールドの髪をやさしく撫でる。
「かわいそうに…」
涙舐めとって、あやすように顔中にキスを降り注ぎながら、どこからか取り出した柔らかい布で降谷の視界を奪った。
目隠しをされ、視界が遮られたその瞬間、乳首に異常なまでの刺激が走り全身に電流が走ったみたいな感覚に陥る。
「ああっ!?何!まっ…ああ!」
「ずっと我慢してえらかったな…ほら、思う存分くれてやる」
びくびくと身体が震えだし、必死にシーツを掴もうとするがうまくいかない。
「強い!強いよぉっ…!おかしくなっちゃう……あっ!ああーーー!!」
気持ちがよすぎて、脳が沸騰してしまいそうだった。
視界を遮られているため、いつどこにどんな刺激がくるかわからない。恐怖と期待に降谷のペニスはぐんぐん勃ちあがり、限界まで張り詰めていた。
「待っ…無理…はあああっやだ…ぁ…!これ、取ってぇ……!」
「可愛いよ、零くん」
じゅっじゅ~~っと降谷の耳に音が響くように、わざとらしく音を立てて乳首に吸い付く。
赤井の唾液でてらてらと光る乳首は既に真っ赤に染まっていて、満足そうに揺らめいていた。
「も…むりぃ…♡♡あん♡もっと吸ってぇ…」
脚をぎゅっと赤井の身体に絡ませ自ら頭を両手で抱えて乳首へと誘導する。糸が切れたように己を求める姿は、恐ろしいくらい魅惑的でどうしようもないくらい可愛い。
少しの間意地悪をしてみようと思っていただけだったが、まさかここまでとは…。
あまりに強すぎる刺激に、全身ありとあらゆる部分が性感帯となってしまったようで、歯止めがきかなくなっていた。
親指で片方の乳首をぐっと押しながら、もう片方の乳首を甘噛みするとしょろしょろ……と潮を吹いてそのまま意識を飛ばしてしまった。
翌日、真っ赤に腫れてさらに大きくなってしまった乳首を隠すために、一回り大きい絆創膏を手配する羽目になったことは言うまでもない。
Request
キリ番リクエスト頂いたものです ありがとうございます!
▼special thanks
1000hit ふがし様「壮年期秀零🔞本番直前」リクエスト頂きました。ありがとうございます!
体温が急上昇したことによって少し赤く火照った肌に、ひんやりと冷たい感覚が染みわたる。
世界一やさしくて愛おしい恋人の手が、まだ完全に乾ききっていない癖のある前髪を撫で上げ、おでこを観察するように顔を覗き込まれた。
「あれ、よく見ると結構白髪、増えました?」
パタパタと団扇を扇ぎながら髪を掻き分けられると、頭上から心地の良い声色が落ちてくる。
久しぶりに長めの休暇が取れた赤井と降谷は、最近話題になっている温泉宿へ宿泊に来ていた。
露天風呂付の客室を選んだものの、降谷の希望で大浴場の広々とした空間で名物の濁り湯を思う存分楽しんできたところだ。
季節の会席料理も堪能し、ご機嫌な様子で膝枕をしてくれている降谷は、温泉効果もあってかいつにも増して肌が艶々としている。
「五十近くにもなれば、白髪のひとつやふたつ増えるさ。…それに比べて君は、あいかわらず綺麗だな」
気障なやつだなぁ、と笑う降谷の目尻にもほんの少し皺が増えていて、笑顔を見せるたびくしゃっとした表情がたまらなく愛おしく感じる。
大浴場から出る際に購入したコーヒー牛乳の瓶ですっかり冷たくなった降谷の手の温度を感じながら、少しだけ目を閉じてみる。
「赤井、眠いんですか?」
「いや、このまま君の膝の上で眠れたらどれだけ気持ちいいんだろうな、って考えていただけだ」
「僕の足が痺れて使いものにならなくなって、明日お風呂に入れなくなったら一生恨みますからね」
