一昨日(2022.9.14),WHO=世界保健機関のテドロス事務局長は14日の記者会見で,新型コロナウイルスの世界全体の死者数が.先週.2020年3月以来の低い水準になったと指摘したうえで,「世界的な感染拡大を終わらせるのにこれほど有利な状況になったことはない.まだ到達していないが,終わりが視野に入ってきた」と述べました.
「ナイトメアバクテリア」については,2019年末に書いたものです.2020年1月15日に新型コロナウイルス感染が報告され,緊急性が低下したため限定公開にしていたものです.薬剤耐性菌に対する対策が失敗した場合,2050年には全世界での死者は1,000万人になると予想されていて,がんを上回る人数に達するという.早急な対策が必要であることには変わりはない.
2019/12/15(日)の朝日新聞デジタルに以下の記事が掲載されていた.
悪夢の耐性菌、国内にじわり 感染症発症後は薬ほぼ無効
既存の抗菌薬がほぼ効かない海外発の強力な薬剤耐性を持つ大腸菌などの腸内細菌が、国内で増えつつある。国立感染症研究所(感染研)によると、検査を始めた2017年は13例だったが18年は42例。確認された地域は、1年間で6都県から16都道府県に広がっていた。ー都道府県分布図付きの記事ー
左図は下記の解説動画(耐性菌についての分かりやすい解説)から引用した..
そこで,過去の報道を調べてみると,2013年に既に話題になり,警告を発した学者がいたことが判った.以下にその内容を示した.
「悪夢の耐性菌」に警告 米当局
抗生物質が効かない細菌「カルバペネム耐性腸内細菌(CRE)」の感染が広がっているため,米疾病対策センター(CDC)が医療機関に対策を呼びかけている.この細菌に感染すると,最大で半数が死に至るという.
同センターによると、CREは過去10年の間に感染が広がり、強い抗生物質に対しても耐性を持つようになった。2012年上半期だけで、約200の医療機関でCRE感染者が確認された.
CDCのフリーデン局長は、CREを「悪夢の細菌」と呼び,「最も強い抗生物質も効かず、感染に対する治療が不可能な状態に陥りかねない。医師や病院経営者、公衆衛生当局が力を合わせて『発見と予防』戦略を遂行し、感染の拡大を食い止めなければならない」と指摘した。
同戦略では医療機関に対し、手指衛生などの対策や、患者に対するCRE検査、感染者の隔離、外部との接触制限などの徹底を求めている。
ただ、米国の医療機関でCREはまだそれほど頻繁に見つかっているわけではなく、健康な人の間で感染が広がっている様子も見られないという。
米国では年間約170万人が院内感染し、9万9000人が死亡している。CREに血流感染した患者の致死率は最大で50%に達し、似たような耐性菌の致死率約20%を大幅に上回る。
そのような中、薬剤耐性菌にもっと危機感を持つべきであると警告を鳴らした学者もいた.英国のデービーズ教授(Prof Dame Sally Davies)は、薬剤耐性菌の問題は「時限爆弾」のようなもので20年後には、普通の手術でさえ致命的な感染症となる恐れがあると指摘し,国際的に議論すべきと政府に求めた.AFPの記事
日本の対応
日本ではどんな状況になっているのか?この件に関して国立感染症研究所は、2013年3月8日に以下の記事を発表した。
【カルバペネム耐性腸内細菌に関する米国CDCの発表と日本国内の状況】
日本国内の感染状況は、厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業がカルバペネムやその他の耐性菌の動向を把握し、随時情報を公開している.
日本においてカルバペネム耐性の腸内細菌科の菌は少なくとも米国ほど拡散していないが、このような耐性菌は治療に困難を来すことから、医療機関においては引き続き注意が必要であると呼びかけている。
米国で問題になり始めた2013年当時は,我が国における耐性菌の拡大が現在の状態になるのはもっと先のことと予想していたようである.
稿の初めに紹介したように,国立感染症研究所の最近の調査によると,検査を始めた2017年は,6都県で13例だったが,1年後の2018年では,16都道府県で42例と増えている.原因は何かを考える時,最初に思いつくのは「抗生物質の使い方」である.本来飲む必要のない症状(風邪など)の人が,二次感染防止のため,抗菌薬,抗生物質を飲むことが,耐性菌が増殖してしまう1つの原因とされている.詳しい説明の必要はないと思う.
FNN.jpプライムオンラインの解説によると,2018年に,世界でがんで死亡する人は,960万人と予想されている.一方で,薬剤耐性菌に対する対策が失敗した場合,2050年には全世界での死者は1,000万人になると予想されていて,がんを上回る人数に達するとのことである.早急な対策が必要である.
参考資料
悪夢の耐性菌、国内にじわり 感染症発症後は薬ほぼ無効:朝日 ...
抗生物質が効かない耐性菌、世界的脅威になる恐れ 英専門家 AFPの記事 2013年3月12日 12:16 発信地:ロンドン/英国
悪魔の耐性菌、想定より感染拡大の恐れ 症状出ない保菌者も - CNN.co.jp
(限定公開を変更 2022.8.16)