バチカン美術館、その3.彫刻を堪能したのち、絵画へ突入。
ソビエスキ王の間。名前はポーランド画家「ヤン・マテイコ」の大作「ソビエスキ、ウィーンを解放する(458×894cm)」に因む。マテイコは、この作品をウィーンでの勝利200年を記念して、無報酬でレオ13世に寄贈した
無原罪の御宿りの間。聖母マリアが、神の恵みの特別なはからいによって、原罪の汚れと穢れを存在のはじめから一切受けていなかったとする、カトリック教会における教義。無原罪懐胎とも言う。1854年に正式に信仰箇条として宣言決定された。
教義制定から4年後の1858年、教皇ピオ9世は、当時最も有名なイタリア画家の一人、フランチェスコ・ポデスティに「無原罪のお宿り」を記念するフレスコ画制作を依頼
コンスタンティヌウスの間。この広間は、4室の中で一番最後に完成した事もあり、ラファエロの死後に主に弟子達が手掛けた部屋です。広間を飾る作品はコンスタンティヌウス帝の生涯がテーマになっており、壁の4面には「コンスタンティヌウス帝の洗礼」や「ミルウィウス橋の戦い」「十字架の出現」「コンスタンティヌスの寄進状」などの作品が並んでいる。この広間はレセプションや公的儀式を行うために造られている。写真の下部が「コンスタンティヌウス帝の洗礼」。ローマに現存するカトリック教会「サン・ジョバンニ・イン・ラテラノ大聖堂」で、「コンスタンティヌウス帝」がキリスト教に改宗するための洗礼を受ける姿が描かれている。本作はラファエロの弟子「ジュリオ・ロマーノ」が手がけた。
十字架の出現。マクセンティウスの反乱討伐で進軍する「コンスタンティヌス帝」の頭上に十字架が突如出現し、「この十字架を掲げれば勝利できる」という声を聞いたという場面が描かれている。写真では中下の白いきれのようなものに赤い十字が見える。
右から2つ目の絵はバチカン大聖堂の設立
ローマの寄付。コンスタンティヌスの寄進状とも言われる。コンスタンティヌス帝がローマ教会に帝国の西半分の領土を譲渡する内容が記された中世最大の偽書。ローマ教皇の皇帝に対する優位性を示す根拠として悪用された。作中では、皇帝コンスタンティヌス1世が、教皇シルウェステル1世に寄進する場面が描かれている。本作はラファエロの弟子「ジャンフランチェスコ・ペンニ」と「ジュリオ・ロマーノ」が手掛けた。
元の天井は木製の梁だったが1582年、グレゴリウス13世の下でフレスコ画で装飾された。装飾のテーマは、シチリアの画家トマソ・ローレッティに託されたキリスト教の勝利。1585年に完成した。グレゴリウス13世の功績が示され、コンスタンティンの生涯からの4つのエピソード、その上にシクストゥス5世の紋章がある。大きな中央のパネルは、コンスタンティンが帝国全体に命じたように、異教の偶像崇拝の破壊への言及がキリストのイメージに置き換えられた、キリスト教の勝利を示すす。中央のパネルの周りには、イタリアの8つの地域と、ヨーロッパ、アジア、アフリカの3つの大陸がある。
ヘリオドスの間。レオ大王とアッティラの会談。ラファエロの死後に弟子たちによって描かれた作品。作中では、北アジアの遊牧騎馬民族「フン族」の王「アッティラ」のローマ侵攻を、教皇レオ1世が停戦交渉によって食い止めた場面が描かれている。フン族の王「アッティラ」は、現在のロシア・東欧・ドイツを結ぶ一帯に大帝国を築き上げた人物で、キリスト教信者に畏怖される存在だった。作品の題材となった場面はマントヴァだが、作中ではコロッセオや水道橋など、何故かローマの建造物が背景に描かれている。
