英雄たちの朝餉
英雄たちの朝餉
触手です。カゲさんとは何もしていません。
濁点喘ぎ、♡喘ぎ注意。下品です。
ある晴れた日。
カムラの里の『猛き炎』、ハンターの青年セジは、狩猟で大きな戦果を上げ意気揚々と帰還した。大型モンスターの狩猟だけでなく採取による収穫も上々で、大量のカムラポイントを稼ぐことができたため、交易窓口へと足を運ぶ。
「やあ、貴殿。今日は良い品が入っているよ」
オトモ広場脇の交易窓口では、ロンディーネがセジを迎えた。セジは水車小屋のアイテムボックスの中身を思い浮かべ、とりあえず毒けむり玉のポイント交換を申し出る。
「あとは……新しい掛軸ないんすか?」
「掛軸の追加はないな。しかし、交易に大いに貢献してくれている貴殿にだけ、特別に見てもらいたい珍しい品がある」
特別に、と言われて悪い気はしない。セジは手招きをするロンディーネに続いて交易船の戸をくぐった。薄暗い船室の中、ロンディーネが差し出したのは黒っぽい何かだ。大きさは、女性の手のひらの真ん中にちょこんと乗るくらい。形は、ハート型に近い。船室の橙色のランプの明かりで、表面には艶があると知れる。セジはそれに顔を近づけ、首を傾げて離れる。
「なんすかこれ?」
「実は、私にもわからないのだ」
「なるほどなー。んじゃ、この話はなかったことに」
セジはサッと踵を返すと、船室の戸に向かう。その首根っこを、まあまあまあ、とロンディーネが掴んで引き止めた。
「ぐえ……! いや、この謎ポイント貯めるの結構大変なんすよ! 何だかわからんモンと交換なんかするわけないでしょ!」
「何もわからない訳ではない。珍しい植物の種らしいのだ」
「種ぇ?」
言われて、セジは改めてロンディーネの手の上のブツを見る。やはりハート型だ。つるっとしていて、少し可愛い。だが怪しい。
「……ちなみに、何ポインツです?」
そっと耳打ちするロンディーネ。
「…………たっっっっか‼ 無理無理無理‼」
「まあまあ、少し聞いてくれたまえ」
ロンディーネ曰く、これは王国で発見されたもので、新種の花の種である可能性があるらしかった。全く未知の種となれば、栽培に成功すれば高値がつくかもしれない。だが不確定要素があるのも事実で、大規模に栽培を始める前にどんな花なのか確認しておきたい、と。とは言え、ロンディーネは交易窓口を離れることはできない。オトモ広場での栽培をイオリに頼むことも考えたものの、何ができるかわからないようなものを年端もいかぬ少年に任せるわけにはいかない。そこで、大抵のことには単独で対処できる里随一のツワモノ───つまりはセジに、白羽の矢が立ったということだ。
「カムラの里の温暖な気候で、育ててみてはくれないか」
「えー……高値がつくっていっても王国の利益なわけでしょ? なんだかなぁ」
「それもあるが、上手く栽培できた暁にはカゲロウ殿の雑貨屋で扱ってもらうことも考えているのだ」
カゲロウの雑貨屋。その言葉を聞いたセジの耳が、ぴくりと動いた。
「これは、カゲロウ殿の商売の一助となる……そうは思わないかね?」
「乗りました」
里随一のツワモノ、『猛き炎』の青年は、大変チョロかったのである。
そんなわけでセジは、大枚のカムラポイントを叩いて謎の種を手に入れ、さっそく雑貨屋へ向かった。ちょうど客足が途切れて暇をしていたカゲロウに、事の次第を説明する。勿論カゲロウは、ああ、セジ殿はろんでいぬ殿に上手く乗せられたなぁ、とは思ったわけだが、儲け話に興味があるのも事実。セジの提案には、乗っかることにしたのである。
「俺、カゲロウさんの儲けになるように頑張って育てますね!」
