マテガイ

Solen strictus Gould, 1861

レア度:いつでも見られる

形態:貝殻は前後に細長く、定規のように直線的。殻長15cmになる。表面は滑らか。成長線をみて、核がある側が前。すると、殻頂が貝殻のほぼ前端に位置していることがわかる。左右の貝殻を合わせると、前端と後端は筒状に開口するようになっていて、それぞれ足と水管を伸ばすスペースとなっている。やや光沢質の褐色の殻皮をもつ。水管は土筆の節状の模様があり、足に模様はない。

生息域:模式産地は函館湾。日本海(石狩湾以南の日本沿岸、韓国)、津軽海峡、太平洋西部(本州以南)、瀬戸内海、黄海、東シナ海に分布し、潮間帯から潮下帯の砂底に生息する。

生態:雌雄異体で、体外受精をおこなう。産卵のピークは5月から6月とされ (河原・加藤 1971, 津市)、韓国でも5–7月 (特に6月) に幼生が確認されている (吉田 1939; 1953)。本種の幼生は表層にいることが多い (吉田 1939; 1953)。着底後の稚貝もプランクトンネットで採集されるため、海中を遊泳していると考えられる (吉田 1939; 1953)。成貝も運動能力が高く、干潟で巣穴に食塩を入れると穴から飛び出てくることはよく知られているが (川村・高木 1927)、水中では跳躍して浮き上がったあと、水を噴射して後方に遊泳することもできる (河原 1970)。無数に生息していた場所から突如姿を消したりもするらしい (稲葉 1941)。また、かなり頻繁に水管を自切する (吉田 1953)。

その他:貝殻の形状と同じく、直線的に巣穴を掘って潜砂している (石川 2018)。一方、エゾマテは曲がった巣穴を掘る。

2021年9月19日 りった

引用文献:

  1. 川村多実二・高木俊蔵. 1927. マテガヒの反射運動に就いて. 動物学雑誌, 39: 498–499.

  2. 吉田裕. 1939. マテガイの浮游仔貝竝に稚貝に就て. ヴヰナス, 9: 145–149.

  3. 稲葉亨. 1941. マテガヒの大擧移動. ヴヰナス, 11: 36–37.

  4. 吉田裕. 1953. 浅海産有用二枚貝の稚仔の研究. 農林省水産講習所研究報告, 3: 1–106.

  5. 河原辰夫・加藤信治郎. 1971. 津市沿岸におけるマテガイの生殖周期. 水産増殖, 19: 31–42.

  6. 河原辰夫. 1970. マテガイの生活史を追って. 科学朝日, 30 (2): 7–9, 122–123.

  7. 石川裕. 2018. マテガイ類の軟体など. まいご, 25: 13–18.