モスソガイ

Volutharpa perryi perryi (Jay, 1856)

レア度:いつでも見られる

形態:貝殻は5–6㎝程度になり、非常に薄い。最後の1周分がたいへん大きく、タマゴのような形をしている。生時には褐色の殻皮を被っており表面は毳立っているが、これが剥げると赤褐色のまだら模様をもった滑らかな地肌が露出する。軟体部は大きく、貝殻に完全に収納されない。また蓋は退化的であり、足の後端より少し内側に位置している。この仲間の種同定は難しいが、Yamazaki et al. (2018) がたいへん参考になる。これまでのところ、七重浜では本種のみが見つかっている。

生息域:北海道から本州、東シナ海に分布し、水深3–90mの砂泥底に棲む。

生態:陸奥湾における産卵期は2月~3月であり、子はおよそ10~20日後にベリジャー幼生となってふ化する (Hirai 1963; 兜森 1988)。卵塊の形はさながらマイタケのようであり、これは何個体もの親貝が次々に産み重ねるため、多数の卵嚢が連結してそうなっている (平野 1994)。卵はそれぞれのカプセルに多数含まれている。スカベンジャー気質の肉食者であり、弱っているホタテガイを食べることもある (兜森 1988)。某埠頭では、イソメで釣れるらしい。

その他:種小名の perryi とはかの有名なペリー提督のことであり、いわゆる黒船来航の際に採集したことが由来。美味い。

2017年7月@函館港 山上知人が釣り上げた個体
2019年12月 山上再び知人が釣り上げた。切ったイソメに食らいつく
2020年4月 山上漂着したふ化後の卵塊。春先にたくさん打ちあがる
2021年3月 とみよし右はまだ毳立ちが見られる。取れると左のような柄と質感に。
2021年10月10日 りった

引用文献:

  1. Hirai, E. 1963. A brief note on the breeding of a gastropod, Volutharpa perryi perryi (Jay). Bulletin of the Marine Biological Station of Asamushi, Tohoku University, 3: 133–134.

  2. 兜森良則. 1988. モスソガイによるホタテガイ食害試験. 青森県水産増殖センター事業報告, 17: 61.

  3. 横山勝幸. 1990. ホタテガイ以外の貝たち. 青森県水産増殖センターだより, 54: 4–6.

  4. 平野忠. 1994. モスソガイの発生. 青森県水産増殖センターだより, 68: 1.

  5. Yamazaki, T., Sonoda, T., Nobetsu, T. & Goshima, S. 2018. Contribution to the knowledge of the taxonomy of the Japanese species of Volutharpa (Gastropoda: Buccinidae). Venus, 76: 1–18.