そう言いながら、頭をぽんぽんと撫でてくるので、あまりの心地よさに本当に眠ってしまいそうになる。
「今回は当たりでしたね。前から目を付けていたんですけど、ここにしてよかった。お酒もおいしかったし」
「色々手配してもらってすまない。久しぶりに君に休みを合わせることができてよかった」
「なんだかんだこういう国内の旅行ってしたことなかったですもんね、海外はちょくちょくありましたけど」
「懐かしいな。だいたい君が事件に足を突っ込んで旅行どころではなくなっていたが…」
「巻き込まれてたのは貴方の方でしょ。僕がいなかったら帰国できるかすら怪しかったこともありましたし」
「あの時は痺れた。零くんがいてくれて助かったよ」
お互いの肌に触れながら、他愛もなく会話を重ねる。団扇を仰いでいた降谷の手を掴んで、指を絡めた。いくつになってもこの男は、俺の心を擽って離そうとしない。
絡んだ手の甲に触れるだけの口付けを落とすと、顔を少し赤らめた降谷と視線が交差した。
腹筋の力だけで身体を起こすと、軽く肩に触れながら降谷の顎を持ち上げ唇を奪う。至近距離で見る彼の顔は、びっくりするくらい幼げで可愛い。本当に40代なのか?
「好きだよ」と小さく囁けば、少し間を置いて「僕も」と返してくれる。ゆっくりと目を閉じ、啄むように唇を重ね合った。
しばらく降谷の唇を堪能していると、握りしめていた手がそっと移動し、ガタイの良い赤井の身体をなぞるようにして触れる。
少しずつ角度を変えながら、舌をねっとりと絡ませていると、「…っふぁ、」と細い吐息が漏れた。
「ねぇ、赤井」
「どうした?」
「赤井の、舐めていい?」
赤井の浴衣を少しはだけさせると、黒のボクサーパンツの上を誘うようにひと撫でされ、既に元気になっていたそこは更に膨らみと強度を増していた。
「こっちに座って」
降谷が座っていた客室の座椅子に腰掛けると、脚の間に降谷がちょこんと正座をする。
そのまま浴衣を緩め中央に顔を埋めると、慣れた手つきで赤黒いディックを取り出した。
血管を浮かせてそそり立ったそれの先端を舌先でちろりと舐める。
アイスを咥えるようにしばらくぺろぺろと舌を這わせたあと、手で竿を擦りながら亀頭を口に含み、口内でねっとりと舐めあげられた。
どうすれば気持ちよくなるか、何年もかけてじっくりとその身体に教え込んできた。
その結果として赤井好みの見事な口淫を披露してみせた降谷は、目元にかかった前髪を耳へ引っ掛け、見せつけるように赤井の欲情を煽ろうとする。
竿から手を離すとゆっくりとディック全体を包み込むように口内奥へと押し進めていく。後頭部をぐっと押さえつけてしまいたい衝動を堪え、擽るように耳裏に触れる。
徐々にスピードを付けながら抽送を繰り返し、しばらくしてまた手で擦りながら先端を口で愛撫される。
顎に負担をかけすぎないように、それでいて長く続けられる方法を、学習能力の高い降谷は若い頃にいとも簡単に習得した。
一度口を離し、口元を拭うと上目遣いで「気持ちいですか…?」と尋ねるので、愛おしさのあまり思わず頬を撫でた。
「すごく気持ちいいよ。でも、辛くなったら言ってくれ」
「……僕がこの程度で白旗をあげるとでも?」
どういうわけか挑戦的な顔つきを見せた降谷は再び中央に顔を埋めると、先ほどよりも強い刺激を与えるようになった。
愛の営みをある種の勝負だと思っている節があるこの子は、数十年前から何も変わらない。ギラギラと俺を射抜く瞳が堪らなくて、ついついそれに応えたくなってしまう。
抽送のスピードがあがり、ディックの先端が喉奥をノックする。唾液の分泌量が増えたせいか、ぬるぬるとした口腔に包まれ、射精感が近づいていた。
