インヴィジブル

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(役表)

A(不問)

B(不問)

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A:……あっ。


B:ん?


A:あのさ。


B:なに。


A:透明人間、ってさあ。

  いると思う? いないと思う?


B:……は?


A:透明人間。


B:が、何?


A:いると思う?


B:……どうして?


A:じゃあ、いないと思う?


B:いや、そうじゃなくて。


A:え?


B:なに、急に。


A:ディベート。


B:ディベート?


A:うん。


B:って、賛成派と反対派に別れて意見するっていう、あれ?


A:それ。


B:やりたいの?


A:やりたい。


B:透明人間について?


A:そう。


B:急に?


A:急に。


B:今?


A:今。


B:なんで?


A:駄目?


B:駄目、ではないけれど。


A:じゃあ、嫌?


B:嫌、でもないけれど。


A:それなら、やろう。


B:……透明人間?


A:透明人間。


B:あー……はいはい、分かった分かった。

  ちなみに、じゃあ、どっち派?


A:そっち次第。


B:どっちでも良いの?


A:どっちでも良いよ。


B:言い出しっぺのクセに。


A:捉え方次第だからさ。


B:なにそれ。

  じゃあ、「いない」で。


A:オーケー、「いる」ね。


B:どっちから?


A:お先にどうぞ。


B:あ、そう。


A:なんで、透明人間は「いない」と思う?


B:えーとね。

  根拠というか、主に2つの観点から見ていくんだけど。


A:うん。


B:まずひとつ。

  視覚的に、いないから。


A:視覚的に。


B:そう。

  見えないよね、透明人間は。


A:そりゃあ、透明人間だからね。


B:うん、透明だからね。


A:でも、見えないってだけで、その存在自体を否定するには弱過ぎるんじゃない?


B:勿論。

  言ったでしょ、これはひとつめ。

  そもそも、「透明」っていうのは定義としては、

  光、つまり可視光線を透過させて、その物体の内側、乃至、反対側が見える状態の物を指すわけ。


A:うん。


B:だから、その透明である物体X、このディベートにおける透明人間は、

  「透明」という言葉の定義に従うなら、ある程度は見えてないといけないのよ。


A:うん?

  どういうこと?


B:例えば……そうね。

  2人の間にこう、透明な、壁。

  ガラスとか、アクリルとかね、そういうのがあるとするでしょ。


A:仮にね。


B:そう、仮に。

  でも、どれだけその壁が、限り無く、目を凝らさないと見えもしないほど透明度が高い物体だとしても、

  よぉ……く目を凝らしたら、やっぱり見えるでしょう。


A:見えるね、見えた見えた。


B:それはつまり、この世に存在する限り、

  可視光線を完全に100%透過することは、限り無く不可能に近いから。

  ただの壁状の物体ですらそうなんだから、人間なんていう、奇跡みたいに複雑な構造をしてる生命体が、

  その輪郭すら残さずに全く見えなくなってるのは、

  あまりにも非現実的事象っぷりが過ぎるんじゃないかなって。

  それは最早透明じゃなくて、不可視人間って表現した方が妥当になってくるんじゃないかと思うんだよね。

  あくまでも全部、もし仮にいるとするなら、って前提のもとでの意見だけど。


A:でも、もしかしたら、最初はそうだったのかもしれないよ?


B:そうだったって?


A:最初は、透明って言葉の定義通り、体が透けてるって程度だったのが、

  徐々に徐々に見えなくなっていって、最終的に、今のその、

  ……なんだっけ?


B:不可視人間?


A:それ。

  最終的に、不可視人間と呼ぶに値する状態に辿り着いた、って可能性も考えられないかな?

