紅白と視聴率

‐番外編‐

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SMILE-UP.との関係(クリックすると記事が見れます)

 MUSIC LIFEが行った「紅白事前調査」で事務所「SMILE-UP.」と紅白の視聴率の関係を問うた。その結果が下の図だ。

 やはり多くの人が「SMILE-UP.」所属の歌手を出場させることで、視聴率が上昇に関係すると考えているようだ。しかし、筆者はそうは思わない。視聴率が低かった回にはこれに関する共通点があるように感じる。

 視聴率が最も悪かった第70回(2019年)と一昨年よりは高かったものの、勢い及ばなかった第73回(2022年)は紅白と「SMILE-UP.」の関りが注目された回であることが共通している(第72回(2021年)は会場の違いやウラトークがない等色々なことが起因しているためそ比較に入れていない)。

 第70回では「Let's Go to 2020 Tokyo 」と題したジャニー喜多川氏の追悼企画を行い、第73回はネットニュースを中心に「ジャニーズ枠6組」と注目された。当然、この時には現在の問題は表に出ていなかったため、何も問題がないことは言うまでもない。しかし、全世代が注目する番組、しかもNHKで事務所社長や同じようなグループを同事務所から選出することへの反発はあっただろう。

 今年の報道で、44年間同事務所所属の歌手が出場していたことが大きく報じられた。それなのに、何故この2回の共通点から筆者が視聴率に結びつけたか。それは2つの理由がある。

 一つ目は、「SMILE-UP.」が紅白の中心にあった。と言うことだ。過去5年で視聴率が高かった第69回(2018年)と第71回(2020年)は他に注目が向いていた。第69回は「サザンオールスターズが35年ぶりにNHKホールから歌唱する」や「米須玄師が白組として出場、テレビ初歌唱」など、第71回は「史上初の無観客、3スタジオからの生放送」と注目部分が細分化されていることで、多く出場しても批判が少なくなったと言ってよいだろう。事実、第66回(2015年)は歴代最多の7組が同事務所から出場した。これにも関係することが2つ目の理由だ。

 「SMILE-UP.」と共によく引き合いに出される事務所が「アミューズ」だ。「アミューズ」所属の歌手も多く出場しているが決定的な違いがある。上でも「同じようなグループ」と書いたが、近年の「SMILE-UP.」はダンスボーカルグループが多く占めるようになった。バンドやシンガーソングライターなど幅広いことを行う歌手が少なくなった。一方で「アミューズ」はテクノポップ、バンド、シンガーソングライター、俳優兼歌手など様々なジャンルで活躍する歌手が出場している。これがはっきりわかる言葉がある。それが「ジャニオタ」だ。各グループではなく、事務所を応援する。これが決定的な違いとして表れている。

 勿論、KinKi Kidsや関ジャニ∞は自身が作詞作曲したり、バンド演奏したりするが、以前と比べてその数が少なくなった。更に、「全世代から認知されているか」と言う部分から見ると現在は全く認知されていないだろう。昨年、第73回で歌手別視聴率で上位に入った同事務所歌手はKinKi Kidsだけ。これを見ると「SMILE-UP.を出せば視聴率が上がる」というのはSMAP、TOKIO、V6、嵐、KinKi Kidsなどの全世代が知るグループが複数出場していた時代の功績でしかないのかもしれない。

 筆者が幾度となく書いていることだが、サブスクリプションやYouTubeなどで多くの楽曲が身近になった反面、自分の好きな曲ばかりを聴けるようにもなった。 先日、東洋経済の記事で木村隆志が書いていたが「旧ジャニーズも韓国系も、『好きな人以外が嫌いな人が多い』という好き嫌いがはっきり分かれるタイプのアーティスト」と、現在は特定の世代が好きなグループに頼るのではなく(出場させるなとの意味ではない)、幅広い世代が知る歌手に頼ることで視聴率の獲得につながるのかもしれない。