嘘吐インスペクション

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(役表)

A♂:

B♀:

C♂:

D♀:

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A:えーっと、じゃあ、次な。


C:おう。


A:これから3つ質問をするので、それぞれすぐに思い浮かんだ物を、各々答えてください。


B:なんでもいいの?


A:まあどんな物をっていうのは、多少指定はするけどな。

  基本的にはなんでもいい。


B:わかった。


A:まず、第1問。

  今あなたは、近所を散歩しています。

  場所はどこでも構いません。

  すると、動物が捨てられているのを見付けました。

  あなたは悩んだ末それを飼うことにしましたが、では、その動物とは?

  思い浮かんだものを答えてください。


D:えっと……


A:あ、答えるのは今じゃなくていいよ。

  後でまとめて聞くから。

  とりあえず、適当に紙に書いといて。


D:う、うん。


A:第2問。

  あなたは今、動物園の飼育員をしています。

  ひょんなことから、とある生き物の世話を任されることになりましたが、

  では、それは何ですか?

  思い浮かんだものを答えてください。


C:虫とかでもいいのか?


A:えっ?

  あ、ああ。

  まあ、それがすぐに思い浮かんだやつなら、別にいいよ。


B:動物園で、虫の飼育……?


D:深く考えちゃダメだよ。


B:そ、そうね。


C:なんだよ、なんか言いたそうだな。


B:べっつにー。


D:なんでもないよ、うん、なんでもない……


A:で、最後な。

  第3問。

  今あなたは、とある事故現場にいます。

  このままでは命が危うい、というところで、間一髪助けられました。

  では、あなたを助けたのは?

  思い浮かんだものを答えてください。


B:これは、人でもいいの?


A:いいよ。

  知ってる誰かでもいいし、もちろん動物でもいい。


B:おっけー、書けたよ。


C:俺も書けたー。


D:私も。


A:よし、全員書き終えたな。


C:で?

  これで何が分かるんだよ。


A:えーっと、まず1問目。

  捨てられてた動物が、何かって質問なんだけど。

  これは、その人の「前世」に当てはまるそうだ。

  理屈は分からんけど。


B:げっ。


C:すげぇ!


D:………………


A:……えーっと、なんか反応は、それぞれ違うみたいだけど。

  ちなみ、になんて書いた?


B:……亀。


A:亀?


B:うん。

  なんかさ、犬とか猫とかだったら、普通すぎるかなーって思って。

  しかも、飼うのに迷うってくらいだから、自分にとってこう、微妙なラインの動物なのかなーって……


A:別に、質問にそんな深い意図は無いんだけどな……

  そうかー、お前の前世は亀かー。


B:なんか言い方に悪意があるわね。


A:そうかなー、気のせいだと思うなー。

  ……で、次。

  なに書いたんだよ、「すげぇ」って言ってたけど。


C:俺。


A:……は?


C:だから、「俺」。


B:え、なに?

  「あんた自身」って書いたの?


C:そうだよ。

  つまり、俺の前世は、俺ってことだろ?

  これってすごくね?


B:すごいっていうか……ねえ。

A:うん……あのな、質問ちゃんと聞いてたか?

  聞かれたのは、捨てられていた「動物」だぞ?

C:え、「捨てられていた動物を助けた人」じゃねえの?


B:……ああ、そもそも質問の理解が出来てなかったのね。

D:なんか、納得しちゃうね。


A:うん、お前らしくていいんじゃないかな。


C:お前らなんか馬鹿にしてないか!?


D:し、してないよ?


B:いいんじゃない? 幸せそうで。


C:……絶対馬鹿にしてると思うんだよなー、その物言い……


A:で、あとは……


D:……あ、私?


A:そう。


B:なんて書いたの?


D:私は……猫。


C:おー、すげえなんというか……無難だな。


D:なんか、やっぱり状況的に、真っ先に思い浮かんだのが猫だったから……


  ちょっと猫に対して、変なイメージ持っちゃってるかな。


A:うーん、まあ、これは診断といっても、あくまで遊びみたいなもんだからなー。

  あんまり深く捉えないほうがいいかもしれないな。

  そもそも、捨てられていた動物が前世っていうのも、よく分からんし。


B:それ言っちゃったら面白くないじゃない。


C:そうだそうだー。


A:あーはいはい、悪うござんした。

  で、じゃあ次、第2問の答えな。


D:動物園の飼育員だっけ。


A:そう。

  えーっと、じゃあ今度は、先に答えを聞こうか。

  なんて書いた?


