狐に婿入り、大失敗
狐に婿入り、大失敗
幼い頃にタマミツネに恋したハンター♂が、タマミツネに告白しに行くも何故かヨツミワドウに捕まって酷い目に遭う話。ヨツミワドウはカモノハシに見た目が似ているので、卵から孵るけれどほ乳類に近いのではないか?という思いつきが元になっています。
最初から最後までツッコミ不在です。
細かいことは気にせずに勢いだけで執筆したため、頭を空っぽにして閲読頂ければ幸いです。
男性が母乳を噴いたり、腹ボテ・腹ボコ表現があったりします。
きらきら、きらきら。
御天道様を乱反射し、美しい虹色に輝くそれは、あの日たまたま里に立ち寄った流れのハンターが持ち帰ったものだった。里の加工屋、名工であるハモンさんが鉄槌で叩くそれに、僕は魅入ってしまったのだ。
幼かった僕は、それが何なのかも、ハモンさんが何をしているのかも知らなかった。だけど、あまりにも熱心にそれを見ていたから、隣にいた母は少し心配になってしまったのだと思う。僕の顔を覗きこんで、こんな風に言っていた。
『これは、それはそれは美しく恐ろしいお狐様のものよ。美しさに魅入られてしまえば、たちまちお嫁にと拐われて取って食われてしまうのよ』
母のその言葉を聞いた時、僕は思ったんだ。
この鱗の持ち主になら、何処かへ拐われても構わないって。
◆
あの日から、数年。
ウツシ教官の指導のもの、ハンター試験に合格した僕は更に腕前を上げて上位ハンターに登り詰め、そしてついにこの日を迎えた。加工屋のハモンさんからゼニーと引き換えに受け取ったのは、見るも美しい装束。急いで水車小屋に戻って、湯浴みをして、隅から隅まで綺麗になってから、身に着けた。鮮やかな赤紫色の錦ヒレを加工した頭飾りと、妖艶な紫色の袴。上半身を覆うのは、陽に透かせば虹色に輝く最上級の着物。目出度い紅白の紐で腰周りを彩れば、もう立派な婚礼装束だ。どこかおかしなところがないか、ルームサービスに訊いて見てもらえば、今日もとっても立派ですニャ、と笑顔。どこか不安な僕の気持ちを、後押ししてくれたのかもしれない。
水車小屋を飛び出して、集会所へひた走る。今日の僕は、どの角度からどう見たって最高に決まっているんだ。こんなにも胸が踊るのは、きっとあの日───『あの子』の欠片をこの目で初めて見た、あの日以来。
集会所に着いたら、さっそくミノトさんに依頼の一覧を見せて貰って、迷わず大社跡での依頼を受注した。そこに、僕が着飾って駆け込んで来たことに気づいたらしいウツシ教官がやって来る。そうだ、教官にもきちんと挨拶をしておかなければ。
「やあ、愛弟子! 今日も精が出るなあ」
「教官! 今日までお世話になりました‼」
「エッ?」
「僕は……僕はッ今日ッ! 今日から僕は‼ 身も心も、『あの子』のものになりますッッ‼」
本当に、本当に、お世話になりました! と直角に身体を折り曲げて頭を下げる。教官は直角になった僕を見て、えっ、あっ、ゴメン、ちょっと何言ってるかわからない、と何故か困惑しているが、ここまで来てしまえばそれも些細なこと。僕が次に言うことは、既に決まっているのだから。
「いざ出発ゥ───ッ‼」
「愛弟子───ッッ⁉︎ よく解らないけどとりあえず気を付けるんだよぉ───ッッ‼」
ハンターの出立を知らせる……いや、僕と『あの子』を祝福する法螺貝の音が、集会所に鳴り響いた。
フクズクから『あの子』の待つ場所を教えてもらい、退社跡の崖を翔蟲で駆ける。鉄蟲糸に引かれて宙を舞うと、誂えたばかりの婚礼装束が風にはためいて輝いた。なんて美しい。最高の気分だ。これはきっと、全てが上手くいく予兆だ。
逸る気持ちと弾む胸を抑えて、北の方の崖上のエリアへ急ぐ。渓谷を下っていくと、朽ちた塔の近くで揺らめく妖艶な紫色が目を突いた。
いた。『あの子』だ。
いきなり駆け寄るような無粋なことはせず、まずは岩陰から顔だけを出し、『あの子』の美しさをじっくり観察する。水辺に横たわっているだけで、どんな絶景も霞んでしまうほど美しい。はぁ~……と、うっとりしたような溜め息が自然と洩れてしまう。身動ぎする度に陽光を反射し、煌めく鱗。あの幼い日、あの虹色に輝く鱗を見てしまった時から、ずっとずっと『あの子』の虜だったのだ。うっかり、このままじっと『あの子』の姿を見ていたいと思ってしまうが、首を横に振る。今日は、そんなことをしに来たわけではないのだ。よし。両手で挟むようにして、頬をパンパンと叩く。いざ尋常に、勝負。
『あの子』の前に滑り込むようにして出ていくと、『あの子』がスウ、と顔を上げた。左右対称の花弁のような錦ヒレに飾られた、キリリと整った顔立ち。その中心で気高く、そしてどこか冷たく輝くのは、切れ長の青い瞳。ああ、ああ! 想像していたよりも、夢で見たよりも、実物は比べ物にならないほど美しいじゃないか!