  それだったら、少なくとも透明人間って言葉が生まれた段階では、その表現で正しかったわけでさ。

  何なら、全ての透明人間は、そういう順序を追って見えなくなっていっている、という説を推したいくらい。

  そう前提を置けば、

  「見えないのはその過程を見た事が無いだけ」

  っていうシンプルな反論も、出来るようになる。


B:そんな、架空の変遷を引き合いに出されてもね。

  最初にも言った通り、例えそういう過程があったとしたって、

  現実問題として、透明人間は「見えないモノ」ってのが定説でしょ。

  他人がどう言おうが、名前と通説の通りに、少なくとも自分には意識して見ようとしても見えないし、

  これまでの一生の中で、一度も見た事も無いモノは、視覚的に「いない」と結論付けざるを得ないのよ。


A:まあ、それもそうか、なるほどね。

  それが、ひとつめ?


B:そう。


A:ふたつめは?


B:物理的に、いないから。


A:物理的に。


B:そう。


A:それは、つまり?


B:えーとね。

  まあ、さっきの透明な壁を、また例えとして使うとだよ?


A:うん。


B:限り無く透明度が高くて、何も無いように見えてはいるとしても、

  間違い無くここに、壁は「ある」よね。


A:あるね。

  そっちに手を伸ばそうとしても、見えない壁にぶつかる。


B:そう。

  つまりは、そういうことよ。


A:ん?


B:え?


A:どういうことだって?


B:あれ、今ので何となく通じない?


A:んー、まあ何となくは、伝わったような気がするけど。

  もうちょっと分かりやすくというか、具体的な説明が欲しい。


B:えー、うーん、そうね。

  じゃあ、ちょっと立って。


A:ん?

  ……はい。


B:はい。

  で、そこからまっすぐ、こっちに向かって歩いて来て、そのまま通り過ぎて。


A:通り過ぎれば良いの?


B:うん。


A:どこを?


B:どこでも。

  前後左右、お好きなところから。


A:上下は?


B:危ないからやめて。


A:ふーん。


(A、Bの前を歩いて通り過ぎる)


A:はい、こんな感じで良い?


B:はい。

  で、じゃあ、今度は私を、透明人間だと思って、同じように通り過ぎてみて。


A:透明人間?


B:透明人間。

  いると思ってるんでしょ?


A:まあ。


B:だから、私が透明人間だと仮定して、もう一回。


A:見えないってことだよね?


B:当然。

  透明人間だからね。

  それとも、見えるの? 透明人間。


A:いや、見えないよ、透明なんだから。


B:じゃあ、どうぞ。

  私は今、あなたには見えない透明人間です。

  通り過ぎようとしてください。


A:あ、はい。

  じゃあ。


(A、Bの前を歩いて通り過ぎようとする)

(B、Aの前に立ち塞がるように移動する)


A:わっと、なに?


B:なんで避けたの?


A:え?

  なんでって、ぶつかりそうだったから。


B:何と?


A:何とって、君と。


B:違う、何と?


A:ん?


B:ぶつかりそうになる、って意識も、反射的な回避行動も、出来るわけが無いんだよ、今の条件下では。

  私は今、何であると仮定してって言った?


A:え、だから、透明人間でしょ。

  ……あ。


B:言いたいこと、分かった?


A:分かった、そういうことか。


B:そういうこと。

  透明人間は、あくまで視認出来ないだけで、物理的に存在自体はしてるはずだよね。

  透明であろうが、人間なんだから。

  つまり、触ろうと思えば触れる、ってことになる。


A:そうだね。

  見えもしないし触れもしないなら、それはもう、ほぼいないのと同義だもんね。


B:でしょう。

  他人とぶつかりそうになったら、さっきみたいに反射的に、無意識的に避けるけど、

  それは大前提として、ぶつかりそうになった他人が、見えているから、でしょ。

  けど、どこにいるかも分からない、そもそも「いる」とすら思っていない透明人間に対してなんて、

  避ける避けないっていう意識、それ以前の問題になるわけよ。

  その意識を向ける対象が、見えないんだから。

  逆に透明人間からしたら、道行く人全てが、目を閉じたまま歩き回っているも同然。

  ぶつかりそうになったとしても、自分が避けようとしない限り、相手は絶対に避けない。

  何故なら、相手からは自分が見えていないし、それ故に、


A:気付かれようもないから?


