NHK受信料は従量制にすべきというブログを読んだことがある.私も電気,水道,ガスと同じようにそうすべきと思っている.私は70歳で定年退職するまで,研究職のため帰宅するのは9時以降であったからテレビを見る時間はなかった.家内は父の薬局を継いで薬剤師業をやっていたので,テレビを見る必要があった.薬品名を忘れた客がテレビコマーシャルで商品指名するからである.定年後,薬剤師免許証二枚を遊ばせておくのは勿体ないということで調剤薬局重視の経営を勧められたが,「我が国における医薬分業の実態」を知っていることもあり,きっぱりと閉局した.
閉局してからはテレビを見る必要はなくなった.ほとんど「ながら」視聴で,ちゃんと視るのはニュース番組,天気予報程度である.我家には,DVD等の録画装置はないので録画してみることもないし,テレビは一定時間でスイッチが切れるように設定している.アナログテレビの時代,周囲のビルに反射する電波を避けるため,テレビアンテナを隣家の屋上に立てる必要があった.そのため,ずっとCATVを利用してきたが,契約は最低限のチャンネル数(地デジ,BSプラスアルファ程度)に絞っている.CATVが得意とする映画(洋画,邦画),ドラマ,アニメ,スポーツ等の数々の番組は一切見ない.NHKの受信料はCATV会社経由で支払っている.
ニュースとしては,NHKニュースおはよう日本,正午のニュース,BS列島ニュース,NHKニュース7,ニュースウオッチ9,ニュースチェック11等がある.それぞれ個別化を図っていると言いたいかもしれないが,ニュース内容の説明をする男女ペアの担当者が変わるだけで,用いる録画の内容はナレーションを含めてほとんど同じといっても過言ではない.番組直前あるいは途中に入ってくる新規なものが挿入されることもあるが,情報に欠けるので.事実確認程度の意味しかない.
ニュースの番組進行を務めるアナウンサーとニュースを掘り下げ,わかり易く視聴者に伝えるキャスターの役割区別もはっきりしない.それぞれのニュース番組の相違点としては,キャスター側と思われる人のコメントに僅かにキャスターの人間性の違いが垣間見られる程度である.「視聴者に賢明な判断を委ねる」というニュアンスで締めくくる場合は,「実は内容に批判的な立場だが,そうは言えない」と言っていると思えばよい.そういうわけだから,NHKオンライン(NHK公式ホームページ)で提供されているニュース映像サービス(無料)を見た方が時間の節約になる.また,ニュース項目単位の映像を選ぶことができるのでダラダラと見る必要もない.
災害時,その真っ只中に居る者にはテレビはまったく役に立たないことを熊本地震で経験した.テレビではおそらく「震源地」,「震度」,「津波の心配はない」,「身の安全を守る努力をしてください」と言っていたに違いないが,激しく揺れ動いている状況下ではテレビを観ることができないので,ほとんど存在価値はない.停電状態で頼りになるのは,電池式のラジオ受信機,カーラジオ,スマートフォン,携帯電話程度である.
被災地から遠く離れてテレビを観ている人には情報を早急に伝達する必要があるのかもしれないが,情報が得られないため,同じ情報を延々と繰り返し放送するだけである.一連の熊本地震では,東京在住の子供達とは携帯会社の電波を利用したメールやLINEによって安否確認や連絡を行った.テレビを見たのは停電が復旧し,それなりに片付けが終わった後である.
大規模災害が頻発する中,放送関係者もインターネットが果たしている役割を認めざるを得なくなり,放送のインターネット同時配信を実施する方向へ舵を切り始めている.高速通信回線網の全国規模での普及が同時配信を可能にしたことは言うまでもない.インターネットを使えば,視聴者からのリアルタイムの情報提供を含めた双方向的情報配信が可能になるはずである.
あって当り前の存在
熊本地震の場合,停電したため100Vを電源とする家庭用情報機器(ルーター,パソコン,テレビ等は情報収集・伝達手段として機能しなかった.役に立ったのは移動体通信の電波だけであった.携帯電話やスマートフォンの電池の充電は自家用車のシガーソケットからできるので,放送のインターネット同時配信は「あって当り前の存在」といえる.
概念図 ChemDraw による作図
NHKは,2016年6月20日,災害情報や気象情報、NHKが取材した最新ニュースやライブ映像などが見られるスマートフォン向け無料アプリ「NHKニュース・防災アプリ」をリリースした.
アプリ内には,ニュース,天気予報,災害情報,ライブの各メニューがあり,社会,政治,ビジネスなどNHKが取材した最新ニュースや,地震,津波、台風、大雨など災害情報を掲載.現在位置や設定地域に合わせて,警報や注意報,避難勧告などを確認することができる.地域ごとの天気予報や,今後の雨雲の動きを確認できる「雨雲データマップ」などのメニューも用意されている.災害時は,テレビのニュース映像の同時配信やライブカメラ映像の提供も行う.最新情報はプッシュ通知でも知らせるという.アプリの対応OSはiOS 8.0以降とAndroid 4.1以降.注)プッシュ型情報配信プッシュ通知とは、システム側が外部のサーバーと連携して能動的に情報を取得してユーザーに通知する方式のこと.ユーザーが意識的に情報を探す必要はない.
2017年6月15日には,「NHKニュース・防災」アプリが大幅リニューアルされ,ゲリラ豪雨や熱中症情報などに対応した.マップ機能などを拡充し、雨雲データだけでなく地震/津波や、気象警報/注意報などの情報を地図上で確認できるようになった.
「NHKニュース・防災」アプリの「よくある質問」には「利用に費用はかかりません」と書かれているが,受信料に関する記述はない.しかし,NHK会長は「スマートフォンユーザーから受診料を徴収する」との意向を表明している.「テレビを持たない世帯を対象に,NHK同時配信を受信できるスマホアプリをダウンロードした人からも受信料を徴収する」つもりらしい.さらに,NHK会長は「受信料徴収にマイナンバーの活用を検討したい」と発言したとも報じられている.
9月21日,「NHKネット配信、契約世帯が対象 19年度開始の意向」という記事が朝日新聞およびそのWeb版に載っていた.そこまで細かく個人の情報を管理できるのなら従量制は実現可能ということではないだろうか.
「デジタル放送の今後」で紹介したように,新聞と放送しか存在しなかった時代と異なり,通信と放送が融合する時代,今起こっている災害に関しては,視聴者提供の画像や情報に頼っている一面も存在する.受信料徴収に奔走する前に受信料を払ってでも視聴する価値のある番組作りに力を入れるのが先決ではないだろうか.
追記)このプログを書くにあたって,普段見ない番組を見てみたが,ひとつのことに時間を掛け過ぎる番組,さらには視聴率が気になるのかNHK番組のコマーシャル(予告)が時間調整の時間帯に多いことを認識させられた.