ウミタナゴ

Ditrema temminckii temminckii Bleeker, 1853

レア度:いつでも見られる

形態:体長は20㎝程度になる。頭部の背縁はほぼ直線的で、眼から上顎にかけて2本の平行する黒褐色の線が走る。ウミタナゴの仲間は形態的に酷似しており識別は難しいが、北海道に生息するのは本種とオキタナゴ Neoditrema ransonnetii のみで、オキタナゴは体が細長いため容易に識別できるうえ、外洋性で稀な種なので、北海道沿岸のものは本種と考えて問題ない。従来は千葉県以南に生息するマタナゴ D. temminckii pacificum と混同されていたが、亜種関係に見直された(Katafuchi & Nakabo, 2007)。ウミタナゴには、眼の下の「前鰓蓋縁」に沿って黒点が2つあること、腹鰭の棘条の基部に黒点が1つあることで、マタナゴと見分けられる。

生息域:北海道以南の日本各地に分布。ガラモ場のような海藻が繁茂する場所に多く、葛登支では外洋につながるやや水深のある水路で見られる。葛登支で見られる魚類では大型。体の幅が狭く大型であり、早く泳ぐ魚はだいたい本種。3~5匹くらいの群れをよく見かける。臼尻では地引網をするとよくとれる。

生態:雌雄が交尾を行い、卵が雌の胎内で孵化し、仔魚の状態で放出する卵胎生の魚類。交尾期は秋~冬で、オスが縄張りを持ちメスを誘引する(Nakazono et al., 1981)。5月頃に5~7㎝程度の仔魚を、1度に20~30匹産む。仔魚は尾鰭から出てくる「逆子」の状態になる。

その他:煮つけ、フライ、塩焼きなどにするらしいが、味のほどはわからない。逆子を産むため、山陰地方では妊婦には食べさせないようにし、逆に東北地方では子供をたくさん産むために妊婦に積極的に食べさせるなど、地域によって異なる風習がある。

2021年8月22日 りった
2021年8月22日 りった
2021年8月22日 りったクロダイの稚魚と一緒

引用文献:

  1. Katafuchi, H., & Nakabo, T., 2007. Revision of the East Asian genus Ditrema (Embiotocidae), with description of a new subspecies. Ichthyological Research 54: 350-366.

  2. Nakazono, A., Tateda, Y., & Tsukahara, H., 1981. Mating habits of the Surfperch, Ditrema temmincki. Japanese Journal of Ichthyology Vol.28 No.2 pp.122-128.