B:正解。


A:なるほどね。

  つまり、あれだね。

  君の持論はふたつとも、

  「もしも透明人間が本当に存在するなら、自分、又は不特定多数のどこかの誰かが、

   何らかの形でそれを認識、接触する機会を、ほぼ確実に得ているはず」。

  という考えを基盤として、構築されているわけだ。


B:まあ、そういうことになるかな。

  流石に、私自身が見た事も触れた事も無いからって、

  それだけで「いない」って主張するのは無理があるし、暴論だろうから。


A:それはそうだね。


B:透明人間が仮にいるとして、どこにどれくらいいるかなんて知りようも無いけど、

  例えば極端な話、この部屋のどこかに透明人間がいたりしたらさ、

  こうやって、好き放題動き回ったりしてれば、絶対いつかは、

  ……は?


A:え?


B:いや、今……え?


A:なに。


B:なんか、触った。

  ぐに、って。


A:何も無いよ。


B:触ったんだって、このへんで。


A:壁じゃないの、さっき作った透明な壁。


B:壁はぐにってしない。

  なんか少し柔らかかっ、

  っえ、ちょ、なにっ。


A:どうしたの。


B:誰か触った。


A:誰もいないよ。


B:触られたんだって。


A:何言ってんの。


B:分かんないよ。

  何されてんの、私。


A:落ち着きなよ、気の所為だって。


B:気の所為……


A:気の所為。


B:そうかな。


A:そうだよ。


B:……もう、何も無いっぽい。


A:誰もいないしね。


B:ごめん。

  なんか熱弁してるうちに、変なこと思い込んでたかも。


A:そうかもね。

  では、気を取り直して、「いない」派の意見としては、以上でよろしいですか?


B:はい。


A:OK。

  じゃ、今度は僕から、「いる」派からの主張ね。

  ……あ、その前にさ。

  ひとつ、確認しておきたいんだけど。


B:なに?


A:この透明人間の存在についてのディベートをやるにあたって、

  何で僕は君に、先手を譲ったんだと思う?


B:何で、って、理由あるの?


A:あるよ。

  予め、君が「いない」派であることを踏んで、先手を譲った。


B:言ってる意味が、よく分かんないんだけど。


A:やっぱり、気付いてないか。


B:だから、なにが?


A:それじゃあ、根本的な話をしようか。

  透明人間っていうのは、そもそも、何だと思う?

  もとい、どういう存在だと思う?


B:何って、透明な人間でしょ。


A:そう、文字通りね。

  それなら、どうやって透明になったんだと思う?


B:どうやって……それは、


A:科学? 魔法?

  薬? 呪い?

  知られざる不治の病気の一種かもしれないし、

  天文学的な確率を超越して、自然現象のように、偶発的になってしまった可能性もあるよね。


B:……まあ、そういうのもあるだろうけど、


A:じゃあいつ透明になった?

  先天性? それとも後天性?

  いやそもそも、彼、或いは彼らは、いつからいるんだ?

  透明でない人間が生まれるよりも前? それとも後?

  人間が生まれてから、彼らが生まれたのか?

  若しくは、全く別次元に住まう、人間の名を冠した、未知の生命体なのか?

  本当に、人間と呼べる形状をしているのだろうか?


B:ねえ。


A:彼らは一体どれくらいいる?

  1人か、2人か?

  はたまた、人間と同じか、それ以上か?

  分からない。

  数える手段が無いから。

  言葉は分かるのか?

  食事や排泄はどうするのか?

  体温はあるのか?

  彼らに対しての疑問は尽きない。

  ありとあらゆる観点から、どこをどう見ようとしても、

  そのどれもこれもを、明らかにする術を持ち合わせることすら出来ない。

  何故なら、彼らは見えないから。


B:ねえって。


A:見えないはずなのに、いると信じてみた途端、無限に近い可能性だけが増えていく。

  僕らはそれを、肯定することも否定することも出来ない。

  何故なら、可能性の対象たる彼らは見えないから。

  見えないからこそ、彼らは無限に変質し、

  解らないからこそ、彼らは無尽に、


B:ちょっと。


A:え?