「それがしも、出来ることはお手伝いいたしましょう」
「ありがとうございます! ところで花ってどうやって育てりゃいいんですかね?」
カゲロウが頭を抱えたことは、言うまでもない。
水車小屋には植木鉢なんて気の利いたものはないため、使っていない水甕に土を入れ、野菜屋のワカナから譲り受けた肥料を混ぜた。人差し指くらいの深さの穴を作り、そこにハート型の種を埋める。
「へへ、俺らの愛の結晶! なんつって~」
「セジ殿……くっふふふふ……」
「満更でもなさそうに笑わないでくださいよ」
翌日からセジは、蒔いた種に欠かさず水を与え、晴れた日には水甕ごと表に出して日光を浴びさせた。狩り場に出ていて不在になる日の世話はルームサービスに任せつつ、花が咲く日を今か今かと心待ちにした。
種の方はといえば、恐るべき速さで成長した。水甕に植えた翌日には芽が出て、その翌日には新緑色の双葉をつけた。一週間も経つ頃には青々とした蔦を伸ばし、水車小屋の入り口を半分ほど占拠してしまった。うねうねとのたうつように伸びた蔦は太く、ところどころにある葉は大きな三つ又だ。よくある形の植物ではあるが、その成長速度からやはり普通ではない、特別な何かであることをセジに予感させていた。
「随分立派で太い蔦と大きな葉っぱですニャア」
「こりゃ、支えになる棒と板が要るなぁ」
ある日の夕方。
狩り場から戻ったセジは、ルームサービスから花の世話を引き継いだ。次に採取に出た時は、竹材を少しばかり持ち帰るか、と水甕を水車小屋に仕舞いながら思う。まあ、それも明日以降のことだ。ルームサービスが作ってくれた煮物と魚の干物、それに天を衝くような山盛りの白米とどんぶりになみなみ注いだ具沢山の味噌汁で夕飯を済ませたセジは、さっさと風呂を済ませて床に就いたのだった。
その、夜。丸出しにした腹をボリボリと掻きながら眠っていたセジは、頬に何か水滴が落ちるような感触で目を覚ました。雨漏りだろうかとも思ったが、雨の音は聞こえない。それに、頬に触れると妙ににゅるにゅるとした手触り。セジは鬱陶しそうにそれを手で拭い、んん? と目を開けた。寝ぼけ眼に入ってきたのは、うねうねと動く緑色の、何か。
「…………は⁉︎ 蛇⁉︎」
慌てて飛び起き蛇? から離れようとしたが、畳についた手がツルリンと滑り体勢を崩してしまう。
「おわっ!」
倒れないように咄嗟に掴んだのは、先ほど顔の前にあったそれとは別の何か。だが、それもヌルヌルしている。よく見ると、蛇ではないようだ。緑色であることを除けば、ツルンとしていて鰻に近い。だが、目や口に当たるようなものは何処にも見当たらなかった。
「な、なんだよコレ……?」
観察していると、手の中のそれは生きているかのようにびちびちうねうねと暴れ出した。セジは慌ててそれを畳に投げ捨てる。畳の上でうねうねと動くそれは、水車小屋のそこかしこで這い回っている。触手としか言いようがないそれを改めてよく見ると、ところどころに三つ又の葉っぱのようなものが生えていた。もしや、とうねる触手を掻い潜り、引戸近くに置いた水甕の側へ行くと、やはり触手はそこから生えていた。もしかしなくても、これはあの種から育った植物だ。
「ちょっとロンディーネさん、こんなの聞いてねぇけど……⁉︎」
言いたいことは山ほどあるが、今ここにいない者を責めても仕方がない。セジはとりあえず手近にあった触手を掴み、引き千切って捨てようと試みた。が、千切れた部分からだぱぁ……と大量の粘液が溢れ固まる羽目になる。
「うげ……!」
