日時: 2025年4月25日 (金) 17:00-18:30
場所: 京都教育大学 1A402教室 (zoom同時配信)
講演者: 赤川 佳穂 氏(京都教育大学)
題目: ひずみ硬化弾塑性変形モデルの導入とその可解性について
ひずみ硬化とは、加工硬化とも呼ばれ、材料が塑性変形を繰り返すことで、さらなる変形が起こりにくくなる現象のことである。本講演で扱うモデルは、1976年にDuvautとLionsによって提案されたものを原型としており、その本質的なアイデアは、応力テンソルに制約を課すことにある。ここでは、応力テンソルの偏差成分に制約を加えるMisesの降伏条件を採用する。ひずみ硬化現象は、制約条件そのものに未知関数を依存させる仮似変分不等式により記述される。未知関数への依存の一例として、降伏面を平行移動させる移動硬化則があり、今回は特に、線形な移動硬化則を考える。
本講演は前半と後半の二部構成である。まず前半では、モデルの導入について概説する。物理的背景および数学的な取り扱いに関連する専門用語を適時説明しながら、後半で展開する数学的議論への準備を行う。後半では、モデルの可解性について議論する。我々のモデルは、応力テンソルに対する仮似変分不等式と、変位ベクトルに対する運動の方程式の連立で記述される。特に前者の仮似変分不等式は、時間依存の劣微分作用素によって支配される発展包含の抽象論を用いることができる。結論として、解作用素に対してBanachの不動点定理を適用することで可解性が得られる。時間が許す範囲で、未解決な発展課題、数値計算への応用など、今後の展望について述べる予定である。本講演は、松井一徳氏(東京海洋大学)、加納理成氏(高知大学)、深尾武史氏(龍谷大学)との共同研究に基づく。