エゾバイ属一種

Buccinum sp.

レア度:生息しない

形態:エゾバイ属のうち、俗に「灯台ツブ」と呼ばれているグループの一種。細長い塔型で、殻表を大小さまざまな螺肋が周回するのが特徴。褐色の殻皮を被っている。これらを共通の特徴として、巻きの太さ(殻頂角)、縫合のくびれ方、螺肋(主肋)の数、縦肋の有無や強弱、貝殻の模様の有無などにより数種に分けられている (e.g. Golikov 1980)。ただし、実際には個体間変異や地理的変異があり、明確に識別できるものではない。このような分類学上の混乱を解決するためには、分子系統解析などの手法を組み込んだ詳細な検討が必要である。

生息域:日本海、北太平洋、オホーツク海に分布し、日本列島周辺では水深50m~数百mの砂泥底に生息する。

生態:卵生で、子は直達発生する。同じく直達発生するエゾボラ属と比較して、小卵多産である。

その他:「灯台ツブ」は水産物として広く流通しており、七重浜に打ちあがるものはゴミ由来のものと思われる。どの海域で獲れたものかも分からない上、破片ともなれば判断はなおさら難しい。縫合部分に縦肋がみられることから、イジケシライトマキ B. zelotes Dall, 1907、オオカラフトバイ B. verkruzeni Kobelt, 1882、ヒモマキバイ B. inclytum Pilsbry, 1907候補として挙げられる。

2021年10月3日 りった
2021年10月3日 りった

引用文献:

  1. Golikov, A. N. 1980. Mollusks Buccininae of the World Ocean. Fauna of the USSR, Mollusks, Vol. 5. No.2. Nauka, Leningrad. (in Russian)