「…っは、」
目の前で一生懸命頭を振って美味しそうにむしゃぶりつく降谷の姿を見て興奮しない訳がなかった。
邪魔をしてはいけないと分かっていても、その体にどうしても触れたくなってしまう。
開けた浴衣からちらりと覗いた突起が熟れて美味しそうな色と形をしていた。少しだけ悪戯をしようと指の先で弾いてみると、その刺激に応じて降谷の腰が跳ねた。
「…っはぁ、出すぞ…」
赤井の腰に腕を回しぎゅっとホールドした状態で、降谷は赤井の欲望を全て口で受け止めた。
ごくん、と飲み干すと浴衣の袖で口を拭い、少しばかり赤く火照った顔を見せてくれる。
「ありがとう。すごくよかった」
今度は赤井の方が降谷の口回りをぺろぺろと舐めだした。尻尾をブンブン揺らしながら降谷の顔面にキスの雨を降らせ、そのまま布団に押し倒すようにじゃれ合った。
二人で抱き合いながらごろごろしているうちに、二人ともすっかり浴衣が開けてしまい、降谷のかわいい秘部があらわになっていた。
肌と肌が直接触れ合うことで、相手の状態を直に感じ取ることができる。少し動いたせいか、降谷の身体は少しだけしっとりとしており、汗をかいていたことがわかった。
褐色の肌に鼻先を当てすぅっと吸い込むと、大浴場で浴びた温泉の香りがした。
幸運なことに大浴場はそこまで賑わってなかったが(ピーク時を避けたこともあり)、降谷の身体が他の男に"そういう目"で見られていたかもしれない可能性を考えただけで嫉妬で狂いそうになる。
どれだけ長い月日を共に過ごしてきても、変わらず子どもじみた独占欲に支配されてしまう。自分自身でも呆れてはいたが、そうさせてしまうこの子がいけない。
「……なぁ、入れてもいいか?」
「だめ。さっきも言ったでしょ。明日の朝はお部屋の露天風呂に入りたいから、今日はナシ。今始めたら起きれなくなる」
今回の旅行の主目的はこの温泉宿だったので、滞在中降谷はとことん風呂を堪能するつもりだった。
しゅん…と耳を垂らしながらも承諾した赤井は、降谷をぎゅっと横抱きにして少し不服そうに降谷に口付ける。
「……その代わり、チェックアウトまでは好きにしていいですよ」
「そんなこと言われたら、もう一泊してしまいそうになるな」
「ばか」
今度は降谷が赤井の首に腕を回し身体を密着させてくる。ほとんど寝間着としての機能を果たしていない浴衣の存在を無視するように、肌と肌が重なっていく。
「入れるのは負担がかかるからダメですけど、それ以外なら」
ぼそっと小声で呟くので、少しだけ理解に時間を要したが、降谷は降谷でその気になってしまっていたらしい。
そうと分かれば邪魔な帯と布を取っ払い、降谷の身体に覆いかぶさった。
「ちょっと、がっつきすぎですよ。もう若くないんだから…」
「俺はいくつになっても君のことになるとどうも抑えが効かないらしい」
身にまとっていたものがなくなると、しっとりと湿った端麗な素肌が露わになった。
首筋から鎖骨にかけて丁寧に口づけを残していく。胸の突起まで辿り着くと、ちゅ、と軽い挨拶をして舌先でちろちろと愛撫を重ねていく。
「…ん、あ」
だんだん突起が硬くなっていくのを舌先で感じる。そっと降谷の中心部に手を伸ばしてみると、グレーのボクサーパンツは水分を含んで色を変えていた。
舌先でピンク色の突起を押し潰すように舐めながら、下着の上から彼の可愛いそれをゆっくりと扱く。
先ほどまでの甘く細い声がはっきりとした嬌声へと変わり、ゆらゆらと腰が動いた。
「んっふ…ん、あ、ん…あっ…それ、気持ちい…」
