フロム・エックス・デイ

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(役表)

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A:ハロー、ハロー。

  こちら、……えー、地球。

  未来に繋がる通信コード、なんてモノの噂を耳にしたので、試してみることにしました。

  いつかの未来の方、聞こえていたら応答願います。

  こちらの今夜の天気は、晴れ、のち流星群。

  もう間も無くのはずなので、今から楽しみです。

  ……なんてね。


B:ハロー、ハロー。


A:え。


B:こちら、……あー、火星。

  「過去に繋がる通信コード」の試験中、そちらの声を受信した。

  まだ繋がっているなら、応答願う。


A:は、ハロー?

  ……えっと、未来人の方で、火星人の方ですか?


B:あー、未来人はそうだが、火星人は、その、ジョークを入れてみただけだ。

  どうか忘れてくれ。


A:はい、忘れました。


B:はは、迅速な対応に感謝する。

  ……確認するが、そちらの日時は、

  2XXX年、1X月1X日、2X時XX分32、3、4秒……

  で、間違い無いか?


A:凄いですね、ぴったりその通りです。

  ……あっ、


B:そして今、夜空を、流星群が通過していっている。


A:凄い綺麗ですよ、願いが無限に叶いそうなくらい。


B:……その流星群の正体が、何であるかは?


A:知ってます。

  でも、未知の体験が出来ているからか、あまり怖くはないですね。


B:もしも、出来ていなかったなら?


A:「もしも」の話は、仕様が無いので嫌いです。


B:……やはり君は、相も変わらずだな。


A:え?


B:いや、こちらの話だ。

  ……それよりも。


A:ええ。

  そろそろ流星群に、夜明けも掻き消されそうですね。


B:何か、未来へ残したい言葉は無いか?

  運命の悪戯で出逢った数分の仲だが、何かあれば聴き届けよう。


A:……それじゃあ、もしも、タイムマシンがあったなら、いつかの私に、会いに来てください。

  あなたとは何故だか気が合いそうだし、乗ってみたい。


B:もしもの話は、嫌いなのでは?


A:最後くらい、良いかなって。


B:はは、承知した。

  いつか、必ず。


A:はい。

  ……ところで、あなたは、


(間)


B:……通信切断、時間か。

  何度聴いても慣れないな、最後のあの声は。

  「会いに来て」……ね。

  いつぞや頼まれた、時を越える通信コードよりも、無理難題だな、これは。 

  システム再起動、時間遡行モードへ移行。

  ……さて、いつ頃の君なら、こんな私を、

  「あいも変わらず」と笑って、受け入れてくれるだろうか。


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