B:レッサーパンダ。


C:タランチュラ!


D:えっと……キリン。


A:お、おう……

  なんか、結構すごい答えが出揃ったな。


C:そうかな?


B:いや、あんたの答えは、特におかしいと思うけど。


D:タランチュラ……


C:だって、かっけーじゃん!


B:あ、そう……

  で、これは、何が分かるの?


D:もしかして、来世?


A:そう、来世。

  なんで分かった?


D:さっきの答えが前世だったから、流れで……かな。


A:それもそうか。

  なんでこれで来世なんだろうな、根拠が分からん。


C:言いたかっただけじゃね?


B:レッサーパンダかー……

  見る分には可愛いけど、自分がそうなるとどんな気分なんだろうなー。


A:ちなみに聞くけど、なんでレッサーパンダ?


B:え、そりゃあ……可愛いから?


C:俺の理由と大差ねーじゃん!


B:うっさいわね!

  動物園にタランチュラなんて出されてたって、そんなの見たくないわよ!


C:それはあくまでお前個人の話だろ!

  いいじゃんタランチュラ!

  ロマンがあるだろ、分かれよ!


B:一生かかっても分かる気がしない!


A:二人共、声がでかい。


D:子供が起きちゃうよ。


C:お、おおそうだった。


B:ごめんごめん。


A:それと、これは「動物園になにを置くか」じゃなくて、来世の話だからな?

  論点若干ずれてるから。


B:そういえばそうだった。

  ……いや、にしたってタランチュラはちょっと……ねえ。


C:そういえばキリンってさあ、法律上個人で飼えるらしいな。


B:無視かい。


A:……マジ?


C:おう。

  まあ勿論、知識とかなきゃ無理だろうけど、そんだけだったら、どんな動物でも一緒だよな。


D:それ以前に、場所が……


B:だよねえ。

  キリンが飼えるほどの土地なんて、どんだけ金持ちなのって話よ。

  ていうか、そもそも国内じゃ絶対無理でしょ。


C:いや、でも俺は、あわよくば飼いたい。


B:タランチュラへの情熱はどこ行ったのよ。


D:私も、自宅で飼うっていうのは無理だとしても、もし飼育員になったらキリンの世話してみたいなって。


A:もう純粋にそう思ったわけね。


D:うん。


A:おっけー、分かった。

  もう細かいこと言及するのやめるわ。

  じゃあ最後三問目な。


C:前世、来世と来たけど……あとなんかあるか?


A:いや、もうこれは今までの流れと、ほとんど関係無い。

  ちなみに、なんて書いた?


B:えーっと……

  あれ、質問なんだったっけ。


D:事故現場で、誰に助けられたか、だっけ。


A:そう、それ。


B:私は友達って書いたよ。


C:俺、ペットのジャックって書いた。


D:私は両親かな。


A:ふんふん、なるほど。

  まあさすがに、これは結構まともだな。

  一人を除いて。


C:誰のことだよ。


A:お前のことだよ。


C:なんでだよ!

  先にこれの答えを言えよ!


A:あー、そっか。

  えーっとね、とりあえずこれは、「今自分が一番憧れているもの」なんだけど。


B:へー。

  割とまともだね。

  前世とか来世とか言われても、正直全然しっくりこなかったけど。


D:うん、言われてみればって感じ。


A:だろ?

  なんて答えるかは人によるし、その内容も、自由だからこそ面白いんだけど……

  ペットってお前。


C:なんでだよ!

  たまにあるだろ、飼ってた犬に助けられて、九死に一生を得た、みたいな話!

  それだよ!


A:うん……

  お前が飼ってるのが犬だったら、俺だって別に、あえてツッコミは入れないよ。

  さっき自分でも言ったけど、これはあくまでお遊びみたいなもんだし。

  でも、お前が飼ってるものってなんだよ。

  それ知ってたらつっこみたくもなるよ。


B:あんた、何か飼ってたっけ?