レオ大王とアッティラの会談の上にあるノアへの神の出現。神はフン族のローマのように洪水からノアを救う。創世記(VI 8、10、13)から派生したシーンは、濃い青色の背景を示しており、その前に箱舟が見える。ノアは降りて、天使たちの間に神が現れる前にひざまずいた。天使たちは雄弁な身振りで箱舟を離れることを許可し、妻と一緒に玄関先で話しかけた。
ジェイコブのはしご。聖ペテロの解放の上にあり、神の夢というテーマでつながりがある。聖書の一節(創世記XXVIII、10以降)のヤコブの物語に由来。聖書の預言者は、ある夜、旅の途中で、地面から天国に伸びるはしごの夢を見た。 夢の中の神の言葉から、ヤコブは彼が横たわっていた土地と巨大な子孫を約束された。真っ青な背景のシーンは、若い男が眠っている様子を示す。右側には、雲の間から神が現れ、明るいオーラに向い、天使の存在に続く。
燃える茂みはは、神殿からのへリオドロスの追放の上にあり、聖書の通路(出エジプト記III、2、6以降)のモーセの物語に由来する。神が現れたために燃える茨に近づき、エジプトに戻ってイスラエルの人々を解放する使命を彼に与えた。非常に青い背景のシーンは、神の顕現の前でひざまずく若い羊飼いモーゼを示す。これは、まばゆいカーテンと天使のような存在の中で永遠の出現として表されている。写真の下に隠れているのはSacrificio di Isacco(アイザックの犠牲)
宮殿から追放されるヘリオドロス。ヘレニズム時代のユダヤの歴史を描く歴史書「マカバイ記」の中の一場面を描いた作品。作中では、シリア王のフィロパトルに、エルサレム神殿の財宝を奪うように命じられた「ヘリオドロス」が、神の使わした騎士と戦う姿が描かれている。
聖ペトロの解放はラファエロが自らが手がけた。、ヘロデ王によって投獄された「聖ペトロ」が、神々しい光と共に現れた神の御使により、鎖を解き放たれる場面が描かれている。
反対側は工事で見れなかったがMessa di Bolsena(ボルセーナの奇跡)、「聖変化」を信じていなかったボヘミア司教が、ローマに巡礼に向かう途中に「聖変化」を目の当たりにしたという1263年の「ボルセーナの奇跡」が描かれている。「聖変化」とは、パンとぶどう酒がイエス・キリストの体に変化する現象
「署名の間」はラファエロが最初に手がけた部屋。この部屋はユリウス2世の書庫で学習に供された部屋であった。もともと使徒座署名院最高裁判所 が置かれていたのが名の由来。キリスト教とそれ以前の精霊の調和、および教皇の蔵書のテーマである神学、哲学、法学、詩作の調和を表現し、ルネット(壁と円天井が接する部分にある半円形の部分)の上に描く。題材は世俗的および霊的な知恵と、ルネサンス人文主義がともに認めるキリスト教とギリシャ哲学の調和。この部屋で教会会議や重要書類への教皇の署名が行われたことから、知恵と調和はもっとも適切な主題だった。
聖体の議論の右上の四角はAdamo ed Eva (120cm×105㎝)。金色のモザイクの背景に、アダムとイブは蛇が見つかった生命の木の間に人間の胸像で表される。イブは枝にしがみつき、隣のアダムに禁断の果実を提供しようとしている。
中上の丸はTeologia(神学、直径180cm)。神学の擬人化、金色のモザイクの背景に描かれ、雲の玉座に座り、神学のベールは白、マントは緑、ドレスは赤、神学的美徳(信仰、希望、慈善)の色。 彼女は左手に本を持ち、右手で下のディスピュタのフレスコ画を指す。天使がDIVINAR、RER、NOTITIA(神の知識)の黄金の碑文が書かれたプレートを持つ。ユスティニアヌスからの引用。
右上の四角はApollo e Marsia アポロとマルシュアスの対立。左側に勝利を収めたアポロが岩の上に静かに座り、後ろから冠をかぶせている。マルシュアスは鎖でつながれ、ナイフを持った若い男が皮剥ぎを開始する。フィレンツェの新プラトン主義者にとって、ダンテにも存在するピタゴラスの考え(パラディソ)から取られた天体の調和の勝利を持って来た。地上の情熱、そして魂の解放。