これでは水車小屋が粘液まみれになってしまう。どうしたものかと思ったのも束の間、千切られて機嫌を損ねたのか、触手がそこかしこでうねうねと大暴れを始めた。どうやらセジのことを敵とみなしたらしく、数本の触手が物凄い勢いで腕や脚、更には胴にまで巻きついてくる。ろくに身動きが取れず、ほぼ無抵抗のまま囲炉裏の近くまで引き戻された。
「おいっ! クソ、離せって!」
暴れてみるが、多勢に無勢だ。おまけに触手の表面はヌルヌルとしていて、掴むことも難しい。そのうちに触手は、寝巻きにしていた浴衣の衿元や裾から中に侵入し、ぬめぬめと身体をなぞり始めた。
「だあああ気持ちわりぃ……!」
浴衣の中から触手を追い出そうとするが、それが鬱陶しかったのか巻きつく触手が更に増えた。太いもの、細いもの、イボみたいなのがついたものに、先端が花のように開いているもの。触手のびっくり市か。
「クッソやめろって、このやろ……むぶッ⁉︎」
開いた口に、そこそこの太さがある触手が突き刺さった。噛み千切るには弾力がありすぎる。舌で押し返そうともしたが、当然敵わない。
「ごお゛ッ⁉︎」
口内を好き勝手に蹂躙された上、喉奥まで入り込まれた。息ができず、だが掴んで引き抜くこともできず、目を白黒させるしかない。
「ぐぼッ、おごォっ……⁉︎」
喉に突き刺さった触手が、突然粘液を噴いた。飲み込む間もなく、直に流し込まれていく。ドロリと胃の腑の中に溜まる感じが不快だが、吐き戻すことも叶わない。やがて、粘液を出しきったのか触手が口から抜けていった。
「ごっ……! げほ、ごほごぼッおええぇぇッ‼」
えづいたところで何も出ない。何飲ませやがった、と一応訊いてみるが、触手と会話ができるわけもなく、性懲りもなくセジの身体を這い回り始める。ぬるつく触手に脇腹を掠められ、セジの口からんっ、と声が洩れた。触手がぴたりと動きを止める。
「……は? ちょっとくすぐったかっただけだし!」
あまり意味があるとは言えない抵抗をするセジをよそに、触手は再び動き始めた。セジはもぞもぞと自由にならない身を捩るが、胸元を探っていた触手が色づいた突起を掠めた瞬間、身体を強張らせる。
「ぁんっ♡」
なんとも言い難い声を洩らしてから、セジはハッとする。思えば、粘液を流し込まれた腹がなんだか熱い。しかもその熱は、じわじわと身体の中心から広がってきている。加えて触手は、乳首を弄くるのを止めようとしない。そのうち胸元を探る触手は二本に増え、それぞれに両の乳首を撫で始める。
「あっあッ、おいっそこ、ァッ♡ あんっそこ、やめろってえぇぇ……♡」
セジ胸を反らして悶える。そうすることで触手から逃げるどころか、より強く乳首を触手に押しつけていることには気づいていない。熱い熱いと感じていた腹の熱は下半身まで広がり、今や全身を火照らせて発熱したかのようになっていた。異常事態。セジは逃れようとしたが、がっちりと触手に拘束されていては身動きなど取れない。そのうち、乳首を弄くり倒していた触手は、セジに見せつけるかのように先端をくぱぁ、と開いた。まるで蛸の吸盤のような形になったそれを見て、セジは固まる。
「ぇ……? なにそれ、オイ、まさか……」
その「まさか」である。吸盤のように変形した二本の触手は、ぷくりと膨らんだセジの両の乳首に同時に吸い付くと、ぢゅうううぅ~~~ッ♡ と強烈に吸い上げ始めたのだ。
「んお゛お゛おぉぉおォッ♡ お゛っ♡ お゛ォッ♡ ほおォお゛ぉぉ~~~ッ♡♡」
セジはビクンビクンと断続的に背を仰け反らせ、腰を天に向けて突き上げる。ぶるぶると震える褌の頂点が、じわりと内側から濡れた。乳首を吸われただけで射精してしまったのだ。
