第35回非線形発展方程式セミナー@KUE

日時: 2023年1月20日(金)16:30-18:00

場所: 京都教育大学1A402教室(zoom同時配信)

講演者: 赤木 剛朗 氏(東北大学大学院 理学研究科)

題目: Quantitative analysis of asymptotic profiles for fast diffusion on domains

 プラズマ拡散に関する Okuda-Dawson モデルなどに登場する Fast diffusion 方程式の特徴の一つはその拡散係数の特異性に由来する解の有限時間消滅にある. 特に特異拡散が領域の境界上で強制的に生じるディリクレ問題では, すべての解が同一のレートで有限時間消滅するという, 古典的な拡散方程式とは著しく異なる様相を呈する (ただし消滅時刻は初期値によって異なる). このような特異拡散方程式の解の消滅現象は 1980 年頃に Berryman と Holland によってプラズマの特異拡散の文脈で研究され, その後も多くの研究がなされてきたが, 同じく非線形拡散に分類される多孔質媒体方程式と比べると, まだ分かっていないことが多い. この発表では特に, 有限時間消滅解の漸近形に関する定量的研究について解説したい. 解の漸近形に関する定性的な研究としては, Berryman-Holland にはじまる解の消滅レートの特定と漸近形への収束性に関するものが挙げられる. 一方, 漸近形への収束レートに関する定量的な研究では決定的なものがなかったが, 2021 年 (プレプリントは 2019 年ごろ) に発表された Bonforte と Figalli の論文では, 非退化な漸近形への収束レートを線形化解析から予想される最適なレートまで改良する試みがなされており, その過程で彼ら自身が開発した非線型エントロピー法をはじめ多くの展開がもたらされる結果となった. 本講演では前半に Fast diffusion 方程式の有限時間消滅解とその漸近形に関する古典的な結果をサーベイし, 後半は発表者が Bonforte-Figalli の結果に触発されてはじめた定量的勾配流不等式に基づくエネルギー法によるアプローチについて解説する.