枢要徳。ラファエロが自身が手がけた真善美のうち、善を表現。題名の枢要徳は、あらゆる徳を基礎づける4つの徳「剛毅」「賢明」「節制」「正義」の事を意味する。左側で樫の枝を持つのが「剛毅」、中央で鏡をのぞくのが「賢明」、右で手綱を握るのが「節制」。「正義」Giustiziaは上の丸の絵で剣を持つ姿で表されている。
左下はTriboniano consegna le Pandette a Giustiniano、、自然法(国家間の紛争の解決)と大陸法(個人間の紛争解決)を祝うユスティニアヌス帝にPandette(法典)を届けるトリボニアヌス。左の皇帝は王冠と笏で権力を表し、右のひざまずくトリボニアヌスから法典を受け取る。
右下はGregorio IX approva le Decretali グレゴリウス9世(179代)はデクレタル(教皇が署名した単一の事件に関する司法規定を含む手紙)を承認する。教皇の玉座は遠近法で描かれる
左上の四角はGiudizio di Salomone ソロモンの裁き。右のソロモン王は、高い王座にいる。左の兵士は、2人の女性の間で争われている子供を半分に分けようとしている。右下のひざまずく女性は不正を避けるため主権者に目を向け、立つ女性は動揺し、本当の母親であることが分かる。
右端の四角はアダムとイブ
左側にマントルを持っている枢機卿は、ジョヴァンニデメディチ、将来のレオ10世(218代)で、ビッビエーナ枢機卿とアントニオデルモンテが背後にいる
ティアラと豪華なコープを身に着けた教皇はユリウス2世の特徴を備えモデルであることが分かる。教皇のあごひげは、1511年6月以降、ローマに戻ったとき、彼がイタリアを外国人から解放するまで、再び剃らないという誓いを立てた後だと分かる。
右側の枢機卿は、アレッサンドロファルネーゼ、将来のパウルス3世(221代)、隣はジュリオデメディチ枢機卿の将来の教皇クレメンス7世(220代)。
丸い天井画は右から時計周りにTeiogia(神学)、Giustizia(正義)、Filosofia(哲学)、Poesia(詩)。
Filosofia(哲学)。大理石の玉座とエフェソスのArtemides(アルテミス、自然の神、4列の胸[雄牛の陰茎とも解釈される]を持つ)とワシからなる肘掛け。彼は4つの要素(黄色、緑、水色、赤)の色のローブを着る。これは、地球の植物要素、水のための魚、火の中の炎、空気を表す。両側には 「原因の知識」を意味するCiceroから取得したCAVSARVM、COGNITIOの刻印が付いたプレートを肩に持つ、CAVSARVMの2番目のVは下にOの文字が見える。哲学の人は2冊の本を持つ。茶色の装丁はMORALIS(道徳)とあるがそれは裏表紙。緑の装丁はNA ... ISでNATURALISを表す
Poesia(詩)、月桂樹をかぶり、本とリラ(「歌詞」という言葉の由来となった楽器)を持つ。両側に2つのケルブ(智天使)が碑文(NVMINE、AFFLATVR[神々に触発された])が書かれたプレートを持つ。
左上に僅かに端が見える四角はPrimo moto、宇宙の始まり。哲学の研究の対象、あるいは天球儀を企図する天文科学の擬人化として、さまざまに解釈されてきた。天文学の女神であるウラニアは天球儀を手に持ち、日没から3時間後、ユリウス2世の聖ペテロの王位に選出された日である1503年10月31日に地球と空の構成が表される。
