30回非線形発展方程式セミナー@KUE

日時: 2022年7月19日(火)16:30-18:00

場所: 京都教育大学1A402教室(zoom同時配信)

講演者: 久藤 衡介 氏(早稲田大学 理工学術院)

題目: 拡散ロジスティック方程式の定常解の餌関数に対する比を最大化する問題について

 拡散項を伴う定常ロジスティック方程式 d△u+u(m(x)-u)=0 のノイマン境界値問題を考察する. この問題については, 餌の空間分布に対応する関数 m(x) と拡散係数 d に応じて, 生物種の空間分布を表す解 u(x) が一意的に存在することは知られている. この境界値問題に関連して,Wei-Ming Ni は 「餌関数 m(x) と拡散係数 d を様々に動かしたときの, u(x) の m(x) に対する L1ノルムの比の最大値を求めよ」 という問いを提起している.生物モデルの観点では, u(x) と m(x) のL1ノルムはそれぞれ生物種と餌の総量に対応するので, 端的には「生物は餌の何倍まで生き残れるか?」という問いである. この問いに対して,Bai, He, Li (2015)は,空間1次元においては 「u(x) の m(x) に対する L1ノルムの比の上限は3」であることを示している. 一方で,空間多次元においては「u(x) の m(x) に対する L1ノルムの比の上限は∞」 であることが,井上順平氏(早大D3)と講演者によって示された(2021). 本講演においては,この問いを考察するための基本的な説明から始めて, 上述の結果の証明のアイデアや井上氏の関連する最近の結果を紹介する.