憧れに憧れ続けた存在が、今目の前にいる。浮き足立ってひっくり返りそうな声をなんとか振り絞り、張る。
「あ、あ、あの……っ!」
『あの子』が身体を起こして、こちらに向き直った。聞いてくれている! 聞いてくれているんだ、僕の声を!
「ぼ、僕はあの日からキミのことが好きで好きで堪らなくて……!」
言え。言え! 言うんだ! 一世一代の大告白なんだ! 怯むな!
「ぼ、ぼ、……僕のっ! お嫁さんになってくださいッッ‼」
『あの子』のツンと尖った気品のある鼻先に手を差し出して、ガチガチに硬直したまま返事を待つ。言った。言った! ついに言えた! 告白を果たして完全に舞い上がっていた頭の中に、希望に満ちたファンファーレのごとく『あの子』の咆哮が響き渡る。ああ、大好きな『あの子』の声しか聞こえない。きっとこれは、OKの返事に違いない。だって、こんなにも高く美しく響いて───
「ぶぼッ、」
視界が暗転する直前、聞こえたのはおそらく僕の声だった。
ガラガラガラガラ……───ドシャァ!
真っ暗な視界の中、なんだか物凄く乗り心地の悪い荷車に揺られているみたいだと微かに思った途端、身体に感じた衝撃。うう、と呻いてどうにか目だけでも開くと、先と同じくガラガラと音を立てて荷車を押していくアイルー達の背中が見えた。しばらくの間、それをボーッと見ていたのだけど。
「…………ハッ⁉︎」
なんてことだ。『あの子』の情熱的な返事、もとい強烈な水ブレスを真正面から食ってしまったようだ。なんて力強い返事……と言いたいところだが、これでも僕はカムラの里では『猛き炎』なんて言われているハンターだ。あれが告白への返事なのか、単なる攻撃なのかくらいは見分けがつくわけで。もしかしなくても、『あの子』は僕に敵意を向けていた。そうだとすると、その前の咆哮は怒っていた時のものではないか。気位の高い『あの子』のこと、突然告白などしに来て、無粋で無礼だと思われてしまったのかもしれない。
「じゃあ僕は……フラれた、のか……?」
膝から力が抜けた。地面に崩れ落ちる。そんな。そんな……今日この日を迎えるためにハンターになったのに。せっかく婚礼衣装まで誂えたのに、ビショビショだ。衣装の端を摘まんで、溜め息。そこで、ふと気づく。この衣装は、あの子の同族の素材を使って誂えたものだ。僕だって、人間の皮や骨を素材にした服を着て告白されたら怖くて泣いてしまう。チビるかもしれない。『あの子』は怒っていたのかもしれないが、それ以前に怖がっていたのではないか?