「はぁ、はあァッ♡ あへっ♡ はへぇ♡ ウソぉ……ッ♡」
混乱している間も触手はぢゅうぢゅうと乳首を吸っており、セジの腰はへこへこと揺れている。いつの間にやら浴衣は帯で胴に引っ掛かっているだけになっていた。ガチガチに勃起した魔羅はこれでもかというほど褌を押し上げ、触手はそこもにゅるにゅると撫で回す。
「あっあっ♡ やめ♡ あ゛ァッやめろよぉ♡♡ でる♡ でるうゔゔぅ~~っ♡♡」
びゅっびゅっとまた褌の中で白濁が弾ける。布が含みきれなくなった精液が次々と染み出し、更には鼠径部を伝って流れていく。触手たちはそれに吸いつくように這い回り、下半身も触手まみれになっていく。
「ひいィッ♡ やめれ、ひゃめれぇぇ♡♡」
粘液で濡れた褌は肌に貼り付き、布の中で勃起した魔羅のかたちがくっきり浮かんでいた。触手はしつこくそれ撫で上げ、滲み出た白濁をちうちう吸う。更に別の触手は、尻の間をずりゅずりゅと行き来している。尻の間にあるのはどうやらイボがついたタイプの触手らしく、褌を掻き分けてそこを擦られると、弾力のあるイボイボが尻穴の縁を引っ掻き回す。
「お゛っァッ♡ ああぁ、あ゛ァッ♡♡ そこぉコリコリすんなってぇぇえ゛あ゛ぁ♡」
ぷくりと膨らんだ穴の縁を擦られ、その感触に悶える。何故か発情しきっている身体は、触手でほんの少しばかり撫でられただけで深く感じ入ってしまい、セジは尻穴をひくひくと震わせてしまう。だが触手は物欲しそうな尻穴を撫でる以上のことはしてこず、むしろ前で勃起した魔羅の方に群がってくる。そんな触手たちが褌を器用にずらすと、ばるん! と見事に勃起し白濁にまみれた魔羅が飛び出して揺れた。
「お゛っ♡」
それにすら感じてしまい、セジはカクンと腰を突き上げる。濁った先走りをぴゅっと飛ばし、はくはくと息をするように開閉する鈴口。そこへ、細めの触手が一本近づいてきた。滲んだ先走りを、チロチロと舐めるように動く。
「ん゛あ゛っあッちんぽ♡ ちんぽのさきっぽやめろぉ♡♡」
セジがへこへこと腰を動かすと、立ち上がった魔羅がぶるん、ぶるんと揺れる。触手たちがそれにうねうねと巻きついて揺れないように固定すると、先の細い触手が錫口をくすぐり、次の瞬間にはぶすりと突き刺さった。
「い゛ぎィッ⁉︎♡♡」
セジは脚を爪先まで突っ張り硬直したが、触手は構わず魔羅の奥へと侵入していく。
「い゛だっ、いてぇっ♡ ちんぽいでぇよぉおお゛ォッ♡♡」
セジは腰を振りながらも、痛い痛いと髪を振り乱す。すると触手はいったん動きを止め、セジの目の前に別の触手を突き出した。そのまま、ぽん、という間抜けな音と共に先端に真っ赤な花を咲かせる。花が咲いたと同時、キラキラと光る粉のようなものがぶわぁと舞い上がった。
「……あ? ぁ……? あへぇ……?♡♡」
眉根を寄せて責め苦に耐えていたセジの顔から、力が抜けていった。身体の力も徐々に抜けていき、手足を拘束する触手にだらりと体重を預ける。それを見計らったかのように、魔羅に侵入していた触手がぐにゅ! と奥へ進んだ。
「んぉおお゛ぉお゛ォッッ‼♡♡♡」
痺れるような強烈な快感がセジの背筋を駆け上がり、脳髄を直撃する。瞬時に絶頂まで昇り詰めるが、触手で塞がれている穴から熱を解放することはできず、手足を突っ張り背を反らして悶える。その反応が気に入ったのか、触手は魔羅の奥に入ったまま、セジの泣き所である前立腺をぐにぐにと圧し始めた。
「あああ゛ぁァ~~ッ♡ ぐりぐりッ♡ あ゛ぁぉ♡ おほぉお゛お゛ぉおぉ~~~♡♡♡」
