ウミウ
Phalacrocorax capillatus (Temminck & Shlegel, 1849)
レア度：いつでも見られる
形態：全長約84cm、翼開長約133cm。細身で首が長く、足と尾は短い独特なスタイルをしている。遊泳時の姿はネッシーに似ている。体の大部分は緑色光沢のある黒色の羽毛に覆われている。頬・喉には羽毛がなく、その範囲は白色の皮膚が裸出する。ただし、嘴基部付近 (口角) は黄色く、後方に尖っている。繁殖期には白色の婚姻羽が生じるため、頭部は白髪状になり、腿部には白色のパッチができる。幼鳥や若鳥は全体的に褐色がかり、胸部は淡色である。雌雄同色だが、雄は雌よりも体が大きい。近縁種のカワウ P. carbo とは、(1) 緑色光沢が弱い、(2) 首が短い、(3) 頬にある白色の裸出部が目と同じ高さである、(4) 口角の黄色部は尖らないことで見分けられる。ちなみに、川にいるからカワウ、海にいるからウミウという理論は通用しない。
生息域：極東アジア固有種で、日本列島周辺および中国大陸沿岸に分布し、主に海岸に生息する。九州北部以北の日本海側、三陸以北の太平洋側では一年中みられる。七重浜では、遊泳中や、飛翔中、水面を走って飛び立つ様子も見られる。
生態：4月下旬から5月上旬にかけて、崖の岩棚等に巣を作り、小規模なコロニーを形成する (山本 1967; 中川 1985)。カワウのように樹上営巣はしない。抱卵は雌雄交代でおこなう (山本 1967)。1–3羽の幼鳥が、7月下旬から8月上旬に巣立つ (山本 1967; 中川 1985)。雛がふ化してから巣立つまでの約1.5–2ヶ月間、親は巣と採餌海域間を往復し、胃内の餌を吐き戻して雛に与える。餌は主に表層魚 (イカナゴ、カタクチイワシ) で、その利用可能性が低い年には底魚類 (ホッケ、カレイ、メバル)を利用するようになるが、その場合繫殖成功度は低下する (Kato et al. 2001; Watanuki et al. 2004)。なお、雄は雌よりも深く・長時間潜水することができ、底魚類の捕獲を可能にする (Watanuki et al. 1996; Ishikawa & Watanuki 2002)。
その他：日本の"鵜飼"で用いられる (中国ではカワウ)。岐阜県長良川、愛媛県肱川 (ひじかわ)、大分県三隈川の鵜飼を日本三大鵜飼という。水面に浮いている時は心なしか他の鳥類よりも沈んで見える。
水面を蹴立てて飛び立つ
引用文献：
山本弘. 1967. 岩手県におけるウミウの繁殖について. 山階鳥類研究所研究報告, 5: 48-60.
中川元. 1985. 知床半島西海岸におけるウミウの繁殖について. 知床博物館研究報告, 7: 7-12.
Kato, A., Watanuki, Y. & Naito, Y. 2001. Foraging and breeding performance of Japanese cormorants in relation to prey type. Ecological Research, 16: 745-758.
Ishikawa, K. & Watanuki Y. 2002. Sex and individual differences in foraging behavior of Japanese cormorants in years of different prey availability. Journal of Ethology, 20: 49–54.
Watanuki, Y., Kato, A. & Naito, Y. 1996. Diving performance of male and female Japanese Cormorants. Canadian journal of zoology, 74: 1098–1109.
Watanuki, Y., Ishikawa, K., Takahashi, A. & Kato, A. 2004. Foraging behavior of a generalist marine top predator, Japanese cormorants (Phalacrocorax filamentosus), in years of demersal versus epipelagic prey. Marine Biology, 145: 427-434.