なんてことだ。思わず声に出た。大切な人を怒らせてしまったのなら、まずは謝らなければならない。今日のところは『あの子』に誠心誠意謝罪して、別の衣装を着て出直すことにしよう。
そんなわけで、先ほど『あの子』が休んでいた水辺に再びやってきた。機嫌を損ねてどこかへ行ってしまったかとも思ったが、岩の向こうに大きな影が見える。よかった、いてくれた。もしかして、僕がこうして謝りに来るのを待っていてくれたのだろうか。ゆらゆらと揺れる大きな尾を見て、いても立ってもいられず僕は翔蟲で跳んだ。
「あの、さっきは……!」
ごめんなさい、と言おうとした時、大きな影がヌウ、と振り向いた。黒光りする甲殻に、立派な髭、泥を纏った鈍色の太い尾。うーん、ほんの少し離れただけだというのに、随分老けてしまったようだ。なんだか心なし、足元も泥でぬかるんでいるようだし。
「……って、ジジイじゃねーかチックショォォ───ッッ‼」
巨大泥団子を構えたオロミドロの尾の一撃を顔面に食らった僕は、呆気なく崖下へと墜落したのだった。不意打ちだ。受け身を取ることもできないまま墜落したが、何やらボヨンとしたものがクッションになったおかげで奇跡的に大きな怪我はしなかった。それは良かったのだが、結局『あの子』はどこへ行ってしまったのだろうか。悔しさで歯噛みして起き上がると、せっかくの婚礼装束はビショ濡れの上にオロミドロの泥だらけだ。ハモンさんに何て言おう。教官にも、フラれてしまったことを伝えなければ。はあ、と失意の溜め息が洩れる。とにかく、まずはこの泥だけでも落としてしまおう。
「……えっ、」
水場へ向かおうと立ち上がったとき、足元に大きな影が落ちた。顔を上げると、目の前にはでっぷりと丸い物体。更に見上げていくと、平たい嘴に緑色の苔───ヨツミワドウだ。どうやら僕は、昼寝中のヨツミワドウの腹の上に墜落したおかげで助かったらしい。が、昼寝中の大型モンスターを起こしてしまうなど、不幸中の幸いどころか不幸に不幸を塗り重ねるようなもの。やはりというか、昼寝を邪魔されたヨツミワドウは不機嫌そうだ。ブルル、と丸い腹が揺れる。まずいぞ。今日は『あの子』に告白することだけが目的だったから上の空で、武器も道具もスキルも一切考え無しだ。しかし、逃げるにしても間合いが近すぎる。とりあえず武器を抜いてみるが、一歩遅い。ヨツミワドウの渾身の張り手に吹っ飛ばされてしまう。おげぇ、と転がったところで、更にボディプレスの追い討ち。なんとか直撃は免れたが、すぐに起き上がることができない。
止めとばかりに猫騙しを食らい、あっさり気を失ってしまった。
「う……」
目を覚ますと、何やら柔らかくてビチョビチョした場所に倒れていた。覚束ない視界にボンヤリと写るのは、大社跡の岩場の景色。そうだ、確かヨツミワドウに出くわして───上体を起こして首を横に振る。どうやら、濡れた苔の上にいるようだ。ここはどこだ? 滝の音は聞こえるが、普段は入らないエリアなのかもしれない。とりあえず、フクズクを呼んでメインキャンプまで案内してもらおうか。
「ん?」
指笛を吹こうとすると、指先が何か硬い物に触れた。視線を下げると、白くて丸い物が三つ、苔の上に鎮座している。大きさは、大人の頭よりやや大きい程度。どう見ても大型モンスターの卵だ。加えて、この緑色の苔。どうやらここは、ヨツミワドウの巣らしい。ハンターを襲うならまだしも、わざわざ巣に連れて帰るなんて……もしや、産まれてくる子供の餌にされるのだろうかと思い至るが、確かヨツミワドウはそういう食性ではない。中型モンスターを丸飲みにしようとしているのを見たことはあるが、あれは攻撃手段だろう。それならば、僕がここに連れてこられたのは一体……などと思っていると、背後でギュム、と狭い場所に何かを押し込むような音が聞こえた。振り向くと、岩の隙間をギュムギュムと無理矢理通り抜けてヨツミワドウが入ってきている。しまった、さっさと逃げるべきだった。だが、先ほど止めを刺されなかったということは、理由はわからないが強く敵視はされていないということだ。隙を見て逃げられるかもしれない。