C:おう、部屋の中で放し飼いしてるぞ。


D:……え、もしかしてあれのこと?


C:そうだよ?


B:何飼ってるのよ?


C:コオロギ。


B:は?


C:コオロギ。

  コオロギのジャック。


A:うん、ちなみに放し飼いっていうか、勝手に入ってきたやつに勝手に名前つけてるだけだから。


D:へ、へえー。


B:コオロギに憧れてる、ねえ……

  まあ、いいんじゃない? あんたらしくて。


A:うん、お前らしいよ。


C:その「俺らしい」っていうの、馬鹿にする意味で使うのやめない!?


D:……あの、すごく言いにくいんだけど……


B:どしたの?


D:そのコオロギ、こないだ部屋の掃除してた時に見付けたんだけど……

  ……最初、ゴキブリかと思っちゃって……その……


C:……殺しちゃった?


D:う、うん……


C:ジャックゥーーーッ!!!


B:だから声がでかいっての。


C:お、おう……悪い。


A:……でもさあ。


D:え?


A:高校時代の友達に久し振りに会って、ホームパーティーってのは分かるけどさ、

  その場でやってる事が心理テストって、俺達くらいのもんだよな。


D:それはまあ……確かにね。


B:でも、言いだしっぺはあなたじゃなかったっけ?


A:そりゃそうだけども。

  ……まあでも、みんな変わってないみたいで安心したよ。


C:そう簡単に変わってたまるかって。

  つっても、流石にこの4人がそのまま2組の夫婦になってるっていうのは、

  昔の俺らに聞かせても、絶対信じないよな。

A:そりゃあな。


B:言えてる言えてる。


A:……あ、ちょっとトイレ借りるな。


C:あいよ。

  部屋左に出て、突き当たりを右な。


B:……夫婦としてはさー、そっちこそどうなのよ。

  あんたバカだし、振り回したりしてないでしょうね?


C:し、してねーよ!

  な?


D:う、うん。


B:ほんとに?


D:え、えっと……


C:そこでどもると変な感じになるから自信持とう!?

  それによって疑われるの俺だから!

  謂れのない非難浴びかねないから!


D:ご、ごめんなさい! 大丈夫!


B:そう。

  それならいいんだけど。


C:……あっれーおっかしいなー……

  なんかこれはこれで、俺が大丈夫って言わせたみたいになってる……


B:ごめんごめん。

  二人共同じ血液型なのに、性格は真逆だから、なんか心配でねー。

  ……あ、それはそうとさ。

  高校時代に私達、ちょっとした三角関係になっちゃってたの覚えてる?


D:ああ、そんな時もあったね、そういえば。


B:ね。

  今となっては、笑い話で済ませられるけどねー。


D:……うん。


A:ただいまー。

  何の話?


B:昔はあなた巡って、恋愛競争してたなーって話よ。

  懐かしいでしょ。


A:あー……そういやそうだったな。


C:二人から同時に告白されたーって藻掻いてたもんな。

  俺はそれを笑って聞いてたけど。


A:それを笑って聞けるお前の神経が、今でも理解できないよ。


C:ウィーッス、サーセーン。


A:うわぁー、殴りてぇー。


C:モテる男が苦しむ姿ほど、飯が美味い状況は無いってな!

  聞けば軽いストーカー被害にも遭ってたらしいが、そんなもんは知ったこっちゃない!

  それは勝ち組の、嬉しい悲鳴ってやつだ!


A:あー、はいはい。


B:そんな私達でも、今じゃお互い一児の両親だもんねー。

  時の流れってのは怖いわー。


A:……あれ?

  でも確かそっちって、双子とか言って、


B:(小声)

  バカ! シーッ!!


A:(小声)

  え、なに!?


B:(小声)

  察しなさいよ!


A:(小声)

  え、……あっ、そうか……


C:なにヒソヒソしてんだ?


A:いや、別になんでもないよ!


D:……大変なのはむしろこれからだよ、きっと。


B:あはは、だよねー。


C:まあいいじゃん、当時の話はさ。

  今が楽しければ。


A:そりゃそうだ。


B:そうだね。


D:うん。


B:珍しくいいこと言ったね。


C:うん、……珍しくってなんだよ。

  ……でさあ、俺もちょっとやってみて欲しい心理テストがあるんだけど。


A:ほう。


B:なになに? 付き合うよ。


C:いや、心理テストっていうか、性格分析? みたいな?