びくん! びくん! と脚を震わせ、前立腺を捏ねられるたびに絶頂してしまう。粘液と花粉で感覚を狂わされた身体はただただ熱く、痛みも何も感じていなかった。立て続けに快楽を極め、触手でひと撫でされるだけで軽く達してしまうほどになった頃、ようやく魔羅から触手が抜けていく。
「はへ、はぇへえぇ……♡ らめ♡ らめらって、いま♡ いまぬいたらぁ、ああぁぁあぁ……ッ♡♡」
ぬぽん、と鈴口から触手が抜け出る。直後、大量の白濁が猛烈な勢いで迸った。
「おほお゛ぉぉっ♡♡ イぐっ♡ でるっ♡ でるうゔぅッ♡♡ あ゛あぁ♡ あ゛へぇああァ~~~ッ♡♡」
射精は長く続き、勢いよく飛んだ白濁はセジの腹だけでなく胸や顔をも汚していく。勢いを失ってもなおだらだらと流れ続け、終わらない絶頂地獄に突き落とされた身体はひく、ひく、と震えている。そこに、精液を舐め取るかのように触手たちが這い、魔羅をぢうぢうと吸われ……もはやされるがままのセジは、顔も身体もだらしなく弛み、半分白目を向いて笑っているようにも見えた。そうして力が抜けた足首に数本の触手が巻きつき、ぱかりと股を開かせる。
「あぇ……? ぁ……♡」
その間に伸びてくる、一際太い触手。形は他の触手と変わらないが、先端からはだらだらと粘液をこぼし、半ば辺りからは何か入っているように凸凹としていた。触手はセジの魔羅……より下の、奥まった場所を撫でるように動き、やがて侵入口である尻穴を探し当てる。先端を押しつけるようにすると、粘液でぬるついた触手は容易くそこを圧し開いた。すっかり縦に割れた穴はまるく口を開け、侵入者を受け入れる。
「あへあ゛ぁぁァ♡ あ゛あぁ~~~ッ♡♡」
ぷちゅりと尻穴が触手を飲み込むと、押し出されるように魔羅から白濁が流れる。細い触手たちがそれを吸い上げる一方、胎内に侵入した触手は一度突き当たりまで入り込むと、ずっぽずっぽと加減なしの抜き差しを始めた。
「んお゛っ♡ お゛っ♡ オッ♡ おお゛ぉっ♡♡ お゛おぅッ♡♡」
加減なし、といっても触手自体が纏い垂れ流す粘液のせいか、注挿はスムーズだ。もっとも、粘液と花粉で心身共に快楽の虜にされているセジが痛みを感じることなどないのだが。触手はぶぢゅっぶぢゅっぶりゅっと下品な音とともに激しく律動し、溢れた粘液が弾け飛ぶ。それだけでなく、他の触手は乳首に魔羅にぢゅぱぢゅぱと吸いつき、中から外からセジの身体を蹂躙する。
「あへっ♡ あ゛へぇッ♡♡ むり♡ むり♡ じぬぅゔうぅ♡♡ ちくびもちんぽもやだあぁぁァ♡♡♡」
ごちゅっ! ごちゅっ! と触手が胎内を突き上げる。それは明確に胎内の弁を抉じ開けようとする動きで、元々弛みかけていたそこはいとも容易く陥落した。ぐぼん! とセジの腹の奥から、鈍い音が。
「おごッ⁉︎♡♡ ~~ッ、ぉ、お゛ォ……ッッ♡♡♡」
ぐるん、と白目を剥くセジ。お♡ お♡ と短く喘ぎ、ひくひくと全身を痙攣させる。触手は結腸を圧し広げるようにぐにゅぐにゅと動くが、泣き所を擂り潰されているセジは声にならない叫びを上げて魔羅から潮を噴き散らかしている。
「お゛あ゛ぁあぁ……♡ ちんぽ♡♡ ちんぽこわぇたああァ……♡♡ あへぇああ゛あ゛ぁぁぁ~~~……♡♡♡」
そのうち、触手がボコボコと波打ち始め、セジの胎内に何かを送り込み出した。ぽこ、ぽこ、と丸く硬い何かがセジの腹の中を埋めていく。
「んお゛ぉあぁぁ……ッ♡ なんかはいってるぅうゔゔ~~♡♡」
ぷくりと膨らんだ腹を埋めるものは、紛うかたなき触手の卵である。だが、粘液の催淫作用と花粉の麻酔作用で馬鹿になったセジが、そんなことを理解できるはずもない。胎内で孵化するように止めの中出しをされ、化け物の苗床になろうとしているというのに───
