コロモガイ

Cancellaria spengleriana Deshayes, 1830

レア度:たまに見られる

形態:中型の巻貝で、6㎝程度になる。貝殻は分厚く、たいへん堅い。螺旋は高く、各層の間は段差のついた形をしている。表面は縦横に彫刻が交わり、とくに螺層の上部では角ばって棘のように張る。全体的にチョコマーブルパンのような色で、つやがない。蓋をもたない。

生息域:北海道南部から九州・中国大陸沿岸に分布し、水深5–20mの砂泥底に生息する。七重浜ではときおり死殻が打ち上がる。

生態:3月頃、砂の中で交尾・産卵をする (網尾 1963)。卵嚢は、糸状に5–8㎝ほど伸びた柄の先端で砂底数㎝の深さに固定されており、砂底表面にはカプセル部分だけが顔を出した状態に維持されている (網尾 1963)。初期の各カプセルには1500–3300個の卵が含まれているが、胚発生が進む過程で減少するため、大半は栄養卵として機能すると考えられている (網尾 1963)。近縁種のナガコロモガイ C. cooperi は 浮遊幼生期をもつが (Pawlik et al. 1988)、本種の発生様式はわかっていない。また本種は食性も一切明らかになっていないが、ナガコロモガイ C. cooperi は底生のゴマフシビレエイ (Torpedo californica) に取り付いて体液を吸うというユニークな摂餌戦略をもつことが知られている (O'sullivan et al. 1987)。

2018年10月 山上
2018年10月 山上触角は地味な色
2018年10月 山上
2021年3月 とみよし

引用文献:

  1. 網尾勝. 1963. 海産腹足類の比較発生学ならびに生態学的研究. 水産大学校研究報告, 12: 229358.

  2. O'sullivan, J. B., McConnaughey, R. R. & Huber, M. E. 1987. A blood-sucking snail: the Cooper's nutmeg, Cancellaria cooperi Gabb, parasitizes the California electric ray, Torpedo californica Ayres. The Biological Bulletin, 172: 362–366.

  3. Pawlik, J. R., O’sullivan, J. B. & Harasewych, M. G. 1988. The egg capsules, embryos, and larvae of Cancellaria cooperi (Gastropoda: Cancellariidae). Nautilus, 102: 47–53.