B:なにそれ?


D:性格分析?


C:えーっとな、まず、自分の生年月日の数字を、全部足すんだよ。

  例えば、俺だったら1990年12月15日生まれだから、

  1+9+9+0+1+2+1+5ってなるだろ?

  そしたらー、えーっと……えー……あれ?


D:28。


C:そう、28になるじゃん。


A:暗算は頑張れよ……


C:黙らっしゃい!

  で、その数字と性別と、あとは血液型で診断するわけ。

  とりあえず、誕生日の計算だけちょっとやってみ?


A:えーっと……9月2日だから……30か。


B:私はー……8+2+7で……36かな。


D:20……と、……えっと、23。


C:うん、まあこの面子だったら全員同い年だし、数字に差はあんまり出ないよな。

  じゃあまずは、26~30の男!

  つまり、俺とお前!


A:お、おう。


C:血液型は?


A:A型。


C:はい。

  じゃあ、26~30の、A型男性の結果。

  「何事にもこつこつ地道に取り組み、小さなことにも一生懸命臨むその姿に、感心されることも多いでしょう。

   しかし、大事な物事を見落としてしまい、残念な結果に終わってしまう事もしばしば。

   常に気を抜かず、一度身の回りから確認してみると意外な発見があるかもしれません」

  ……以上。


A:……うん、割と当たってる。

  ていうか、思った以上に真面目すぎてびっくりしてる。


C:だろ?

  これ、結構当たるんだよ。

  俺は血液型違うから結果は別だけど、思い当たる節あったもん。


A:へーえ。


B:面白そう!

  ねえねえ、私は?


C:数字は、36だっけ?


B:うん。

  あ、ちなみに私、AB型ね。


C:はいはい。

  えーっと、36~40の、AB型女性の結果。

  「周りからは大雑把な人に見られがちですが、実は人一倍気の利くタイプ。

   他人の何気ない仕草や言葉から感情・思考を汲み取り、常に先回りした行動ができます。

   しかし、逆に自分のことはあまり気にしていないせいか、

   当たり前の事を見落とすこともあるので注意しましょう」

  ……だってさ。


B:あー……うーん……言われてみれば、そうかも。

  自分のこととなると抜けてるよねって、昔から親にもよく言われてたわ。


C:そーだなー、抜けてるもんなー。


B:うっさいわね。

  ちなみに、あんたはどんなだったの?


C:んー? あー……

  まあ、あれだよ、ほとんどそのまんまの事が書いてあったよ。

  教えてやんないけど。


A:なんでだよ。


C:また「お前らしい」って馬鹿にされるのが目に見えてるから。


A:……ちっ、バレたか。


C:そういうのは、せめて聞こえないように言ってくれる?


D:あ、私のもお願いしていい?


C:23だったっけ。


D:うん。


C:あいよ。

  じゃあ、21~25のO型女性の結果、えー、

  「普段からあまり自分から前に出ることはありませんが、

   実は一番、心にとても強い芯を持っているタイプです。

   しかし、引っ込み思案なので失敗を恐れ、ついつい嘘を吐いて、自分を守りに入ってしまいがち。

   それが空回りして、悪い結果をもたらしてしまうこともあるので、時には率先して意見してみましょう。

   嘘はほどほどに」

  ……だってさ。


D:……うーん……なんとも言えないかなあ。

  当たってるといえば、当たってる気もする。


B:あんまり嘘吐いてるところ、想像つかないけどねー。


A:確かに。


D:そんなことないよ。

  他人に嘘吐いたこと、色々いっぱいあるもの。

  みんなにも勿論あるし……


C:まあ嘘なんて、生きてりゃ誰でも多少は吐くしなあ。

  でも、引っ込み思案なのは当たってるよな。


D:う、うん。

  直さなきゃとは思うんだけどね。


C:じゃあ全員調べたし、こんなもんかな?


A:ちなみにさ、それどこで調べたんだ?


C:それって?