ヨツミワドウはキュポンと岩の隙間を通り抜けると、卵の近くまでやってきた。目の前で水を吐くような仕草をしたので身構えるが、大量の水と共に目の前に落とされたのは。
「えっ、これは……ウリナマコ?」
ヨツミワドウの大好物だ。困惑していると、ヨツミワドウは水掻きがついた短い手でウリナマコを数匹持ち上げ、ほれ、ほれ、とでも言うように近くに寄せてくる。いや、要らないが。というか、あの食い意地の張ったヨツミワドウが、これを自分では食べないのだろうか。
(まさかとは思うけど……)
卵があるということは、ヨツミワドウは今、繁殖期を迎えているということだ。しかし、近くに雌の姿はない。もしや、卵を育てる雌を探していたのだろうか。
「……申し訳ないけど、僕はキミの同族じゃあないよ」
通じるはずがないと思いつつも一応言ってみるが、やはりヨツミワドウはコテ、と短い首を傾げた。ヨツミワドウの雄は子育てには積極的に関わらないというし、ここで雌が見つからなければこの卵たちは悲しい結末を迎えることになるのだろうが、致し方ない。敵意を抱かれる前にここから立ち去った方がいいだろう。なるべくヨツミワドウを刺激しないよう、何食わぬ顔で立ち上がったのだが。
「あぁ~……」
『あの子』の情熱的な水ブレス、ジジ……オロミドロの泥、そしてヨツミワドウの攻撃で、見るも無残に汚れた婚礼装束が目に入ってしまう。ハモンさんには、謝るしかないだろう。はあ、と深い溜め息を吐いた、その時。
「え? ちょっ……、うおぉわああああ⁉︎」
後ろから何かに物凄い力で吸い寄せられ、突然視界が真っ暗になった。生暖かいような気も、冷たいような気もする狭い空間の中で、ブヨブヨしたものに転がされまくる。まるで洗濯桶の中にでも放り込まれたかのようだ。
もしかしなくても、ヨツミワドウに丸飲みにされかけている。まずい、脱出を、と取っ掛かりを探そうとしたと同時、ベッッと外へ吐き出された。
「げほげほっ、ゔぉえッ……!」
水を飲んだり回転したりで咳き込んでいると、ヨツミワドウが婚礼装束の端をムン、と掴んできた。見ると、泥汚れが綺麗サッパリなくなっている。
「え、あ? え、もしかして、洗ってくれたの? ハハ……あ、ありがとう……?」
一応礼を言ってはみるが、ヨツミワドウは装束の端を掴んだままだ。それをサッと取り返し、巣の出口らしき岩の隙間へ向かう。あからさまに逃げると追われる可能性がある。ここは焦らず、ゆっくりと───と、いう判断が誤りだったことは、すぐに明らかになった。ヨツミワドウはその体型からは信じられないほどの跳躍力で跳び上がり、頭上を越えて目の前にドスン! と着地したのだ。
「おわぁ⁉︎」
震動でよろめき、尻餅を着いてしまう。そこに、でっぷりとした丸い腹がのしかかってきた。こちらを見下ろすヨツミワドウは、まるで巣から逃げ出そうとしたことを咎めるかのように低く唸る。
「ちょっ、ちょっと待って !気持ちは嬉しいけど、僕はキミみたいなデ……、ふくよかな子はタイプじゃなくて……!」
皆まで言うより先に、首根っこを掴まれ卵がある辺りに投げ飛ばされた。んげっ、と変な声と共に墜落する。そこに、再びのしかかるヨツミワドウ。綺麗にしたばかりの婚礼装束の端を掴むと、ビリィ、と異音が……
「あああああ───ッッ⁉︎ キミっ! ちょっ! せっかくの装束がァ───ッッ‼」
ヨツミワドウの腹をげしげしと蹴るが、大型モンスター相手に素手の攻撃など。伸ばした脚を掴まれ、パカリと御開帳されてしまった。そしてその短い後ろ肢の間に見えたのは、いつの間に生えたのか巨大ウリナマコ……ではなく。
「は……? ま、ま、魔羅……⁉︎」