「セジ殿‼」
その時、水車小屋の引戸が開いた。切羽詰まったような声と共に入ってきたのは、雑貨屋の店主カゲロウである。カゲロウはまず触手まみれの水車小屋の惨状に絶句し、続けて触手まみれのセジを見て絶句する。
「遅かったか……!」
とりあえず引戸を閉め、触手を水車小屋に閉じ込めておく。対して、ちょうど一仕事終えたばかりだった触手はカゲロウのことを新たな苗床と認識したのか、セジを拘束した触手たちはそのまま、カゲロウに向かって伸びてくる。
「むっ……! させませんぞ、お化け植物!」
しかしカゲロウは、触手が手足に絡みつくより早く、懐からアンプルのようなものを取り出した。それを触手ではなく、触手の種が植えられた水甕に突き刺し、中身を注入する。触手は一斉にピタリと動きを止め、その直後にはまるで苦しむかのようにジタバタとのたうち回り始めた。ややもせず、先端からザア……、と粉のようになって消滅する。
静けさを取り戻した水車小屋には、カゲロウと、卵を産み付けられて死んだカエルのようにひっくり返っているセジだけが残された。カゲロウは一先ず安堵し、だが慌ててセジに駆け寄る。
「セジ殿、セジ殿っ」
カゲロウが肩を揺すっても、セジはあへ♡ あへ♡ と言うだけでろくに反応しない。よほど深い麻痺催淫状態に堕ちているらしい。そして、ふとカゲロウがセジの腹に目をやると、ふっくらと盛り上がっている。まるで身籠ったかのように。やられた、と焦りを孕んだカゲロウの声。
あの植物の正体についてロンディーネから聞いたのは、今日の店じまい後のことだった。王国の研究で判明したことだが、あの種は、物凄い勢いで成長しては周囲の生き物を苗床にしつつ繁殖、土地の養分を吸い尽くして滅ぼしてしまう恐ろしい怪異植物のものだったのだ。このままでは、人は苗床にされ土地は枯れ果て、カムラの里が滅んでしまう。この情報を得ると同時にロンディーネは強力な除草剤を王国から取り寄せており、それを受け取ったカゲロウはセジのところに危険を知らせに来たが、一歩遅かった。セジの膨らんだ腹、卵を産み付けられているに違いない。
「セジ殿、セジ殿、しっかりしてくだされ!」
「はへぇ……♡ あぇ、ぇ、かげろーさんんん……?♡♡」
「セジ殿……っ、仕方ない。失礼しますよ」
カゲロウはセジの股の間に屈むと、一言断ってからセジの尻穴に指を二本突き刺した。
「んお゛ぉ♡」
ぬかるみきったそこはきゅうと締まってカゲロウの指を迎え入れるが、肝心のものにまではとても届かない。できる範囲で掻き回してみるが、とても。
「んえ゛えぇかきまぜないでええ゛ぇ~~♡♡」
「くっ、これは……!」
カゲロウは一度指を抜き、セジのぐにゃぐにゃの身体を抱き起こして肩に掴まらせると、股を開いてしゃがむような体勢を取らせた。
「お腹の中の卵を出してしまわなければ……セジ殿、息んでください」
「ふへえぇ……?♡」
「お腹に力を入れるのです。ほら、ひっ、ひっ、ふー」
「んぇ……、んひぃ♡ ひぃぃゔん゛ん♡ んふぅゔゔうぅッん♡♡」
なんだかイメージしていたものとは少し異なりつつも、セジは息み始める。カゲロウの掛け声に合わせて何度か息むと、卵が少しずつ降りてきたらしく、ぬぱぁ、と内側から尻穴が開くようになってきた。
「さあ、もう少しですぞ」
「んん゛、ん゛ぐぅッ♡」
セジが強めに息むと、ぬぽんっ、と卵がひとつ飛び出した。少し大きいが、見た目は鳥の卵とそう変わらない。
「まだ残っておりますな」
