2020年2月、世界は新型コロナウィルス感染症の恐怖の渦に包まれた…

いつ、どこで感染するかもはやわからない状況。

外出し人と会うことを自粛することを余儀なくされ、

近所の愉快な仲間たちとの　楽しい集いに行くことすらもはばかられ

そしてなにより、わたしたちの愛する流山で

みんなに憩いの場を与えてくれている　飲食店のかたがたが

大変な苦境におかれていること。

「今こそ、わたしたちの力で支えないと！」

これは、そんな思いで立ち上がった市民の物語である・・・

シビックテックの可能性

2020年3月3日深夜に開設された東京都の「新型コロナウイルス感染症対策サイト」が国内外から注目されている。

検査陽性者の状況や検査実施状況、陽性患者の属性、陽性患者数、都営地下鉄の利用者数の推移…。

様々な情報を図や表をふんだんに使って分かりやすく表示されている。

これを作る作業に携わったのは「Code for Japan」というシビックテックの団体。

東京都が作ったサイトの部品は「オープンソース」として公開され、

誰もが改版・改変して2次利用することが可能となっている。

この「オープンソース」を使って、千葉県版の「新型コロナウイルス感染症対策サイト」の

立ち上げに多大なる貢献をしたのが、

流山市でシビックテック活動を行っている　白澤美幸（ミユキーマウス）だ。

「わたしの力で、流山に少しでも貢献することができたら…」

白澤は、二人の子どもの安らかな寝顔を見ながら、ひとりパソコンに向かうのであった…

その画面の先には、多くの仲間たちが、全国各地で奮闘している様子が見て取れた。

地域の飲食店が、あぶない

「今日も、誰も来なかった・・・」

SNSを開くと、飲食店を営む仲間たちのあまりに悲痛な叫びがあふれてくる。

外出自粛の要請があるなかで、飲食店に集まる人が激減するなか、

「おうちでご飯を楽しむ」という需要の獲得に向けて、

いちはやく動き出し、「持ち帰り（テイクアウト）」メニューを開発する店が出てきた。

しかし、事態はそう簡単ではない。

そもそもお店に立ち寄らなくなってきている中で、

「テイクアウトをやっているという事実が知られていない・知る術がない」

という現実に直面しているのである。

流山をこよなく愛する岩佐（すよん）は、

地域で飲食店を営む友だち、同士たちが置かれている、あまりに無慈悲な環境に心を痛めていた…

数年前からSNS上で運営され、いまや6000人近くが登録している

「流山オススメスポット情報」グループというところがある。

そこでたびたび、市内の素敵なグルメスポットについて、

愛にあふれる投稿をしていたスヨンに、ミユキーマウスから声がかかった。

「わたしと一緒に、流山を救いませんか」

すよんに迷いはなかった。

人と、食をつなげる仕組み

ミユキーマウスが目を付けたのは「glideapp」というオープンソースだった。

海外で作られたこの部品を使い、東京都府中市で作られていた「テイクアウトマップ」に

ミユキーマウスは目を付けた。

「流山を救うには、これしかない」

glideappをもとに「流山テイクアウトマップ」をわずか1日足らずで立ち上げた。

そしてDIYの名手でもある、仲間の小林（こばのプーさん）にも声をかけ、

このテイクアウトマップがより　流山市の人びとにとって使いやすくなるよう

デザインや設計を見直していった。

日中日夜、更新されるテイクアウトマップ。

みな、子を持つ親として、日々の生活に追われながらも、

身近な場所で同様に苦しんでいる仲間を助けたい、そんな一心だった。

そんな彼女らの奮闘に心を打たれた土屋（ツッチーマウス）は、

持ち前のにぎやかし力を活かして、このテイクアウトマップの存在を

周囲に知らせていったのである。

熱意が、地域を動かす

公開されわずか数日で、あっという間に3,000を超えるアクセス・ダウンロードがされ

当初数件しか登録していなかった店舗数も、日々更新され数十件に及んでいる。

流山市長をはじめ、流山市役所内でも認知され、観光協会や商工会議所からも

「この苦境にあえぐ事業者の助けになれば」

という声が集まるまで、そう長くはかからなかった。

4月9日、流山市商工会議所で会合が開かれ、商工会議所の会頭、副会長、事務局長、そして観光協会や市役所の主要なメンバーが集まった。

ミユキーマウスにも声がかかり、会合に同席。

冒頭、会頭から

「こう言うのは、スピード重視でいかないといけないですから今日急遽集まってもらいました」

という言葉に、ミユキーマウスは、心が熱く震えるのを感じた…

終わりの見えない生活。疲弊してしまっている方々も少なくないであろう。

流山で住まうみなさまに、このプロジェクトを通じて

「流山でも、頑張っている人がいる」

ということが伝わり、いつか必ず訪れる　もとの流山において

また以前のように集い、楽しい食事とともに、みなで語り合える日がきますように。

「おうちごはんで、流山をささえよう」

市内のみなさまのご協力のもと、テイクアウトマップの充実と、生活の楽しみが少しでも増しますように。