おい、嘘だろ。本当に僕のことを同族の雌だと思っているのか。子育てを放棄して巣から逃げ出そうとした雌を、「わからせ」ようっていうのか。いや、コイツ目悪過ぎだろ。僕のどこが河童蛙に見えるっていうんだ。
と、腹立たしく思っている場合ではないのだ。あっという間に下半身の装備は剥ぎ取られてしまい、外気に晒された脚や腹をヨツミワドウの分厚い舌が這い回り始める。身体は水掻きのある前肢で押さえつけられていて動けないし、水を含んだ苔が冷たいやら舌が生温かいやら、とにかく不快だ。抵抗しようにも、武器を取り落としたハンターなど非力なもので、足首を掴んで持ち上げられ、あっさりと局部を晒す体勢にされてしまう。そして、ヨツミワドウからは丸見えになっているであろう尻の合間を、分厚く滑る舌がベロリと這う。
「ヒイイィッ⁉︎ なめ⁉︎ なめっ、やめえぇッ!」
腰を浮かせて引いたり、腕を突っ張ったりして暴れてみるが、ふわふわでビチャビチャの苔が背中を擦るだけだ。その間もしつこく尻の間を舐られ、最も奥まった位置にある穴を解すように……というより、舌の寸が大きすぎて抉じ開けるように嬲られる。
「えっ、お゙ッ、おいッまさかソコに挿れ……‼ やめ、やめてってば! そこは雌の穴じゃないんだって……はぐぅッ⁉︎」
ジタバタしていると、黙れとばかりにヨツミワドウの指が尻穴に刺さった。水掻きがあるせいか、そう奥までは入ってこないが、やはり寸の基準が人間とは違うため、指一本でもみっちりと拡げられてしまう。
「ちょっ尻子玉⁉︎ 尻子玉が欲しいの⁉︎」
ぐにぐにと中で動く指は、何かを探っているようにも。尻子玉とは昔の人が考えた架空の臓器なので、探したところで見つからない、と一応説明してみるが、まあ通じない。散々に尻穴を掻き回されたものの、当然ながら目当てのものは見当たらず、ヨツミワドウは首を傾げて指を引き抜いた。
「んぎっ……!」
尖った爪先に柔らかな肉壁を容赦なく擦られ、喉奥から悲鳴が洩れる。その直後、巨大ウリナマコ、もとい、妙に生々しい肉色の魔羅が、ピトリと尻にあてがわれた。
「ぉ、お゙、あ゙……」
本気でそれを尻に挿れるのか、と焦る間も与えられず、みちみちと異音を上げながら巨大ウリナマコが狭い穴を圧し拡げてくる。一応、舌と指で解されていたせいなのか、徐々に先端が埋まり始め、やがて太い部分がぐぽん! とハマる。
「んお゙ォッッ‼⁉︎」
そのまま、おそらくは半ばくらいまで一息に埋められ、全身が痙攣すると共に嫌な汗が噴き出し始めた。待って。待ってくれ。これは、これはいけない。尻から腹まで裂けてしまう。ハンターだから今はまだ裂けていないが、いつ裂けてもおかしくない。逃げようともがくが、巨体にのしかかられては、とても。
「お゙ォ、ぉ、あ゙、あがぁ……ッ!」
ずぶぶぶ、と更に奥まで侵入され、臍の下辺りがぽこりと盛り上がる。だが巨大ウリナマコは、ここまで入っても尚余力を残して───
「……お゙あ゙ぁぁあァッ⁉︎ でてるぅ⁉︎ はやっ、はやい゙ッてええ゙え゙ぇぇ⁉︎」
───いなかったようだ。直腸の突き当たりのような場所に先端が達した直後、ヨツミワドウは猛然と射精を始めたのである。しかも、とんでもない量を。ハンターとはいえ、一応人間だ。大型モンスターの射精量を腹で受けきれるはずがなく、もともと魔羅で盛り上がっていた下腹が更に膨らんでしまう。
「お、ぁ……あ゙ぁぁ……ぁ、うそぉ……」
尻穴の僅かな隙間からヨツミワドウの精液をびゅうびゅうと逆流させながら、僕はあっさり気を失った。
「うぅ……」
目を覚ますと、岩場と空が見えた。背中は、濡れているのか冷たい。どうやら倒れているらしい。
なんだか、凄い夢を見てしまった。『あの子』に告白するために大社跡まで来て、よりよってヨツミワドウに捕まった挙げ句交尾の相手にされ───
「ゲコ」
「えっ」