B:落ち着いて、一旦。


A:ああ、ごめん。

  つい、興奮し過ぎた。

  ディベートなんだから、君の意見も参考にしないとね。


B:いや、それは別に良いんだけど、あの、


A:さて、じゃあどこから話そうかな。

  ちゃんと順を追わなきゃ。


B:あのさ。


A:ん?


B:あなた、何を知ってるの?


A:何をって?


B:透明人間について。


A:知らないよ。


B:嘘。


A:嘘なんて吐くもんか。


B:嘘だよ。

  だって明らかに、確実に「いる」ことを知ってる口振りだったじゃない。

  私みたいに、「いるとするなら」なんて、漠然とした仮説じゃなく。

  透明人間は「いる」って、それがさも当然の前提であるかのような。


A:うーん。


B:ねえ。

  何か、知ってるんでしょ。

  答えて。


A:半分かな。


B:え?


A:半分正解で、半分はずれ。


B:なにが?


A:確かに僕は、透明人間が「いる」ことは、知ってる。

  それは正解。


B:やっぱり。


A:でも、その「いる」透明人間については、知らない。

  少なくとも、今の時点では。

  だから、それははずれ。


B:意味が分かんない。


A:分かんないかな。


B:分かんないよ。


A:いるんだよ、透明人間は。


B:だからそれは、どういう意味合いで言ってるの?


A:意味合いもなにも、そのままだけど。

  透明人間は、いる。


B:そうじゃなくて。


A:それじゃあ、言い方を変えようか?

  いるんだよ、透明人間が。

  そこに。


B:は?


A:あ、今はあっちか。


B:見えてるの?


A:見えるわけ無いだろ、透明人間なんだから。


B:揶揄わないでよ。


A:揶揄ってはいないよ。


B:なに、本気で言ってるの?


A:勿論。


B:いるの?


A:いる。


B:この部屋に?


A:そう。


B:どこに?


A:さあ。


B:何人?


A:どうだろう。


B:なんで?


A:なんでって?


B:なんでこの部屋に、透明人間がいるのって。

  いつからいたの?

  私達以外は誰も、出入りした気配は無かったのに。


A:いつからって、最初からじゃないか。


B:最初って。


A:このディベートを、始めた時。

  より正確に言えば、君の主張が始まった時から。


B:……ちゃんと、順を追って説明して。


A:はいはい。

  いいかい、透明人間っていうのはね。

  そんな簡単に、「いる」「いない」で測れる存在じゃないんだよ、そもそも。

  「いる」と思ったなら「いる」し、

  「いない」と思ったなら「いない」。

  勿論、この部屋にも、最初の最初には「いなかった」。


B:それが、どうして。


A:君は繰り返し言ったろ。

  「いるとするなら」って。

  だから、彼は、或いは、彼女は、

  「いることにした」んだよ、ここでは。

  君の主張の通り、見えないけど触れる、よくある透明人間として。

  他がどうかまでは、分からないけれどね。


B:なに、他って。


A:他は他だよ。

  ここ以外のどこか、あらゆる場所に「いるかもしれなくなった」透明人間たち。

  君がそうしたんだろ、さっき。


B:「もしも透明人間が本当に存在するなら、自分、又は不特定多数のどこかの誰かが、

   何らかの形でそれを認識、接触する機会を、ほぼ確実に得ているはず」……?


A:それ。

  言語化したのは僕だが、それが、君の深層心理に於ける、透明人間への見解だ。


B:そんな馬鹿なこと。


A:そうだよね、馬鹿げてる。

  でもさ、今更だろ。

  元々じゃないか、そんなの。


B:元々って、なにが。


A:だって、透明人間だよ。

  透明な、人間。

  言葉の響きからして、心底から馬鹿げてる。

  そんな存在に、僕たちの常識が通じるわけが無いだろ?

