第24回非線形発展方程式セミナー@KUE

日時: 2021年11月16日(火)16:30-18:00

場所: 京都教育大学1A413教室(zoom同時配信)

講演者: 内田 俊 氏(大分大学理工学部)

題目: ハイパーグラフラプラシアンを主要項とする発展方程式について

 本講演では、有限集合とそれらの接続を表す部分集合族、 及び接続の重みの3つ組である(重み付き)ハイパーグラフの上で定義される、 「ハイパーグラフ(p-)ラプラシアン」と呼ばれる多価非線型作用素、 およびこれを主要項とする常微分方程式について考察する。 通常のグラフ(部分集合族が2元集合のみからなる場合)については この「ラプラシアン」は頂点上のランダムウォークを特徴づける行列を表現し、 Webページの重要度評価アルゴリズム(PageRank)や ネットワークのボトルネック検出(Cheegerの不等式)といった応用例がある。 「ラプラシアン」は様々な方針でハイパーグラフの場合に一般化されているが、 本研究ではYoshida (2019)による定義を採用した。 この定義では「ハイパーグラフラプラシアン」はある凸関数の劣微分として 与えられる為、抽象理論により初期値問題の可解性はすぐに示される。

 本講演ではまず「ハイパーグラフラプラシアン」の定義を紹介し、 微分方程式解析の道具立てとしてこの非線型多価作用素の基本的な性質、 より具体的にはPoincare-Wirtinger型の不等式が成立することを示す。 また「ハイパーグラフラプラシアン」は 強圧性の破綻、質量保存則といった、偏微分方程式における zero-Neumannラプラシアンと類似した性質を持つことについても解説し、 これらを踏まえて常微分方程式の解析(解の時間減衰評価と時間周期解の構成) を行う。

 なお本講演は池田正弘氏(理化学研究所/慶應義塾大学理工学研究科) との共同研究(投稿中、arXiv: https://arxiv.org/abs/2107.14693)に基づく。