そうそう、ちょうどこんな感じで無理矢理巨大ウリナマコもとい魔羅を尻にブチ込まれて射精されて、ぽっこり膨らんだ腹をヨツミワドウにつつかれてポヨンポヨン……ってこれ全くもってさっぱり夢じゃねぇなオイ。夢がよかった。夢がよかったけど、限界まで開かされた尻穴に挟まったブツの感覚と、精液で膨れた腹の揺れが、どうあっても現実だ。すごいなあ、人間の腹ってこんなに膨らむんだなあ……なんて再び現実逃避しようとしていると、ヨツミワドウがまた腹をつついてきた。
「お゙え゙ッ、やめ」
ヨツミワドウの前肢を蹴飛ばそうとして視線を下にやる。と、婚礼装束を剥かれて晒された自分の胸元が見えた。せっかくの装束、下だけでなく上まで駄目にされてしまった、と落胆したのも束の間、露出した胸の頂から、何かが滲み出していることに気づく。なんだこれ、と指先でなぞると、それは白い液体だった。指先で触れた時に少し圧がかかったのか、乳首からぴゅ、と少し噴き出す。
「は?」
何かの間違いではないかと両手で胸を揉むが、その度に乳首からぴゅっぴゅと白いものが飛び出す。圧しても圧しても次々に出てきて、止まりそうもない。
「おわあぁなんで……⁉︎ なんで僕おっぱい出るのぉ⁉︎」
もしや、ヨツミワドウに種付けされたからか。いや、そうだとしても普通は卵や子供を産んだ後の話だろうし、そもそも僕は卵も子供も産めやしないわけで。想定外なことが起こり過ぎた後、これでもかと更に生じた怪奇現象に大混乱していたが、それも長くは続かず。
「お゙ッんごおォッッ⁉︎⁉︎」
ヨツミワドウの奴が、ゴツンゴツンと腰を打ち付け始めた。腰という概念が通りそうにない丸みだが、一応二足歩行しているしそういう動きも可能らしい。じゃなくて。
「お゙っ! お゙ォッ! やめ゙! やめへぇえ゙え゙ェッ!」
精液で膨らんだ腹が、突き上げを食う度にぽよぽよと揺れる。それが面白いのかヨツミワドウはやはり腹をツンツンとつつく。おそろいだねぇ、とでも言いたげ……なのか否かはわからないが、とりあえず楽しそうだ。だが、やがて腹を弄るのも飽きたのか、今度はぴゅうぴゅうと母乳を噴いている胸に興味を示し始めた。おい、待って、そこは───
「んぉほお゙ぉッ♡♡」
ヨツミワドウが前肢の先で乳首を圧すと、両の乳首からぷしゃぁ!と白い液体が弾けた。同時に、出したことがないようなおかしな声も出てしまう。呼吸が異様に荒い。ブツを突き刺されたままの尻も、何故だか熱い。
「あ? ぁ? なん、なにこぇぇ♡ んォオ゙ッ♡♡」
はへはへと乱れた息を整えようとするが、現実は非情だ。ヨツミワドウは、ブツを更に奥へ突き刺してくる。種付けされたせいなのか、単純に拡がったせいなのか、一度意識を飛ばす前に感じていたような、裂けそうな痛みはない。それどころか、乳首や胸を弄られて乳を漏らすたび、ブツを押し込まれた腹の奥が切なく疼くような気すらしてくる。
「あ゙ッ♡ あ゙へっ♡ はへぇッ♡♡ お゙っぱい、お゙ッぱいとまらない゙い゙ぃぃひいい゙ぃッ♡♡」
やめろ、今はそこを突くな。というか、さっさと抜いてくれ。と、言う間も与えられず、突き上げられるたびにぴゅうぴゅうと噴き上がる乳。
「あへ♡ あへぇ♡ なに、なにこれぇッ♡♡」
ついには半分白目を剥きながら腰を振り始めてしまうが、そんなことには自分では露も気づかず。だが、ヨツミワドウの気には障ったのか、「わからせ」だっつってんだろ! とばかりに強烈な突き上げをもらってしまう。それだけでは済まず、だらしなく乳を垂れ流す乳首の片方を、巨大な嘴でバチンと挟んだ。
「んぎぃい゙あ゙あ゙あ゙ああァ~~~ッ‼⁉︎」
乳首の先から強烈な電流を流し込まれたような衝撃に、喉を反らして絶叫する。続けてぐにぐにと嘴を擦って擂り潰すようにされ、声にならない声を上げて腰を突き上げまくる。なんでこれで腰が動くんだ? まるで気持ちいいみたいじゃないか!