  そんな存在に、不可視であるのをいいことに跋扈され続けてしまっては、人間はたまったものじゃない。

  だから、透明人間という概念を定義し、生み出してしまった先人達は、曖昧にし続けてきたのさ。

  そうすることによって、世界の常識の均衡を保ってきた。

  「いる」か「いない」かも分からない、曖昧な彼らを、

  御伽話めいた、架空の存在として扱うことによって。

  そんな程度の方法で、今までどうにかなってきていたのは、

  この世に誰ひとりとして、心の底から透明人間の存在を信じている人間がいなかったから。

  幾度と無く繰り広げられたであろう今回のディベートにおいても、

  建前としては肯定派にいようと、本心では「透明人間はいない」と信じ切っている否定派しかいなかったから、

  結果として、透明人間は、空想上にしかいなかったんだ。

  この部屋にいる彼ら、彼女らもそう。

  さっき、君がたまたまぶつかってしまった時までは、まだ取り返しが付いたかもしれないんだけどね。

  君は、頑なに何かに触った、誰かに触られたって譲らなかったから。

  それを引き金に、透明人間の存在は、再び世界に肯定されてしまった。


B:世界に、存在を肯定された。


A:そう。


B:……それじゃあ。


A:ん?


B:そこまで知ってるあなたは、何なの。

  これから、どうしようっていうの?

  これから、私達の世界はどうなってしまうの?


A:誤解しないでくれ。

  別に、僕自身は何でもないよ。

  君と同じ、心の底で、透明人間の存在を信じてしまっていた、ただの人間。

  ただほんの少し、御伽話の一頁を破ってみたかっただけの、どこにでもいる人間だよ。

  そして、僕がどうしようとしなくても、世界はこれから、どうにでもなってしまうだろうさ。

  一度でも存在を肯定されてしまった透明人間は、

  「もしも、透明人間がいたならば」。

  そんな些細で、無窮の好奇心から、無極に膨らむ不特定多数の想像通りに、

  無限に派生し、無尽に増え続けていくんじゃないかな。

  世界の見栄えは、今までと何も変わらないよ。

  透明人間という名の通り、どれだけ増えようと、

  彼らも、彼女らも、誰にも見えないんだから。


B:………………


A:まあ、別に、世界が滅びてしまうって規模の話じゃないから、そんなに気に病むほどの事じゃないよ。

  ただ今までよりもほんの少し、

  どこに居ても、あるはずの無い視線に囲まれ易く、

  どこに行っても、いるはずの無い人間にぶつかってしまい易くなるだけ。

  強いて言えば、それだけだよ。

  たぶんね。


B:私の所為?


A:そうだね。

  でも、僕の所為でもある。


B:どうにもならないの?


A:ならない。

  世界による肯定は、人間程度の否定では上書き出来ない。


B:透明人間は、いる?


A:いる。

  今、まさに。


B:どうして、嬉しそうなの?


A:そう見える?


B:そうにしか見えない。


A:そっか。

  やっぱり、半分だ。


B:半分、正解?


A:半分、はずれ。


B:まだ何か、企んでいるの?


A:別に。

  ただ、ちょっとだけ、やり直そうかと思って。


B:やり直す?


A:そう。


B:どこから?


A:どこからって、やり直すんだから、最初からだよ。


B:最初って、つまり?


A:ディベートから。


B:ディベート?


A:うん。


B:って、賛成派と反対派に別れて意見するっていう、あれ?


A:それ。


B:やるの?


A:やる。


B:また?


A:また。


B:どうして?


A:駄目?


B:駄目、ではないけれど。


A:じゃあ、嫌?


B:嫌、でもないけれど。


A:それなら、やろう。


B:透明人間について?


A:違うよ。

  透明人間はもう、「いる」ことになってしまったから。

  議論したところで、意味も仕様も無い。


B:じゃあ、なにを?


A:やりたいんだね、君も。


B:やりたい、私も。


A:やり直したい?


B:やり直したい。


A:良いだろう。

  じゃあ、君さ。


B:うん。


A:「不透明」『じゃない』【人間以外】って、

  [いない]と(思わない)?


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