真善美のうち、愛を表現した作品。中央では9人のミューズに囲まれたアポロンがリラを奏でる。左側の青のケープを着て天を仰ぎ見るのは吟遊詩人「ホメロス」、その左のピンクのケープを着た横向きの人物が神曲で知られる「ダンテ」。聖体の議論やアテネの学堂よりも後に手がけられた。窓の上部の白い四角いところには「 JVLIVSII。LIGVR。PONT。MAX。ANN。CHRIST。MDXI。PONTIFICAT。SVI。VIII」とフレスコ画の完成年(1511)が表されている。
左下の白黒の絵はアレキサンダー大王がダレイオス3世の棺にホメリックの詩を入れるのをモチーフにした。
右下は皇帝アウグストゥスは、古代ローマの詩人ウェルギリウスが執筆に11年要した叙事詩アエネーイスを遺言執行者が焼くところを防いでいるのをモチーフにした。
右上の四角がPrimo moto 宇宙の始まり、左上がApollo e Marsia アポロとマルシュアスの対立
アテネの学堂は、古代ギリシャ・ローマ時代の偉大な哲学者や科学者たちが、一堂に会する場面を描いた。背景の建物はサン・ピエトロ大聖堂という説が有力。
左側が「プラトン」、右側が「アリストテレス」。プラトンは自署ティマイオスを持ち、知識の源としての最高点である天を指さし、アリストテレスは自署二コマコス倫理学を持ち、物理の確実性を示す様に地に手をかざしている。プラトンはレオナルド・ダ・ヴィンチが顔のモデルになっている。
ラファエロの右側で白いベレー帽を被っている人物はマニエリスム期のイタリア画家「ソドマ」。他にも、頬杖をつく「哲学者ヘラクレイトス」演じる「ミケランジェロ」や、コンパス片手に問題を解く「ユークリッド」演じるブラマンテなどがある。なおブラマンテは、サンピエトロ大聖堂を設計し、教皇ユリウス2世にラファエロを推薦した。
左下の黄色い服の人(パルメニデスと言われる)の下の方
ボルゴの火災の間のシャルルマーニュの戴冠式。この部屋はユリウス2世の後を継いだレオ10世が音楽に興ずる間とされた。題材はレオ3世とレオ4世の生涯から取られており、「ボルゴの火災」の他「レオ3世の宣誓」、「レオ3世のカール大帝への授冠」、「オスティアの戦い」がある。「ボルゴの火災」はラファエロが構図を描き、弟子たちが完成させた。他の3つはラファエロの関与はなく、弟子による。
レオ3世によるシャルルマーニュの戴冠式は800年のクリスマスイブにバチカンのサンピエトロ大聖堂で行われ、聖座とフランス王国との間の一致をほのめかした。モデルは教皇がレオ10世、皇帝はフランスの王フランソワ1世。、戴冠式が聖ペテロの鍵で飾られた教皇の天蓋の下で行われる。枢機卿、司教、兵士が囲む。
このボルゴの火災は、部屋名の由来になっている作品で、847年のレオ4世の時代にバチカン周辺で起こった火災の場面が描かれている。奥に見える塔の様な建物は当時の旧サン・ピエトロ大聖堂。大聖堂の祝福のロッジャに立って十字を切る教皇が火災を消し止め、市民に讃えられている。
オスティアの戦いは、レオ4世の軍隊がサラセン人(イスラム教徒)の襲来に勝利した場面が描かれている。レオ4世の顔はレオ10世がモデルで、レオ10世のトルコ人に対す十字軍遠征を暗示している。構図と多数のデッサンをラファエロが描き、それを元に弟子たちが完成させた。
右から時計周りにCristo tra la Misericordia e la Giustizia (慈悲と正義の間のキリスト)、Padre in trono tra angeli e cherubini(教皇は天使とケルブの間で即位)、Cristo come Sol Iustitiae e Cristo tentato dal demonio(悪魔に誘惑されたキリスト)、Trinità tra gli apostoli(使徒の間の三位一体)
システィーナ礼拝堂の後でここで昼食