日時: 2026年10月28日 (水) 16:30-17:15, 17:30-18:15
場所: 京都教育大学 1A402教室 (Zoom同時配信)
講演者: 海保 敬柊 氏 (東北大学)
題目: Lavrentiev現象下におけるDouble phase汎関数の$L^2$勾配流の正則性解析
本講演では, 退化する係数関数を伴う$(p,q)$-ディリクレエネルギー(Double phase汎関数)の$L^2$勾配流を対象とし, 発展方程式論の手法を用いて, その正則性を考察する. Double phase汎関数では, 指数$p,q$および係数関数を適切に選ぶことにより, 広い関数クラスにおける最小値が, 滑らかな関数クラスにおける最小値より真に小さくなる現象(Lavrentiev現象)が生じることが知られている. この現象は, 広い関数クラスにおける最小化関数が, 滑らかな関数によってエネルギー位相の意味で近似できないことを意味する. そこで本講演では, このような特異な最小化関数に向かって時間発展する$L^2$勾配流の近似可能性に着目し, その解析から得られた二つの結果を紹介する. 一つ目は, 有限時間での近似可能性の喪失である. すなわち, 滑らかな初期値から出発する勾配流であっても, 十分な時間が経過すると, 滑らかな関数によって近似可能でなくなるという結果である. 二つ目は, 近似可能性の短時間保持である. これは, 十分滑らかな初期値から出発する勾配流は, 十分短い時間においては近似可能性を保持するという結果である. 従来, Lavrentiev現象は主として定常的な観点から研究されてきた. 一方で, これら二つの結果は, その動的側面に注目したものである. 講演の前半では, Lavrentiev現象と解の正則性との関係に着眼し, Double phase汎関数の定常・非定常問題に対する正則性理論を概説する. 後半では, 有限時間での近似可能性の喪失および近似可能性の短時間保持について証明の概略とともに解説する. 近似可能性が失われる時刻の定量的な評価には発展変分不等式が, 近似可能性を保つ解の構成には完全非線形方程式に対する解析半群理論の適用が, それぞれ鍵となる.