滲みの面積が広がっていくのを見つめながら手を下着の中へと侵入させる。直に触れると悲鳴にも近い声をあげられ、感度が高まっていることが分かった。
先走りでぐちょぐちょになっていたところを、全体に塗りたくるようにして揉み込む。
「っはぁ…赤井…!も、イくかも…」
「いいよ、好きなときにイきなさい」
「…っあ!はぁっ…キスして…」
素直で可愛いお願いに口角が上がるのを抑えられそうにない。
貪るように唇に吸い付くと、降谷の方からも舌を絡めてくれる。お互いの唾液を交換しあい、少し唇が離れるとつう、とその間に糸が伸びた。
ボクサーパンツを足首まで下ろすと、脚をM字に開脚させ、ヒクついた後孔に指を宛がう。
ただし、降谷の命令通り後ろを弄ることはせず、穴の周りを軽くなぞるようにして撫で上げた。
分泌量の多い先走りが会陰を伝って後孔に辿り着き、猥らに光っている様子を見つめながら手淫の速度を高めていく。
「あっ…それダメ…くる…きちゃう…!あっあっあっ」
穴の形を確かめるようにくるくるとなぞっていると、ペニスからぴゅっぴゅっと白い液体が噴き出した。
近くにあったティッシュで拭き取り、「よく頑張ったな」と頭を撫でてあげる。
しばらくして、息を整えた降谷と目が合うと降谷はニコニコと微笑んでくれた。
「どうした?そんな可愛い顔して」
「赤井が、入れたいって顔してるから」
まったくこの子は、随分と余裕そうだな。
俺が明日、客室についた露天風呂でどんな風に君を犯そうと考えているか、知りもしないで。
でも君のことだから既にそんなことすらも分かった上で、手のひらで踊らされているのかもしれない。それなら本望だな。
降谷が背中に腕を回したので、ぎゅうっと体が密着する。
「そりゃあ、好きな人のこんな姿を見ていたらそうなるだろ。もしかして気が変わったか?」
「ふふ、だめですよ。明日のお楽しみです」
赤井が唇を少し尖らせると、降谷はまたくしゃりと笑みを零した。
いくつになっても我儘で小悪魔で俺の心を翻弄させる、目の離せない存在。
「零、後ろを向けるか?」
降谷の体を翻すと、ぴったりと脚を閉じさせ、太ももの狭間に限界まで張り詰めたディックを挿入した。
何度か抽送を繰り返していると、太ももがパンパンとぶつかり合う音が鳴り響き、まるで本当に結合しているかのようだった。
布団のシーツに押さえつけられた降谷は、動いた反動でペニスが擦り上げられ、蕩けるような喘ぎ声をあげ続けていた。
「…っふぅ…ひ!…ああ!すごい…ああ!」
乳首を抓ると背中を仰け反らせるようにして全身がびくっと震え上がり、耳から首まで真っ赤にさせながら嬌声をあげていく。
震える背中にも幾度となく口付けを落としていくと、降谷がこちらに顔を向けキスを強請った。
激しく舌を絡めあいながら、再び降谷のペニスに手を伸ばし先端を指の腹で刺激する。
限界が近いようで、シーツを掴む手に力が入る。その手を包み込むように上から重ね、べろりと耳介を舐めた。
「…はぁ、好きだ、零くん…ほら、こっち向いて…」
「んん!あぁん…!っ…!あかい、あかいぃ、ぁ!」
「もう限界だ、……っ!」
「僕も………ん、イっちゃ…あ!あっ、あっ、――!」
深い口付けとともに同時に射精を迎えたようで、布団のシーツをぽたぽたと二人分の白濁で汚した。
お腹や太腿周りもベタベタで、息を整えながら2人で顔を見合わせてあー…と嘆く。
このあと一度シャワーを浴びて、この残骸の処理方法と、明日布団を片付けにくる仲居さんへの言い訳を考えよう。
明日に約束された特別なイベントに想いを馳せながら、俺の腕を離さまいと引っ付いてくる天使のような悪魔を抱きかかえて浴室へ向かった。