さあ、頑張って、とカゲロウが声をかけ、セジの背中を擦る。更にひとつ、卵が飛び出す。
「お゛ん゛っ♡」
ふにゃふにゃの魔羅から、ぴゅ、と濁った先走りが飛んだ。息むたびに充血した内壁が捲れ上がり、縦割れ穴をまるく広げて卵が顔を出す。カゲロウはセジを労るように背中を撫で続け、時間をかけてようやく四つの卵を産み落とさせた。汗だくになったセジの身体を敷布に横たえ、腹を撫でて何も残っていないことを確かめる。
「ふぅ、全て出しきりましたな……よかった」
これで、想い人が触手に腹を突き破られる心配はなくなった。あとは、この憎々しい卵を燃やすなり、潰すなりして処分しなければならない。こんな怪異が四つも孵ったら、カムラの里は終わりだ。では、とカゲロウが卵に手を伸ばそうとした、その時。
「かげ、ろう、さん……」
「え」
意識を失っているとばかり思っていたセジが起き上がり、カゲロウの腕をがっしりと掴んだ。目が据わっている。
「せ、セジ殿……いかがされましたかな?」
もしや、既に触手に意識を乗っ取られてしまっているのだろうか。だから、卵を守ろうと───
「ちん、ぽ……ちんぽ、くらひゃい……♡♡」
違った。
「ちょっ、セジ殿、セジ殿お待ちを。それがしはまだ成すべきことが残って……あ~~~ッ」
結局、この後朝までセジが満足することはなく、空が白んでくる頃には二人とも触手の卵のことなど完全に完全に忘れ去っていたのである。
◆
「ん、ふあぁ……おはようございます、カゲロウさん」
「おはようございます、セジ殿」
翌朝。カゲロウはきちんと浴衣と面布を着込み、セジは少し寝乱れたいつもの格好で目を覚ました。互いにおはようございます、とは言ったが、既に陽は高い。
「あー、よく寝た。なんかすげぇスッキリしてるな」
「奇遇ですな。それがしもなのです」
「昨日って……何があったんでしたっけ」
「はて、なんだったか……いつも通りだったのでは?」
二人が簾の中で話していると、もう出勤していたらしいルームサービスが声をかけてきた。
「旦那様、起きられましたかニャ?」
朝食を作っているらしく、良い匂いが漂ってくる。セジは簾を上げ、おはようさん、とルームサービスに挨拶をする。
「これはこれは、カゲロウ殿もご一緒でしたニャ! 大変失礼いたしましたニャ」
「いえ、御構い無く」
「カゲロウさん、せっかくだから朝飯食って行ってくださいよ」
セジは囲炉裏の前に座布団を並べ、カゲロウに座るように勧めた。そこに、手際よく二人分用意された白米と味噌汁、漬け物が運ばれてくる。
「本日のメインはこちらですニャ」
続けて、大皿に盛り付けられた目玉焼きと、こんがり焼き目がついた腸詰め。
「新鮮そうな大きな卵が四つあったので、シンプルに目玉焼きにしてみましたニャ」
「はは、こいつは旨そうだな!」
いただきまーす! と元気よく言いながら、セジはさっそく目玉焼きに箸を伸ばす。その隣でカゲロウが、いただきます、と行儀よくてを合わせてから箸を取った。
「おっ、やっぱ旨い!」
「大変濃厚で美味な卵ですな。親がしっかりと栄養を摂ってから産んだものなのでしょう」
「お口に合ったようで何よりですニャ~。ところで、この卵は何処から仕入れたのですかニャ?」
「あー、確か……ん? 卵なんてもらったっけな?」
カゲロウさんがくれたんでしたっけ? と首を傾げるセジ。問われたカゲロウもまた首を傾げている。同時にルームサービスも首を傾げ、しまいには三人一緒に吹き出した。ま、どうでもいっかそんなこと、というセジの一声で、いつもと変わらぬ団欒が再開する。
こうして、人知れずカムラの里は驚異から守られたのだった。