A:その性格分析っつーか、占いみたいな。


C:んー、俺のじいちゃんの知り合いが、占い師やっててさ。

  その人に教えてもらった。


A:へえー。

  本職の人が言うんだったら、結構マジなのかな。


C:さあ。


B:あっ、ねえねえ、子どものも試してみていい?


C:あー、いいよ。

  じゃあ、数字と血液型教えてくれ。

  ……あ、そういやうちの子と、誕生日一緒だっけ。


A:そうだよ。

  誕生日どころか、生まれた病院も同じだろ。

  その日に俺らで、すごい偶然もあるもんだなって話してたじゃないか。


D:私の父親が医院経営してるからって、そこでやってもらったでしょ。


C:あー、そうだったそうだった。

  なんか当時はもう、慌ててた記憶しかなくってさ。

  じゃあ誕生日は、2012年6月19日ってことか。

  ……えーっと。


D:21だよ。


C:悪い、ありがと。


B:……あれ?

  あ、ごめん、やっぱりいいや。


C:え、なんで?


B:いやさ、さっき、21~25のーって言ってたでしょ?

  よく考えたら、それと結果一緒だったの。

  うちの子、女の子だから。


C:ああ、そういうことか。


A:……でもさ、改めて考えると親が医者で、しかも医院経営してるって、相当すごいよな。


D:そんなことないよ。

  確かに、それなりに大きい所ではあるけど、お父さんは普段、研究ばっかりしてるから……


B:研究って、なんの?


D:……えっと……

  あんまり詳しく聞いた事無いから分からないんだけど、

  生殖補助技術? が、どうのこうのって言ってた気がする。


A:……ダメだ、さっぱりわからん。


B:私も。


C:よーし、せっかくだし、我が家の娘も調べてみるか!


A:こいつはこいつで、話そっちのけだし。


B:今更だよね。


C:……あれ、あいつ、血液型なんだっけ。


D:A型。


A:お前大事なこと忘れ過ぎだろ。


C:う、うっせー。

  たまたまだよ、たまたま!


A:たまたまで自分の子の血液型忘れんなよ……

  お前絶対、子どもの誕生日忘れて嫌われるタイプな。


B:うわー、さいてー。


C:違うから! まだ一回も忘れた事無いから!

  ちゃんとハッピーバースデー毎年歌ってるから!

  えーっとそんで、A型だからー……


D:ねえ、それまた今度にしたほうが……


C:なんで?


D:時間……


C:時間?

  ……うわ、やっべ! もうこんな時間かよ!


A:ああ、もう夕方だな。


B:やっぱり、話し込むと早いねえ。

  あ、もしかしてこの後、なにか用事あるとか?


C:ああ、悪い。

  ちょっと出掛ける用事があってさ。

  先に着替えてくる!


B:言ってくれれば、早めに切り上げたのに。


A:どうせ、言われるまで忘れてたんだろ。


C:はいそうですよー、悪うござんしたね!


A:はは、そんなことだろうと思った。

  んじゃ、俺らはそろそろ、お暇しますかね。


B:だね。

  あ、また空いてる日があったら教えてよ。

  今度はこっちの家に招待するから。


D:うん、急に慌ただしくなっちゃってごめんね。


B:気にしない気にしない。​

  ……あ、片付け手伝おうか?

D:あ、大丈夫だよ、これくらいなら。

  気にしないで。


B:そう? ごめんね。

  ……それじゃね、お邪魔しましたー。


A:……あれ?

  なあ、悪いんだけど、ひとつだけ聞いていいか。


D:なに?


A:あいつってさ、血液型なんだったっけ。


D:えっと……

  ……A型だよ、確か。


A:……そっか、ありがと。

  悪いな、それだけ聞きたかったんだ。


D:ううん。


B:おーい、なにしてんのー。


A:あー、今行くよ。

  そんじゃな、お邪魔しました。


D:うん、また今度ね。

  ……はぁ。


C:よし、なんとか間に合いそうだな!

  ……あ、もうあいつら帰っちゃった?


D:嘘はほどほどに……かぁ。

  ……ふふっ……


C:ん、どした?


D:ううん、なんでもないよ。


  ……そう。

  これまでも、これからも。

  なんでもない、なんでも……


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