「あ゙あ゙ぁぅあああ゙ちくびぃぃ♡ ちくびちぎれぢゃうゔゔぅぅぅ♡♡」
叫び声で気を良くしたのか、ヨツミワドウは上機嫌で挟んだ乳首を引っ張る。むぎゅぅぅぅ……と引き伸ばされ、限界まで伸びたところでパツン! と嘴から解放された。
「ひぎい゙ィッん゙⁉︎♡ んぐ、ぅ、ゔお゙、おほおお゙お゙オ゙オォ~~~ッッ‼♡♡♡」
瞬間、ぷっしゃああああ~~~♡♡ と噴水のように乳が噴き上がる。それに合わせるように腰を突き上げ、膨らんだ腹が揺れる。端から見たらもう、悲惨を通り越してちょっと面白いまであるかもしれないが、残念ながら僕にそこまでの認知できるほどの理性は残っていない。へなへなの魔羅から白濁を垂れ流していることにさえ気づかない程度には、トんでいた。
「はへええ゙ぇぇぇ~~……♡♡ ん、ぉっ?♡ おおぉおぉ……ッ♡♡♡」
その時、腹の奥でごぽんと液体が動くような感じが。また中出しされているらしく、一度目ほどの量はなさそうだが、更に腹が膨れてしまう。
「んお゙ぉぉやぶれるうゔぅぁああああ゙♡♡♡」
ぼこん、と一回りくらいは大きくなっただろうか。もはや臨月の妊婦のようだ。だけど、所詮は排泄孔に無理矢理詰め込まれただけ。ヨツミワドウがブツを抜き去ると、一拍置いてから、ぶりゅりゅ♡ ぼりゅっ♡ と粘度の高い精液が尻から噴き出した。
「あへぇ……♡」
同時に、乳首からぴゅるりと乳を噴いたのを見届けてから、視界は暗転した。
◆
愛弟子の帰りが、妙に遅い。
カムラの里の隠密、兼ハンター育成教官であるウツシがそう感じたのは、彼の愛弟子であるハンター、通称『猛き炎』が狩猟に出た日の夕方だった。
(あの子に限って、そんなことはないだろうけど……)
彼が受注していたのは、大社跡に住み着いて暴れていたタマミツネの討伐依頼だった。ウツシは翔蟲を駆り、大社跡の奥地、朽ちた塔があるエリアへと急ぐ。崖上から様子を窺うと、件のタマミツネは身体を丸めてすよすよと眠っていた。ハンターと交戦したような形跡は、ない。
愛弟子は一体、何処へ。
ウツシは再び翔蟲で崖から崖へと飛び移り、大社跡の最も高い位置へ登った。そこから見えたのは、のしのしと崖の合間の斜面を下っていくヨツミワドウの姿だ。そのヨツミワドウが小脇に抱えている、ボロ布のような何か。ぶらりぶらりと揺れる、人間の脚。瞬間、ウツシは鉄蟲糸を最大限に伸ばし、ヨツミワドウを追った。
ヨツミワドウが人を好んで食らうとは聞かない。となると、何か他の目的があって……いや、今はいい。愛弟子のことは気になるが、まずはあの人を救出しなければ。斜面を下り、大社跡の参道の入口になる石鳥居、その上に降り立ったウツシは、ヨツミワドウの歩みを遮るように着地した。双剣を抜き、改めてヨツミワドウと小脇に抱えられた人間らしきものを見たが、
「えっ……アッまなでしっ、マナデシ⁉︎ 愛弟子いィィ⁉︎ なにをやってるんだい⁉︎」
まさかこの子が、今更ヨツミワドウに遅れを取るだなんて……とショックを隠し切れないウツシだったが、ヨツミワドウが愛弟子をさも大事そうに草地に横たえたのを見て、違和感を覚える。愛弟子の姿をよくよく見てみれば、なんだか半分白目を剥いてえへえへ言っているように見えるし、装備はビリビリのボロボロで、心なしか乳首から何かしらの液体が噴出しているようにも見えるが、なんだか腹が大きくなっているような……? そう言われてみれば、出発前に「あの子のものになります!」とか何とか言っていたような。
「ま、まさか『あの子』って、ヨツミワドウのことだったのかい……⁉︎ 愛弟子……そうか、そういうことだったのかぁ! 水くさいなぁ、もう!」
その夜、愛弟子───ッ‼ 結婚おめでとう───ッッ‼‼という絶叫が、大社跡の石鳥居の前で響き渡ったという。